【特別企画】
「機動戦士ガンダム 戦士たちの軌跡」発売21周年。速すぎるG-3ガンダム、守り切れないデラーズ閣下、トラウマはやっぱりビーム兵器
ゲームキューブで発売されたハードコアなガンダムゲーを筆者の思い出と共にプレイバック
2025年3月18日 00:00
- 【機動戦士ガンダム 戦士たちの軌跡】
- 2004年3月18日 発売
バンダイが発売したニンテンドー ゲームキューブ用ソフト「機動戦士ガンダム 戦士たちの軌跡」(以下、「戦士たちの軌跡」)が、本日2025年3月18日で発売21周年を迎えた。本作は、2004年3月18日に発売された戦術アクションゲームで、TVアニメ「機動戦士ガンダム」の世界で起きた“一年戦争”を、連邦軍・ジオン軍のキャラクターの視点から追体験できるというタイトルだ。
“21周年”と、数字がやや半端ではあるのは否めないが、今年1月17日には劇場版「機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning」が公開されたことで、いわゆる“ファーストガンダム”が多くの世代から再び注目を集めている。来月4月8日にはTVアニメシリーズ「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」の本放送がスタートし、4月13日には大阪・関西万博の開催に伴って「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」も出展されるなど、つまり、今年も昨年公開された「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」に続いて、ガンダムがアツい。
自身はいち視聴者としてガンダム作品と共に成長してきた自負があり、少年時代の思い出でもあるゲーム「戦士たちの軌跡」をどこかのタイミングで特集したいなどとずっと考えていた。そんな折に最近のガンダム熱である。「これはしめたぞ」と、編集部への交渉材料にすることで、本作を特集するに至たれたわけである。
そういうことなので、本稿では早速「戦士たちの軌跡」について振り返っていきたい。なお、記事中のスクリーンショットは、本稿のために物置きからわざわざ引っ張ってきた埃まみれのWiiをHDMIコンバータ経由でキャプチャーしたもの(実は改めてプレイし直している)。多少の粗さは何卒ご容赦願いたい。
ゲームキューブの数少ないガンダムゲー。プレイヤーとしてロボゲーを意識するに至った自身のマスターピース
ガンダムを題材としたゲーム作品は、これまでさまざまなゲームハードにて、実に多様な作品が発売されてきている。だが、筆者が観測している範疇において「戦士たちの軌跡」が語られることは、昨今あまりない。これについては、対応ゲームハードがゲームキューブのみだったからなのがその理由にあたると考えている。
当時、ゲームキューブの競合ハードであるプレイステーション 2(PS2)向けには「ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079」、「機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙」、「機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles」といった一年戦争を題材にする名作ガンダムゲーが多く発売されていた。一年戦争の括りからは外れるが、「機動戦士ガンダムSEED 連合vs.Z.A.F.T.」シリーズ、「SDガンダム ジージェネレーション」シリーズなどの人気作も、これまたPS2向けであった。
まだ、少年だった筆者の周りでは、ゲームキューブよりもPS2を購入する同級生が多くいたのを覚えている。PS2ならばDVDも音楽CDも再生できるし、PS1のゲームソフトとの互換性まである。ゲーム機でありながらマルチメディアなプレイヤーとしても活用でき、その当時はとにかく人気があったのだ。
