インタビュー

「3D ファンタジーゾーン オパオパブラザーズ」インタビュー

制作側にもプレーヤーにもさらなるチャレンジとなるか!? 「ウパウパモード」

制作側にもプレーヤーにもさらなるチャレンジとなるか!? 「ウパウパモード」

――さて、今回新たに加わった「ウパウパモード」に関してもお話を伺いたいのですが?

奥成氏:今回の「グラントノフ」(※)が「ウパウパモード」になります。

※グラントノフ……「プロジェクト・グラントノフ」。「3D復刻プロジェクト」第2期において「3D立体視」や「ムービング筐体」などこれまでやってきたこととはまた違ったものをやりたい、というプランで、「今までの移植版にはなかった新しい要素を入れよう」というプロジェクト。「グラントノフ」はセガ・マークIII版「AB」に登場したオリジナルボスの名。

堀井氏:最初の最初は「ファンタジーゾーン」より簡単なモードを付けよう、と始まったんですよね。ウパウパにしたのは、「ファンタジーゾーン」って、アーケード版では「オパオパ」1人だったんですけれども、「オパオパ」(※)で2人同時プレイになって、新たに「ウパウパ」が登場したのに、「ギャラクティックプロテクター」(※)以降あまり登場していなくて残念だなと思っていたんですよ。

※「オパオパ」……「ファンタジーゾーン」の世界観を使ったドットイートタイプのゲーム。アーケードとセガ・マークIIIで発売された。PS2「ファンタジーゾーン コンプリートコレクション」にも収録。

※「ギャラクティックプロテクター」……セガ・マークIII用ソフトとして発売された、パドルコントロールを使用した珍しいシューティングゲーム。プレーヤーキャラとしてオパオパとウパウパが使われている。こちらも「ファンタジーゾーン コンプリートコレクション」に収録されている。

「オパオパ」
「ギャラクティックプロテクター」

「ウパウパモード」画面

奥成氏:久々の登場ということもあり、今回は、わざわざサブタイトル「オパオパブラザーズ」を付けてアピールしてみました。サブタイトルを付けたのはもうひとつ理由があって、前作「3D ABII」でもかなりいい「スペシャルモード」を入れられたと思っているんですけれども……。

堀井氏:遊んでくださっている方、今もいらっしゃいますね。ありがたいです。

奥成氏:反響を見ていると、「バーチャルコンソール」の「アフターバーナー」と言われるぐらい普通の移植……立体視を使わない人にとっては、「あまり気がついてもらえなかったのかな?」、「クリアするまで遊んでもらえていないのかも?」というところがあって。「せっかくこれだけがんばった追加要素を買ってくださったお客さんに知られないまま、ソフトに眠らせてしまうのは残念なので、もっとアピールしたいな」ということで。追加要素がわかりやすくサブタイトルを付けて、ちょっぴり新作感も出してみようということで付けてみたのが「オパオパブラザーズ」です。

――なるほど。

奥成氏:古賀さんのアイディアの中に、「タッチパネルで武器が切り替わる『ファンタジーゾーン』というのは面白いのではないか?」という話がありまして。「それは面白そう!」とは思ったんですが、単にタッチパネルで武器を切り替えるだけだと、みなさん「7WAY SHOTS」しか使わないと思いますので(笑)、じゃあお金を使って武器を選んでいただくことで解決しようという話になりまして。……それでは、実際に古賀さんにお話をうかがうことにしましょうか。

古賀氏:古賀です。初めまして、よろしくお願いします。

堀井氏:古賀は、以前PS2の「ファンタジーゾーン コンプリートコレクション」を開発した際に、システム16版「ファンタジーゾーンII」のメインプランナーを務めた者でして、今回は再び彼に「ファンタジーゾーン」を任せることになりました。

――新たに追加された「ウパウパモード」についてお伺いします。元々あまりクローズアップされたことない「ウパウパ」が登場するなど、とても興味深いモードなのですが、このモードはどのように生まれてきたのでしょうか?

