【特別企画】

世界中のマジックプレーヤーが集合! 「マジック:ザ・ギャザリング」の祭典「マジックフェスト・千葉2019」大会参戦レポート

8月2日、3日、4日開催

会場:幕張メッセ第8ホール

 2019年8月2日~4日、トレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」の大規模イベント「マジックフェスト・千葉2019」が幕張メッセ8ホールにて開催された。

 「マジックフェスト」とは、1年を通して世界各地で開催される「マジック:ザ・ギャザリング」のお祭りである。開催している3日間にメインイベントである賞金や景品が贈呈される大型トーナメント「グランプリ」や、当日申し込みで参加できる様々なサブイベント、協賛カードショップによるカードやグッズ販売、カードをデザインしたイラストレーターのサイン会など、様々な方面から「マジック:ザ・ギャザリング」を楽しむことができるのだ。25年間続く世界中で大人気のカードゲームであるため、会場には各国よりMTGプレーヤーが集まり、各所で熱い戦いが繰り広げられた。

 今回は筆者も1人のMTGプレーヤーとしてこのイベントに参戦してきたので、その模様と熱気をレポートしていこうと思う。

【世界中から集まったMTGプレーヤーで熱気に溢れている!】

約2,000人が激闘を繰り広げるメインイベント「グランプリ・千葉2019」

 マジックフェストのメインイベントと言えるのがこの「グランプリ・千葉2019」である。

 元々マジックフェストは「グランプリ」と呼ばれていたイベントであり、この大型トーナメントを行なうイベントとして開催されていた。今年より3日間で行なわれるイベント全体を「マジックフェスト」と呼び、その中で従来通りの「グランプリ」が行なわれる形になったのだ。元々イベント名を冠するほどだった事もあり、世界中より集まった約2,000人のMTGプレーヤーが優勝を目指して戦う非常に大規模のトーナメントとなっている。トーナメントは2日間に渡って行なわれ、1日目の戦績が6勝2敗以上のプレーヤーのみ9回戦目と2日目に進むことができる。そして2日目にブースタードラフトを6回戦行ない、上位8名が決勝ラウンドに残り、この決勝ラウンドを勝ち抜いて初めて優勝となるのだ。この非常に狭き門の中で参加者は己の構築力とプレイングを競う事となる。

 そして今回の大会は最新のブースターパック「基本セット2020」を使用した「リミテッド」というルールで行なわれた。「リミテッド」とはあらかじめ自由に構築してきた自分のデッキを使用して戦うのではなく、決められた個数の未開封パックから出てきたカードと任意の枚数の基本土地カードのみを使用してその場でデッキを構築し、ゲームを行なうルールである。事前にデッキを構築して用意する事ができず、自分のパックから出てきた限られたカードのみで最適なデッキを構築する必要がある為、その場でのデッキ構築力が試されるルールと言える。このルールでは使用パックの理解度が如実に勝敗を分ける要因になり、今回であれば「基本セット2020」のカードプールの中でどのカードが強力なのか、どの色のカードが有効なのか、どのタイプのデッキが一番使われるのかなどの事前のシミュレーションが非常に大事なのだ。

 参加者は予め開封されたカード束をそれぞれ与えられ、決められた制限時間内に自分のカードプールを確認し最適なデッキを構築する。構築したデッキを配られたデッキリストに記載し提出することでデッキ構築は完了となるのだが、デッキリスト提出後はサイドチェンジ以外でデッキを組み替えることはできない為、最初のデッキ構築が今後の勝敗を大きく分ける事となるのだ。

 今回筆者もこのリミテッド戦に参加し実際にデッキを構築したのだが、制限時間内に最適なデッキを構築する難しさを身を持って体験することができた。事実、トーナメント終了後に対戦相手や友人達と反省会をした際に「別の色でデッキを組んでいれば……!」と感じてしまうほど構築に甘さが目立ってしまった。

 結果から申し上げると、大方の予想通り筆者は敗北を喫する事となった。勿論ピックしたカードパワーやプレイングも敗北の要因なのだが、やはり「リミテッド」というルールにおいてはデッキ構築という面が大きく勝敗を分けるのだと痛感した。私が獲得したカードプールは個人的に決して弱いという訳では無いのだが、対戦後に対戦相手とお互いのデッキ内容について話すことができた際に、対戦相手のデッキにレアリティの高い強力なカードが1枚も無い事が多々あったのだ。勿論カードパワーが高いカードを中心にデッキ方針や色を確定させるのも1つの方法なのだが、他のカードの噛み合わせの悪さやデッキに入る色のバランスを崩す要因になる事を考慮してレアリティの高いパワーカードをあえて投入しないという選択肢も存在する。レアリティの低いコモン、アンコモンのカードにも強力なカードは多数存在するため、レアリティという固定概念を1度取り払い、カード同士の噛み合わせを意識することが大事と言えるだろう。

