インタビュー

「ストレンジャー ザン ヘヴン」開発者インタビュー。大東真とプレーヤーをいかに“シンクロ”させるか【TGS2026】

行動次第で変わる成長、生きる糧となるショービジネス、“バグ”から生まれた独特のアートに迫る

【STRANGER THAN HEAVEN】
2027年1月15日 発売予定
価格  スタンダード・エディション(ダウンロード版):8,990円
スタンダード・エディション(パッケージ版):9,900円
デラックス・エディション:11,990円
Collector's Edition:18,000円

 セガのRGGスタジオが手掛ける新作アクションアドベンチャー「STRANGER THAN HEAVEN(ストレンジャー ザン ヘヴン)」。本作では、1915年から1965年までの約50年間を舞台に、主人公・大東真の人生が描かれる。時代とともに街並みや文化、人々の姿が変化していくほか、プレーヤーの遊び方によって、大東自身の成長や出会う人物にも違いが生まれる作品になっているという。

 今回弊誌では、「東京ゲームショウ2026」の会場で、本作のディレクターを務める阿部幹信氏と、アートディレクターの加那屋大志氏にインタビューする機会を得た。

 約50年におよぶ人生をどのようにゲームとして描くのか。大東の人生と密接に関わるショービジネスはどのような存在なのか。そして、時代ごとに大きく表情を変える独特のビジュアルは、どのような発想から生まれたのか。会場で寄せられたユーザーからの反響も含め、「STRANGER THAN HEAVEN」が目指すゲーム体験について話を聞いた。

【『STRANGER THAN HEAVEN』2ndトレーラー】

「ネガティブな声もあると思っていた」。東京ゲームショウで感じたユーザーからの反響

STRANGER THAN HEAVEN アートディレクターの加那屋大志氏
STRANGER THAN HEAVENディレクターの阿部幹信氏

――先日の生放送や今回の東京ゲームショウでは多くの新情報が公開され、初めて本作に触れた方も多かったと思います。特に反響が大きかったことや、開発側の想定とは違った反応などはありましたか?

阿部氏:今回の体験版は、Summer Game Festやgamescomに出展したものから、製品版に向けてさらにブラッシュアップを加えたバージョンになっています。

 本作ではスタジオとしてかなり新しいチャレンジをしています。「龍が如く」シリーズは日本でも多くの方に遊んでいただいているタイトルで、本作はそこから大きく新しいことに挑戦している作品なので、正直なところネガティブな声もあるのではないかと思っていました。

 ですが、実際には「面白い」と言ってくださる方が非常に多くて、勝手な杞憂だったなと思っています。自分たちが信じて作ってきたものを、日本のユーザーの皆さんにも受け入れていただけたことが印象的でした。

 また、「龍が如く」シリーズを遊んできた方だけでなく、これまでRGGスタジオのタイトルに触れたことがないという方にも多くプレイしていただいています。そうした方がどのように遊ぶのかを見ることも新鮮ですね。

加那屋氏:海外で体験版を試遊していただいた際は、作品全体の雰囲気などに対する感想をいただくことが多かったんです。

 一方、東京ゲームショウではゲームが好きな方が細かいところまで見てくださっていて、ディテールに対するコメントもいただきました。デザイナーとして細部までこだわって制作していますので、そこまで見ていただけるのはとてもうれしいですね。

 僕自身、ユーザーの皆さんの記憶に残る画面やビジュアルを作ることが役割だと思っていますが、今回は逆に皆さんの反応が自分にとって強烈に記憶に残る体験になっています。これは一生忘れない出来事になるんじゃないかなと思っています。

東京ゲームショウ2026の試遊ブースには多くのゲームファンが訪れていた

50年間を生きる大東真。プレーヤーの選択で少しずつ異なる人生に

――本作では1915年から1965年まで、大東真の約50年間を描きます。各年代のあいだには十数年単位の時間がありますが、プレーヤーが直接体験しない期間についても「大東がその間を生きてきた」と感じられるように、どのような工夫をされていますか?

