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【特別企画】正直何度か死にそうになった世界有数のワイルドな軍事博物館「スターリンライン」体験レポート
2017年7月12日 07:00
広大な敷地にトーチカから戦車、対空砲、ミサイルまであらゆる軍事兵器がズラリ!
ここからは、ミュージアムとしてのスターリンラインを紹介していきたい。
スターリンラインは、良好な保存状態で残されている塹壕と要塞と史蹟としてそのまま活かし、その周囲をテーマパークとして拡張整備し、戦車、戦闘機、迫撃砲、ロケット砲といった旧ソ連時代の兵器を配置して、兵器と触れ合う機会を提供したり、有料となるが戦車に乗ったり、銃や対戦車砲を撃つことができるという体感型のミュージアムだ。位置的にはミンスク中心部から車で30分ほどの位置にあり、使い勝手の良い公共交通機関はないため、タクシーかUBERを利用するのがオススメだ。
入場料は1人10ベラルーシルーブル(約580円)で格安だ。先述したように銃火器の射撃体験や戦車体験搭乗は有料だが、先述したトーチカや塹壕への立ち入りはすべて入場料に含まれており、さらに広大な敷地内に目一杯配置された、戦車をはじめとした戦闘車両やミサイル兵器を見たり触ったりするだけでもかなりのボリュームで、後述するように射撃体験は自ら撃たなくても周りから見ているだけで楽しめるため、お金をかけなくてもかなり満足できるはずだ。
さて、まずはメインコンテンツであるスターリンラインから紹介していこう。スターリンラインは、第二次世界大戦当時の状態のまま保存されたトーチカと塹壕、砲台などで構成されており、実際にトーチカや塹壕の中に入ることができる。内部には機関銃や対戦車砲、指揮官用の伝声管や望遠鏡などがそのまま残されており、実際に手に取ったり座ったりして体験することができる。
トーチカは会場内に複数存在するが例外なく狭く、3~5人も入ればぎゅうぎゅう詰めになる。担当者の説明によれば実際に戦闘が開始されたら、入口の100mm以上の厚さのある鋼鉄の扉を閉め、補給もない状態で何日も、場合によっては何カ月も籠もって戦ったという。
塹壕は遺構をベースに木組みから復元されたもので、アスレチック感覚で体験することができる。一般的に塹壕というと人間の背丈より深いイメージがあったが、ここの塹壕は腰までの高さしかなく、腰をかがめて進入し、一定間隔で作られた出島のような空間でライフルを構えて敵を待ち構えたようだ。
そしてスターリンラインで最も広い敷地面積を占めているのが、走行展示用のエリアだ。車輌1両がやっと通れるほどのダートコースが複雑に入り組んでいて、市街戦をイメージしているのか、コースの周囲に破壊された家屋や擱座した戦車が配置されている。
その走行展示エリアの隣にある、やや見晴らしの良い高台には、数百名が観戦できるスタンドが設けられている。訪れた日は、体験走行を行なう戦車が走る程度だったため、スタンドはほぼ無人だったが、戦勝記念日や独立記念日は、独ソに分かれ模擬戦のような走行展示イベントを行なうという。その走行展示車輌のレストアに資金協力しているのがWargamingで、ここスターリンラインでは、塗装も含めて完全にレストアされたT34-76とKB1を確認することができた。
今回のスターリンライン視察ツアーには、Wargamingでレストア等のゲーム外プロジェクトを担当するAlexander Bobko氏も参加し、話を伺うことができたが、同社が戦車のレストに力を入れる理由は、「World of Tanks」ファンに対して史実を学ぶ機会を提供したいということと、「World of Tanks」を知らない人に対してWargamingや「World of Tanks」を知ってもらう機会を提供するためだという。
スターリンラインでは、T34-76やKB1を稼働可能な状態までレストアすることで、戦車を通じた今までにない体験を提供したいということで、公式サイトでは、砲塔の修理から、車体の復元、消失した履帯はSU-152のものを流用するなどして、走行可能な状態までレストアされた経緯が写真と共に掲載されている。
スターリンラインでは、そのほかにもIS-3やSU-76、SU-100、SU-152、T-55など歴代の名車輌たちが走行可能な状態で保存されており、さすがは旧ソ連領のミュージアムだと唸らされる。対してドイツ車両はIII号戦車とIII号突撃砲ぐらいしか目ぼしい車両がなく、保有する車輌とバランスを考えてもパンターやティーガーあたりが欲しいところだが予算的に難しいのかもしれない。