【特別企画】
「Empire of Sin」は、“ギャング版戦略SLG”だ!
史実を学べもっと楽しい、ギャング達のシカゴ統一
2021年2月24日 12:00
- 【Empire of Sin】
- 開発元:Paradox Interactive/Romero Games
- 発売元:セガ
- プラットフォーム:PS4/Nintendo Switch
- 発売日:2月25日発売
- 価格:5,990円(税抜)
1920年代、禁酒法の時代のシカゴを舞台にしたギャングたちのターン制ストラテジーゲーム(クライムストラテジー)「Empire of Sin(エンパイア・オブ・シン)」が2月25日発売に発売される。
本作は14人ものプレイ可能なギャングから1人を選び、シカゴの全てを支配するボスを目指す、「信長の野望」のような戦略シミュレーションゲームである。そしてギャングの中には実際に覇者となったアル・カポネの他、何人もの実在の人物が含まれている。実際の歴史と異なり、自分の好きなギャングでシカゴを支配させることも可能なのだ。その中でも、「アル・カポネ」、「ディーン・オバニオン」、「アンジェロ・ジェンナ」の3人は特に注目だ。というのも彼らにはそれぞれ直接の因縁がある。
まず「暗黒街の顔」としてシカゴを牛耳ったアル・カポネだが、暗黒街のトップになる過程において、アンジェロ・ジェンナとは良好な関係を築いていたようだ。酒の密売についてはライバル的な関係だったが、その一方でシチリア系アメリカ人の互助組織、シチリア同盟(ウニオーネ・シチリオーネ)のボスとして、アンジェロ・ジェンナを推薦するなど、よきライバルといった感じの付き合いをしていた。ディーン・オバニオンとも最初の頃は手を組んで良好な関係を築いていたとのことだ。
逆にディーン・オバニオンだが、アンジェロ・ジェンナと彼の身内のジェンナ6兄弟とは早い段階から縄張り争いが原因で敵対関係となっており、アル・カポネたちが彼らの仲裁をしてバランスを保っていた。
こうした複雑な3者の関係性は、ディーン・オバニオンがアル・カポネたちを裏切った事で崩れ去る。具体的にはある日、ディーン・オバニオンがとある醸造所をアル・カポネたちに安価で売却した事がきっかけだ。その数週間後、この醸造所に警察の強制捜査が入ったのだ。実はこの醸造所に警察の強制捜査が入る事は以前から決まっていたが、ディーン・オバニオンはこの情報を知った上であえて売りつけたのだ。しかもその話がアル・カポネの耳に入る。
激怒したアル・カポネはジェンナ6兄弟と共闘し、ディーン・オバニオンを暗殺する。その後、アンジェロ・ジェンナもディーン・オバニオンの跡目を継いだジョージ・モランに暗殺されてしまう。
といった感じで因縁だらけの3人だが、果たしてゲーム内ではどのように描かれるのだろうか。今回はゲームとしての“シカゴ統一”の要素を見せつつ、大きなセールスポイントである「史実の要素」にフォーカスしていきたい。
小規模の施設、少ない仲間からギャングの能力を活用して成り上がれ!
「エンパイア・オブ・シン」の基本的な流れは、シカゴにやってきたギャングたちが単独で、または2人の仲間とともに1つの拠点と醸造所、もぐり酒場を手に入れるところからはじまる。最初のチュートリアルをプレイする事で2人の仲間が前金なしで使えるようになるのだ。この2人の仲間を手に入れるところはチュートリアルで、あえてスキップすることで、より厳しい条件、たった1人からのスタートも可能だ。
ゲームの序盤は限られた人数の部下と少ない施設でスタートするが、ここから様々な方法でビジネスが行なえる施設を増やしていき、仲間を増やして育てつつ、勢力を拡大していく。そして同じように勢力を伸ばす他のギャングたちとは時には対立し、時には友好関係を築きながら、最終的にシカゴ全域を手中に収めるのが本作の目標となる。そう、14人のプレイアブルなギャング達は、そのまま「ライバル」なのである。
登場する14人のギャングたちはそれぞれが特殊なスキルが利用可能で、それを使う事で戦闘が有利に進められるし、得意なビジネスや不得意なビジネスなども設定され、差別化されている。実在のギャングたちについては、史実に基づく形でキャラクターの特徴やスキル構築が行なわれている。例えばアル・カポネら3人の場合、全員が密造酒で富と名声を得た連中のため、3人とも醸造所の運用に関してボーナスがつくようになっている。
加えて史実と絡んでいる特徴としては、生前にそのキャリアをポン引きからスタートしたアル・カポネは「下宿」の環境をより安く整えられるボーナスが付く。また、友好関係を結んでいたアル・カポネたちをガッツリ裏切ったディーン・オバニオンには、外交ボーナスとして休戦期間を短くできる「裏切り者」という名の付いたボーナスが用意されている。
戦闘時に使用できるボスアビリティにも個性が出ている。アル・カポネは1929年頃に、商売敵の相手を7人殺害する「聖ヴァレンタイン・デーの虐殺」という凄惨な事件を起こしており、こうした残忍さを連想させるスキル「弾丸の雨」が使える。指定範囲内に弾丸を連続発射し続けることで、範囲内の全ての敵にダメージを与え、さらに制圧できる強力なスキルだ。このスキルが発動している間、範囲内の敵は自身の行動時、少しでも動こうとするとそのタイミングで再度弾が当たってダメージを受けるため、範囲内の敵を一掃するのに役に立つ。
冷徹で多くの敵を自らの手で闇に葬ったとされるディーン・オバニオンは、爆発性の散弾銃で範囲内の敵にダメージを与え、さらにダメージを喰らった相手はノックバックしてアーマー破壊まで行なわれるスキル「冒涜」という凶悪なスキルを持つ。