今までニンテンドー64、ゲームボーイカラー、ゲームボーイアドバンスと、任天堂ハードを中心に買い続けてきた我が家も、PS2かゲームキューブかで最初は大いに悩んだ。しかし、音楽を聞くならちょっとした専用のホームシアターがあったし、DVDプレイヤーもすでに買われている。加えて、小学生の自分にとっては「大乱闘スマッシュブラザーズDX」が発売されていたのが、ゲームキューブを購入するもっとも大きな購買意欲に繋がり、結局ゲームキューブを選択するに至った。結果としては「大乱闘スマッシュブラザーズDX」を友人たちとコントローラーがボロボロになるまで遊び倒したので、楽しい小学生時代のゲームライフに繋がっていたと思う。
だが、小学生に上がる以前からガンダムのフィギュアなどを買い与えられ、ガンダム自体が好きだった筆者にとって、パーソナルにゲームの楽しみを享受できたかと言うと、実はそうでもない。やはり、ゲームキューブにはガンダムゲーが少なかったからなのが大きな理由だ。「あのときPS2を買って貰っていれば……」と、内心後悔している自分もいたほどである。親戚の家や友人の家に遊びに行くたび、そこにはほぼ必ずPS2が置かれていて、その家族の趣味であろう魅力的なガンダムゲーたちが棚の中に収納されている。これらが自分にとっては燦然と輝いて見えていた。小学生らしく「コロコロコミック」を購読していた時期ではあるが、一方で「ガンダムエース」も購読していたし、その本心はマリオよりもポケモンよりもガンダムの方が好きだった。
誕生日やクリスマスプレゼントとして、親に新しくPS2をねだろうにも、前述した家庭事情により、全くもって説得材料になるものがなく、かなり悶々とする日々を過ごしていた筆者少年。そんなある日、「戦士たちの軌跡」がゲームキューブで発売されて、思わず飛びつくことになる。しかし、実際に遊んでみると、これが中々難しいゲームであった。
そのとき何となくイメージしていたのは、ゲームセンターで稼働中だった対戦型アーケードゲーム「機動戦士Ζガンダム エゥーゴvs.ティターンズ(エウティタ)」。エゥーゴとティターンズに分かれ、2vs2で戦力ゲージを減らし合うこの対戦ゲームは、前作「機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン」の続編タイトルとして登場し、タバコを咥えた大人たちに混ざってよく遊んでいたゲームの一つだった。ゲームセンターの対戦ゲームなので、レバーとボタン操作に慣れてしまえば、小学生でも取っ付きやすいゲームシステムなのだが、「戦士たちの軌跡」は操作方法からして、もう難しい。
近接・射撃武器の切替、思うように方向転換できないモビルスーツ、機体が逆さまになる360°宇宙空間の機体制御。しかもここに弾薬管理をしなければならない武器の制約、各味方NPCへのオペレーションを行なうRTS要素と、ピンチになると「プレッシャーゲージ」が蓄積して操作方法があべこべになるストレス管理といったものまで備わる。これまでアーケード路線の対戦型ガンダムゲーを遊んでいたためか、そのイメージに自然と引っ張られていた少年は、アムロ編2つ目のミッション「戦場は荒野」をクリアするだけでも一苦労。買ったゲームの説明書を読まない感覚派タイプでもあったので、チュートリアル内容も当然理解しておらず、弾薬補給の概念に気づいたのは数ミッション進んだ後の祭りであった。
だが、このゲームのメカニズムが持つ複雑さによって、リアルタイムに戦況把握を行なうRTSの面白さ、ロボットゲームならではの複雑な機体制御の醍醐味を知っていく。なのでガンダムゲーに限定せず、ロボゲーとあれば三十路になった現在でも、ホイホイ情報を追ってしまう自分がいたりする。ゆえに「戦士たちの軌跡」こそが、ロボゲーを追いがちなプレイヤーの自分を確立してくれた作品と言えるのだ。
無論、この作品をきっかけにファーストガンダムの世界観がより好きになったし、後に稼働した「機動戦士ガンダム0079カードビルダー」にものめり込んだ。プレイ料金が割高(1プレイ300円、2プレイ500円)なので、小学生のお小遣いだけでは十分遊ぶこともままならなかったのが事実だが、父親の洗車を手伝ったり、父親がリサイクルショップで買ってきたよくわからないオーディオ機器の修理を手伝ったりして、金銭的な支援を受けながら「戦士たちの軌跡」で好きになったエースパイロットとモビルスーツのカードを収集していったのが、懐かしい思い出だ。
