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【特別企画】東京湾のボートの上からドローンで空撮! ライオンズファシリティ「船上ドローン撮影イベント」レポート

6月25日収録

 空撮用ドローンは、空を飛び、空からの撮影が楽しめる。複雑な操作やラジコン技術が必要なく「空の散歩」気分を味わえるドローンは“夢の機械”であるといえる。しかし、「どうも法律で禁止されているらしい」、「危ないらしい」というイメージで忌避している人も多いのではないだろうか? ドローンの楽しさはもっと盛り上がって欲しいと、筆者は思っている。

 そんな中、ライオンズフィルムが運営するドローンの練習施設・ライオンズファシリティが、希望者を募って「船上ドローン撮影イベント」を開催した。この体験会はライオンズフィルムが所有するボートで東京湾に出て、洋上からドローン飛行を体験できる。

 ボートから、業務用にも使用できる高額ドローンを飛ばす、それはかなりリッチな雰囲気のあるイベントであり、体験できるユーザーは限定されるが、それでも「ドローンのこれからの楽しみ方」を模索し、楽しさを提示できるユニークな取り組みだと思う。

 今回、筆者はこのイベントに同行し、取材を行なった。ドローンはどう楽しめるか、どのような可能性があるか、そしてその可能性を提示するために、ライオンズファシリティはどのような取り組みを行なったか、レポートしたい。

ボートから飛び立つドローンでの撮影。高性能ドローンの特性を満喫できるイベント

 現在、ドローンを楽しむには様々な規制が問題となっている。実際には許可なども必要がない場合でも「何か法律に違反してしまうのではないか」という心配がある。かつて「ノエル」というYouTuberの少年が、長野・善光寺でドローンを飛ばし騒ぎを起こし、その後も騒ぎを起こしたあげく逮捕され、それがマスコミにセンセーショナルに取り上げられドローン自体が悪役のように扱われたこともある。ドローンを飛ばしているだけで、何の知識もない人に非難されそうな現状もあり、こういった状況がドローンの活用や普及にブレーキを掛けている。

 実際のドローンは明確に禁止されている飛行禁止地域や、許可を得ていない私有地などを避ければ飛ばせるし、人や建物との距離を考えることできちんと楽しめる。とはいえ、やはり東京都内はほとんどドローンを飛ばせられるところがない。ライオンズファシリティは自社の建物内で飛行練習が可能であり、講習も積極的に行ない、ドローンを使う人のバックアップや、交流の場所を提供している。

 東京都墨田区にあるライオンズファシリティは、都内にある屋内練習場を備えたドローンの専門店 & 練習場だ。30分650円(土日は750円)でドローンの練習場を使用できるほか、貸出ドローンでの練習もできる。飛行申請に必要な講習や、様々な勉強会を受講できるだけでなく、軽食やお酒なども販売し、「ドローンユーザーの交流の場」として、ドローンの普及に貢献している。

ライオンズファシリティでは屋内でドローンを飛ばし、練習ができる

 今回の「船上ドローン撮影イベント」は、日頃ライオンズファシリティを利用している“お得意様”向けに会社側が提案したイベントとして参加者を募った。“飛行申請許可済み”のユーザーが対象という事が、ハードルの高い条件だったが、今回その提案に応えたのが2人の方だ。今回は許可を得て、彼らのドローンを使った撮影風景と、ドローンの映像の一部を紹介していきたい。

イベントに参加した近江昇氏(左)と、辻本武司氏
今回撮影に使用した、ライオンズフィルムのボート

 ボートで東京湾へ出発し、東京ゲートブリッジ周辺海域でドローンの空撮を行なった。東京湾は大型の船舶から漁に出る漁船、観光用の船、そしてマリンスポーツを楽しむジェットスキーまで様々な船が行き交う場所だ。この海域で撮影を行なうには、様々な所への許可を得ることが必要となる。

