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「Quake」から「Fallout」、「Skyrim」まで役者が揃ったBethesda E3 Showcase詳報

ついにあの「Fallout 4」がVRになるぞ!!

6月12日開催

会場:LA HANGAR

 昨年に続いてE3プレスカンファレンスを実施したBethesda Softworks。昨年はE3直前に発表された「Fallout 4」を筆頭に、「DOOM」に、「Dishonored 2」と、めくるめくAAAタイトルの発表に酔いしれたが、今年は、毎年噂されていた「Quake」シリーズの最新作「Quake Champions」が正式発表され、「PREY2」のキャンセルがまだ記憶に新しいなか、フルスクラッチでリバイバルする「PREY」のサプライズ発表、そしてようやく今年発売となる「Dishonored 2」の実機デモが行なわれたほかは、既存タイトルの水平展開、あるいはアップデートが目立った。

 と書くと、一見すると全体的に小粒だった印象を受けるかもしれないが、実際は逆だ。今回の発表は、創業以来、少数精鋭を旨としてきたBethesdaとしては考えられないほどに新規タイトル・コンテンツが充実しており、「PREY」やVR版「Fallout 4」、「DOOM」など予期しなかったサプライズも幾つか用意され、まさにBethesdaが全盛期を迎えているなという印象を受けた。本稿では、各タイトルの概要と、気になる日本展開について紹介していきたい。唯一実機デモが実施された「Dishonored 2」については別稿にて詳しくお伝えしたい。

 なお、日本のゲームファンにとっては注目の三上真司氏率いるBethesda傘下の国内スタジオTango Gameworksの新作は発表されなかった。ただ、最後のスタジオ紹介では三上氏をはじめスタッフ一同、元気な姿を見せており、人材も絶賛募集中ということで、新たなAAAタイトルを手がけているのは間違いなさそうだ。

【2016 Bethesda E3 Showcase (#BE3)】

ついに発表された「Quake Champions」! 「DOOM」はシェアウェア化!?

「Quake Champions」
プレゼンを行なったid SoftwareのTim Willits氏

 最初のサプライズは、ついにと言うべきかやっとと言うべきか、満を持して発表されたid Softwareの最新作「Quake Champions」だ。カンファレンスには今から20年前に誕生した「Quake」のクリエイターのひとりだったTim Willits氏が登壇し、「再び開発に携われることを誇りに思う」と語り始め、「Quake Champions」は、「Quake」シリーズが生み出したe-Sportsという概念を最初から意識し、対戦型のマルチプレイFPSとして開発を進めていることを明らかにした。

 驚きだったのは、マルチプラットフォーム展開が当たり前のこの時代に発売プラットフォームをPCに限定し、120Hz表示を前提としたハイエンドクオリティのe-Sports FPSに仕上げると宣言したことだ。これは内製のゲームエンジンid Techシリーズを持ち、コンソール向けにはすでに兄貴分の「DOOM」をリリースしているid Softwareならではのこだわりと言えるが、気になる発売時期については現時点では明らかにされず、続報については、8月のQuakeconで発表するとしている。時期未定ながら、もちろん日本でも発売予定で、「DOOM」に続く注目のFPSといえるだろう。

 その「DOOM」だが、こちらもシングル・マルチ・MODをバランス良く取りそろえたFPSとしてまだまだ続いていく。今回は新たに3つの情報が公開された。1つはPS4/Xbox Oneにも対応した公式のマップエディター「SNAPMAP」をアップデートし、よりディテールの細かいマップの作成が可能になるという。もう1つはマルチプレイに新しいマップやゲームモードが追加される。これら2つはすべて無料のアップデートとして提供される。

 そして3つ目がまったく新たな取り組みとなるが、「DOOM」の最初のレベルだけ切り出したものを無料で提供する。これはPS4/Xbox One/Windows共通の取り組みで、これにより往年の「DOOM」ファンをはじめ、誰でも手にとって貰えるようにする。Willits氏はこの新たな施策について“シェアウェア”という当時の「Quake」でも導入されていた懐かしい表現を用いて説明を行ない、当時の成功の方程式を20年経過して再び導入しようというところがおもしろい。なお、日本ではPS4/Xbox Oneについてはプラットフォームのレギュレーションの関係で無料版の配信は行われず、Steam経由のPC版のみの提供となる見込み。