ジェンナ6兄弟の末っ子で荒事担当だったアンジェロ・ジェンナは、1人または複数の相手に対して投げナイフを連続で投げる「ナイフの扇」という残虐なスキルが使える。兄弟を総称して「恐怖のジェンナ兄弟」と呼ばれ、アンジェロ自身は「ブラッディ・アンジェロ」と呼ばれただけの事はある。
3人を実際にそれぞれ交互に使ってみた感触だが、総合的に見てもアル・カポネはやはり非常に使いやすい。次々と出てくる敵対勢力に対して、外交もスムーズに進めやすいし、本作の主人公のような扱いだ。戦闘スキル「弾丸の雨」もかなり強力で壁の向こうの相手なども巻き込める点が魅力だ。反面、射程距離があまり長くないので、範囲の広さを活かして敵がある程度固まったところで使うのがいいだろう。
ディーン・オバニオンは休戦期間が短い事もあるので、外交よりもとにかく好戦的に迫る敵を次々と倒していきたい武闘派な人向けのキャラクターだろう。序盤では苦戦する事も多いが、各施設の警備強化を優先して、常に戦闘とカネを優先しながらプレイを続けて、組織が強くなれば以降はかなり楽にプレイできるようになる。戦闘スキル「冒涜」は範囲攻撃な上に命中率はほぼ100%、壁の向こうの敵も対象にできるほか、アーマー破壊の射撃能力ということで使いやすくて戦闘向きだ。
アンジェロ・ジェンナの「ナイフの扇」もスキル的にはかなり使いやすい。何より敵が1人でも複数でも対応できるのが魅力だ。ナイフということで命中率が高くなかったり、障害物があると使えないなどの難点もあるが、使い勝手はかなりいいし、ナイフをシュバッ! シュバッ! と投げるビジュアルもカッコいい。外交もスムーズに進めやすく、ゲーム上では帽子と赤いコートがカッコいいビジュアルも満点のキャラクターとなっている。
ゲームではキャラクターの特性を活かし施設を増やし資金を得、他のギャングとの関係性を考えながら自分の勢力を伸ばすという共通の進め方になるのだが、アル・カポネならでは、ディーン・オバニオンならではの要素を濃厚に感じさせるのが「ミッション」だ。史実を活かしたミッションは、プレイするギャングへの想い入れを強くしてくれる。
7人目のジェンナ兄弟? オリジナル要素を盛り込むことで人物を一層色濃く描写
本作の魅力は何といっても「ミッション」だ。ターン制ストラテジーながら、戦闘以外の時は街中を自由に動き回れる本作において、特定の相手との会話で物語が進むミッションは非常に相性がいい。全ギャング共通のミッションも用意されているが、ギャング毎にメインのストーリーミッションも用意されている。
このストーリーミッションが熱いのだ、本作ならではのオリジナリティのあるストーリーと史実とをうまい感じでミックスした内容になっており、各ギャングたちの史実や語られている性格などを知っていると、ニヤリとする内容になっているのが本作の魅力を更に引き立てている。
例えば、ゲームとしての分かりやすさを考慮してか、アル・カポネはシカゴに来た直後からボスとして活動できるようになっている。史実では、アル・カポネがシカゴにやってきた時は、まだボスのジョニー・トーリオが健在で、アル・カポネは下っ端としてポン引きなどを真面目にこなしていた頃だが、ゲームではジョニーは一切登場しない。代わりにニューヨーク時代のボスであり、アル・カポネをギャングの世界に引き入れた実在のギャング、フランキー・イェールとの因縁が本作のメインストーリーでは展開する事になる。
こうした史実を織り交ぜつつもゲームオリジナルとなるストーリー展開は他のギャングたちのミッションでもうまく表現されている。アンジェロ・ジェンナは警察に捕まってしまったガブリエルという名の兄弟を助けるというオリジナルストーリーが展開する。兄弟同士の絆が深かったとされるジェンナ兄弟の史実を元にしたエピソードだが、史実ではガブリエルという名前の人間がジェンナ6兄弟には存在しないのは面白いところ。……7人目なのだろうか? また、ストーリーを進める際に警察を買収するといった展開になるが、当時の腐敗した警察組織の内情が垣間見えるところもまさに“史実通り”とニヤリとさせられる所だ。
ディーン・オバニオンのメインミッションは、神父からの依頼で「下宿」の襲撃を行なうというものだ。敬虔なクリスチャンとしても知られるディーン・オバニオンらしいストーリー展開だが、襲撃を共にする相棒は史実でも後にオバニオンの後を継ぐ、ジョージ・モランであり、さらには襲撃する下宿の管理者がアル・カポネの仲間で、先ほども名前が出たフランキー・イェールなのだ。
しかもフランキーはオバニオン暗殺を行なったとされる人物であり、いきなりラスボス登場のようなすごい絡め方だ。一方でフランキーは確かにこの時期シカゴとニューヨークを行なったり来たりしているが、暗殺以外のフランキーにまつわるエピソードはあまりなく、この辺りの史実でもありそうな絡め方でリアリティを出しているのが非常に想像力をくすぐる。さらにミッションのラストではフランキーを倒す展開が待っており、暗殺相手を先に倒してしまうという衝撃の“IF”が味わえてしまうのだ。
このようにミッションでは、史実を単純に追うのではなく、史実を知らなくても楽しめるストーリー構成をベースに、ほどよいスパイスとして歴史的事実をうまく活かすことで、史実を知っているとさらに深く楽しめる構成に仕上がっている。
©2020 Paradox Interactive. ©SEGA. All rights reserved.
Developed by Romero Games.