阿部氏:もちろん、シナリオの中でその期間を補完する部分もあります。ただ、そこはネタバレにもなるので詳しくはお話しできません。ですが、大東真という男自身が年齢を重ねていくことは、かなり細かく表現しています。

 大東はアメリカ人と日本人のミックスとして生まれ、アメリカから日本にやってきます。最初は日本語もそれほど上手ではなく、独り言も英語です。

 それが何十年か経って別の街へ行くと、語学力だけでなく、日本人とのコミュニケーションの取り方も変わっているんです。ボディランゲージだったり、会話の間の取り方だったりといった本当に細かな部分ですね。

 僕自身、中学生くらいまで海外で暮らしていた経験があり、その後、日本へ戻ってきてから自分がどんなものを見て、どう変わってきたのかという経験も、大東真というキャラクターを描くうえで参考にしています。

 また、十数年のタイムジャンプがあったとき、「人間ならこういう変化があるよね」という感覚を、大東の芝居などにもできるだけ取り入れています。非常に細かい部分ですが、そうした変化が伝わるとうれしいですね。

加那屋氏:大東自身も、日本で生きていくためには適応していかなければいけません。

 各年代の間で、大東がどのような人生を送ってきたのか。その苦労や経験を想起できるようなものを入れています。

 服装だけでなく、細かな部分にもいろいろな変化があります。たとえば傷が増えていたり……他にも詳しくは言いませんが、気づいた方が楽しめるようなものも仕込んでいます。

時代とともに街並みや文化、人々の姿も変化していく

――時代をまたぐ際は、「この十数年間にこういうことがありました」とダイジェストで説明するのでしょうか。それとも、プレーヤーに想像させるような見せ方なのでしょうか?

阿部氏:ひとつの決まったルールがあるわけではありません。その期間の出来事を、大東真というひとりの人間のドラマとしてどう見せるのが一番面白いかを考えています。

 そもそも、各時代のまたぎ方にも、かなり工夫しています。ここも製品版で楽しんでいただきたいので深くは語れませんが、長いダイジェストを流して「この期間にこういうことがありました」と説明するだけではありません。

 時代が飛び、その時間がリアルタイムには描かれないからこそ、映画やテレビドラマと同じようにいろいろな演出ができるポイントだと思っています。

 ひとつの時代の最後にプレーヤーが何を感じるのか。そしてその感情を持った状態から、次の時代をどのように始めれば面白いのか。そうしたところにもさまざまな工夫を入れています。

 時代をまたぐこと自体が、演出的に面白いことができる大きなチャンスで、そのチャンスはかなり活用しています。

本作では複数の時代が描かれ、それぞれで街の雰囲気も大きく異なる

――一度次の時代へ進むと以前の時代には戻れないとのことですが、それまでに出会った人物やプレーヤーが取った行動が、次の時代に影響することはあるのでしょうか?

阿部氏:まず前提として、メインストーリー自体は分岐せず、ひとつの物語として描いています。

 そのうえで、過去に出会ったキャラクターが次の時代にどう影響するかについては、コンテンツごとにさまざまな形で描いています。

 単純に「次の時代にもその人物が登場する」というだけではありませんし、逆に登場しないケースもあります。そもそもプレーヤーによって、誰と出会うのかも変わります。

 わかりやすいところでは、ショービジネスで誰を演奏者として雇っているか、サブストーリーをプレイしたかどうかなどによって差分が出ます。メインストーリー自体が変わるわけではありませんが、プレイには確実に影響します。

 そして、もうひとつ大きく影響する要素がバトルです。本作では武器にフィーチャーしていて、素手を含めて13種類あります。物語の進行に応じて少しずつ解放され、どの武器を使うかはプレーヤーが自由に決められます。

 ひとつの武器を使い続ければ、大東自身がその武器を使い慣れていきます。それはプレーヤースキルだけでなく、ゲーム内の成長要素にも紐づいています。一方で、いろいろな武器を使い続けて、多くの武器を扱える大東にすることもできます。

 つまり、周囲の人物や出来事だけでなく、大東本人も、プレーヤーがどう遊ぶかによって50年間で変化していくんです。発売後、皆さんがそれぞれどんな大東を作っていくのかは、僕たちも非常に興味があります。

 本作は「ひとりの男の人生を描く」という切り口で、ゲーム全体が構成されていると言っても過言ではありません。

加那屋氏:ぜひ大東になりきってほしいですね。

 そこから得られるものは、なかなかほかでは得られない、人生レベルの体験になると思っています。自分が大東だと思って、感情移入しながらプレイしていただけるとうれしいです。