古賀氏:これまでの「セガ3D復刻プロジェクト」のアーケードタイトルと比べると、「ファンタジーゾーン」は体感シリーズでないため、筐体関連、画面モードや駆動音などのオプションを用意できない点が心苦しかったんです。

 そこで思い切ってゲームモードを追加したいと思っていたところ、弊社で並行して開発していた「3D ABII」では、追加のゲームモードが用意されることになったと聞き、やはり「3D復刻プロジェクト」第2期ではアレンジ要素は必須と考えていました。

――「3D ABII」のスペシャルモードの存在が、「3D ファンタジーゾーン」に影響を与えているんですね。

古賀氏:そうですね。とはいえ「3D ABII」のスペシャルモードのようなゲームバランスを変化させる方向性のアレンジを入れても、「ファンタジーゾーン」の場合、連射機能を付けるとどんな攻撃も押し切れてしまいますし、とはいっても3DSで遊んでいただくには連射機能を禁止すると逆にかなり難しくなってしまうだろう、という懸念がありまして、「追加要素を作るならば連射では解決しないモードにしたい」という方針がありました。

 過去、システム16版「ファンタジーゾーンII」で、ウエポン2(ボム系)の使用制限(特殊武器を持っていると、シングル・ツインボムが撃てなくなるというシステム上の問題)をタメ撃ちにすることで取っ払いました。今回も同じくウエポンの使用制限を外した状況を作りだしたかったのですが、チート的なオプション切り替えで実現するのではなく、なんらかのシステムに落とし込もう、と考えました。

奥成氏:復刻プロジェクトの第2期では、毎回エムツーさんと、無機質にオプションで切り替えられるだけの追加機能は面白みがないので、それをゲームモードとしてきちんと企画を立ててゲームの中に落とし込もうという話をしています。

古賀氏:最初に、ウエポン1(メインショット)、2ともお金がある限りずっと使用可能という、初心者向けの「連射の代わりにお金で解決する」システムを試してみましたが、これですとあまりに簡単になりすぎてしまったため、この方向性は止めて、むしろ逆にオリジナル版のままではヌルいと感じる人向けのチャレンジモードにすることにしました。

堀井氏:単純に難易度を上げただけだと、高次面のように速い敵弾で死にまくる事になるのはわかっていましたので、「ウパウパモード」では、「序盤から敵が大量に出て、弾も撃ってくるが、弾速は遅い状況」になっています。

古賀氏:内部的な説明をすると、ゲームレベルは上がっているため、敵をトリガーハッピー(弾を撃ちまくりの状況)にさせつつ、弾速はオリジナルのプログラムでは未使用のままになっていた0.75倍速を使用しています。ですから、通常のオパオパモード(オリジナル版)では、起こりえない状況になっているんです。

 それから、最初にお話ししましたようにせっかくの3DSなので、タッチスクリーンを使用してウエポンを切り替える方式になっているという。

堀井氏:下の画面に武器の絵が全部並んでいるだけで、なんか嬉しくなるよね。

古賀氏:おかげで、3DSならではの要素をうまく組み込めたんじゃないかと思います。

――主人公を「オパオパ」ではなく、「ウパウパ」にしたのはどうしてなんですか?

古賀氏:通常のプレイとは武器システムが変わるため、違いをわかりやすくする役目を「ウパウパ」に担ってもらおう! ということになりました。

 「オパオパ」と「ギャラクティックプロテクター」で「オパオパ」と一緒に戦っていた「ウパウパ」は、模範的な色違い2Pキャラクターで、ストーリー的には、「ファンタジーゾーン」の前日譚である「オパオパ」のエンディングでは、その後の足跡も不明でした。アニメの「赤い光弾ジリオン」にも登場しますが、ゲーム内のキャラとは違うようでしたし。

 戦士、英雄と呼ばれる「オパオパ」と比べるとあまりに不憫で、「ここで出さないとあと10年は出番がないかも」と心配になっていましたので、今回大抜擢することにしました。ちなみにカラーリングは、出演タイトルによって違っているため悩みましたが、そもそも組み合わせの選択肢が多いわけでもありませんので、一見してオパオパとの違いを感じる赤キャノピーを採用しました。