【筆者がピックしてデッキに投入していたカードたち】
「暁の騎兵」はカードパワーは高いがマナシンボルが3と要求値が大きい為、3色でデッキを組んだ筆者は少し使いづらかった印象がある。マナシンボルの事を考えればデッキのカラーを少なくするか抜くかをするべきであった。

 また使用したカードパックである「基本セット2020」の特徴を踏まえてカードを選択する事も大切である。今回は基本セットという名前通り「マジック:ザ・ギャザリング」の基本を思い出させるカードが多く収録されている。中でも注目したいのは「飛行」と「プロテクション」という効果だ。

 プレーヤーなら当然ご存じだと思うが、「飛行」を持つクリーチャーは「飛行」を持つクリーチャーでなければ攻撃をブロックする事ができない。翼を持たぬ者に鳥は捉えられない「マジック:ザ・ギャザリング」の基本とも言える効果の1つである。そして「基本セット2020」には「飛行」を持っているクリーチャーが多数収録されており、この効果を主軸にしてデッキを構築する事も可能だ。

 筆者のデッキにも「飛行」を持つクリーチャーが何枚か投入されており、「飛行」クリーチャーの対策になるカードも何枚か入ってはいたのだが、デッキの大半のクリーチャーは「飛行」が備わってなかった為、相手の飛んでいるクリーチャーを処理する事ができずにそのまま殴り倒されてしまう場面が多かった。「飛行」を持つクリーチャーはそれだけで他のクリーチャーよりも優位に立ち回れるため、パック内に多く収録されているのなら確実に使用するプレーヤーが多いことが予想される。ならば対抗するために自分も「飛行」を持つクリーチャーを多めに投入する必要があったのだ。このようにパックの内容から予想できるメタゲームを意識する事も勝ち進むために必要な要因であると痛感した。

 「プロテクション」を持つクリーチャーは指定された色のカード効果を受けず、指定された色のクリーチャーにブロックされないなど、特定の色に対して非常に強力な耐性を得られる効果だ。本大会において相手がどの色のデッキを組んでくるのかはルール上未知数なのだが、限られたカードプールの中で1色のみのデッキを組むことはかなり厳しい。必然的に2色、3色のデッキが多くなる事が予想されるのだが、相手のデッキカラーの1つと自分クリ―チャーの「プロテクション」が合致すると、相手から見てその脅威度は計り知れないのだ。

 デッキの半数のカードが効かないカードを処理することは非常に難しく、下手をすればそのまま「プロテクション」持ちのクリーチャーに殴り倒される可能性もある。加えて「リミテッド」のルールではデッキ構築の際に余ったカードはサイドカードとして2戦目に入れ替えることができるため、相手のデッキの色を把握してから特定の「プロテクション」を持つクリーチャーをデッキに投入する事が可能だ。相手に合わせた「プロテクション」を使い分けることができればかなり勝率を伸ばす事ができたと予想される。

【試合中に活躍したプロテクションを持つカードたち】
デッキに入っていた「飛行」を持つクリーチャーはこの3枚+1枚の計4枚。相手の飛行に対して無警戒であることが如実に現れている
「神々の思し召し」はスタンダート環境でも良く見かけるカードだが、好きなプロテクションを与えられる効果はリミテッドでも大活躍だった

 このようにパックの内容から予想できるメタゲームを意識する事も勝ち進むために必要な要因であると感じる。

 結果的に筆者は本トーナメントで早々に3敗してしまったのだが、対戦相手や他プレーヤーとの交流で「マジック:ザ・ギャザリング」というゲームの奥深さを改めて実感する事ができたと感じている。加えて、老若男女国籍問わずに様々なプレーヤーと1つのゲームを通して交流できるのも魅力の大型トーナメントの魅力の1つだとも改めて実感した。トーナメントの参加者全員にフルアート版の「Lightning Bolt」が参加賞として与えられる。非常に貴重なカードであると同時に、本トーナメントを忘れぬ為にも大事にしたい1枚である。

