【特別企画】
最大180人の兵士が入り交じる“戦場のロールプレイ”!「ENLISTED」プレイレポート
このスケール感は面白いぞ! 開発者の強いこだわりを感じる表現の数々も素晴らしい
2021年7月19日 18:00
- 【ENLISTED】
- プレイ料金:無料(アイテム課金制)
- PS5版:配信中
- PC版:7月中旬 配信予定
国内向けにDMM GAMESがサービスを提供する「Enlisted」は、Darkflow Softwareが開発、Gaijin Entertainmentがパブリッシングする第2次世界大戦を舞台にしたFPSだ。5月10日からはPS5版が既にサービスを開始しており、PC版は7月中旬を目処にサービスを開始する予定となっている。本作における他のFPSとの違いは、AIが操作する他の兵士と分隊単位で動くところだ。これにより戦場のスケール感を表現しているほか、ゲーム的にも復活時間を短くするなどメリットもある。
開発者による戦場の表現に対する強いこだわりを感じる作品。今回は先行してPC版を用いてプレイしたので、その詳細をレポートしていこう。なお、PS5版とPC版にはゲーム性に変わりはなく、マッチングも同一サーバーで行なわれる。パッドやマウス+キーボードなど、操作体系の好みによってプラットフォームを選ぶのが良さそうだ。
最大180人の兵士が入り交じるスケール感は最高!
なんといっても本作の魅力はこのスケール感にある。最大同時プレーヤー人数は10人vs10人の20人なのだが、AIが分隊員を操作してくれるため、実際にプレーヤーが操作しているキャラクター以上の人数がフィールドに存在する。 状況によるがAIも含めると戦場全体で見ると最大180人の兵士が1つの戦場で戦うという、数あるFPSの中でもトップクラスのスケールでゲームを楽しめる。
また分隊単位というのが本作のポイントで、例えば操作しているキャラクターが倒されてしまっても、AIが操作している分隊員が残っているとすぐにその分隊員に切り替えてゲームに復帰できる。そのためいわゆる復活待ちの時間が短めになっているのだ。
もし自分を含めて分隊員が全員倒されてしまうと、設定された復活地点からの復活になる。このバランスが絶妙で、短期間にバシバシ出撃できるわけではないが、復活待ちのストレスも少なめとなっている。
1試合は大体ワンサイドゲームで10分前後、ある程度接戦になると20分前後とそこそこに長いので、リスポーン関連のストレスが少ないのは非常にありがたい。
ゲームはチケット制で、相手陣営のキャラクターをキルしたり、拠点を確保していると時間経過で相手のチケットを減らすことができる。特に拠点確保時のチケット減少は影響が大きく、基本的にはキルを取るよりも1つでも多く拠点を確保したほうが効率良く相手のチケットを減らせる。
本作は「キャンペーン」という単位でゲームが進行し、現時点では「モスクワの戦い」、「ノルマンディー侵攻」、「ベルリンの戦い」の3つが実装されている。この3つの戦場は第2次世界大戦、特にヨーロッパ戦線において象徴的な戦いである。映画などでも取り上げられており、特に「ノルマンディー侵攻」は「プライベート・ライアン」といった有名な映画にも登場する戦場で、非常に納得感のあるセレクトだ。ただそれぞれ若干時系列が異なるのと、連合軍側として登場するのがソ連軍なのかアメリカ軍なのかという違いがあり、装備なども異なるためゲームとしては分離している。関連して兵種のアンロックなどがキャンペーン毎に独立しているので、あるキャンペーンでアンロックしたお気に入りの武器が他のキャンペーンで使用できないということもある。その点は少し残念だが史実ではその時点で登場していない武器などもあるので、その点は仕方がないのかもしれない。
キャンペーンを進めていくと分隊がアンロックされる。分隊には初期から分隊員が配置されているが、ゲーム進行で入手できるチケットで入手した分隊員と入れ替えることができる。分隊員にはレベルやランクの概念があり、合成して強化するというやりこみ要素がある。戦闘が終わると経験値を獲得でき、その経験値が一定以上に貯まるとレベルが上がり、レベル上昇にあわせて様々な要素がアンロックされていく。
また分隊員にはそれぞれ武器を持たせることができる。武器もチケットで入手でき、初期武器以外の武器を持たせるためにはチケットで別途入手する必要がある。また、兵種によって持てる武器が決められているので、突撃兵にスコープ付きのライフルをもたせるようなことはできない。事前に分隊員を育て、セッティングし、得意な武器を持たせる。このカスタマイズ要素も楽しみの1つだ。また戦車などの兵器は分隊単位でカスタマイズする。これらを利用したい場合はゲーム内でリスポーンする時に兵器が設定されている分隊を選択すれば、兵器に乗った状態で復活できる。
成長要素として兵士や武器を集めたり、強化する要素もあるので、その辺りがやりこみ要素になってきそうだ。とはいえ序盤をプレイした感想では「当然強化したほうが強いが、それが戦況に大きく影響を与えるほどではない」という印象だ。例えば兵士を強化すると「パーク」という特殊能力を獲得できるのだが、これはランダムに表示される3択から1個を選ぶという不確実性が非常に高いものだ。例えば種類によっては武器の持ち替え速度がアップするという、あれば役に立つがそれが戦況に大きく影響を与えるというものではない印象だ。
歩兵と兵器が入り交じる“戦場のロールプレイ”が魅力!
