【特別企画】

「バイオハザード」30周年! ホラーゲームというジャンルを世に浸透させた名作を振り返る

【バイオハザード】
1996年3月22日 発売

 先月、シリーズ最新作「バイオハザード レクイエム」がリリースされ、発売からわずか一週間足らずで全世界販売本数が600万本を突破するなど、世界中で圧倒的な人気を誇るカプコンのサバイバルホラーゲーム「バイオハザード」。そのシリーズ1作目は初代プレイステーションで1996年3月22日に発売され、今年は「バイオハザード」シリーズ30周年の節目の年となっている。

 恐怖の洋館を舞台に、襲い掛かるクリーチャーを退け、謎を解きながら洋館からの脱出を目指すといったゲーム内容。今でこそコレを言われてもそれほど目を引くポイントは無いかもしれないが、当時はホラーゲームというジャンル自体がかなりマニアックな立ち位置で、「アローン イン ザ ダーク」や「クロックタワー」といった名作も既にあったが、今ほど一般的ではなくコアなゲーマーだけが嗜む印象であった。

 ホラーというジャンルもさることながら、立体空間の中でキャラクターを自由に動かして広大かつ複雑なマップを探索していくというゲーム性も非常に珍しかった。

 そんな意欲作ながら、当時はインターネットが今ほど普及していなかったため新規IPの認知度はそれほど高くなく、シリーズ1作目の発売当初は大きな売り上げとはならなかった。しかし、プレイしたゲームファンの口コミから評判が広がり、またたくまにヒット作へと成長した。

 今では世界が認めるAAAタイトルにまで成長した「バイオハザード」の1作目を、当時を振り返りつつ紹介していきたいと思う。

PS版「バイオハザード」のパッケージ。ジャケットには丁寧にゲームの売り文句が書かれている。事前情報ゼロのいわゆる“ジャケ買い”が普通にあった、当時の時代を感じさせるデザインだ
裏面もセールスポイントがぎっしり記載されている。イラストのチョイスがゾンビでもゾンビ犬のケルベロスでもなく、なぜカラスのクロウだったのかは気になるところ

立ちはだかるクリーチャーを……無視!? ゲームの常識を塗り替えた斬新過ぎた設計

 90年代の中頃は「ストリートファイターII」から始まった格闘ゲームのブーム真っ只中で、筆者も「ストリートファイターZERO」や「ヴァンパイアハンター」をひたすら遊んでいた。

 そんな“格闘ゲームの新作さえ出していれば安泰”と思われていた時代にカプコンは、ベルトスクロールアクションの「ファイナルファイト」シリーズやRPGの「ブレス オブ ファイア」シリーズなど、手広いジャンルで新作をリリースし続けていた。後に来る格闘ゲームブームの終わりを予期していたかのようにさまざまなタイトルに挑戦してきたうちの1つが今回の「バイオハザード」である。

「ストリートファイターII」シリーズから「ストリートファイターZERO」シリーズに移り、世の中の格ゲー熱が最高潮に高まっている時代だった。画面はストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル収録「ストリートファイターZERO」
格闘ゲームの登場で下火になっていたベルトスクロールアクションもリリースし続けていた。画面は「ファイナルファイト タフ」
まだゲーム市場全体でもホラーゲームが少なかったころに発売された「バイオハザード」

 筆者が初めて「バイオハザード」の存在を知ったのはアニメか特撮番組の合間に流れていたテレビCMだった。クリーチャーとの激闘を繰り広げているシーンは、小学生だった筆者にはとてつもなく面白そうなゲームだと感じさせた。

クリーチャーとの戦闘にスポットを当てた、ホラーゲームという空気をあまり感じさせないCMだった

 テレビCMを見て惹かれるものはあったものの、さすがに低学年の小学生が“お年玉で「バイオハザード」を買うぞ!”とはならなかったが、ゲーム好きの親戚の叔父さんが「バイオハザード」を持っており、そこで初めて本作に触れることができた。

