【特別企画】

劇場アニメ『SEKIRO: NO DEFEAT』公開目前! 原作ゲームが“屈指の名作”として語り継がれる理由を紹介

没入感のあるストーリーと独創的な発明だった剣戟アクション

【SEKIRO: NO DEFEAT】
9月4日(金)より全国劇場にて3週間限定上映決定
『SEKIRO: NO DEFEAT』

 フロム・ソフトウェアの手がけたアクションアドベンチャー『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(隻狼)』を原作とした劇場アニメ『SEKIRO: NO DEFEAT』が、9月4日より3週間限定で上映される。

 現段階で『SEKIRO: NO DEFEAT』の詳細なストーリーの流れについては明かされていない。ゲームと同じストーリーがなぞられるというわけではなさそうだが、予告編やあらすじなどを確認する限り、基本的な設定は共通しているように見える。

 本稿ではアニメ版の公開に備えて、あらためて原作の魅力について紹介。2019年の発売以来、7年以上にわたって根強い人気を誇っている理由はどこにあるのか語っていきたい。

【「SEKIRO: NO DEFEAT」予告】

すべてを失った忍びと運命に縛られた御子……プレイヤーの決断で変化する物語

 フロム・ソフトウェアといえば『DARK SOULS(ダークソウル)』シリーズなどの代表作をもつゲームメーカー。『天誅』シリーズなどは存在するものの、同社の近年の作品ではやや珍しい“純和風”の世界観を構築している。

 ゲーム『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』の舞台となるのは、戦国時代末期の日本。二十余年前、“剣聖”葦名一心の国盗りによって建てられた葦名の国は、滅亡の危機を迎えていた。そこで一心の孫である弦一郎は竜胤の御子・九郎の力を利用し、国を再興しようと目論む。

 これを阻むために立ち上がったのが、主人公の狼だ。かつて戦場で拾われ、忍びとして育てられた狼は、自身の主である九郎に絶対の忠誠を誓っていた。

 狼は幽閉状態にあった九郎を助け出し、葦名城を出ようとするのだが、すんでのところで弦一郎に襲われる。そして死闘の末に片腕を切り落とされ、九郎を奪われてしまう。

 しかしその後、狼は不思議な力によって死の淵から復活。荒れ寺のなかで目を覚ますと、謎の仏師によりからくり仕掛けの義手を与えられていることに気づく。そして九郎を救い出すため、ふたたび戦いの場へと赴くのだった。

 作中では人を不死に変える一方、世界に災いを与える竜胤の力をめぐって、狼と九郎が苦悩し、己の生き方を決断する姿が描かれる。エンディングは複数用意されており、彼らの行く末をプレイヤー自身の選択によって決定することが可能だ。そうして物語を追体験することも、本作の大きな魅力となっている。

フロム作品だけどソウルライクではない? 今でも語り継がれる独自路線の名作

 本作はフロム・ソフトウェアの『DARK SOULS』シリーズなどの系譜を受け継ぎつつも、独自路線を切り開いた作品だった。

 もっとも大きな違いはレベリング要素の有無だろう。ソウルシリーズは敵を倒してレベルを上げることで戦闘が楽になっていく仕組みで、ステータスの割り振りによって自分の好きなようにキャラクタービルドを行なっていくことも醍醐味の一つとなっている。

 しかし本作の場合は、キャラクターのレベルという概念自体が存在しない。その代わりにスキルポイントによるスキル習得や、ボスの撃破時に入手できるアイテムによる能力強化などは存在するものの、あくまで補助的な要素にとどまっている。

 またソウルシリーズではさまざまな武器や戦い方を選ぶことができるが、本作のボス戦では1対1で正面から相手を攻略することから逃れられない。プレイヤー自身の技術が上達しなければ先に進めなくなるという意味で、きわめてストイックな作品と言えるだろう。

狼の行く手に立ちはだかる強敵たち

 そのゲーム性は日本だけでなく海外でも高く評価されており、2023年9月の時点で世界累計販売本数1,000万本を突破。また2019年には世界最大級のゲーム賞とも言われる「The Game Awards」において、その年の最優秀タイトルに与えられる「Game of The Year」を獲得している。

“死にゲー”なのに爽快なプレイ感覚! 独創的な戦闘システムの発明

 そして本作最大の醍醐味は、なによりも刀を使った戦闘の快感にある。シンプルな操作で華麗な剣戟アクションを繰り出せるため、敵を倒す爽快感を存分に味わうことができるのだ。

