ニュース
絶対王者にどう挑むか? 「CS:GO」日本一決定戦「GALLERIA GAMEMASTER CUP」オフライン決勝大会、準決勝戦開催
2018年9月30日 09:21
サードウェーブは、「Counter-Strike:Global Offensive(以下、「CS:GO」)」の日本一決定戦「GALLERIA GAMEMASTER CUP」のオフライン決勝大会を、LFS池袋 esports Arenaで開催した。9月29日は準決勝大会が行なわれ、予選を勝ち残った4つのクランがぶつかった。30日にはこの準決勝で勝った2チームがぶつかることとなる。
優勝したチームは、賞金100万円と共に、中国・上海で行なわれる「ZOWIE eXTREMESLAND CS:GO ASIA 2018」、台湾・高雄開催の「第10回 eスポーツワールドチャンピオンシップ」に日本代表チームとして出場できる。今回の予選に残った他の3チームも「ZOWIE eXTREMESLAND CS:GO ASIA 2018」の観戦がプレゼントされる。世界大会をその目で見て、今後の経験にしてもらおうというのが運営側の想いだ。
「CS:GO」は非常にシビアで、ハードな対戦FPSである。爆弾を仕掛けるテロリストとカウンターテロリスト、テロリストはAかB、2つのポイントのどちらかに爆弾を仕掛け、一定時間経過すれば勝利。カウンターストライク側は、テロリストの殲滅、もしくは爆弾を解除することで勝利となる。マップでは有利不利がはっきりしていることも多く、、有利な側でどれだけ勝ち星を稼ぐかが鍵となる。
予選は8月25日から4つのグループで行なわれた。勝ち抜いたのはIgnis、Reign In Gaming、SCARZ Absolute、TeamDWFN。この中でもSCARZは昨年の覇者で、世界大会でも善戦した。現在の日本のトップと言えるチームである。しかしメンバーの1人が変わり、その連携を不安視する声も聞かれる。実際予選では1回目では勝ち残れなかった。ファンが多いだけに「どこまで彼らが強いか?」というところが注目ポイントである。
このイベントは、運営側の構成もとても見事だったと思う。イベント進行にOooda氏、司会に岸大河氏、解説にnoppo氏、XrayN氏。実況にabara氏と、SaSRaI氏という非常にリッチなスタッフを起用。彼らは知識が深く専門的であり、選手として活躍しているため、先取の信条、彼らの思惑にも詳しい。そしてイベント慣れしており、非常にわかりやすくイベントを進行させた。
試合ではまず岸氏を司会に解説者の2人が参加チームの特徴や、マップの特徴を説明する。マップの選択からみるチームの戦略や、彼らの思惑も語ってくれるため、前知識がなくても観戦のポイントがわかる。
そして実況の2人が各試合の流れをしっかり紹介する。試合は速いペースで展開していくが、チームの動きは複雑である。各メンバーの移動だけでなく、選手の個人技や、待ち、攻めの戦略などが刻々と変わる。実況はその状況をきちんと来場者に紹介してくれた。そして再び解説者が試合を振り返り、チームの動きや、流れの変わった瞬間、「このときもしこうなっていたら?」といった流れも語り、ゲームに詳しくない人にもわかりやすい、非常に凝った、見応えのあるイベントとなっていた。
会場の盛り上がりも良かった。会場は事前に募集した100人の来場者が観戦していた。来場者は20歳前後の若い人たちが多く、ノリが良かった。何より選手達の優れたプレイが観客に歓声を上げた。観戦者の多くは選手を熱心に応援しており、選手達のスーパープレイには大きな盛り上がりを見せた。
今回の戦いは、予選を勝ち抜いた4チームのトーナメント戦になる。第1回戦はSCARZvsReign。3つのマップを選び、2本先取で戦う。1つの戦いが30ラウンドで、15ラウンドで攻守交代、16ラウンド先取したチームの勝ちだ。
