【特別企画】

「LIBERATED(リベレイテッド)」レビュー

ディストピアを舞台にした“プレイできるアメコミ”。コマの中で展開される物語とアクションが魅力

【LIBERATED(リベレイテッド)】

ジャンル:アメコミアクションアドベンチャー

発売元:DMM GAMES

開発元:Atomic Wolf/L.INC

プラットフォーム:PS4/Xbox One/Nintendo Switch/PC(DMM GAME PLAYER/Steam)

価格:
2,050円(税込、DMM GAME PLAYER/Steam)
4,378円(税込、PS4/Xbox One/Switch)

発売日:5月27日

※Xbox One版は6月発売予定

 DMM DAMESが5月27日に発売を予定しているプレイステーション 4/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam/DMM GAME PLAYER)用アメコミアクションアドベンチャー「LIBERATED」。本作はアメコミとアクションゲームを組み合わせたような作品で、実際に物語はコミックの形で進行し、アクションパートも漫画の「コマ」の中で進行するのが特徴だ。

 アートジャンルの賞も多く受賞しているだけあって、ノワール調、かつモノクロで描かれたグラフィックスや、アクションパートでの表現と細部まで書き込まれた背景などは圧巻。物語もディストピアを舞台に、反政府組織のメンバーや、警察官などの様々な人物の視点で進行する緊迫した内容となっている。今回はそんな本作の先行プレイの機会を得たので、早速その内容をお届けしよう。

【『LIBERATED』日本語版トレーラー】

背景が動き、選択肢によって変化するコミック

 冒頭でも述べた通り、本作は「プレイできるコミック」とでも呼ぶべきゲーム。進行はコミックでストーリーを読む「アドベンチャーパート」と、横スクロールのアクションやパズルを解く「アクションパート」に分かれている。

 アドベンチャーパートにおいて、プレーヤーはデジタルコミックを読むのと同じように、コマに目をやり、ページをめくることになる。普通のコミックとは異なるのが、コマの中でも背景等に動きがあり、キャラクター同士の会話のやりとりも1つのコマの中で進行していくことだ。交わされるセリフの和訳はアメコミっぽさがあり、モノクロで描かれたグラフィックスとあわさって独特のノスタルジック感を醸し出している。

 また、会話等では選択肢が出現し、この選択によって物語の細部が変化する。時にはコミックのなかでQTEも発生し、失敗すればゲームオーバーとなってしまうこともある。どちらも入力に時間制限があるので、コミックに夢中になって入力を忘れないように注意したい。

物語はコミックの形式で進行する。セリフの翻訳もアメコミを思わせるものとなっている。
会話等での選択によって物語には細かい変化が起こる

 こうしたアドベンチャーパートにある様々な要素は、「ただ読むだけ」のコミックと本作の違いの一つといえるだろう。もちろん、この違いはアクションパートの存在によって決定づけられているのだが、アドベンチャーパートにも選択肢やQTEがあることによって、プレーヤーは常に「ゲームプレイ」を意識してコミック読み進めていく必要があり、よりスムーズにアクションパートへ移行できるようになっていると感じた。

QTEで失敗してダメージを受けることもある。本作でダメージは血飛沫で表現され、モノクロの世界でも見落とすことはない

2.5Dで描かれるアクションパート

 そんな本作のキモとなるアクションパートは、コミックの「コマ」のなかで展開され、アドベンチャーパートからシームレスに移行する。プレーヤーは文字通り、漫画を読んでいる最中にその世界でキャラクターを操作することとなる。

 アクションパートは2.5Dで表現されており、違和感なくアドベンチャーパートから移行できる。また、背景もコミックのように細部まで描かれているので、アクションパート中でも思わずディテールに目が行ってしまうこともある。

アクションパートでも背景等の描き込みはしっかりしている。また、モノクロによる表現はディストピアを想起させる

 アクション自体はシンプルな横スクロールで、操作も移動やジャンプ、射撃、物陰に隠れるなど単純なものがほとんど。要所要所で挟まれるパズルもオーソドックスな内容で、それほど頭を悩ませること無くクリアすることが可能となっている。