【Quake Champions: E3 2016 Reveal Trailer】

【DOOM: 2016 #BE3 Showcase Presentation】

「PREY2」は帰ってこなかったが、初代「PREY」がやってきた! 「TESO」も大型DLCを継続

 今回最大のサプライズと言えたのが「PREY」だ。今年もっとも期待のタイトルである「Dishonored 2」を手がけるArkane Studiosのプロデューサーが登壇し、サプライズ発表すると宣言した上でトレーラーを再生したが、トレーラー最後までそれが「PREY」とはわからなかった。最後にタイトルが表示されると場内からはどよめきの声が上がった。海外ゲームファンならご存じの通り、シリーズ最新作「PREY2」はBethesdaからリリースされる予定となっていたが、2014年正式にキャンセルが発表されていたからだ。

 今回発表されたのは、昨年の「Dishonored 2」と同様に短いプリレンダーのトレーラーのみで、宇宙を舞台にしたSFアクションという根幹は同じものの、「PREY」とも「PREY2」とも、主人公から舞台設定まですべて違うという、換骨奪胎的なリバイバル作品になりそうだ。こちらの日本発売は未定。

【Prey - E3 2016 Reveal Trailer】

【PREY】
謎だらけのトレーラー。ストーリーと共にゲームのディテールが明らかになるのは少し先になりそうだ

「The Elder Scrolls Online」

 そして日本ではいよいよ6月23日よりDMMを通じて日本語版での正式サービスがスタートする「The Elder Scrolls Online(エルダー・スクロールズ・オンライン)」だが、欧米ではすでに正式サービスから2年が経過しており、立ち上げ直後はビジネスモデルの変更や、PS4/Xbox One版の発売延期など紆余曲折があったものの、2015年6月にようやくリリースされたPS4/Xbox One版がヒットし、2015年のベストMMOGアウォードをいくつも獲得するなど、勢いのあるMMORPGのひとつとなっている。

 今回は、「TESO」ディレクターのMatt Firor氏より、アサシンになれる大型DLC「Dark Brotherhood」のPS4/Xbox One版が6月14日に配信決定したことと、その次のDLC「One Tamriel」を今冬に実装予定であることが告知された。日本でも今月よりサービスされることも告知され、日本での正式サービスが注目されるところだ。

【BE3 2016 – Looking Back at ESO】

【The Elder Scrolls: Legends - Official E3 2016 Campaign Intro Cinematic】
カードゲーム「The Elder Scrolls: Legends」は、新たにWindows版とMac版を発表した

Bethesda Game Studiosはまさかの「Fallout 4」、「Skyrim」同時展開!

Bethesda Game StudiosのTodd Howard氏は、ビデオレターで登場

 そして皆様お待たせの「Fallout」である。「Fallout 4」のDLC、HTC Vive版「Fallout 4」、そして「Fallout Shelter」のアップデートと、「Fallout」シリーズだけで3つも新情報があり、正直、これだけでお腹いっぱいである。

 まず、「Fallout 4」のDLCは「Far Harbor」で開発終了ではなく、今後も続くことはすでに発表されているが、今回その一部が明らかになった。一挙に3つのDLCが公開され、6月、7月、8月配信予定。日本でも多少遅れるものの最大1カ月程度の遅れでリリースしていきたいとしている。なお、これらはすべてシーズンパスに含まれる。

【Fallout 4/Fallout Shelter/Skyrim Special Edition: 2016 #BE3 Showcase Presentation】

 DLC第4弾が「CONTRAPTIONS(ヘンな機械)」。海外では早くも来週配信予定で、内容は拠点ビルドを楽しくしてくれるワークショップ系。アーマーラックやトラックキット、ベルトコンベアーなどなど、使い手に創意工夫が求められるアイテムが集められている。

【DLC第4弾「CONTRAPTIONS(ヘンな機械)」】

 DLC第5弾もワークショップ系だが、これは今回のShowcaseで3本の指に入るぐらい大歓声が巻き起こった。その名も「Vault-Tec」。あのVaultが自分の手でクリエイトできるというワークショップ系DLCだ。地中深く縦穴、横穴を掘り、そこにVault-Tecが誇るVault設備をはめ込み、住人たちを住まわせていく。住人向けの施設を置いたり、Vaultを守ったり、デモの最後には一瞬、「Fallout Shelter」のような真横から見たような視点も披露され、自分だけのVault運営を楽しむことができそうだ。海外での配信は7月を予定。

