【特別企画】

「Empire of Sin」は、“ギャング版戦略SLG”だ!

あのときカポネの決断が違ったら……シカゴに新たな歴史を刻め!

 今回はシカゴ統一を目指すギャングとして、アル・カポネをしっかり進めてみた。アル・カポネがシカゴにやってきてタクシーに乗るところから物語は始まる。そこで前述のフランキーがニューヨークからシカゴに来ている事を、道中のタクシー車内の会話で知り、タクシー運転手の悩みを解決する代わりにフランキーについての調査を依頼する事になる。

 タクシー運転手から得た情報を元に調査を続け、ついにフランキーの居場所を見つけて問い詰める展開になる。その後もこのフランキーがアイルランド系ギャングのホワイト・ハンドからカネを盗んだ挙句、捕らえられてカポネに助けを求めるというどうにも困った展開が続く。

【フランキーとの因縁】
史実ではシカゴでの暗殺仕事の際にはフランキー・イェールの名前が出る事が多いが、アル・カポネから呼ばれもせずにきたようなエピソードは特にない。本作のミッションではアル・カポネに内緒でシカゴに来たという設定だ
話を進めていくとアイルランド系ギャングのホワイト・ハンドにカネを盗られたフランキーがそれを取り返そうとして、逆にホワイト・ハンドに捕らえられてしまう
フランキーを助けに来ると、むしろホワイト・ハンドのギャングからカネを盗んだのはフランキーだと語られる。10万ドルを渡す事で戦闘せずにフランキーを救う事も可能だが、序盤のうちに進めてしまうと、そんなカネはないため、戦闘一択となる

 さらにミッションを進めると、密造酒を運ぶトラックがハイジャックに合い、積まれていた酒が強奪されるという事件も発生するようになる。当初はフランキーのミッションとは無関係と思っていたのだが、調べていくと、トラックのルートを変更するようにフランキーが指示したという事実が明らかになったり、盗難されたトラックを調べると、そこにはフランキーが愛用する葉巻が落ちているなど、フランキーの裏切りの証拠が次々と出てくるのだ。

 しかもこれは史実でもフランキーが最終的にアル・カポネに暗殺されるきっかけとなった密売利権のいざこざの際に、実際に発生した事件と酷似するのだ。

 ところが、初回プレイではここの進め方を誤ってしまった。密造酒強奪事件の犯人を問い詰めるタイミングで何度かフランキーに会って話する機会があったのだが、選択肢にはフランキーと戦闘開始する項目が用意されていたにも関わらず、ここで殺さずに泳がせてしまったのだ。

 本来ならここで一気にフランキーを殺しておくべきだったが、何しろ事件の発生時期が早すぎる。史実では1927年に発生した事件だが、ゲーム内の時間はまだ1921年だったからだ。もう少しチャンスがあるのではないかとギリギリまで生かしてストーリーを続けた結果、最終的にフランキーはアル・カポネに暗殺される事なく、古巣のニューヨークへ逃げ帰ってしまったのだ! こんなに悔しいことはない!

【フランキーの裏切り】
その後、密造酒を積んだトラック強奪事件が起こるようになる。最初のうちはまさかフランキーの仕業とは思っていなかったのだが……
聞き込みを続けると、置き去りにされたトラックが発見されたので、調査しに行くと、そこにはフランキーの愛用の葉巻が……動かぬ証拠じゃねーか!
フランキーを問い詰めようとすると、醸造所の人間に犯行を押し付けてきた! ここで逃がすと手遅れになってしまい、フランキーはまんまとニューヨークに逃げ帰ってしまう

 もし、ここでフランキーを処刑するとどうなるかもやり直してみた。すると、その場で戦闘モードに切り替わり、処刑のためのバトルが開始される。やはり知名度のあるキャラクターには相応の扱いが用意されているようだ。とは言うものの、史実でも処刑されたフランキーが圧倒的に不利な状況なのは間違いない。イベント発生場所がカポネの拠点内のため、他の護衛たちもこちらの味方となるので、多勢に無勢、あっさり処刑される。

 ここで終わりかと思いきや、さらにフランキーの隠しカネまで話は及び、最終的にはホワイト・ハンドから盗んだカネを隠していたという事実が発覚し、10万ドルもの大金がもらえるという嬉しい展開になった。フランキーには容赦ない処置がおススメだ。

 このようにミッションについてはオリジナリティが高い印象を受けたが、そもそも自由度の高い本作の場合、史実と異なるアクションができるところは「ゲームとして有利か」、「史実にこだわるか」という選択肢がある。、例えば、史実と異なる展開としてフランキーを逃がしてしまった場合も、これによりミッションを早めに終わらせて、よりスムーズに勢力拡大に向けてのアクションが再開できるメリットもある。プレーヤーはどうするか? 敢えて史実にこだわることでの楽しさが見えてくるだろう。

【史実とオリジナルどちらを選ぶ?】
史実ではアル・カポネ自ら手を下したなんて話はないが、本作では最後の引導を渡す役割をアル・カポネ自身の手に委ねられている。まぁ、この後逃げようとしたフランキーを護衛が撃ち殺してしまうわけだが……
最後にフランキーの隠しカネである10万ドルを発見。やっぱりクソ野郎だったか。史実よりは大分早いが、フランキーはどう足掻いても処刑される運命だったのかもしれない

様々なシカゴの“IF”が楽しめる! あえて史実通りにやってみるのも面白そう

 本作では勢力を拡大するほど、管理するべき施設が増えていく。地域全体についても、繁栄度を上げることで嗜好をより高級にし、より多くのカネが潤滑に回るようにする必要がある。

