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【夏の実験企画】“「どんじゃんけん」にルールを足すとMOBAになる説”を検証!
「MOBAって結局どこが面白いの?」を“外遊びMOBA”から考える
2018年8月24日 12:00
「好きなゲームジャンルは?」と聞かれて、読者の方はなんと答えるだろうか。RPG、FPS、格闘、アクション、シミュレーション……人によって様々な答えがあるだろう。ここで、もし「MOBA」と真っ先に思いついた方。あなたは時代の最先端を行っている!
なぜならMOBAは今、最も五輪競技に近いゲームジャンルだからだ。たとえばMOBAを代表する「League of Legends」(LoL)。プレーヤー数は1億人に迫るというゲームタイトルとしても断トツの規模を誇り、アジア版五輪大会と呼ばれる「アジア競技大会」では今年、つまり2018年の公式公開競技の1つとして採用されている。2018年のアジア競技大会は今まさに開催中であり、「LoL」の決勝大会は8月27日から29日まで開催予定だ。今はまだデモンストレーション段階ではあるが、五輪種目化に向けて着実に動き出している。
こうして世界的に盛り上がりを見せているMOBAの面白さを、どうにかしてもっと広めたい……。しかし、MOBAはルールが複雑で、説明するにも一苦労だ。
そこで筆者は考えた。MOBAを説明するには、まずMOBAそのものの面白さを考えておく必要があるのではと。そして説明が誰にでもわかるように、もっと別の形に置き換えてみたらどうだろうと。そうして思いついたのが、「『どんじゃんけん』にルールを足すとMOBAになる説」だ。
早速この仮説を実証すべく、炎天下のなか大人4人を集めて公園で遊んできたので、「どんじゃんけん」にルールを足していってわかったMOBAの面白さをお伝えしたい。
「どんじゃんけん」を通してMOBAの面白さを再確認したい
「どんじゃんけん」は、一本道の端と端にチームが並ぶ外遊び。各チームの先頭から1人ずつ走っていって、出会ったところで相手と手を合わせ、「どーん、じゃんけんぽん」とじゃんけんをする。勝ったらそのまま走り、負けたら自陣に戻って後ろに並ぶ。負けたチームは次の先頭が出てきて、じゃんけんを繰り返して先に相手陣地にたどり着いたチームの勝ち、というものだ。
「どんじゃんけん」という名前を知らなくても、この遊びは多くの人が知っているのではないだろうか。2チームの対戦ゲームで、ぶつかり合う瞬間があって、相手の陣地にたどり着いたら勝ち。MOBAの主流ルールは、ざっくり言うと「2チームによる対戦アクションゲームで、敵と戦いながら、相手の陣地にあるオブジェクトを破壊したら勝ち」なので、ゲームの根幹は実は非常に似ている。
一見、ゲームとしてはかけ離れている「どんじゃんけん」に少しずつルールを足していったら、ある時点でMOBAになるのではないか。もしMOBAっぽくなるポイントがあるとしたら、そこがMOBAならではの魅力なのではないか。「どんじゃんけん」を補助線としてMOBAの魅力を改めて確かめようというのが、今回の企画である。
まずは普通に「どんじゃんけん」をやってみる
というわけでさっそく外に出て検証スタート。今回は撮影に集まれた人数が4人だっため、2対2という最小限のチーム戦で検証している。
まずは地面に一本線を引いて、シンプルに「どんじゃんけん」をやってみた。勝ったら進む、負けたら拠点に戻る。それだけ。MOBAらしくするための特殊ルールとして、移動は歩きとすること(拠点に戻るときは走れる)、それに拠点付近に置いた相手チームのフラッグを取ったら勝ち、とした(画像「ルール1」参照)。
やってみると、当然のことながらじゃんけんの強さがものを言う。戦術みたいなものを考える余地はなく、ただぶつかってじゃんけんを繰り返し、運の良かった方が勝つ。シンプルでわかりやすいが、まだまだMOBAのプレイ感とは違う。さっそく次のステップだ。