また歩兵、装甲車、航空機が入り混じって戦う戦場もまた面白い。殆どは歩兵同士の戦いになるのだが、歩兵が持っている通常兵器では太刀打ちできない戦車がやってきたときの心強さ、そして相手陣営の戦車が見えたときの絶望感たるや、マゾヒズム的な快感が呼び起こされる。
筆者は歩兵をメインにプレイするのが好みなのだが、戦車の装甲を盾にして拠点を制圧したり、じりじりと前線を上げていくのは連帯感があって非常に楽しい。
もちろん状況によっては戦車に乗ることもあるのだが、戦車のマシンガンで敵の歩兵を制圧することで、味方が動きやすくなっているのを見ると自分が貢献できているのを強く感じる。また相手の戦車に対抗できる数少ない手段なので、砲弾を打ち込むだけでなく、時には倒される覚悟で体当たりで進路妨害をすることもある。
また筆者は殆ど乗らないのだが、航空部隊の支援もありがたい。上空からの爆撃は上手く当たれば歩兵をまとめて吹き飛ばす威力がある。戦車と違って上空という視界外からの攻撃なので、前線で戦っている時に航空機の翼が風を切る音が聞こえてくるとゾクゾクとしてしまう。まさに“戦場のロールプレイ”だ。
ちなみに、筆者が航空機に乗らないのは完全に好みだ。シンプルに歩兵戦が好きなのである。NPCが操作する分隊員と協力して拠点制圧のために突っ込んでいく。遠くからスコープ付きのライフルで倒されることもあるし、機銃掃射で拠点に近づくことすらできないこともある。そんな打たれ弱さがあるからこそ、「あぁ、今戦場の真っ只中で戦っているんだなぁ」という実感があるのだ。
加えて、筆者が特に本作で気に入っているのは、基本的に全員がチームの勝利のために動いていることだ。「何を当たり前のことを」と思われるかもしれないが、このゲームはキルを取ったり取られたりすることがメインでなく、チーム全体の勝利を目指すゲームなのだ。前線に出て敵をガンガン倒すのはもちろん花形なのだが、ぐるっと遠回りして敵の拠点をバックアタック的に取りに行くのもチームに貢献する役割だし、相手と拠点の争奪戦をしているときに物陰にじっと隠れて少しでも時間を稼ぐのも非常に重要な役割である。
かくいう筆者もこういった一見地味な役割が好きなタイプだ。意外とこういった役割のプレーヤーがいることで最終的な勝敗に影響を与えることが多く、(自己満足なのだが)今回はこの戦場でチームに貢献できた、というのが満足感を満たしてくれる。
広大な戦場のスケール感と、様々な兵器が入り乱れる“戦場ロールプレイ”。そしてゲームとしての面白さを成り立たせつつ、細部の表現にまで感じる開発者のこだわり。それが本作の魅力だと感じた。ミリタリーファンならずともプレイしてもらいたい第2次世界大戦FPSの傑作だと言える。