――実際にプレイしてみても、左右の拳をそれぞれ操作する独特のバトルによって、自分自身が大東になって戦っているような感覚がありました。

阿部氏:まさに、これまでにない「シンクロ感」を作るというのも、今回のバトルのコンセプトのひとつでした。そこがひとつ形になったのはよかったと思っています。

バトルでは素手を含めた13種類が用意され、使い続けることで大東自身の成長にもつながっていく

音楽は娯楽だけではない。「生き残るための手段」としてのショービジネス

――先日の配信では、ショービジネスについて、作曲や編曲、歌手のプロデュースなどの詳細も公開されました。これは独立したサイドコンテンツなのでしょうか。それとも、大東の人生やメインストーリーと密接に関係するものなのでしょうか?

阿部氏:過去の「龍が如く」シリーズにあった会社経営などのコンテンツと比較すると、ショービジネスはよりメインストーリーと密接に関わるコンテンツになっています。

 大東真は日本にやってきた当初、言葉や文化の壁を感じています。その壁を越えることができるものが音楽だったことに、オルフェウスというキャラクターから才能を見出されることで気づいていきます。

 音楽は、大東真という男のパーソナリティのひとつになっていきます。その意味でも、従来のミニゲームなどと比べて、メインシナリオとかなり密接に関わるものになっています。

 ただ、そうしたコンテンツをあまり深く遊びたくないという方もいると思いますので、ある程度簡易的に体験できるような工夫も入れています。

――大東にとって、音楽は単なる趣味や娯楽ではないということですね。

阿部氏:そうですね。小倉の時代に大東は音楽の才能を見出されますが、音楽は彼にとって楽しいものというだけではありません。同時に、生き残るための手段でもあります。興行師として活動し、音楽をビジネスにすることで、お金を稼ぐための手段にもなっていきます。

 そして時代が進むにつれて、大東自身も興行師として腕を上げていきます。開催するショーの規模も変わりますし、時代が変われば音楽のジャンルも変わります。

 後半になれば電子楽器も登場しますし、まだ発表していないものも含めて、非常に多くの音楽ジャンルを用意しています。また、出会う演奏者も変わりますし、ショーの規模も変化します。

 これは正確には、「時代によって変わる」というよりも、「大東真の人生のどのタイミングなのか」によって大きく変化していく要素ですね。

加那屋氏:ショーの基本的な遊びの軸そのものは大きく変わりませんが、演者や音楽、そして公演する“箱”は時代とともにどんどん変わっていきます。その変化も楽しんでいただきたいですね。

阿部氏:さらに、ショービジネスで稼いだお金で街の食事を楽しんだり、武器を強化することもできます。

 武器も大東の人生における大きな要素です。どの武器を愛用して、どれを強化するのか。そのためにどうお金を稼ぐのか。そうした形で、ショービジネスもゲーム全体の大きなサイクルに組み込まれています。

ショービジネスでは、街で得たアイデアなどをもとに楽曲を作っていく

「始まりはバグ」。5つの時代を“一瞬で見分けられる”アートを目指す

――本作は従来のRGGスタジオ作品とはかなり異なる、独特の画作りになっています。このビジュアルはどのように生まれたのでしょうか?

加那屋氏:実は、始まりはバグなんです(笑)。

 ある日、横山(「STRANGER THAN HEAVEN」エグゼクティブディレクターの横山昌義氏)に何かを見せるためのプレゼンをしていたときに、画面がバグで真緑になってしまったんです。

 「すみません、画面がバグっているんですが」と言ったら、横山から「これ、よくない?」という話が出てきました。

 最初は僕も「えっ?」と思いました(笑)。ただ、横山が言うからには何かあるんだろうと思って、そこからこの緑を活かした面白い画作りができないか研究を始めました。それが現在のビジュアルにつながっています。

 その後、当時の絵画や西洋画などもかなり調べました。

 当時の日本では、輸入できる油絵の具なども限られていました。昔の絵葉書などを見ると、緑、青、赤といった少ない色で構成されているものもあるんです。そうした絵を見ながら、「このゲームでもこういう表現ができないか」と考えていきました。