 OPは実写ムービーが盛り込まれており、海外の役者たちが演じるキャラクターを見たときは、そこが多摩川の河川敷(実写ムービーの撮影場所)などということは微塵も感じる訳もなく、まるで映画のような世界に一気に引き込まれた。まだスーパーファミコンが現役バリバリだった時代ということもあってPSのマシンパワーの凄さを実感した。

最新ハードが出るたびに“まるで実写”と驚かされるが、本作のOPは本当に実写であった

 ワクワクでプレイを始めたが開始早々に“違和感”を感じた。まず第一に“キャラクターを思うように動かすのが難しい”という点。

 方向キーを右に入力したら右に、左に入力したら左にキャラクターが動く——どんなゲームであっても揺らぐことのない操作だと思っていたが、本作はそんな常識をぶち壊す操作方法を採用していた。左右入力で旋回、上で前進、下で後退といういわゆるラジコン操作といわれるもので、とにかく癖が強く慣れるまでは“壁に体を擦りながら移動”するというのは誰もが通った道である。

最初は普通に動かすのが難しい。障害物などにも引っかかるのなんて日常茶飯事
敵を避けようとして、自分からぶつかりに行ってしまうモヤモヤは一度は必ず味わったことと思う

 操作感が全く直感的ではないことと、洋館の中で流れる不穏としか言いようがないBGMで薄々感づいていたが、ゲーム冒頭で初めてゾンビが登場するシーンで仲間の隊員であるケネスがムシャムシャと食べられており、これを見た瞬間「バイオハザード」の正体が“CMのような巨大なクリーチャーを火炎放射で焼き払う爽快アクションゲームではない”と確信した。

CMで見た理想の「バイオハザード」
現実

 当時の筆者がもっとも注目していた戦闘部分は、クリスの初期武器であるコンバットナイフでやり合ったら“一番弱いゾンビを倒すのにも苦戦を強いられる”という、あまりにも想像していたゲームのイメージとかけ離れていた。ゲームといえば“敵を倒して進むもの”と当然思っていただけに、“敵は基本的に無視をして逃げるもの”という斬新すぎるゲームデザインには衝撃を受けた。

主人公が1番弱いザコ敵にも苦戦するというゲームバランスは正気を疑った
アクションゲーム脳だった筆者は、現れる敵を倒したくてしかたがなかった

 思ったようにキャラクターを動かせない、爽快なバトルもない。キッズゲーマーには正直に言って満足できるゲーム性ではなかった。

 「バイオハザード」の本質を理解したときはやや残念な気持ちでプレイしていたが、操作に慣れてくるにつれてゾンビをスイスイ回避して進めるようになり、敵を倒すとは別ベクトルの“俺上手い感”が味わえた。謎解き要素も当時は新鮮で、手に入れたアイテムをどこで使って進んでいくかというワクワク感に夢中になった。

 そして何より、当時ホラーチックなゲームは「魔界村」と「スプラッターハウス」しかプレイしたことがなかったキッズにとっては“大人のゲームをプレイしている”という感覚に酔いしれるのに「バイオハザード」は十分すぎる魅力があった。

背伸びしたいお年頃にぶっ刺さった大人な世界観

無限ロケットランチャーを手に入れるタイムアタックも熱かった

 物語は、ラクーンシティ郊外で多発する猟奇殺人事件。事件を追う「S.T.A.R.S.」ブラヴォーチームが消息を絶つ。その捜索に赴いたクリスたちアルファチームは異形の群れに襲われ、命からがら不気味な洋館へと駆け込む。クリーチャーの巣食うこの洋館からの脱出を目指す——といった内容だ。

クリーチャーから逃れるために洋館へと駆け込む。しかし、そこからが地獄の始まりだった

 本作は、クリスとジルの2人のキャラクターから主人公を選択できる。主人公によって登場人物やストーリー展開が異なるのはもちろん、ジルはEASY、クリスはHARDとそれぞれ難易度にも違いがある。

 EASYのジルは体力こそクリスより低いが、代わりにキーピックというアイテムを使って鍵のかかった引き出しを解錠してアイテムを入手できたり、一部の扉を解錠してショートカットが可能。