 こうした地域の管理だけでもカネと時間がかかるのに、他のギャングと敵対してしまうと、リアルタイムでガンガンと施設に襲撃がくるようになる。敵対組織からの襲撃が発生すると、自分のギャングがどこにいようと、そちらの施設に画面が切り替わり、施設を護衛する部下のみを使ってのバトルで防衛する必要があるため、正直非常に忙しく、息つく暇もなくなってしまう。

 このように敵対したギャングをどうにかするためには、外交によって休戦協定を結んだりといった交渉が必要になる。細かい話ではビジネスなどの協定を結ぶことで相互の組織の信頼関係を築くといった地味な活動が後ほど効いてくる場合もあるなど、外交にも色んなやり方があるため、知るほどに奥の深さが見えてくる。正に群雄割拠の戦国武将たちのような「世渡り」が重要な鍵を握るようになってくる。

 逆にこうした敵対するギャングの本拠地を襲撃して、トップを消す事で組織ごと潰すというシンプルな選択肢もある。勢力差などがあると厳しい戦いになるが、潰してしまえば一気に風通しがよくなるのは間違いない。その一方で友好関係にあったギャングを全て敵に回してしまう危険性があり、襲撃のタイミングも難しい。

【史実とは異なるギャングを覇者に】
オバニオンとジェンナ兄弟がまさかの共闘!? こういった“IF”が楽しめるのも本作ならではの魅力
その後、オバニオンでゲームを進めていたら、ジェンナファミリーが壊滅してしまった! まさかオバニオンよりも先に死んでしまうとは……想定外の“IF”が飛び出してビックリだ
主人公格のアル・カポネであっても無茶な特攻したりすると、あっさり死んでしまう。もし史実でも1921年にアル・カポネが死んでいたら、アメリカのギャング界の歴史は大きく変わったかもしれない

 こんな感じで「エンパイア・オブ・シン」では歴史上で敗者になってしまったギャングを覇者にするべくプレイできる。弱小大名を時代の覇者にできる戦略シミュレーションそのままの遊び方ができるのだ。

 そして、もしアル・カポネがもっと短気でどことも外交せずに己の力だけでシカゴを統一したら、もしディーン・オバニオンがもっと温厚な面も持ち合わせていて、外交もスムーズに行なっていたら……などシカゴの“IF”も色々と楽しめる。

 1920年代のギャングたちのエピソードに詳しい人ほど、こうした“IF”へのチャレンジは非常に魅力的に感じられるだろう。日本史好きの人が天下統一からほど遠いはずの武将のいい面を伸ばして天下を獲るプレイができたように、正にギャング版戦略SLGとしての楽しみ方が行なえるというわけだ。

 こうした歴史上の“IF”をより深く堪能するやり方として、リアルな史実をもとにした縛りプレイをおススメしたい。ディーン・オバニオンを選んだ際にあえて、初期の段階からアンジェロ・ジェンナと敵対関係になったり、「下宿」は一切使わずにゲームを展開するなどのプレイスタイルで史実通りに進めてみると、シカゴのギャング闘争の過酷さがよりリアルに味わえる事間違いなしだ。こうした遊び方を自由に選べるのも本作の魅力の1つだ。

 こうしたキャラクターの魅力だけでなく、1920年代、禁酒法時代のシカゴの歴史を学ぶ上でも本作は非常に役に立つ。例えば、禁酒法はあくまで通称であり、実際はボルステッド法と呼ばれる法律だったという事実や、あっさりと買収に応じてしまう警察や新聞の腐敗の現実、下宿に抗議する婦人団体との接触など、当時本当にあった可能性の高い事件が次々と勃発するので、社会の勉強にもなるし、ゲームを通じて戦略も学べるしで、18歳以上の学生や勉強したい人たちにうってつけの“教材”とも言える。

【史実を知ると一層楽しい】
警察がお忍びで密造酒の調査をしている場合もある。ボルステッド法というのがいわゆる禁酒法の事を指す
「下宿」なんて不潔よ! と騒ぎたてるご婦人団体が施設の前でデモ活動してくる場合も。放置すると施設の収益が下がるため、うまく対応する必要がある
新聞記者と接触する事も多々ある。普通に取材を受ける場合もあれば、カネを払う事で自分たちの事を優位に書いてもらえるように買収することもできる

 今回は紹介しなかったが、ナンバー賭博を牛耳る“ハーレムの女王”として、ステファニー・セントクレアなど他にも実在のギャングは登場する。オリジナルのギャングもくせ者揃いなので、様々なキャラクターでやってみるのがいいだろう。

 ビジュアルの好きなキャラで遊んだり、史実に登場するギャングを使ったりと、視点を変えて何度もプレイしたくなる魅力が「エンパイア・オブ・シン」にはある。是非、1920年代シカゴのギャング闘争に殴り込みをかけてみてはいかがだろうか?

【史実の要素はたっぷり】
今回の紹介からは漏れてしまったが、女性ギャングの1人として、ナンバー賭博を牛耳った“ハーレムの女王”としても名高い「ステファニー・セントクレア」も本作に参戦している
ステファニーの固有スキル「銃殺隊」は、範囲内の射撃可能なメンバー全員が一斉にターゲットを攻撃するというスキル。仲間の数が増えれば増えるほど威力を発揮するので、後半になるほどその効果が大きくなるだろう
フランス人とアフリカ人の血を引く彼女は、違法な宝くじや賭博場を設立して、ハーレムを守ろうと戦った女ギャング。ギャング同士の抗争だけではなく、腐敗した警察にも敵対したギャングとして名高い。なお、史実にも登場するバンピーは本作にも登場し、頼もしい味方として彼女の手助けをしてくれる……はずだ。またライバルとして登場するダッチ・シュルツの一味についても史実に存在するギャングだ