【特別企画】
「The Last of Us Part II」先行プレイレビュー
人間ならではの動き、空気感を感じるグラフィックス、狡猾なAI……進化に圧倒される
2020年6月1日 22:01
- 6月19日発売予定
- 価格:
- 【通常版】
- 7,590円(税込)
- 【デジタルデラックスエディション】
- 8,690円(税込)
「The Last of Us Part II」の発売日がいよいよ迫っている。2018年のE3で発表されてから2年近い時が経ち、ついにその姿を見せようとしているのだ。様々な情報が出てきて盛り上がりを見せる中、今回、ゲーム序盤の先行プレイレポートをお届けしたい。
「The Last of Us」は2013年にプレイステーション3専用タイトルとして登場し、世界中から称賛を浴びたタイトルだ。ウィルスが蔓延し人々が怪物化し崩壊した世界を描く殺伐としたストーリー、真摯なテーマ性。そして様々なゲーム性を盛り込んだ濃密なアクション。「The Last of Us」は従来のアクションゲームの水準を一気に跳ね上げた作品と言える。
本作はその正統続編になり。前作の5年後のシーンからゲームが始まる。今回そのストーリーを語ることはできない。あえて公式サイトからの引用とするが、「あるすさまじい出来事が平和を崩壊させたとき、エリーの無慈悲な旅が再び始まる」というキーワードから様々な想像をふくらませて欲しい。
今回筆者は発売に先がけてゲームの一部分をプレイすることができた。ここに至るストーリーなどは紹介できないが、体験できたところはゲームの序盤であるという。崩壊したシアトルで、対立する人間達、そして感染者の中を進んでいくこととなる。この部分だけでもしっかりと「The Last of Us Part II」の進化、その"凄み"を体験できたように思う。早速レポートしていこう。
圧倒的なビジュアル表現はさらに進化! “リアルさ”がさらに増す
今回体験できたのはシアトルでエリーが「ワシントン解放戦線(WLF)」という集団の病院にあるキャラクターを探しにいくパートだ。
前作から5年、社会は一度崩壊したがその後様々な勢力が生まれている。「WLF」は先日のState of Playで情報が公開された組織で、軍から奪った装備で武装している民兵集団だ。彼らは街の大半を占拠しており、侵入者は投獄または殺害してしまう凶暴な集団だ。
そしてこのパートには「セラファイト」という集団も登場する。この集団はWLFと対立している狂信者集団で、自らの手で顔に深い傷を刻んでいる。生い茂った草木に隠れたり、弓矢などの消音武器を使って戦うのが特徴だ。この対立する勢力の中をエリーは進んでいくこととなる。
このパートの舞台となるのはシアトルの中でもアパートや商店が並ぶ、ちょっとした開けた町のような場所だ。郊外でもなく、高層ビルが立ち並ぶダウンタウンでもなく、その中間をイメージしていただければと思う。
文明が崩壊する前はおそらく人々が行き交い、賑やかな雰囲気であったことが遺された建物から伺える。だが文明崩壊から時間が経っているため、草木は生い茂り、一部水没している場所があったりとかなり自然の侵食が進んでいる。またこのパートは時間帯のせいか全体的に薄暗くなっているのが印象的だ。
実際に「The Last of Us Part II」に降り立って最初に感じたのは圧倒的なビジュアルの表現だ。光がそれほど入っていない陰鬱な雰囲気で、エリアは霧のような靄がかかっており視界は少し暗くなっている。
グラフィックスのレベルの高さはもちろん、カメラワークや光の位置など様々な要素に非常にこだわっているのがわかる出来で、油断すると「あれ、これは実写だったっけ?」と思ってしまったほどだ。
特に筆者が関心したのは「モーション」だ。特に戦闘時のモーションの豊富さと自然さがすごい。あるシーンでエリーはハンマーを持った大男と対峙することになる。男はこのハンマーで攻撃してくるのだが、下から振り上げたり、横に薙ぎ払ったりと攻撃のバリエーションが多く、それが自然に表現されており、非常に"人間らしい"動きを見せる。
それに対するエリーの動きも豊富で、タイミング良く回避ボタンを押すとバックステップで攻撃を避けたり、あるいは頭を屈めて避けるモーションなどが敵の攻撃にあわせて自然に出る。また攻撃を食らってしまったときも当たりどころによって、前かがみになったり、両手を地面についてしまったりと、エリーにも人間らしさを感じた。
筆者はたまたま巨大なガラスの近くで大男を倒すことに成功したのだが、大男がガラスにもたれかかるように倒れるとそのガラスは割れ粉々になった。一連の流れが非常に自然で表現力の高さに関心した。
またエリアの作り込みにも強いこだわりを感じた。細かいポスターや看板などまで丁寧に描かれており、人々が生きていたであろう痕跡を表すのはもちろん、“リアルっぽさ”を感じさせる要素の1つになっている。
“リアルっぽさ”といえばもう1つ面白かったのがそれぞれのNPCに名前がついているような挙動を見せたことだ。主要なNPCに名前がついているのは当然としても、いわゆるモブ的なNPCにも名前がついているようなのだ。そういったといころもリアルさを感じさせる要素だった。
戦闘の幅がさらに広がり、サバイバルアクションはさらに刺激的に!
