【特別企画】
「ワルキューレの伝説」35周年。暖かみあるグラフィックと印象深いBGM、絶妙なゲームバランスが魅力の名作を振り返る
2024年4月21日 00:00
- 【ワルキューレの伝説】
- 1989年4月21日 稼働
1980年代、アーケードゲームというプラットフォームにおいて、ナムコ(当時)といえば「ジービー」などのブロック崩し系タイトルに始まり、「ギャラクシアン」のようなシューティング、「ポールポジション」といったレースゲーム、さらには「パックマン」を代表とするアクションゲームなど、数多くの名作を産み出してきたメーカーだ。当時、ゲームセンターでどのゲームをプレイしようかと思った時も、「ナムコのタイトルならクオリティ的に安心して遊べるから、ナムコの○○にするか」と考えてコインを投入する作品を選んでいたのを良く覚えている。
そんな名作揃いのナムコゲームを、当時はアーケードゲーマーとして1コインクリアしたいという気持ちがあり、いろいろと手を伸ばしたもの。しかし、自分程度の腕ではなかなか敷居が高く、エンディングを見ることができたのは「トイポップ」や「メルヘンメイズ」、「フェリオス」に「ブラストオフ」など僅かな十数タイトル程度。しかし、それらの中でも突出して印象深く残っているのが、1989年4月21日に稼働開始した「ワルキューレの伝説」だ。
本稿では、稼働開始から今年で35周年を迎えた「ワルキューレの伝説」を振り返っていく。
ワルキューレ、サンドラを操作するアクションゲーム
プレイヤーは1P側はワルキューレ、2P側がサンドラを操作して(もちろん1人プレイも可)8つのラウンドを攻略していき、最後に待つ悪の化身カムーズを倒せばクリアとなる。ゲームとしては見下ろし型のアクションで、キャラクターデザインを富士宏氏、音楽を川田宏行氏が担当していた。
そんな本作のインストラクションカードには“黄金の種、北の泉に入れし時、滅びの大地に奇跡が起きる”とあるように、プレイヤーキャラクターであるワルキューレが滅びの大地を救うべく、北の果てにある生命の泉に“どんな願いも叶う”という黄金の種を入れるため冒険へと旅立つという物語になっている。
各ラウンドともスタート地点から出発し、基本的には北方向(画面では上)にあるゴール地点を目指すこととなる。特に地図などは用意されていないため、道中のルートはプレイしながら覚えていく必要があった。
プレイヤーキャラは初期状態でHPを表すハートマークを4つ持っているが、敵や敵弾と接触したり地形から落ちるとHPが減少、マークがなくなるとゲームオーバーになってしまう。また、画面下部に表示された砂時計は約6分で上下が入れ替わり、それと共にハートも1つ減る。一種の制限時間になっているので、サクサク進まないとタイムオーバーでゲーム終了という悲しい目に遭うことも。
ハートマークの下には、いわゆるMPとなる“魔法の素”が○印で表示され、道中に魔法を覚えると、魔法の素を消費して発動させることができる。魔法の素は、道中に見かける宝箱の中に入っていたり、時々出現するシルバーの樹を壊すとばらまかれ、それをゲットすると回復させることが可能だ。
魔法を使用するには、まずは攻撃ボタンを押しっぱなしにする。これでワルキューレの頭上に吹き出しが表示されるので、使いたい魔法をレバーの左右で選び、攻撃ボタンを離せば魔法が発動するという仕組みだ。吹き出しを表示している間は無敵状態になるので、これを上手に利用するのも攻略方法の1つ。
北を目指して進んでいる途中には、宝箱を目撃することもある。場合によっては見つけづらい位置に隠されていたりするのだが、上を通ると蓋を開けたことになり、中に入っているアイテムやお金が飛び出す。しかし、時には敵が入っていることもあるため、油断は禁物だ。
道中には、多数の敵や岩や丸太といった壊せる障害物が出現するが、倒せばゴールドを落としてくれる。回収したそれらは、道端で出会う行商人ズールに接触するとオープンする露店で消費することで、アイテムの購入が可能だ。
ただし、ワルキューレのデフォルト装備は、射程の短いショットが1本だけ出せる剣と心許ない。途中で見つける宝箱やズールから武器アイテムを購入することで、威力が高かったり攻撃範囲の広いショットを撃つことができるようになるのだ。ちなみに攻撃ボタンを連打している間は、正面からのブーメランや槍といった敵の物理的な攻撃を弾くことができる。攻撃は最大の防御、だ。