キャラクターによって難易度が異なる
ジルがキーピックでカギを開けて進めるところも、クリスだとわざわざカギを探して進まなくてはならない

 そしてもっとも大きな違いは、アイテムの所持できる最大数が違うという点だ。クリスは最大6個までしか持てないが、ジルの場合は最大8個までアイテムを持つことができる。これだけ聞くと“たった2個程度の違い”とと思うかもしれないが、この2つの所持枠の差が非常に大きく、クリスであったら武器1種類と弾薬、回復アイテムだけで既に所持枠の半分が埋まってしまうが、ジルならばまだ空きが5枠もあるという状況。

 なのでクリスだと道中で落ちているアイテムを拾っていくとすぐにパンパンになってしまい、アイテムを預けるためにアイテムボックスに頻繁に行き来しなくてはならないので大きなタイムロスが発生する。クリーチャーが闊歩する中を往復していれば当然ダメージも受けてしまうので、アイテムボックスに寄る回数の違いだけでゲームの難易度が大きく変わってくるのだ。

クリスだと必要最低限のアイテムだけで枠がキツキツになってくる

 今回、PSの無印版は20数年ぶりにプレイするが、進行ルートやアイテムが手に入る場所などは完全に忘れているので初見プレイと同等な状態でのプレイであった。久々のプレイでは、弾薬や回復アイテムの制約がシビアでなかなかに硬派なゲーム設計だったことを改めて感じた。

 ホラーゲームである本作の怖さは、子供の頃はプレイした日は夜にトイレに行けなくなるレベルであったが、大人になってからプレイしてみるとトイレにはさすがに行けるが今でも普通に怖い。

 先に何が待っているか分からない扉を開く演出の緊張感、洋館の中に響くゾンビのうめき声、横を通ろうとすると足を掴んでくる死んだふりをしたゾンビ、外から窓をブチ破って館内に侵入してくるゾンビ犬といった、恐怖の演出は今プレイしても驚かされる。30年も前の作品なので今見るとグラフィックスは美麗とは言い難いが、このローポリゴン具合が逆に当時は感じなかった不気味な味わいを感じさせる。

“扉の先にゾンビが待ち構えているのではないか?”という不安を掻き立てる演出
荒いポリゴンならではの不気味さがよく出ている

 “「バイオハザード」=ゾンビ”という印象が強いが、ゾンビ以外にも様々な種類のクリーチャーが登場するのも本作の世界観をさらに恐ろしいものにしている。

 超巨大な毒蛇のヨーンや毒蜘蛛のウェブスピナーなどはかなり不気味だが、中でも一番震えたのは「ハンター」である。突然凄まじい勢いで駆けながらプレーヤーの後を追ってくるという、初登場時のムービーシーンのインパクトがかなりのものだった。

不気味な手が扉を開き、その姿を見せる

 強さもゾンビとは桁違いで、素早い動きで迫り、巨大なかぎ爪で切り裂いてくる凶悪な性能。こちらを一撃で仕留めるハンターの代名詞ともいえる“首刈り”は全てのプレーヤーが恐怖したことと思う。主人公キャラの首が切断されている惨たらしいゲームオーバー画面はまさにトラウマ級であった。

回復の暇を与えず絶命させてくるので、ハンター戦は緊張が走った

 シリーズ1作目から作り込まれているのもポイント。先にも触れたが主人公2人分のストーリーが用意されており、なおかつプレーヤーのとる行動によって“仲間が死ぬか生き残るか”が決まってくる。それに伴ってラスボスやエンディングも変化するので、一度クリアしてもまた楽しめる、周回プレイを想定した内容であった。

 そういったやり込み要素でもっとも熱かったのが、最速でエンディングを目指すタイムアタックだ。本作は初見ではクリアまで10〜20時間ほどかかるのだが実はボリュームがものすごくあるわけではなく、プレイ時間のほとんどが洋館の中を迷っている時間で、進む順路や謎解きの答えが分かっていれば5〜6時間程度でエンディングまでいけるほどのボリューム感だった。