【参加者全員に配られるフルアート版の「Lightning Bolt」】

 そして2日間に渡るトーナメントを征したのは「中道大輔」選手。青緑をベースにタッチで白を加えたデッキを構築し見事に優勝。決勝戦では同じ日本人選手の「鈴木和重」選手と熱い激戦を繰り広げた。注目すべきは2ゲーム目。打ち消し呪文を構えながら戦線を維持する鈴木選手に対して、相手にあえて打ち消し呪文を使わせながら絶対に着地したいクリーチャーを上手く盤面に繰り出していく中道選手のテクニックが光る展開が非常に見ごたえがある。打ち消し呪文の使い所が試合を左右する、「マジック:ザ・ギャザリング」らしい素晴らしい決勝戦だった。試合後はお互いに握手を交わす姿が見られ、両者とも納得のいく正に「グッドゲーム」だったと言えるだろう。最高の試合を見せてくれた両選手に拍手を送りたい。

【緊張感の伝わってくる決勝戦での戦い】
相手に出されたくないカードを選択しながら打ち消しを構える「鈴木 和重」選手。一見厄介そうに見える「腐れ蔦の再生」を打ち消さずにマストカウンターを見極めながらプレイ
一方絶対に着地させたいクリーチャーの為に巧みに他のカードを囮に使う「中道 大輔」選手。相手の土地が全てタップしたところを狙ってすかさず切り札の「裏切りの工作員」をプレイし、着地に成功させる
クリーチャーを奪われてからテンポを崩され最後は激闘の末「中道 大輔」選手の勝利。2人は笑顔でお互いの健闘を称え合った

 決勝戦や2日間に渡る数々の激戦は、Twitchのアーカイブから視聴する事ができるので、是非皆様も拝見してみては如何だろうか。両者の激戦を視聴し、次回のトーナメントのモチベーションが上がった視聴者も少なくないはずだ。

【優勝トロフィーを掲げ誇らしげな表情の「中道 大輔」選手】
優勝賞金7,000ドルと日清食品株式会社よりカップヌードル1年分が贈呈された

女流棋士「香川愛生」さんが「チャンドラ」のコスプレをしてプレインズウォーク!

 マジックフェストでは「グランプリ」以外にも数多くのサブイベントが行なわれている。中でも大きな盛り上がりを見せたのは女流棋士「香川愛生」さんが「マジック:ザ・ギャザリング」ではお馴染みのキャラクター「チャンドラ・ナラー」のコスプレをして登場したステージイベントだろう。各方面で活躍している香川さんだが、「マジック:ザ・ギャザリング」も嗜んでおり、PCゲーム「MTGアリーナ」をプレイしているとの事。美しくも凛々しい「チャンドラ」のコスプレは棋士として厳しい世界で戦い続けている彼女に非常にマッチしており、思わず目を奪われてしまった。

 トークイベントの中で香川さんは好きなカードは自身がコスプレをしている「チャンドラ」であり、好きなデッキカラーは赤であると答え、将棋でも「マジック:ザ・ギャザリング」でも攻撃的なプレイが大好きというストイックな面を垣間見せた。今後も「チャンドラ」と共に「マジック:ザ・ギャザリング」をプレイし続け、界隈を大いに盛り上げ、新しい波を起こしてくれるだろうと筆者は感じている。

【「チャンドラ・ナラー」のコスプレで登場した女流棋士「香川愛生」さん】
トークイベントでは「マジック:ザ・ギャザリング」に対する熱い思いとプレイングスタイルについて語ってくれた
「チャンドラ」らしい美しくも凛々しい表情の1枚。笑顔を浮かべる姿も非常に魅力的である

会場では「マジック:ザ・ギャザリング」を遊べるサブイベントが盛りだくさん!

 「グランプリ」に敗退してしまっても、マジックフェストでは「マジック:ザ・ギャザリング」で遊べるサブイベントが数多く用意されている。初心者向けのティーチングキャラバンから、当日参加可能で多くのフォーマットで行なわれている対戦イベント、中には特殊なルールを用いたシールド、ドラフト戦や、SNSと連動した体験型イベント等、1日では回り切れないほどのサブイベントの数々が参加者を楽しませてくれた。中には多くのプロと各地の予選を勝ち抜いた最高峰のトーナメントイベント「ミシックチャンピオンシップ」の参加権を獲得できるサブイベントも存在するため、「グランプリ」で敗れたとしてもまだまだ戦いは終わらない。熱き思いを胸に参加者はカードを信じて何度も戦い続けるのだ。

【様々なサブイベントが会場内では行なわれていた】
ルールを学べる無料体験会が開催されているため、全くの初心者でも楽しむことができる
「PLANESWALKER QUEST 2020」はSNSを使用した催しで、各プレインズウォーカーに因んだクエストの写真を投稿することで商品を獲得できる
「オンデマンドイベント」や「TURBO TOWN」などの参加申請することで素早く対戦が行なえるイベントなども充実。会場に居れば対戦相手には困ることは無いだろう