こうして先を目指し進んでいくのだが、そんな筆者が「ワルキューレの伝説」と出会ったのは、地元デパートの最上階にあったナムコスカイランド。筐体上部に飾られていたインストラクションカード、そこに描かれた主人公ワルキューレのイラストに惹かれ、あまり深く考えずに50円玉を投入したのだが(当時、地元はどこも1プレイ50円で、100円の場所はほぼ見かけなかった)、1Pボタンを押したその瞬間に流れてきたBGMが驚くほど自分の琴線に引っかかったのを、今でも鮮明に覚えている。
この時期は、遊ぶゲームを選ぶ自分的な基準に“BGMか好みかどうか?”というのがあり、これに該当すると何はさておきプレイすると決めていたもの。「ワルキューレの伝説」は曲を聴いた瞬間、まさに「これは1コインでエンディングを見るまでプレイする」と決定づけるほどのインパクトを与えてくれた、それほどまでに印象深い作品だった。ゲーム全編を通して透明感のある、それでいて力強さを持ったBGMが素晴らしいのはもちろん、各シーンに合わせて雰囲気に合わせた楽曲を聞いているだけで、ゲームの世界へと引きずり込まれていく感じもたまらなかった。
ちょうどこの頃、通っていた予備校の授業を録音し、帰宅後に聞き直すという(建前上の)目的で録音可能なウォークマンを購入したこともあり、エンディングまで通しで録音することを目標に足繁く通っていたものだ。タイミングが良かったのは、「マイコンBASICマガジン」などのハイスコアコーナーに名前が出ていたハイスコアラー集団との付き合いがあったこと。彼らの得た情報を元に攻略の道筋を立てていき、2カ月ほどかけて何とかクリアすることができた。
泣かされたのは、ジャンプ時の制御の難しさと、隠されたルートを見つけること。一見、行き止まりに見えても攻撃すると壁が壊れたり、通れるようには見えない壁沿いを歩くと安全に通り抜けられるなど、わかると一気に楽になる攻略法が随所に潜んでいたのも、本作の面白さの1つ。
また、プレイヤーキャラであるワルキューレの、さまざまな表情も見所だ。アイテムを受け取った時の笑顔や、丸太や岩に潰されてペチャンコになるシーン、燃えてススだらけ、水に落ちておぼれるなど、どれもこれもが愛らしいドットで描かれているのも最高だった。インストラクションカードに描かれていた等身の高いバージョンも良いが、ゲーム中の2等身キャラも非常に可愛いくて捨てがたく、さらにはサンドラやズール、妖精だけでなく敵キャラのドット絵も丁寧に作られていて、とても温かみを感じたもの。
美しいBGMと共に、8つの舞台で構成される「ワルキューレの伝説」。その全ラウンドを紹介
そんな「ワルキューレの伝説」だが、今からエンディングを見たい! と思った人へ、ワールドガイドも兼ねて簡単な攻略方法を記載してみた。我こそは、と思った人はぜひ挑戦してみてほしい。
冒険の始まりを後押しするノリの良いBGM(メイン・テーマ)が流れるラウンド1は、ほぼ1本道。難しくないので、サクッと先を目指そう。ジャンプ主体で進んでいく後半は、高所恐怖症の人は高さに思わずクラッとするかもしれない。操作に失敗すると落ちてしまい、そのたびにハート半分のHPを失うハメに。あらかじめ、序盤に登場する池などでジャンプ感覚を掴んでおくのがコツだ。
ゴール地点に辿り着くと、双頭のドラゴンが待ち受けている。無事倒すことができれば黄金の種を取り戻して、ラウンド2へと進む。
地下に落ちて始まるラウンド2では、進むべきルートをある程度自由に選択できる。スタート直後の“けわしいみち”と“ちかいみち”や、後半に出現するちょっとした分かれ道などは、プレイヤーの腕に合わせて好きな方を通ろう。
地下なので全体的に暗い雰囲気となっているが、明るい楽曲にノりながらプレイすれば前途洋々。途中、ドラゴンが登場するシーンからはBGMがメイン・テーマからブラック・ドラゴンに変わり、より一層ゲームを盛りあげてくれる。
ハシゴを下りると、洞窟内を進んでいくラウンド3に突入。あちこちに道が見えるので、どこを進むのか悩んでしまうだけでなく、壁と思った場所も攻撃することで壊して隠し部屋や隠し通路に進めるため、ルート選択が一気に難しくなる。閉鎖的で見通しも悪く、どこから敵に襲われるか分からない恐怖感があるが、そんなプレイヤーを元気づけてくれるBGM・地下のテーマを聞きながら自分だけの攻略ルートを見つけたい。