もはやレベリングは大前提。理不尽気味なミッション難易度に幾度も床に叩きつけられたコントローラー
前項で紹介したようにこのゲームは難しい部類に入るだろう。覚えることや気にしなければならない要素は多いし、アクションゲームなのでプレイヤーの操作スキルも問われてくる。本作に久しぶりに触れたのは昨年の末頃で、そのときはなんとなくの思い付きでプレイしただけだった。ブランクがあるとは言っても、今やゲームを遊んで生計を立てている記者なので、それなりにいろんなゲームを遊んで来ている。だが、あまりにも久しぶりに遊んだものだから、モビルスーツの宇宙空間における姿勢制御なんて基本スキルはすっぱり頭から抜けているわけで。
幾度かのチュートリアルを実践して昔の感覚を取り戻していき、あとはRTSや弾薬管理の要素など、ゲームの基本システムを頭に叩き込み直すことで、ようやく腰を据えてプレイしてみる。すると、小学生の頃とは打って変わって、意外にも2、3回程度のリトライでアムロ編の序盤ミッションを突破していくことができたのだ。プレイの節々で感じたのは相変わらずの“ゲームバランス”である。いくら操作に慣れてシステムを理解していても、時と場合によっては一瞬でゲームオーバーになってしまうようなアンバランス感。そのあんまりなやられっぷりには、難しいというより理不尽な気さえしてくる。だが、このストイックで人を選びそうな難しさこそが、本作の面白さでもあり、クリア後の達成感にも繋がってくるところ。
本作では連邦・ジオンの2勢力からそれぞれのキャラクターを選択していき、パイロットの戦いを追体験する形でミッションが進行していく。初めのうちはアムロ・レイとシャア・アズナブルしかおらず、2人のミッションを進めていく中で、途中からキャラクターがアンロックされていく仕組みだ。アムロはレベルアップの成長率も高く、高性能なガンダムに搭乗できるから比較的“簡単”な部類のはずなのだが、まあよく死ぬ。ついでにホワイトベースも撃墜されやすい。
昔とても苦戦した、アムロ編2つ目のミッション「戦場は荒野」では、ホワイトベースから民間人を降ろすためにジオン軍へ一時的な停戦を持ちかけ、その最中にガンペリーに隠したガンダムを単騎出撃させることで、相手の裏を欠くというミッションだ。この原作再現にあたって、ガンダム単騎で奇襲をかけながらホワイトベースまで合流していくのだが、早い段階でガンキャノンとガンタンクに指示を出してホワイトベースに追従させておかないと、やがてホワイトベースだけが先行してしまう状況が生まれる。すると、敵の集中砲火を浴びたホワイトベースのブライト艦長から「弾幕薄いぞ! 何やってんの!」と、怒鳴られるハメになる。ガルマ・ザビが率いるドップ隊の攻撃もそれなりに激しく、護衛対象のホワイトベースはどんどんHPを減らしていってしまうのだ。
しかも、途中からボス敵としてシャアが出撃してくる。まだ2つ目のミッション段階で、当然育ち切っていないアムロ単騎では、シャアを前にプレッシャーが増大していき、やがてパニック状態を引き起こす。この状態になると一定時間、まともに戦闘を行なうことができなくなるので、その間にこちらがシャアに倒されてしまい、たちまちゲームオーバーとなる。
なので、ここでやるべきことは、ホワイトベースの進路にいる敵を先に片付けておき、ガンキャノンとガンタンクにプレイヤーの援護をさせる。そして、シャアを補足したら、アムロが持つアビリティを発動し、一気にシャア倒してしまうことである。勝利条件はホワイトベースのエリア離脱を目指すことだが、それを意識すると、始めたばかりのプレイヤーは慣れない防戦に徹して苦労するというのが最大の罠。シャアを倒せばそのままクリアになるので、やり方としてはこちらの方が楽でもある。