 アクションは銃撃戦が中心となるが、敵にバレないように動き、ステルスキルをすることもできるほか、ストーリー上相手に見つかってはいけないスニーキングミッションも存在する。射撃においてもヘッドショットが存在するなど、プレーヤーの技量が試される箇所もある。とはいえ、本作は難易度をいつでも変更することが可能なので、アクションで苦労することは殆どないといっていいだろう。

 時折登場するパズルもシンプルでオーソドックスな内容となっている。“数字を当てるもの”や“回路を正しく直すもの”など、見て直感的に理解ができるものが大半なので、少し考えれば詰まることはないだろう。

 面白いと感じたのが、銃撃戦などの表現がアメコミ風であることだ。例えば、銃撃音は「BANG」とアメコミ風のフォントで表現される。表現がアドベンチャーとアクションパートできっちりと統一されているというのは、「リベレイテッド」のアメコミ的世界観に没入する助けとなる。

銃撃シーンでの表現はアメコミ的。近未来を舞台にしているだけあってドローンが襲撃してくることもある
画像は4桁の数字を当てるパズルで、数字を打ち込むと正解・不正解・位置が違うというヒントが提供されるものだ

単なる”勧善懲悪”には収まらないストーリー

 さて、本作の核であるストーリーは、現代社会を風刺するような内容となっている。簡単にあらすじを説明すると、まず多くの若者が犠牲となった「聖マーサ小学校テロ事件」をきっかけに、政府が「安全を確保する」という名目で市民を監視している世界が舞台。至る所に設置された監視カメラや、SNSでの発信等まで監視し、テクノロジーによる人々の支配が進められている。そうした中で結成された反政府組織「LIBERATED」は、「聖マーサ小学校テロ事件」を引き起こしたのは政府ではないかと睨み、その全貌を明らかにしようと行動を起こしている……というもの。

 物語は「LIBERATED」のメンバーや、「聖マーサ小学校テロ事件」の現場に駆け付けた警察官等、複数の視点で描かれるので、アドベンチャーパート、アクションパート双方で固定の主人公は存在しない。

 本作の設定や物語は現代社会を様々な風刺した内容となっている。ポピュリズムと全体主義的な傾向や、巨大企業の保有する膨大な個人情報に対する危機感、フェイクニュースや陰謀論……といった具合に、現代の様々な問題や危機意識が反映されている。

 筆者が気に入ったのは、本作が単純な「管理社会を反政府組織が打ち倒す」ような単純明快で勧善懲悪のストーリーとしては描かれていないことだ。ネタバレは避けるが、本作で登場する市民の多くは、安全で秩序だった世界を望んでおり、政府による管理をよしとしている。もちろん、管理社会が何年も続けば、政府の意に反する国民も減っていくだろうが、大きなテロがあったなら、安全のために自由を犠牲にする選択をする考えも否定はしきれない。

 その一方で、暴力的で独善的な警察の行ないや、選択の自由がない生活等、管理社会の負の側面も描かれており、前述の通り管理社会化のきっかけとなったテロ事件には政府の関与が疑われている。中でも印象的だったのは本編ラストの表現。こちらは詳しくは書けないため気になる方は是非その目で確かめてほしい。

 本作の舞台はディストピアだが、現代社会にも存在する問題や民主主義、そして自由について考えるための問題提起が本作には含まれているのである。

 ……と、いってしまうと重く感じてしまうかも知れないが、本作は雰囲気だけでも充分に面白い作品で、登場するキャラクターも個性があり魅力的だ。肩ひじを張ってプレイする必要は一切ないので安心して欲しい。因みに、本作は本編に加え、その後を描く2つのDLCも同梱されている。DLCの内容は非常に続きが気になるものとなっていたので、今後さらなる拡張にも期待したい。

管理社会を舞台にしたストーリーは緊迫した内容が続く

 本作は文字通り「プレイできるアメコミ」となっており、高い没入感でもって緊迫したストーリーを楽しむことができる作品となっている。アクション目的で購入すると物足りなさを感じるかもしれないが、コミックとゲームをシームレスに行き来するようなゲーム性は表現として面白いので、気になった方には是非プレイして欲しい。

 完全に余談だが、こうした勧善懲悪ではないアメコミに触れると、筆者は「ウォッチメン」を思い出す。こういったアメコミが好きな方には刺さるタイトルだと思うので、是非プレイしていただきたい。