【特別企画】
「Empire of Sin」は、“ギャング版戦略SLG”だ!
2021年2月24日 12:00
あのときカポネの決断が違ったら……シカゴに新たな歴史を刻め!
今回はシカゴ統一を目指すギャングとして、アル・カポネをしっかり進めてみた。アル・カポネがシカゴにやってきてタクシーに乗るところから物語は始まる。そこで前述のフランキーがニューヨークからシカゴに来ている事を、道中のタクシー車内の会話で知り、タクシー運転手の悩みを解決する代わりにフランキーについての調査を依頼する事になる。
タクシー運転手から得た情報を元に調査を続け、ついにフランキーの居場所を見つけて問い詰める展開になる。その後もこのフランキーがアイルランド系ギャングのホワイト・ハンドからカネを盗んだ挙句、捕らえられてカポネに助けを求めるというどうにも困った展開が続く。
さらにミッションを進めると、密造酒を運ぶトラックがハイジャックに合い、積まれていた酒が強奪されるという事件も発生するようになる。当初はフランキーのミッションとは無関係と思っていたのだが、調べていくと、トラックのルートを変更するようにフランキーが指示したという事実が明らかになったり、盗難されたトラックを調べると、そこにはフランキーが愛用する葉巻が落ちているなど、フランキーの裏切りの証拠が次々と出てくるのだ。
しかもこれは史実でもフランキーが最終的にアル・カポネに暗殺されるきっかけとなった密売利権のいざこざの際に、実際に発生した事件と酷似するのだ。
ところが、初回プレイではここの進め方を誤ってしまった。密造酒強奪事件の犯人を問い詰めるタイミングで何度かフランキーに会って話する機会があったのだが、選択肢にはフランキーと戦闘開始する項目が用意されていたにも関わらず、ここで殺さずに泳がせてしまったのだ。
本来ならここで一気にフランキーを殺しておくべきだったが、何しろ事件の発生時期が早すぎる。史実では1927年に発生した事件だが、ゲーム内の時間はまだ1921年だったからだ。もう少しチャンスがあるのではないかとギリギリまで生かしてストーリーを続けた結果、最終的にフランキーはアル・カポネに暗殺される事なく、古巣のニューヨークへ逃げ帰ってしまったのだ! こんなに悔しいことはない!
もし、ここでフランキーを処刑するとどうなるかもやり直してみた。すると、その場で戦闘モードに切り替わり、処刑のためのバトルが開始される。やはり知名度のあるキャラクターには相応の扱いが用意されているようだ。とは言うものの、史実でも処刑されたフランキーが圧倒的に不利な状況なのは間違いない。イベント発生場所がカポネの拠点内のため、他の護衛たちもこちらの味方となるので、多勢に無勢、あっさり処刑される。
ここで終わりかと思いきや、さらにフランキーの隠しカネまで話は及び、最終的にはホワイト・ハンドから盗んだカネを隠していたという事実が発覚し、10万ドルもの大金がもらえるという嬉しい展開になった。フランキーには容赦ない処置がおススメだ。
このようにミッションについてはオリジナリティが高い印象を受けたが、そもそも自由度の高い本作の場合、史実と異なるアクションができるところは「ゲームとして有利か」、「史実にこだわるか」という選択肢がある。、例えば、史実と異なる展開としてフランキーを逃がしてしまった場合も、これによりミッションを早めに終わらせて、よりスムーズに勢力拡大に向けてのアクションが再開できるメリットもある。プレーヤーはどうするか? 敢えて史実にこだわることでの楽しさが見えてくるだろう。
様々なシカゴの“IF”が楽しめる! あえて史実通りにやってみるのも面白そう
本作では勢力を拡大するほど、管理するべき施設が増えていく。地域全体についても、繁栄度を上げることで嗜好をより高級にし、より多くのカネが潤滑に回るようにする必要がある。
こうした地域の管理だけでもカネと時間がかかるのに、他のギャングと敵対してしまうと、リアルタイムでガンガンと施設に襲撃がくるようになる。敵対組織からの襲撃が発生すると、自分のギャングがどこにいようと、そちらの施設に画面が切り替わり、施設を護衛する部下のみを使ってのバトルで防衛する必要があるため、正直非常に忙しく、息つく暇もなくなってしまう。
このように敵対したギャングをどうにかするためには、外交によって休戦協定を結んだりといった交渉が必要になる。細かい話ではビジネスなどの協定を結ぶことで相互の組織の信頼関係を築くといった地味な活動が後ほど効いてくる場合もあるなど、外交にも色んなやり方があるため、知るほどに奥の深さが見えてくる。正に群雄割拠の戦国武将たちのような「世渡り」が重要な鍵を握るようになってくる。
逆にこうした敵対するギャングの本拠地を襲撃して、トップを消す事で組織ごと潰すというシンプルな選択肢もある。勢力差などがあると厳しい戦いになるが、潰してしまえば一気に風通しがよくなるのは間違いない。その一方で友好関係にあったギャングを全て敵に回してしまう危険性があり、襲撃のタイミングも難しい。
こんな感じで「エンパイア・オブ・シン」では歴史上で敗者になってしまったギャングを覇者にするべくプレイできる。弱小大名を時代の覇者にできる戦略シミュレーションそのままの遊び方ができるのだ。
そして、もしアル・カポネがもっと短気でどことも外交せずに己の力だけでシカゴを統一したら、もしディーン・オバニオンがもっと温厚な面も持ち合わせていて、外交もスムーズに行なっていたら……などシカゴの“IF”も色々と楽しめる。
1920年代のギャングたちのエピソードに詳しい人ほど、こうした“IF”へのチャレンジは非常に魅力的に感じられるだろう。日本史好きの人が天下統一からほど遠いはずの武将のいい面を伸ばして天下を獲るプレイができたように、正にギャング版戦略SLGとしての楽しみ方が行なえるというわけだ。
こうした歴史上の“IF”をより深く堪能するやり方として、リアルな史実をもとにした縛りプレイをおススメしたい。ディーン・オバニオンを選んだ際にあえて、初期の段階からアンジェロ・ジェンナと敵対関係になったり、「下宿」は一切使わずにゲームを展開するなどのプレイスタイルで史実通りに進めてみると、シカゴのギャング闘争の過酷さがよりリアルに味わえる事間違いなしだ。こうした遊び方を自由に選べるのも本作の魅力の1つだ。
こうしたキャラクターの魅力だけでなく、1920年代、禁酒法時代のシカゴの歴史を学ぶ上でも本作は非常に役に立つ。例えば、禁酒法はあくまで通称であり、実際はボルステッド法と呼ばれる法律だったという事実や、あっさりと買収に応じてしまう警察や新聞の腐敗の現実、下宿に抗議する婦人団体との接触など、当時本当にあった可能性の高い事件が次々と勃発するので、社会の勉強にもなるし、ゲームを通じて戦略も学べるしで、18歳以上の学生や勉強したい人たちにうってつけの“教材”とも言える。
今回は紹介しなかったが、ナンバー賭博を牛耳る“ハーレムの女王”として、ステファニー・セントクレアなど他にも実在のギャングは登場する。オリジナルのギャングもくせ者揃いなので、様々なキャラクターでやってみるのがいいだろう。
ビジュアルの好きなキャラで遊んだり、史実に登場するギャングを使ったりと、視点を変えて何度もプレイしたくなる魅力が「エンパイア・オブ・シン」にはある。是非、1920年代シカゴのギャング闘争に殴り込みをかけてみてはいかがだろうか?
©2020 Paradox Interactive. ©SEGA. All rights reserved.
Developed by Romero Games.