「CS:GO」では各ラウンドの“資金”が大きな駆け引きの要素となる。ラウンドで稼いだお金を次のラウンドでの武器購入に充てるのだ。スタンダードに戦えるアサルトライフル、強力なスナイパーライフル、煙幕、フラグ、フラッシュバンなどのグレネードをいかに確保するか。時にはハンドガンのみで戦い、時にはチームのために武器を購入し、武器を落として回すことも行なっていく。敵をできるだけ倒して次のラウンドの資金を減らすなどの作戦もある。どこにピークを持って行き、どこのラウンドで資金を節約するかも重要な駆け引きだ。
何より、“どう動きどう守るか”が最も大きな課題となる。戦いは5対5で行なわれる。チームの人員配置、連携は本当に見入ってしまう。カウンターテロリスト側はAとBの爆弾設置地点に人員を配置し守り、テロリスト側はいかに相手の裏をかき相手を誘導し、片方の拠点を空けさせるかを試みる。守る側は最低2人、先行するプレーヤーを巧みにバックアップしテロリストを寄せ付けない。攻める側もおとりを出したり、多人数でラッシュをかけたりタイミングを合わせて挟み撃ちを狙う。
わざと足音をさせたり、スモークグレネードを投げて突入するフリをしたり読み合いが非常に濃い。日本最高のチームの駆け引きはここまで複雑なのかと、改めて驚かされた。そしてそれをきちんと解説してくれるのがうれしい。観戦を重ねることでどんどん彼らが何をやっているかがわかってきて、より楽しくなるのだ。
準決勝第1試合はSCARZ Absolute対Reign In Gamingこの2つのチームはどちらもプロゲーマーチームだ。第2試合のIgnis対TeamDWFNはどちらもアマチュアチームであり、奇しくもプロとアマチュアが分かれて戦うこととなった。SCARZは「CS:GO」において“絶対王者”といわれる存在であるが、メンバーが替わったことでリーダーが「完成度は10%」と発言するなど、チームの完成度を不安視する雰囲気がある。しかし勝つ自信は強い、そのSCARZといかに渡り合うかがReignのテーマになる。
1戦目のマップは「NUKE」。はっきりとカウンターテロリスト側が強いマップで、SCARZがポイントを重ねていく。外周での駆け引きから、建物内部の駆け引きへ移るのだが、外周での投擲武器の駆け引きが非常に巧みだ。Reignは不利なマップでもポイントを稼がねばならないのだが、9ラウンド目で8対0となっていた。しかしここから流れが変わる。不利なテロリスト側で2ラウンド連取、流れをつかみかける。だが、ここで再び止められてしまうのだ。
戦いの駆け引きは非常に複雑だ。少人数で陽動をかけ本体が突入するか、それとも多人数で一気に突破を試みるか、Aに行くか、Bに行くか、どこで相手が待ち構えているか、どのタイミングでラッシュをかけるか……お互いが様々な方法を試す。前ラウンドと同じで行くか、変えるか、チームが読み違えば、それが重なればあっという間にラウンドを連取されてしまいかねない。
後で解説者達が「うまくいきすぎてしまった」という流れがあった。Reignが再三のスモークグレネードでSCARZを上手く欺き、5人生存した状態で内部に侵入し、爆弾を仕掛けることができたのだ。しかしここから気の緩みが出たか、SCARZが巧みなのか、包囲され殲滅されてしまった。攻守が交代しても設置場所の守りにSCARZの強さが出た。結局流れを向こうに渡さず、16対5でSCARZが1本目をとった。
2本目のマップは「MIRAGE」。攻守のバランスよりも「いかに中央を確保するか」が求められるマップだという。ここでは中盤、11対3でSCARZがリードしているところからReignに流れが来た。Reignの作戦が当たり、SCARZが押され始める中で攻守が交代し、Reignがポイントを重ねていった。
SCARZは16ラウンドとれれば勝ちである。しかしラウンドを連取されみるみる追い上げてくる。12対9まで肉薄されてしまった。しかし、ここで筆者にはあえてSCARZが力を緩めたように感じた。資金を貯めるためのラウンドというところもあったとは思うが、きりきりとした緊張感のある読み合うプレイから、少しだけあえて敵に攻めさせる方法にシフトしたように見えた。