【DLC第5弾「Vault-Tec」】

 そしてDLC第6弾は、「Far Harbor」と同様に、新しいマップとストーリー、クエストで構成された大型DLCで、その名も「Nuka World」。「Book Your Wasteland Vacation(ウェイストランドのバケーションを予約しよう!)」とあり、宿敵であるレイダーたちとこの日だけは武器を持たずに共に遊園地で遊ぶコンテンツかと思いきやさにあらず。

 正解はレイダーに占拠された広大なテーマパーク「Nuka World」に踏み込み、レイダーを従えて勢力争いを繰り広げるという“レイダーのボスになれる”一風変わったコンテンツだ。「Fallout 4」は、「Fallout 3」と本質的に異なる点は、人の道に外れるようなプレイを許容しなかった点にあるが、「Nuka World」ではそれが可能になりそうな期待感がある。まだ謎の多いDLCだが、今後の情報公開に期待したい。

【DLC第6弾「Nuka World」】

 この「Fallout 4」DLCの紹介は、「The Elder Scrolls」シリーズと「Fallout」シリーズを手がけるTodd Howard氏により行なわれたのだが、「Fallout Shelter」のアップデート&PC版リリースの告知の後、彼から突然サプライズ発表が行なわれた。「The Elder Scrolls」シリーズの最新作「Skyrim」がPS4/Xbox One/PC向けにリマスターされることが発表されたのだ。

【「Fallout Shelter」がアップデート&PC版登場!】
「Fallout 4」のモバイル向けスピンオフ「Fallout Shelter」は映像のみのあっさりした紹介だったが、ゲームメカニクスを一新させる大型アップデートと共に、待望のPC版が発表。共に7月公開予定で、日本展開については今のところ未定としている

 「Skyrim」は前世代(PS3/Xbox 360)を代表するRPGとして、常にXbox 360の後方互換性に対応して欲しいタイトルの上位になるほど人気がある。今回リマスターされることで、「Skyrim」が描く、太陽光を含めた自然の表現がより美しくなり、水や雪などもより自然になっていた。

 グラフィックス面以外の違いは、PS4/Xbox One版もMODに対応するところ。これで完全にPC版同等の奥行きのある楽しみ方が可能になる。海外での発売時期は10月28日を予定し、日本でも発売予定。

【The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition】
「Skyrim」ファンとして地味に嬉しいのはMOD対応だろう。「DOOM」と同様、PC版との垣根がなくなるのは良いことだ

Bethesda VR
ハンズオンではVR版「Fallout 4」と「DOOM」のプロトタイプに触ることができた。インプレッションは後ほど詳しくお伝えしたい

 「Fallout」に話を戻そう。VR版「Fallout 4」は、VR版「DOOM」と共に「Bethesda VR」というブランドで発表されたもので、単なる実験ではなく、2017年にHTC Vive向けにリリースされることを発表している。今回のVR版は、いずれもその場から動かず、周囲からやってくるコンパニオンの犬とのインタラクションを楽しんだり、右手のガンでレイダーを銃撃したりするだけの試験的な内容で、VRゲームとしての作り込みはこれから始まるようだ。

 「Fallout 4」や「Grand Theft Auto V」のようなオープンワールドゲームをVRで遊びたいという希望は、VRを経験した人なら誰しも思うものだが、実際には現在のVR技術とノウハウでは、コントローラーでのキャラクター移動時に発生する“VR酔い”の問題を十分に克服できないため、そのまま遊ばせるのではなく、VRに特化した、最適化された形が望ましいとされてきた。その一方でレースゲーム「Project Cars」に代表されるVRに適したジャンルでは、そのままVR化しても十分楽しいものが出来上がることが判明しており、既存タイトルのVR化は、時間が解決する問題という見方もある。

 今回の「Fallout 4」、「DOOM」VR化の発表は、その後者の考え方を促進するものであり、2017年と1年先の話ではあるものの、その仕上がりに期待したいところだ。また、ユーザーのニーズを漏らさずキャッチし、実現に向けて努力するBethesdaの姿勢も大いに評価したい。E3会場では、「Dishonored 2」をはじめ、いくつかのタイトルで追加取材を予定しているので、E3レポートにぜひご期待いただきたい。