 そうしたゲーム性を実現しているのが、“弾き”を中心とした戦闘システム。プレイヤーと敵にはそれぞれ「体幹」ゲージが設定されており、ダメージを与えたり、相手の攻撃をちょうど良いタイミングで弾いたりすることでゲージを蓄積させることができる。そしてこのゲージが溜まると体勢が大きく崩れ、「忍殺」により致命傷を与えられる……という仕組みだ。

相手の攻撃に合わせてガードすることで“弾き”が発動
タイミングが合えば大きな火花が散る
相手が体勢を崩すと赤い目印が表示される
「忍殺」により体力ゲージを1本削れるが、ボスは複数のゲージを持つ

 また隠密行動をして敵の背後から「忍殺」を狙ったり、「鉤縄」で空中を舞うように移動したりと、“忍び”ならではのアクションも充実。さらに手裏剣や爆竹といった義手忍具、体術や剣技といったスキルなども用意されており、戦闘がワンパターンになることを防いでいる。

“忍び”らしく後ろから近寄って忍殺
「鉤縄」を使えば立体的にフィールドを移動できる
秘伝の技は強力だが、使用できる回数は限られている

 フロム・ソフトウェアの作品といえば、敵キャラクターが強く、攻略難易度が高いことでお馴染みだが、本作はとくにその傾向が強い。しかもボスとの戦闘では、ほとんどの場合“ハメ殺し”のようなことができず、正攻法で攻略することを強いられる。

 とはいえそれは決してフラストレーションを生むものではない。どれだけ難攻不落に見える敵であっても、実際には攻略法が用意されているからだ。最初はどれだけ難しく感じても、敵の行動パターンを読み、対策を練ることで徐々に太刀打ちできるようになっていく。何度も倒されながら攻略法を見出していく必要があるため、典型的な“死にゲー”と言えるものの、そこに理不尽さを感じることはないはずだ。

 また、条件付きではあるが戦闘中に何度か復活を遂げられる「回生」というシステムも、ストレス緩和に大きな役割を果たしている。たんに凶悪な難易度にするのではなく、“プレイヤーが気持ちよくなれるゲーム体験”を考え抜いた設計になっている点こそ、同作の偉大な達成だったのではないだろうか。

主のため、死してなお立ち上がる

 なお本作は続編やDLCなどは実装されておらず、単独で完結済みの作品。発売後の2020年に無料アップデートが実装され、ゲーム内にメッセージを残す機能やボスとの再戦・連戦機能、狼の外見を変更する機能が追加された。

原作キャストが続投! 個性派アニメーターの手でアニメ化が実現

 そんな原作ゲームの発売から7年越しの映像化として注目を集めているのが、劇場アニメ『SEKIRO: NO DEFEAT』だ。

 全編手描きによる2Dアニメーションとなっており、TVアニメ「シャンピニオンの魔女」のQzil.la株式会社(クジラ)が制作を担当。監督の沓名健一氏は独創的な作風からコアなアニメファンのあいだで支持されてきたアニメーターで、ここ数年の仕事でいえば「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」や「ぶらどらぶ」のオープニング映像を手掛けたことで話題を呼んだ。

 沓名氏といえばエフェクト表現を得意としていることで有名だが、予告映像の時点で狼が敵の攻撃を弾いた際に刀から飛び散る火花や、葦名弦一郎によるド派手な雷攻撃の描写にその片鱗を感じさせる部分があった。戦闘シーンの殺陣も含めて、アニメによってパワーアップした表現に期待できそうだ。

 また声優陣は原作からの続投で、主人公の狼役を浪川大輔さんが担当。主要キャストは九郎役に佐藤みゆ希さん、葦名弦一郎役に津田健次郎さん、エマ役に伊藤静さんといった顔ぶれだ。

 なお梟役の土師孝也さんは2025年に惜しまれつつ亡くなっているが、アニメ版は続投になることが発表されており、多くのファンがふたたび声を聞けることを喜んでいる。

左:狼(CV.浪川大輔さん)、右:九郎(CV.佐藤みゆ希さん)
葦名弦一郎(CV.津田健次郎さん)

 今作は全国劇場で公開されるものの、3週間限定の上映となる予定で、公開館数も全国56劇場と多くはない(6月19日の発表時点)。劇場のスクリーンで観る機会を逃さないよう、くれぐれも気を付けてほしい。

 純和風ファンタジーの独創的な世界観に、忍の使命と不死の力をめぐる壮大なストーリー、そして中毒性のある戦闘システム。こうした要素がアニメという媒体でいかにして表現されるのか、今から楽しみでならない。