 今回に関してはドローンを飛ばした2人は地方航空局からの許可証に記入して提出して貰っただけでなく、主催者のライオンズファシリティは、羽田空港、海上保安部、葛西臨海公園沖でヨットスクールをやっている、若洲海浜公園ヨットスクールなど、10数カ所に連絡をとって実現したという。個人で許可を受けるにはかなりハードルが高い。この許可をサポートしてくれるのは大きな強みだろう。

 ドローンを東京湾上で飛ばす、このワクワクする取り組みを“会社として”きちんと考え、許可を取る姿勢こそがライオンズフィルムの強みであると思う。ドローンを飛ばす“遊び”は許可を取らず行なわれることも多い。そういったときもし事故が起きてしまってはドローンに対する世間の風当たりは強くなる。ライオンズファシリティはこういったイベントで様々な部門に許可を取るノウハウを蓄積している。この姿勢は利用者に大きな安心と信頼をもたらすだろう。

 撮影に使ったボートはライオンズフィルム所有のボートで、所有するボートをこのようにビジネスに活かしている。今後はさらにボートとドローンを活用した業務も考えているとのことだ。

 ドローン撮影には天気だけでなく風も重要となる。幸いこの日は風もあまり吹かず、絶好の撮影日和となった筆者はこういったボートで東京湾に乗り出したのは初めてだ。フェリーや観光船などで東京湾がいかに過密な場所かは知っていたが、ボートの視点ではまた異なる。ボートは速度を出して波を切るとかなり揺れて、風もものすごい。しかしその疾走感は非常に楽しく、東京湾の眺めも良くて、爽快な気分を味わえた。

今回許可を取った海域
スタッフが手に持った状態からの離陸

 そしていよいよドローンの空撮である。船上はかなり揺れるため「ハンドキャッチ」という方法で離着陸を行なう。スタッフがドローンを手に持ち、操縦者は離陸操作を行ない、上昇力を充分確認した上でスタッフが手を離すことで離陸するのだ。今回使用した機種はすべてライオンズファシリティが販売しているDJI社製のものだが、高度なセンサー類による安定飛行を実現している。しかし洋上の船の上でスタッフが手に持ったところからの飛行の場合、離陸時はセンサーからの警告もあり、経験がない場合はかなり不安になるところもあったと思う。

 しかも今回使用したドローンはどれもが高額機種なのだ。「Mavic Pro」も10万円以上、「PHANTOM 4 PRO V2.0」は23万円以上、空撮のプロ向けである「Inspire 2」にいたっては搭載カメラも含めると46万円を超える。これだけの高級機種を海中に落ちてしまう可能性のある飛行を行なうというのは、かなり勇気のある行動とも言えるだろう。しかし離陸時に警告を発していたセンサー類もいざ飛び出すと見事に安定し、空中で静止しているかのようにスムーズに飛行し、ボートを追いかけた。

【空撮を行なったドローン】
手軽に空撮が楽しめる「Mavic Pro」。ホビー用としては高額と言えるが、飛行はとても安定している
手軽に空撮が楽しめる「Mavic Pro」。ホビー用としては高額と言えるが、飛行はとても安定している
空撮機材としても人気を博し、業務用にも活用される「PHANTOM 4 PRO V2.0」飛行の安定性、4Kでの撮影能力を持っている
今回の最大の目玉と言える「Inspire 2」。飛行時には“変形”するところがグッとくる。飛行速度は最大で時速90kmに達するということで、ボートを楽々追い越す機動を見せた

 筆者もホビー用ドローンを持っているが、DJIの製品の飛行を見ると大きく印象が変わった。安定度が段違いなのだ。今回の飛行の中では低価格帯である「Mavic Pro」でも、風によって機体が揺れることはあっても、高度は下がらない。「Inspire 2」は走るボートを楽々追い抜く加速力で、その性能の高さは憧れを強く感じるものだった。現在のドローン市場でDJIはトップの位置にいるが、それを納得させる飛行性能だった。