ボスは巨大なサソリだが、あまりにも巨大すぎるためにワルキューレが小さく表示されるという、ユニークな演出の元で戦うことに。
華やかな城のテーマで始まるラウンド4は、城跡が舞台。最初のなぞなぞは簡単なので、冷静に考えれば即座に答えがでるはず。城内に入ると、ファンタジーな雰囲気に似合わない、頭部からレーザーを放つロボットが出現する。思い切り接近してジャンプしつつ攻撃すれば即座に頭を破壊できるので、早めにご退場頂こう。オススメルートは、最初のT字路を右→上→針山の上を動く足場で通過→道なり→門を入るという道順。
城への入口は、最初に中央に入ると地下牢に行くことができるので、宝箱から鍵を取って左上の牢屋へ。手紙を受け取ってから右の牢屋で竜巻の術を授かれる。最後は舞踏会という名のBGMのもと、舞踏会の会場を進んでいくと……。
ラウンド5は、さいはての村。一路北を目指して進むのだが、途中のT字路は左がオススメ。お墓が見えたら、その左上には宝箱が4つあるのでゲットしておこう。最初はメイン・テーマが流れているが、枯れ木が立ち並んで簡易な迷路になっている場所に来ると暗闇のテーマにチェンジ。上空には常に雷雲が漂い、ワルキューレを狙って雷を落としてくるので、竜巻の術で道なりに移動するとノーダメージで抜けられる。最後の、氷が飛んでくる通路を越えられればボス戦だ。
悪の願いでも叶えてしまうという黄金の種。それを止めるために水の精霊の力を借りるべく、氷の洞窟へと入るワルキューレ。周りが氷なので明るいものの、見通しが悪いためどこから敵が現れるのか分かりづらい。ここもある程度は道を選べるので、プレイして楽なところを進もう。道中、氷の塊が高速で飛んでくる場所がある。ショットを当てると止まるので、その間にジャンプで抜けるか、魔法の無敵時間を利用してやり過ごそう。
ボスは、破壊すると魔法の素に変わる弾を撃ってくる。そのため、魔法を使えば簡単に倒すことが可能だ。
ラウンド7は、北の大地。道中は、浮島をジャンプして先へと進まなければならない。足元は氷だが、滑ったりしないのが救いだ。途中には、ラウンド1のボスを小さくしたような敵が邪魔をしてくるので、ある程度広めの足場まで一気に移動して戦うのがコツ。これまでと比べるとゴールまでは短い距離なので、ゴリ押ししても何とかなる。
最後は、ボス戦ではなく巨象の試練に挑戦。体力の試練なら戦闘なのだが、知力の試練はパズルだ。
最終ステージとなるラウンド8は、カムーズのいる地球内部。出現する敵がすべて大きく耐久力も高いため、時には逃げるのも作戦の一つ。陸の周囲に見えるのは北の泉から流れ出た水だが、既にカムーズに支配されてしまったためドス黒い色になっている。落ちればハート半分のHPを失うので、くれぐれも操作は慎重に。
苦労の末に北の泉へと到着すれば、悪の化身カムーズとの一騎打ちだ。敵は4本の腕で攻撃しながら追いかけ回してくるが、ダメージが積み重なると笑顔だったのが怒りに変わり、そして最後には正体を現す。果たして、倒すことができるだろうか。
今もアーケードゲーム史に燦然と輝く名作ゲームにして、至高のBGMが聞ける作品
全8ラウンドの道のりを覚えるのは大変だが、何度もプレイして自分なりのルートを覚えてしまえば、クリアするのはそこまで難しくはない難易度だった「ワルキューレの伝説」。当時としては、SYSTEM IIの回転拡大縮小機能を使用した派手なグラフィックで見た目のインパクトを与えた印象があるが、筆者としてはそれ以上にBGMが心に深く刻まれた作品だった。
楽曲は人それぞれに好みが大きく変わるため、何をもってして“良い”というのかが難しいのだが、少なくとも本作はCDを購入し、毎日聞いても飽きないほどの名曲だと当時は思ったし、今もその考えは変わらずだ。
現在ではアーケードアーカイブスでリリースされているため、手軽に遊べるだけでなく名曲も自宅に居ながらにして聴くことができるのは非常にありがたいものだ(基板を買えという話もあるが)。それだけに、サウンドテストモードがあれば……と、ついついない物ねだりをしてしまう。今はアーケードアーカイブスで購入できるので、記事を読んでBGMが気になったという人は、この機会に入手して是非とも遊んでみてはいかがだろうか。
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