まだ2つ目のミッションにして、システムの仕組みを理解しておかなければ、戦いはかなり厳しい。というか、システムを理解していても遊び直してみると、結構厳しい場面が多い。また、キャラクターにはレベルの概念が存在していて、ミッション終了後のクリアランクに応じた経験値で成長していく。しかし、ミッションを1つクリアして次のミッションに進むと、そこから敵と味方のレベルが2〜3ほど上がるケースが珍しくない。ゆえに、サクサク進んでしまうと、敵・味方ユニットの誰よりも、プレイヤーキャラクターのレベルがかけ離れて低い状況に……。当たり前だが、レベルが高い敵から受けた攻撃はかなり痛い。
こんなバランス感なので、各ミッションのクリアには、多少なりともレベリングを行なう必要がある。だが、フリークエストのようなものはないし、過去にクリアしたミッションを繰り返しプレイし続けなければならないのが、単純に辛いところだ。小学生の頃は操作や要素の複雑さが新鮮だったからこそ、猿のように同じミッションを遊び続けることができた。大人になった今現在では、作業感の方がどうにも勝ってしまうわけである。とはいえ、このレベル上げでプレイする過去ステージも、キャラクターの育ち具合によっては安定しないから気が抜けない。作業などとナメて掛かれば直撃をもらって即終了なので、それなりに緊張感がある。
しかも、その苦労と引き換えに手にしたレベリング後のキャラクターなら、どんなミッションも楽勝……と、ならないのがこのゲーム。キャラクターのレベルは最大30まで上げられるが、いくらアムロが成長して強くなったとしても、ホワイトベースが落とされたら終わりなのである。この敗北条件がミッションによって異なる上、味方のレベルもミッション依存となる。ここが本作の難しさを象徴するもう一つのポイントと言えよう。
この敗北条件が原因で、中々クリアできなかったミッションが幾つかあるのだが、個人的にもっとも苦労した代表的なものが、アニメ「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY(0083)」から登場しているアナベル・ガトーの最終ミッション「撤退!デラーズフリート」だ。このミッションでは、一年戦争の後の時代に登場する重要人物エギーユ・デラーズの戦艦グワジンを護送していくというもの。中央にグワジン、その左右に戦艦ムサイが展開し、マップの南にあるエスケープエリアまでグワジンを導いていく。
戦闘開始直後からプレイヤーはガトーを操作して、急ぎグワジンを付け狙う連邦軍を撃破していくことになるが、無尽蔵に次々と出現してくるジムとボールの攻勢に耐えるのが非常に難しい。さらにエスケープエリアの目前で、敵の増援がグワジンの目と鼻の先に登場するなんて鬼畜ぶりである。調子が悪いと、この増援フェーズに辿り着くことすらままならない。昔遊んだときはあまりにクリアできず、ゲームキューブのコントローラーを思わず床に叩きつけた記憶があるほどだ。さすがに今は物に当たるほど稚拙ではないが、ガトーのレベルをカンストしても相変わらず安定しないこのミッション難易度に、匙を投げたくなる気持ちだけは変わらない。
ちなみに連邦側のカイ・シデン、ハヤト・コバヤシの最終ミッション「宇宙要塞ア・バオア・クー」も、ガトーの最終ミッションに近い内容だ。こちらはホワイトベースの護送になるが、やはり敵の攻勢が激しいことと、エスケープエリア直前に出現する敵の増援が辛い。ガトー編と比較して、ホワイトベースの護送はカイ、あるいはハヤトが味方にいたり、一般のパイロットよりも強いセイラがいるからまだ楽かもしれない。ただ、こちらは前半戦・後半戦の2部構成になっているため、後半戦で失敗すると、またイチからやり直しである。
連邦とジオンでは使えるMSが異なる関係で、難易度にも差が生じている。ジオン側は異名を持ったエースキャラクターが多くて優秀な反面、連邦軍のガンダムやガンキャノン、陸戦型ガンダムといった強力なビーム兵器を持つMSを相手にしなければならない。特にシャアのミッションや「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」から参戦しているノリス・パッカードのミッションは、連邦軍が所有するMS性能の威力を肌身で感じられる骨太な手応えである。