「どんじゃんけん」にマップ要素を入れてみる
ここからは、“MOBAにあって「どんじゃんけん」にないもの”を1つずつ足していった。まずは「マップ要素」(画像「ルール2」参照)。中央に円の道を作って、ルートを増やした形だ。マップ以外はルール1に加えて、出撃のタイミングは自由、前後は自由に歩ける、いつでも拠点に戻れる(いわゆるリコール)、とした。
ただ一本道のマップを変えただけだが、こうするとちょっとだけ戦略性が出てくる。ポイントは2人目の動きだ。お互いの1人目が同時に出撃、マップ中央でぶつかるとして、味方がじゃんけんで負けた場合にどうするか。もし2人目がもう一方のルートに出撃していると、裏を取られる形で一気に防御が手薄になる。なので2人目は安易に出撃せず、1人目の対戦結果を見てから動く必要がある。負けたら同じ相手にぶつかっていく必要があるし、勝ったら2人で攻め上がって相手にプレッシャーをかけるのも良い。
その後は勝ったり負けたり、様々なパターンが考えられる。試合前には「この場合はこう攻めて、こうなったときは一旦待とう」など、味方との話し合いが自然に発生して、ただの「どんじゃんけん」から1歩踏み込んだような感じがした。じゃんけんに負け続ければすぐに負けてしまう点は変わらないが、味方の配置と移動をしっかりケアすることで防御は最大になり、あるいは敵の隙を突く展開にもできる。ちょっとだけ、ゲームらしさが出てきたのではないだろうか。
さらに「タワー」を置いてみる
MOBAのマップには、タレットやタワーなどと呼ばれるチェックポイント的なオブジェクトが置いてあることが多い。いきなり倒すことは困難だが、倒せば相手陣地により近づける攻略の要だ。そのときにどちらが優勢なのか、試合のバロメーター的な役割もあるオブジェクトだ。
この「タワー」(旗)を、ルール2のマップに置いた(画像「ルール3」参照)。相手のタワーまで攻め込んだら、その旗を一度拠点へと持ち帰る必要がある(これで「タワーは破壊された」と考える)というルールだ。
ここまで来ると、マップの見た目にMOBAらしさが出てきた。「防御壁が1枚ある」という頼もしさは戦略にも影響があって、「今はまだタワーがあるから、あえてタワーを捨ててここは攻める」という判断が可能になったり、ある程度はじゃんけんに連敗しても耐えられるため、序盤の不利から有利に転じる確率も高くなった。さらにプレイ時間が伸びたことで、ルール2で学んだ押し引きをより長く、より連続的に判断する必要も出てきた。
そしてルール1と比べて圧倒的に変わったのは、勝敗が決したときの悔しさと嬉しさだ。試合が長引くほどピンチとチャンスが繰り返されることになるので、自然とプレーヤーは白熱してくる。お互いのタワーがなくなれば「試合が終盤」という合図にもなるし、序盤とはじゃんけん勝負の重みが違ってきて、もし大事な場面でじゃんけんに勝てれば思わず「よし!」といった声も出る。そうしてついに押し切ったとき、「勝ったー!」と歓声を上げている。これはかなりの転換点かもしれない。
思い切って「レベル」の概念も導入してみる
検証が盛り上がってきたところで、さらにルールを加えたい。MOBAが特殊なのは、「レベル」の概念があることではないだろうか。そこでルール3に「レベル」を加えることにした。外遊び+レベルという組み合わせはなかなか見ないので、やってみる側としても未知の領域だ。
今回考えたのは、「勝ったあとに拠点に戻るとレベルが上がる」、「相手よりもレベルが上なら、じゃんけんはあいこも勝ちになる」というものだ(画像「ルール4」参照)。全員レベル0からスタートして、最大レベルは5。自己申告にはなるがレベルは左手の指で常に示すようにして、誰がいくつのレベルかひと目でわかるようにした。
なぜ拠点に戻ったときにレベルを上げるようにしたかというと、実際のMOBAでは「ホームに戻ってアイテムを買う」というような成長要素があるため。またじゃんけんに勝ったあと、レベルを上げずにそのまま攻めるか、一旦戻ってレベルを上げるかの選択肢を生む狙いもある。