 本作の最速クリアの何が熱中できるかというと、3時間以内にエンディングを迎えることで、ストーリーのクライマックスでのみ使用できた最強武器「ロケットランチャー」がゲームスタートから使用できるという隠し要素が用意されていた。ラスボスすらも一撃で粉砕できる破壊力だけあって、登場するすべてのクリーチャーを一発で仕留めることができる鬼のような性能。しかも弾数も無限なので、この武器1つで恐怖など微塵も感じない超爽快な「バイオハザード」が楽しめるのだ。

 3時間クリアは結構シビアで、進む道を間違えたり、鍵となるアイテムの取り忘れなどでタイムロスをしてしまうとかなり厳しくなってしまう。ポーズやメニュー画面の状態でも時間は経過してしまうので、進行ルートを頭に叩き込んでおくのはもちろん、当時はプレイ中に親から用事を押し付けられない状況を作ったうえでのトライが必要であった。油断をしたら妨害が入るというプレイ環境なのもあり、いろいろな意味でヒヤヒヤ感のあるタイムアタックに夢中になった。

隠し武器のロケットランチャー。いかつい武器を手にしている姿からは敵無しのオーラが出ている
散々苦しめられた敵も一撃で粉砕。まさにプレイ前に描いていた理想の「バイオハザード」である

現行ハードでオリジナル版とリメイク版の両方がプレイできる

 PSから始まった初代「バイオハザード」はまさに伝説的な作品だけあり、その後はセガサターン版や追加要素が盛り込まれたディレクターズカット版、タッチ操作を取り入れたニンテンドーDS版「バイオハザード Deadly Silence」など、さまざまなバージョンが存在する。

「バイオハザード ディレクターズカット」は、新イベントや一部ゲーム内容が変更されたアレンジモードを収録。画面はPS版
タッチ操作でナイフを振って戦うミニゲームも収録していた「バイオハザード Deadly Silence」。画面はニンテンドーDS公式ホームページより

 2002年には、初代のフルリメイク作品がゲームキューブでリリースされた。グラフィックスの進化はもちろん、新たな敵や仕掛けの追加、洋館内のエリアまでも一新されており“原作の雰囲気は残しつつも全くの別ゲー”といえる内容に仕上がっていた。長らくゲームキューブでしかプレイできなかったリメイク版だったが、HDリマスター版として現在では様々なハードでプレイできる環境になっている。

映像力だけでなく、難易度も圧倒的に上がったリメイク版。HDリマスターでは「バイオハザード5」のビジュアルでゲームをプレイすることもできた。画面はPS4版「バイオハザード HDリマスター」

 現行ハードで初代「バイオハザード」を楽しむなら、先に触れたリメイクのHDリマスター版かPS5とPS4で配信されているディレクターズカット版がプレイするハードルが低い。原作の雰囲気をしっかり味わいたいならGOGで配信されているPC版という選択肢もある。オリジナル版とリメイク版、そのどちらも間違いなく名作なので未プレイならばぜひ両方ともプレイしてもらいたい。

グラフィックスは高解像度化されているので、くっきりとした映像で初代「バイオハザード」が楽しめる。画面はPC版

 全く新しい挑戦的なゲームであった第1作目。それを超えるべく作られた続編は開発終盤で内容を白紙に戻して作り直したりと、紆余曲折を経たシリーズながら今ではホラーゲームの象徴ともいえる地位にまで成長した「バイオハザード」。

 新作では、主人公のレオンが原点であるラクーンシティの舞台に戻るといった見逃せない内容になっている。最新作に合わせて、バイオハザードファンの方は1作目の原点からシリーズを振り返ってみてはいかがだろうか。

あまり馴染みのないジャンルだったが、本作の面白さはゲームファンにしっかりと刺さった
「バイオハザード2」は大幅な作り直しにより、主人公はエルザからクレアへと変更された。画面はPS版「バイオハザード ディレクターズカット デュアルショックVer.」収録のコンプリートディスクより抜粋
過去作のファン注目のストーリーとなっている最新作「バイオハザード レクイエム」。30周年の節目にふさわしい作品になっている