中でもアムロを相手取った際のビームライフルは実に恐ろしい威力で、背後からの直撃を貰うとザクやグフなら1、2発で瀕死クラス。加えてキャラクターのプレッシャーゲージが増大しつつ、MSの機動力が低下するパワーダウン状態と、一時的なスタン効果まで発生する。その間にビームサーベルで一刀両断されて即終了……なんてことが多々起こる。このように、こちらのキャラクターレベルがアムロより上でも、MSや武器の火力でアッサリ倒されてしまうのが現実なのだ。
おまけにアムロはニュータイプらしく、精度の高い偏差射撃を高速機動の中で仕掛けてくるから、普通に戦っているだけでも厄介な存在になる。シャア編は全12ミッションが用意されており、ライバルである以上アムロと戦う機会も多い。毎度ガンダムが出てくる度に、心なしか胃が痛くなるような緊張感に付き纏われていたのは、多分シャアだけではないと思う。
IFの歴史はこのゲームでも楽しめる。ジャブローを堕とすアプサラスやルナツーを陥落させる「黒い三連星」の勇姿
ガンダムゲーは多くの作品でさまざまなIF展開が紡がれるからこその魅力がある。「戦士たちの軌跡」では、ジオン側のキャラクターたちでミッションをクリアしていけば、自然と正史と異なる展開に突入する。例えば「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」から登場しているバーナード・ワイズマン(バーニィ)なら、アレックスの破壊に成功して、終戦まで戦い抜くエンディングが見られる。ランバ・ラルのミッションでは、ホワイトベースを撃沈し、戦死したガルマの仇討ちを成し遂げるというものに。
ノリス編ではケルゲレンの脱出ルート確保のため、量産型ガンタンク3機の撃破を完遂し、第08MS小隊をも単騎で退ける。生き残ったノリスは次の最終ミッションでジャブロー攻略作戦に参加し、完成したアプサラスを支援する先鋒役として、最後の戦いに臨んでいく。ジャブローの入口を見つけたノリスの活躍により、アプサラスのメガ粒子法でジャブローはそのまま陥落するというエンディングである。この展開は、アイナ・サハリンのミッションでも同じ流れとなっている。
ジオン側のIF展開でやたらと気合が入っているのは、間違いなく「黒い三連星」のミッションだろう。リーダーであるガイアは、マッシュもオルテガも失うことなく、ホワイトベース隊の撃破に成功し、そのまま連邦軍総司令官のレビル将軍を叩くため、「ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079」から登場する「闇夜のフェンリル隊」とオデッサ戦線に参加する。これを終えるとそのまま彼らとジャブロー攻略作戦、ルナツー掃討作戦を共にしていくパートナー関係に。
「ルナツー掃討作戦」は三連星編の最終ミッションで、今まで地上での戦いで使用していた馴染み深いドムから高機動型ゲルググへと乗り換えての作戦となる。ルナツーでは連邦軍の残存艦隊が、ジャブロー侵攻の際に脱出してきた艦隊と合流しており、残りの戦力を投じて、ジオンの月面拠点グラナダを攻撃しようと画策しているのだ。ガイアたちはこれを阻止するべく、ルナツーを占拠する戦いに出撃していく。
「黒い三連星」が、これだけ活躍できる可能性が示唆されるだけでもアツい展開なのだが、このミッションでは既に戦死したと思われていたアムロが、G-3ガンダムに搭乗してくるサプライズ付きである。ただでさえ敵に回すと厄介なアムロが、ラスボスとして宇宙空間を縦横無尽に駆け回る。唐突なアムロとG-3ガンダムの出現に、初見のプレイヤーはきっと驚いたに違いない。小学生だった筆者も驚いたし、ガイアもカットイン付きで驚いていた。
そんなG-3ガンダムだが、最後の敵とあってあまりにスピードが速く、こちらのロックオンを機動力で強引に外してくるほどだ。三連星編では、基本的にマッシュとオルテガが倒されるとゲームオーバーになってしまうはずなのだが、この最終ミッションにおいては、G-3ガンダム登場後、誰かが倒されても敗北扱いにならない(演出が入るので恐らく戦死の扱い)。正面からぶつかり合うと厄介極まりないので、「闇夜のフェンリル隊」を全員動員して、アムロを囲んでタコ殴りにするのが恐らく簡単な攻略方法だろう。