そして再びSCARZが流れを手にし始める。12対10から、続けてポイントを取り、そのまま16対10で勝利、2本取ったSCARZは、決勝へ駒を進めた。Reignは流れをはっきり変える猛追を見せたが、それを飲み込み、流れを引き戻してSCARZが勝利した。
準決勝第2試合Ignis対TeamDWFNも注目のカードだ。Ignisはアマチュアチームとは言っても「あえてプロに行かないのではないか」といわれるファンの間では名の知れた強豪チームで、「優勝候補」として名高い。SCARZと日本一も争ったチームである。
対するDWFNは“ダークホース”と解説者から言われるチームだ。メンバー全員が20歳以下と準決勝出場チームでは最も若い。「当初は誰もここまでとは予想していなかった」という戦いを勝ち抜き、王者達と戦う場所までたどり着いた。
おしてもう1つ解説者達の身を乗り出させたのが2つめのマップである。DWFNが対戦マップと指定したのは「OVERPASS」。これまでの“常識”だと対戦マップとしては出ないマップで、必然的に練習量が他の有力マップに比べると低い。DWFNはそれを逆手に取ったのは明らかだ。このマップでいかに彼らが戦うかが注目だろう。
1戦目のマップ「INFERNO」では、Ignisの連携の強さ、そして選手達の個人技が光った。敵を最も多く倒したのはneth選手。8ラウンド目で15キル1アシスト2デスと実況者が「見たことない」というほどの好スコアをたたき出した。敵の集団を的確に捉え、優れたエイムでなぎ倒すのだ。もちろんアシストは受けているものの、その戦いぶりは目を見張るものがある。
特にこのマップではIgnisの守りの強さが見られたと思う。2人の少人数で、全くDWFNを寄せ付けないのだ。もちろん「INFERNO」が守りやすいマップとは言っても、それでもやはり鉄壁と言える守りの堅さだった。一方でDWFNはほんのちょっとだが攻めのスピードが遅く感じた。チームの戦略だと思うが、敵がまとまりきる前に裏を取っても、そこから一呼吸戦力を整えてから行動に出るため、Ignisの迎撃が間に合ってしまうのだ。
観戦している我々は実況画面を見ているので、両メンバーがどう動き、壁越しにどう動いているか見える。だからこそ相手が見えないはずの選手達が、どれだけ相手の位置を予想し、ベストな位置で待ち構え、一瞬の隙を見逃さず打ち倒すのがわかる。選手達の凄さがはっきりわかる。そういう意味で、ほんのちょっとだが確実にIgnisが上回っていると感じた。Ignisは16対5で第1戦を制した。
第2戦は注目の「OVERPASS」である。DWFNがあえてここを指定した、「超ベテランへの対策」はいかに効果を発揮するか、そこに期待がかかった。しかしカウンターテロリストが有利のマップで、DWFNはテロリスト側でのスタートとなった。4ラウンド目はとるものの「さすがIgnis」といえる対応力で、DWFNを寄せ付けない。
Ignisは囲むように少人数で広く浅く守る形を取り、DWFNをまとめるように動く。そして個人技で数が少なくても競り勝つ場面も多く、DWFNを封じていく。1戦目でも見られたがDWFNは組み体操のように仲間の上に乗り、3段になって、高い視点からIgnisを狙う奇策を狙うが、囲むように動くIgnisに敵を発見する前に崩されてしまっていた。奇策を許さない堅実な強さが印象に残った。
攻守は交代するも差は大きく開き、16対2で2戦目もIgnisが取った。実況のSaSRaI氏氏は、敗れたDWFNとReignに対し、「彼らに共通するのは海外との対戦だと思う、世界戦の観戦が経験に繋がってくれれば」と語っていた。XrayN氏は、「CS:GO」はPingが高い場合でもプレイできる。海外のプロとも戦えるようになって、以前とは状況が全く違う、と語っていた。
“世界”という言葉が以前より身近になり、そしてまさに世界戦の切符をかけてIgnisとSCARZが戦う。台風も近づいており、まさに「嵐を呼ぶ戦い」が始まろうとしている。こちらもきちんとレポートしていきたい。