堀井氏:ストーリーも、オリジナル版を踏襲しつつ、かなり凝ったものになってます。

古賀氏:最初に考えた、金融危機に乗じて相場で莫大な資産を築き上げていた「ウパウパ」が財力に任せて武器を使いまくるという設定は却下されました。ともかく、後も「ウパウパ」が活躍することが、もしかしてあったりすると嬉しいです。

堀井氏:「ウパウパモード」はプレイ中コインを拾えるところは普通の「ファンタジーゾーン」と一緒ですが、「オパオパ」が貯金したお金を「ウパウパ」がくすねて持っていく感じになっていて、おろしたお金で「ウパウパ」が武器を使うことができると。下画面をタッチしながら好きな武器を選んで使うことができますので、その気になればボスキャラにみっちり「7WAY SHOTS」を撃ち込むこともできますので、気持ちいいと思います。

古賀氏による最初の「ウパウパ」の武装関連プラン。実現は現実的ではなかったため、古賀氏の暴走ということで、実現することはなかった

奥成氏:ちなみに、「ウパウパモード」は、オリジナル版を1周クリアすると選択可能になります。1周クリアすればそこそこのお金がたまっていると思いますので、このお金を使ってもらおうと。「オパオパ」とのプレイ感覚の違いを楽しんで下さい。

古賀氏:$0からスタートしてクリアできるかも、チャレンジしてみて欲しいです。

――ラウンド1からすでに攻撃が激しい感じで、シングルショットとツインボムだけだと相当大変そうですが、新しい感覚でプレイできるのは喜んでいただけるのではないでしょうか? これも反響が楽しみですね。古賀さん、ありがとうございました。

奥成氏:ウパウパは標準装備がシングルショットとツインボムになっているので、それだけだと頼りない感じですが、ショット1、2ともに3種類の追加武器がお金さえあればいつでも使えるようになっているので、使いどころを考えて遊んでもらいたいなと。

 ただ、「WIDE BEAM」が1発100円、「レーザー」は1秒200円、「7WAY SHOTS」が1発500円とお高めになっているので、連射しているとあっという間に貯金が底をつきます。その代わり、復活は楽になっていると思いますし、また違った遊び方ができるんじゃないかなと。

堀井氏:「ウパウパモード」は静止画で見るとオパオパの色が違うだけに見えますが、実際プレイしてみると違いがわかると思います。手間はかかってますね。

「ウパウパモード」のラウンド1、スタート時に注目!

奥成氏:それと、私は特に頼んでいなかったんですが、エムツーさんが「ラウンド1のBGMの曲名が『OPA-OPA!』だから、変えたほうがいい」と言って、新たに「UPA-UPA!」という曲が誕生しました(笑)。

堀井氏:どこがどう「ウパウパ」なのか? と言われると困ってしまうのですが、「ウパウパモード」用に新たに書き起こした「ファンタジーゾーン」っぽい曲になってます。

奥成氏:曲はChibi-Tech(※)さんに担当していただきました。彼女は「SEGA AGES ONLINE」のメニューのBGMなどで、各ゲームのイメージに沿った曲を書くのが上手な方なので、今回も「ファンタジーゾーン」っぽい、かつ「ウパウパ」の能天気な感じを……「ウパウパ」を能天気な感じにしたのは僕たちなんですけれども(笑)、うまく表現されているなと思います。

※Chibi-Tech……エムツー所属のサウンドクリエイター。エムツーの「アホ毛ちゃんばら」のBGMを担当したり、3DS「哭牙 KOKUGA」(グレフ)のサウンドトラックにアレンジャーとして参加している。

――この曲、「ファンタジーゾーン」的な印象はありつつも、どことなく「II」っぽいというか、コンセプトにぴったりな曲だと感じました。そういえば、3月26日に「ファンタジーゾーン」のアルバムが配信されますが、そこに「UPA-UPA!」が入ったりしないんですか?

奥成氏:実は入っています! 以前「3D スペースハリアー」をリリースした時に、同時配信したサントラに「3DS版の追加曲が入ってないのが残念だ」という声をいただきましたので、今回は頑張ってボーナストラックとして追加しました。もちろんボーナストラックだけでも購入できますので、既にCDでお持ちの方も安心です。

――おおー!? 用意周到というか、ありがたいです。

(佐伯憲司)