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世界中の「Live2D」開発者が集結した「alive 2016」イベントレポート
2016年7月5日 12:00
東西のプロアマが勝ち残った14組が登壇。Live2D Creative Awards 2016の行方は!?
基調講演に続いて、プロアマを問わず、本年の優秀な「Live2D」作品を表彰するLive2D Creative Awards 2016が開催された。本Awardsの最終選考に残った14組の顔ぶれは実に多彩だ。国外からは、タイ、韓国、中国のクリエイターが勝ち残った。国内では、ゲームのみならず映像制作の分野で活躍するクリエイターの作品が目立ったほか、デザイナーではなくプログラマによる作品も見られた。また、先の基調講演に登壇したKLabの坂中大介氏もプライベート作品を寄せて、最終選考に順当に勝ちあがっていた。
14組の作品が、1作品ずつほんのさわりだけ上映され、応募者と審査員のコメントが次々と続いた後、本Awardsの入賞作品が発表された。今回のAwardsで新設された新人賞に輝いたのは、韓国から「Live2D 360 VR Inspiration」で応募したGHIRO氏だ。GHIRO氏の作品は、360度の全周囲映像で、書き割りの作画背景に、躍動的に描かれた「Live2D」キャラクターの日常の一コマを切り取ったシーンが次々と登場する。キャラクターの手から離れた所持品は3Dで作成されており、全編を通じてバレットタイム風に演出されている。そこに花びらなどのパーティクルエフェクトがあしらわれ幻想的な華を添える、といったもので、緻密に書き込まれたリアル調の画風もあいまって非常にクオリティが高い。360度映像としても、現実に制作可能な内容に綺麗にまとまっていると感じられた。
続いて発表されたアプリ賞は、Ganeesya氏の「生放送向けLive2Dソフト GadgetXLive2D」(以下、「GadgetXLive2D」)が獲得した。「GadgetXLive2D」は、各種動画投稿サイトで人気の生放送番組に「Live2D」で作成したキャラクターを登場させることができるツールだ。ツールの画面上に描画したキャラクターを生放送ソフトでキャプチャするように設定してキー合成でデスクトップ全体と合成すると、ネットの生放送番組に「Live2D」キャラクターを登場させることができるようになる。
「GadgetXLive2D」では、さらに「Live2D」のキャラクターのモーションソースとして、コントローラーやタブレット、キーボードといった入力デバイスからの入力を受け取って、キャラクターをアニメーションさせることができる。「FaceRig」がカメラからの入力に従って動作するのに対し、「GadgetXLive2D」はいわば「FaceRig」のその他入力デバイス版といったイメージだ。時間をかけてあらかじめ演技を仕込んでおくわけにはいかない生放送には、入力をソースにリアルタイムに自動的に作成し続けられるアニメーションはうってつけということなのだろう。生放送中にコメントの読み上げソフトを活用する配信者も多いことから、音や動きで放送にその場限りの変化を加える機能には、一定のニーズがあることがうかがえる。
優れた動画作品に贈られる動画賞は、「IDENTIFICATION!」の佐藤安氏が獲得した。「IDENTIFICATION!」は深夜時間帯によく放送されている5分アニメ番組のノリで、就職活動に精を出す女性の履歴書用証明写真と面接の顛末を描いた作品だ。就職活動期の学生を始め、転職やアルバイトの応募で面接に臨むのは誰しもが経験したことある人生の一幕だ。その際の証明写真という小道具と面接官という装置によるシチュエーションは「IDENTIFICATION!」とは異なるだろうが、本作品を見ると誰もが自身の体験を回想をせずにはいられないだろう。「IDENTIFICATION!」のオチはたいして面白くはないが、視聴者の回想を呼び起こし共感を得るというところが本作品のキモだと言えるだろう。
準グランプリとも言えるクリエイティブ賞は、チームで参加した「別世鏡」のHACKist_チームと「NURIEW -うごくぬり絵アプリ-」noshipu氏の2組が受賞した。受賞した「別世鏡」は専用の魔術書型デバイスの表紙を開く操作で画面内の状況が変化したり、プレーヤーの動作に応じて画面内の「Live2D」キャラクターが反応するといったフィーチャーが実装されている。動画を見る限り、開発者が狙った”リアルとバーチャルの境界を曖昧にするというコンセプトが確かに具現化されているように感じられた。ホラーテイストなのも、他の作品と差別化できているポイントだ。
もうひとつの受賞作品「NURIEW -うごくぬり絵アプリ-」は、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの小林氏が大絶賛したエデュティメントソフトで、スマートフォンの画面を指でこすって「Live2D」キャラクターに塗り絵をするのは確かに楽しそうだ。
ただ、背景はそのままのイメージで指を使って塗ることができるものの、主役のキャラクターには直接塗り絵することができない。代わりに、画面の左サイドに用意された、分割済みのキャラクターパーツに塗り絵することになるのだが、これが直感的とは言い難い。この操作でも塗り絵自体は十分に楽しいかもしれないが、通常の塗り絵から普通に連想されるものとは異なってしまっている。テクスチャに描かなければならないというのはアプリケーションの都合であって、ユーザーには関係ない。メインの「Live2D」キャラクターのアウトラインで囲まれた領域にタップすれば、その領域に対応するテクスチャ範囲を塗りつぶすという仕様でも良かったはずだ。非常に好感度の高いアプリだけに、この部分が残念だ。難易度が高いのかもしれないが、改良していただきたいポイントに思えた。
栄えあるグランプリ賞には、「9月1日」のurbanduskが輝いた。「9月1日」には、さらに「Live2D」作品の王道といった感がある。万人に受け入れられそうなデザインの2人の女の子のキャラクターが、夏の雨上がりと冬の雪景色の中を傘をさして登場する。2人の関係が作中で語られることはないが、表情の明るいふんわりとした少女が夏を象徴しており、表情が暗いセーラー服の少女が冬を象徴しているのだろう。その二人が交錯するのがタイトルの「9月1日」ということだと解釈することができた。爽やかなアニメのオープニングのような作風は非常に好感度が高く、清涼感のある映像作品に仕上がっていた。
alive2016では、Live2D Creative Awards 2016の最終選考の舞台ということもあって、かなりレベルの高い作品が見受けられた。こういったAwardsがあることで、「Live2D」の習得に挑戦する良い目標となるだろうし、優れた作品を見ることでインスパイアされ、また新たに優れた「Live2D」作品が登場することだろう。Live2Dには、是非このまま回を重ねて開催していただきたい。