 洋上でただドローンを飛ばすだけでなく、走っているボートを追うという“目標”を持った撮影を今回は行なった。ボートの周りを回ったり、追い抜いたりと様々なアングルを試していた。今回は映像を提供していただいたので、撮影画像もぜひ見て欲しい。配信用に画質を落としているが、オリジナルの映像はもっと鮮明である。

 洋上からドローンを操作する、というのは格別な体験だと思う。障害物がない広い海の上で、海を進む船を目標に機体とカメラを操作する。何より撮影のためにわざわざ船が用意されているという「特別感」はたまらないものがある。高級ドローンを持っているならば、その性能をフルに活かしてみたい。今回の撮影イベントはその「ドローンの特別感」を満喫できるイベントだったと思う。

 今回、改めて実感できたのは高級ドローンの安定性と、信頼性である。洋上でのドローン撮影会というと、イメージとして「お祭り感覚」があるが、DJIのドローンはそういう利用状況としてちょっと無茶な環境でもしっかりとポテンシャルを発揮する。

 映画などの映像作品の撮影にも使えそうで、ドローンのさらなる活用を感じることができた。ホビー用ドローンの「飛ばせて楽しい」というところから1歩踏み込んだ、「ドローンを活かした撮影方法の提示」としても、今回のイベントは有意義だと思う。「ドローンはまだまだ様々な用途で活用できる」というのは、今回のイベントのテーマの1つだと感じた。

【「船上ドローン撮影イベント」、PHANTOM 4 PRO V2.0】

【「船上ドローン撮影イベント」、Inspire 2】

【ライオンズファシリティ、「船上ドローン撮影イベント」】
こちらは筆者のカメラで撮影した、離陸の光景

 スタッフによれば「練習を積めばもっと撮影がうまくなる」とのこと。船と一緒に周りの風景もきちんと収めてみたり、高度やアングルを調整してみたり、様々なことをしてみたくなるのではないか。ライオンズファシリティは大きなモニター(190インチモニター)で映像を映し出し、お酒や軽食を食べながら雑談ができるスペースもある。ドローン仲間で集まり、色々なことを話し、これからドローンを使って何がしたいか、次の空撮ではどういったことができるか、そういう話をするととても盛り上がるのではないだろうか。

 今回のイベントは常連客向けプログラムであり、ある意味“サービス”部分が大きいと言える。正直、スタッフのサポートを考えると5人以上のユーザーには対応できる規模ではないと思うし、こういったイベントをビジネスとして定期的に提供するのはかなり大変だろう。

 しかし、こういった活動をメディアを通じてアピールすることでライオンズファシリティが「より柔軟なドローン活用のためのノウハウ」を持っていること、ドローン撮影の楽しさと、そこから広がっていくドローンの活用、さらにビジネスの可能性まで、情報を受け取ったユーザーが受け止め、そしてさらなるドローンの活用、空撮の未来を感じ取り、業界全体がより新しい方向性を見出すための起爆剤の1つになってくれれば良いと感じた。とても楽しいイベントで、体験しているときはその面白さに夢中になってしまったが、改めて振り返り、この取り組みの意義を感じた。ドローンはまだまだ可能性を秘めているのだ。

 「屋内でドローン飛行が楽しめる」という施設は都内では少ないし、ユーザー同士が楽しく交流し、情報を交換できる場所をライオンズファシリティは提供している。そして今回のようなユニークなイベントを法律関係も含めしっかりと提示しているのはユーザーとしてとても心強いと感じた。新しい可能性を模索し、ユーザーと共に考えていくライオンズファシリティの活動は、応援したいところだ。

 ライオンズファシリティは初心者向けの講習や、ドローンの認定書や各種許可のアドバイス、商品の相談なども行ない、本格的にドローンを運用しようというユーザーへサポートを行なっている。興味を持った方は施設を訪れ、交流してみてはいかがだろうか。

【東京湾の風景】
撮影の合間に、東京湾での観光も。離着陸を行なう飛行機が間近に見えるスポットも案内してくれた