 サブイベントにて必要な物やカードなどが買える出張販売が会場では行なわれていた。数多くのショップが参加しており、それぞれ独自の商品を販売している。それぞれのお店によって取り扱っているフォーマットの幅やサプライ品も違う為、参加者はここで買い物するだけでも十分な満足感を得られる事だろう。

【様々な協賛カードショップが軒並みを揃える】
どのショップも非常に品ぞろえが良く、参加したプレーヤーたちは心ゆくまで買い物を楽しむことができた

コレクター必見!イラストレーターによるサイン会が実施

 マジックフェストの恒例行事ともなってきているのが、カードのイラストを担当したイラストレーターによるサイン会とグッズ販売である。「マジック:ザ・ギャザリング」では独自の世界観の中で、美しく、カッコよく、中には恐ろしいと感じるような様々な美麗イラストが生み出され続けている。そんな素晴らしいイラストを担当したイラストレーターがマジックフェストに参加し、サインや追加アートなどを行なってくれるのだ。プレーヤーからすれば思い入れの深いカードや、何年間も一緒に戦い続けているカードの生みの親に合えるのだから興奮しない訳がない。お気に入りのカードを手に持ったプレーヤー達でサイン会ブースは常に人で溢れていた。

 今回来日したイラストレーターは、「悪意ある妨害」や「捕食スリヴァー」と言った恐ろしさの中にもカッコよさを秘めるイラストを手掛ける「Mathias Kollros」氏、「ベナリア史」や「天啓の神殿」など思わず神々しさを感じずにはいられない代表作を多く手掛ける「Noah Bradley」氏、そして古くから「マジック:ザ・ギャザリング」のイラストを手掛け「ウルザの魔力炉」や「引き裂かれし永劫、エムラクール」など1度目にしたプレーヤーなら脳裏に刻み込まれているカードを生み出した「Mark Tedin」氏の3名だ。

 いずれも非常にクオリティの高いイラストを作成しているイラストレーターであり、プレーヤーであればサインをもらえるこの機を逃すわけには行かないと思うのが必然であろう。筆者も必死に会場を動き回りなんとか「Mathias Kollros」氏と「Mark Tedin」氏のサインカードをゲットする事ができたが、惜しくも「Noah Bradley」氏のサインをゲットすることはできなかった。限りある時間の中で来日したイラストレーターの都合などもあるため、サインをもらえるかどうかは非常に厳しい世界なのだ。しかし、サインを頂けたカードは一生の宝になると言っても過言では無いほどの幸福感と美しさを感じることができるため、マジックフェストに参加した際は是非皆様にも頑張ってサインをもらいに行ってほしいと思う。英語がほぼ喋れない筆者でもジェスチャーで殆ど意思疎通ができたため、勇気を持ってお願いする事が大切だ。

【カードの上からイラストレーター自らがサインを書き入れていく】
既存のカードイラストに似合うようにサインを施す姿は匠の技と言っていいだろう

【完成したサイン入りのカード】
「Mathias Kollros」氏によるサイン入りの「悪意ある妨害」。サインが施されたことで非常に煌びやかになり、アンコモンカードとは思えないほどクールだ
「Mark Tedin」氏によるサイン入りの「引き裂かれし永劫、エムラクール」。恐ろしいイラストにサインが輝いて非常に美しい。筆者が昔お世話になったカードでもある為大事に保管したいと思う

【サイン以外にも多くのグッズも販売している】
オリジナルのゲームで使用できるトークンカードやプレイマット、アート集やイラスト画なども購入できる。どれもここでしか入手できない貴重なグッズだ

マジックフェストはどんなプレーヤーでも楽しめるお祭りである

 マジックフェストはこのようにメインイベントの「グランプリ」だけでなく、初心者から上級者まで幅広く楽しめるサブイベントが非常に豊富に揃えられている。その為か参加層も様々であり、女性プレーヤーや外国人プレーヤーも多く参加しており、中には親子で参加しているという人々も見かける事ができた。競技性が高いだけでなく純粋に多くの年代層に愛されている「マジック:ザ・ギャザリング」を是非皆様も1度プレイしてみてはいかがだろうか。そして、始める切っ掛けが欲しいという方には是非このマジックフェストに足を運んでいただきたく思う。ここには「マジック:ザ・ギャザリング」を楽しむ多くの方法や人々が揃っているからだ。