 昔の西洋画家が、強い日光の明るさを油絵でどう表現するか突き詰めていたような技法も参考にしています。

 小倉をひとつの足掛かりとして、太陽のまぶしさや砂煙、土ぼこりなど、「当時はこうだったんじゃないか」という雰囲気を作っていきました。

 そこから各時代へ広げていく際は、横山とも長い時間をかけてすり合わせています。深夜まで話しながら決めていくこともありました。

 もちろん、写真などがほとんど残っていない部分もありますので、そこは僕たちの想像でもあります。とにかく「見たことのない絵」「体験したことのない、強烈に記憶に残る絵」を目指して突き詰めていきました。

 なので、スタートは本当にバグですね(笑)。

阿部氏:当時の絵画だけでなく、レンズや機材、さまざまな技法についてもかなり研究しています。

 ただ、当時の技法をそのまま再現するだけでは、単に古臭いものになってしまいます。それを「ヴィンテージとして格好いい」と感じられるところまで昇華する。

 現代に生きている僕たちが当時の技法から影響を受けて、いま作るならこうなる、というものが現在の映像や演出につながっています。

本作ならではの独特な色使いも大きな特徴。各時代にはそれぞれ異なるビジュアルのモチーフが設定されている

――各時代で画面のタッチがかなり違います。それぞれにビジュアル上のモチーフが用意されているのでしょうか?

加那屋氏:各時代にそれぞれモチーフがあります。それを、最初の「バグから始まった絵」にブレンドして、見たことのないビジュアルにしています。

 5つの時代すべてで統一感を出すことは、あまり意識していません。むしろ、各時代でまったく違う絵を作ってもいいと思っています。

 その時代を体験したときに、「これはあの時代だったな」「懐かしいな」と思えるようにしたかったですし、時代をまたいだ瞬間に、体験そのものが強烈に変わったと感じてほしかったんです。

 街の人々の衣装もまったく違いますし、大東自身も、初見では「本当に同じ人物なのか?」と思うくらいまで変えています。

 「違うゲームをやっているみたいだ」と感じてもらえるくらいの勢いで作っていますね。

阿部氏:「コンマ1秒見ただけで、どの時代なのかわかる」というのはかなり意識しています。

 画面を見た瞬間に「あ、ここだ」とわかる。そのくらい、各時代の違いを一発で感じられるように努力しています。

時代が変われば街の姿や色調も大きく変化。「コンマ1秒見ただけで、どの時代なのかわかる」ことを意識したという

――最後に、本作を最後までプレイしたとき、プレーヤーには大東真という人物をどのように振り返ってほしいと考えていますか?

加那屋氏:激動の人生ですから、「こう感じてほしい」と僕たちの側から言葉で伝えられるものではないと思っています。むしろ、プレイした皆さんに「どう思いましたか?」と聞いてみたいです。

 一人の男の人生を体験したとき、悲しいとか、うれしいとか、そういった言葉だけでは表現できないものを感じてもらえると思っています。

 今回シアターも見ていただいたと思いますが、何だかわからない感情が込み上げて、少し涙が出てしまうような。そうした体験をしていただけたらと思っています。

 そして、皆さんがそれぞれ感じたこと自体が、僕たちが伝えたかったことになるのではないでしょうか。それが言葉にできないようなものになっていれば、僕たちの狙い通りです。

阿部氏:僕もかなり近い考えです。

 現実では、ほかの人間の人生を最初から最後まですべて目撃することはできないですよね。本作では、それを体験できること自体が非常にユニークだと思っています。ドキュメンタリーを見ることとも少し違います。

 先ほどお話しした武器や、出会う人物などもプレーヤーによって変わります。物語の大筋は同じでも、それぞれのプレーヤーが体験する大東真の人生は少しずつ違ってくるわけです。

 もちろん、メインシナリオの中には伝えたいメッセージがあります。ただ、ゲームというパッケージ全体を通して体験したときには、それだけにとどまらない感想を持っていただける作品になっていると思います。

 そういう意味で僕たちの側からも、発売後に「あなたはどう感じましたか?」と聞きたくなるくらい、いろいろな感じ方ができるタイトルになっています。

――本日はありがとうございました!