戦場にはモブのエースパイロットも多く、アムロと本格的に戦う前に、戦力を削いでおかないと苦労する。昔はG-3ガンダムに勝てるビジョンが全く見えず、宇宙空間を疾走しながら「闇夜のフェンリル隊」を次々と轢き殺していくアムロにしてやられていたが、今はもう違う。本稿執筆時点では最高クリアランクを無事に獲得済みで、三連星編のエンディングにも無事辿り着くことができた。実は“G-3ガンダムに勝てない”ということで、昔の自分はこのゲームを次第に遊ばなくなってしまったのだ。21年ぶりのリベンジに無事成功したとも言える。
今遊んでも面白いガンダムゲーとしてぜひおすすめ。セイラ・マスを演じた井上瑤さんの遺作でもある
ここまで長々と思い出語りをしてきたが、本作は数あるガンダムゲーの中でも“難しいけど面白い”を体現したタイトルだと筆者は考えている。本作にはレベリング前提のミッション難易度や、嫌がらせのような敵の増援の出し方など、理不尽さを感じるアンバランス感が確かに存在している。原作再現のミッション数も中途半端であり、クリス、セイラ、バーニィ、ララァに関しては仕方がない部分もあるが、1ミッションしか存在しないという始末だ。だが、ゲームクリアを目指すだけならトライ&エラーを繰り返していく中で、自ずと“自分らしい解法”を見出すことができると思うし、やはりIFの展開は魅力的だ。
また、1度クリアしたミッションは、機体を変えたり武器を変えたりして、高ランククリアを目指すことも可能。実際は武器を変えるだけなら影響は特にないが、機体かキャラクターを変えてしまうと、最高ランク「S」の獲得はできず「A」ランク止まりになるので要注意ではあるが……。ちなみに最高ランクの獲得はただのやり込みではなく、新しいMSの開放条件でもあるため、意識する意味はある。しっかり遊び込めば、ガンダム6号機(マドロック)やガンダムNT-1(アレックス)も使用可能になっていくので、それらはモチベーションに繋がりやすいお楽しみ要素だろう。ほかにも紹介してこなかったが、キャラクターにパッシブスキルを最大4つまで設定できる機能がある。これをカスタマイズするだけでも立ち回り方を大きく変えられ、ミッション攻略の助けになり得るわけである。
本作では、連邦・ジオンどちらもクリアすると「ハードコアミッション」という風変わりなミッションが遊べるのもユニーク。ハードコアミッションは、本編のミッションでは使用できなかった61式戦車だったり、コア・ファイターだったりを操作していくという内容になっている。
ちょっとした小ネタ的要素として、アムロ・レイ役の古谷徹氏がナレーションを行なう自動車番組「カーグラフィックTV」を意識した「M.S. GRAPHICS」がゲーム内に収録されている。古谷氏がMSの紹介を自動車番組調にナレーションするギャラリーモードで、ファンなら思わずニヤリとしてしまう。もうひとつのギャラリーモード「PILOT DIRECTORY」では、「機動戦士ガンダム」TVアニメのナレーションを務めた故・永井一郎氏が、ゲーム内のプレイアブルキャラクターのプロフィールを読み上げるものとなっている。こちらも一聴の価値アリだ。
「戦士たちの軌跡」は、ガンダムゲーの中であまり語られることがないし、マニアックなタイトルかもしれない。それでも筆者にとっては紛うことなき思い出深いゲームタイトルだ。21年前は連邦とジオンの各勢力ごとのスタッフロールを見ることすら叶わず、ハードコアミッションの存在すらも後から知った。しかし、2025年4月から“新しい宇宙世紀”がテレビシリーズで幕を開けようとしている最中、念願のスタッフロールを迎えられたのはなんとも感慨深いものがある。
本作はセイラ・マスを演じた井上瑤さんの遺作としても知られており、そういった観点では貴重な作品とも言えそうだ。ゲームがリマスターされる可能性はほぼ皆無だと思うわけだが、本作はWIIかゲームキューブで遊べるので、まだ触れたことがない人は名作レトロゲームのひとつと思って、ぜひ1度手にとってもらいたい。
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