「The Last of Us」といえばシビアなサバイバルアクションもポイントのひとつだ。単純に銃撃で敵を倒すのではなく、敵に気づかれないように忍び寄ったり、わざと物音を立てて敵を誘導したり、敵の行動を予測して作戦を立てたりする。場面での正解は1つではなく、自分の得意なプレイスタイルを考えたり、持っている装備で作戦を考えたり、地形を利用することでさらに選択肢は増えていく。前作にもあった選択肢の幅が、今作ではさらに広がっているのだ。
またシチュエーションのめまぐるしい変化、状況に対して臨機応変を求められるのも「The Last of Us」の面白いところ。このシアトルでも障害物が多い建物の中だったり、草木が生い茂っている道路のエリアだったりと、刻々とシチュエーションが変わり、戦い方のコツも変化する。変化する状況に合わせ戦略を練ったり、利用できるオブジェクトを探すのが楽しく、改めてレベルデザインに感心させられた。
戦闘が起きるエリアパート、ムービーシーン、ちょっとした探検が必要なエリアなどゲームのリズムもテンポ良く変化する。こういった要素は前作から引き継がれている部分ではあるが、選択の幅、できるアクション、キャラクター達のリアクションや演出の強化など、本当にあらゆる要素が進化していると実感させられた。
戦闘では弓などの消音武器を使ったり、相手の背後から急所を狙って音を立てずに敵を倒していくステルス戦法や、銃弾などの資源的に効率的かは置いておいて、正面からハンドガンやショットガンを使って敵を倒していく正面突破など戦い方の幅は広い。もちろん耳を澄ますギミックも登場する。
前作からの進化を強く感じたのがフィールドを生かした戦い方だ。窓ガラスを割って建物に入ったり、高台の上から銃で攻撃したり、背丈の高い草に隠れて敵の視界を遮るなど、地形を生かした新たな戦い方ができた。
今回プレイした範囲では「WLF」と「セラファイト」、そして感染者の「ストーカー」と「クリッカー」との戦闘シーンがあった。まず共通して言えるのは敵のAIが進化して戦い方がさらに狡猾になっていることだ。人間は連携を取りながら横に広がりながらこちらを追い詰めてくるAIの人間らしさ。これは特筆すべきポイントだ。
WLFはハンドガンやライフル、近接武器などを使ってこちらを攻撃してくる、いわばスタンダードな存在だ。一方のセラファイトは消音武器の弓矢を使って攻撃してくるなど、厄介な攻撃をしてくる。というのも銃声であれば前後左右くらいの大雑把な位置をとっさに把握できるが、弓矢だと大きな音がしないので一瞬混乱してしまう。
また矢の攻撃を受けると時々矢が刺さりっぱなしになり引き抜くまで持続ダメージを負うという要素もある。すぐに矢を抜きたいところだが抜いている最中は無防備になるので別の敵に攻撃されてしまう、というジレンマがあるのだ。どちらも手強い存在で、さらに歯ごたえのある戦闘になっている印象だ。
窓ガラスを割れば大きな音がなるし、高台にいれば無敵というわけでもない。また草の中に隠れていても音を出したり正面から近づきすぎると敵に気づかれる。持っている武器、クラフトできるアイテム、敵の数……様々な要素を考慮し、最適な行動を取るのが面白さなのだが、この短いパートの中でも前作に比較して選択肢が大きく広がっていることを感じた。
またフィールドを活かす以外にも新アイテムの追加で戦い方の幅が広がっている。個人的に印象的なのはサイレンサーだ。ハンドガンに装着できるアタッチメントで、発砲音を抑えることができる。ステルス戦法には非常に役に立つアタッチメントなのと、何よりクラフトで制作できるのが大きい。
弓矢も消音武器なのだが、弓は構造上の理由から、構えてから発射までがどうしても時間がかかってしまう。ハンドガンであれば狙いを定めてサッと撃てるのでこの差は大きい。一方で弓矢には矢をクラフトで制作できるというメリットもあるので、どちらが良い悪いではなくその場の状況にあわせて使いたい。
また戦闘で印象的だったのが回避だ。敵の攻撃にあわせてL1ボタンを押すと敵の攻撃を避けることができる。敵が単体で近接攻撃のみの場合であれば敵の攻撃を回避して、こちらの近接攻撃を叩き込むことで無傷で倒せる。こういったアクションの広がりは非常に面白い。
短いゲームプレイだったが、7年の時を経て我々の前に登場した「The Last of Us Part II」は素晴らしかった要素をさらに伸ばし、プレッシャーに負けること無く新しいチャレンジに挑戦し、極上のエンターテインメント作品として仕上がっていることを強く感じた。
今回はあくまでもプレビューということで限られた範囲を、できるだけこれからプレイする人達にも読んでもらえるように考えて書いた。そのため「The Last of Us」といえば何より欠かせない重要な要素「物語」についてできるだけ触れないようにした。
ここまでプレイした筆者の感想は“一刻も早く物語のすべてを楽しみたい”ということだ。別稿でお届けしている開発者インタビューでは「最終的に伝えたかったのは『相互理解』です」と語られている。この物語がどのように展開して、どのように収束していくのか。ゲームが終わる最後の瞬間までの物語のすべてに期待が膨らむし、そこまでに至るまでのロケーションも気になる。もちろんシビアになっていくであろうサバイバルアクションに対してもゲーマーとしての腕がなるというものだ。
6月18日の発売まで2週間と少し、筆者は改めてトレーラーなどを見ながら気持ちを高めていくつもりだ。弊誌では本作の関連記事を公開しているので、ぜひこれらの記事を見ていただいて一緒に興奮し、ワクワクしながら発売日を迎えることができれば幸いだ。