このルール追加でゲームはどうなかったか。簡単に言うと、一気に複雑になり、その分奥深さがぐんと増した。よりわかりやすくお伝えするため、ここでゲームの序盤をシミュレートしてみたい。
まずゲームが始まり、最初にぶつかるレベル0同士のじゃんけんで勝ったとする。すぐに拠点に戻り、レベル1になってから再出発。そうするとだいたいレベルが上のまま敵と当たるので、ここで勝つ可能性は非常に高い。勝ったら相手は不利なままなので、そのまま攻め上がってタワーを狙うのも良いし、拠点に戻ってレベル2のプレッシャーをかけるのも面白い。ではレベル2になってじっくり……などと余裕をかましていると、いつの間にか味方が連敗していて、相手のレベルが上がり、結局は同レベルの普通のじゃんけんになったりする……。
ここまで来ると、「もはや『どんじゃんけん』とは別物」という実感が出てきた。それなりのプレイ時間があるだけでなく、戦況の有利不利が目まぐるしく変わっていくので、ルール3に比べて情報量がドカンと増えた感じがある。レベルの概念がゲームの雰囲気までをもガラッと変えて、参加したメンバーからも「さっきまでは誰でもできるゲームだったけど、こうなるとゲーマー向けのゲームだね」という話が出たほどだ。
とにかく変化が激しいので、「うわ、もうあそこにレベル3がいる!」、「レベル5だから先に攻めて!」など、半分悲鳴のような声のかけ合いがゲーム中に生まれてくる。なんだか味方同士でボイスチャットをしているような……。あ、これMOBAっぽい!
それに手前味噌ながら、不利でも逆転の芽がないわけでもないのが良い。レベルが低いとじゃんけんは確かに不利だが、要は負けとあいこを除いた3分の1の「勝ち」で勝てば良い。粘って勝つことで相手に追いつき、逆転勝利を収めた日には、爽快感もひとしおだ。んん? 逆転劇の爽快感……これもMOBAに近い気がする! 確信を得て参加したGAME Watchの担当編集に聞いてみると、「これはMOBAだ」と言っている。どうやら「『どんじゃんけん』にルールを足すとMOBAになる説」、立証成功のようだ。
「外遊びMOBA」から見えてくる、MOBAならではの面白さ
マップの変化によって戦略が生まれ、ここに成長要素を入れることで「どんじゃんけん」はかなりMOBAに近づいた。やってみて感じたのは、MOBAの面白さは「目まぐるしく変わる戦況を把握し、チームを有利にする行動を少しずつ積み上げて、なんとか勝利をもぎ取ったときの爽快感」にあるのではないかということだ。
今回は2人1チームという最小モデルでの検証だったが、チーム人数を増やしたり、マップを広げたりすれば、ゲームは奥深さを増して、勝利の快感も増すことが容易に想像できる。MOBAタイトルを実際にプレイするとなるとセオリーが大事だったり、専門用語が飛び交っていたり、「とっつきにくいな」と思ってしまう一面も少なからずあるのだが、「MOBAならではの爽快感を得るための第1歩」だと思えば、ハードルは少し下がるのではないだろうか。キャラクターの特性を知ることも、専門用語を知ることも、“勝利のための積み上げ”の1つなのだと思う。
ところでこの「どんじゃんけん」から派生させた「外遊びMOBA」、実際のところ結構面白い。MOBAファンはもとより、初めてでもMOBAならではの楽しさを理解するのに役立つこと請け合いなので、ご興味があったらぜひ人数を集めてプレイしていただきたい。
また「じゃあ実際のゲームはどんな感じなの?」と興味の出てきた方がいたら、最初に紹介した「LoL」の公式サイトをご覧いただきたい。「1分でわかる!」と題された紹介ムービーが見られるほか、ルールの細かい部分まで網羅された解説ページもある。そこで面白そうと感じていただけたら、さっそくインストールしてプレイしても良いだろう。
そうしてMOBAファンやMOBAプレーヤーが増えるのなら、まさに本企画の狙い通りである。