インタビュー

「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(前編)

PS4版リリース後のPS3版の未来。“革新性”を守るためPS3版終了は「あり得るかも」

PS4版リリース後のPS3版の未来。“革新性”を守るためPS3版終了は「あり得るかも」

言葉を選びながらPS3版サービス終了の可能性について語る吉田氏
吉田氏は「FF」ファンが望む革新性を維持するためにはPS3版を最終的には止める覚悟があるようだ
昨年衝撃のクオリティでデビューしたPS3版「FFXIV」。ただし、処理的にはかなり限界に来ているという。拡張パックまではサポートするということなので、2015年ぐらいまでは大丈夫そうだ

――ちなみにPS3版のサポートはPS4版が出た後もずっと永続していく方針ですか?

吉田氏:現在、拡張パックの設計に入っていますけれど、少なくとも拡張パックまではちゃんとPS3の設計も入れてあります。

――というと、将来的に、この拡張パックからは、もう遊べませんごめんなさいということはあり得るかもしれない?

吉田氏:将来的にあり得るかもしれません。

――ほー。それは何年くらい先の話になりますか?

吉田氏:それはプレーヤーのみなさんが、どれくらいPS3版でプレイされているかによってくると思います。今朝のプレゼンで、「今後もFFXIVは革新的でありたい」というお話をさせていただきましたが、革新を追い求めて行くときに、ある程度のマシンパワーがなければ実現できない、という可能性も出てきます。他のMMORPGが、ほぼすべてPCで作られていることを考えると、PCのスペックに応じた遊びの革新性、例えばまた「EQN」の話をして恐縮ですけど、ああいった物理で組まれたマップに対してプレーヤーによる物理の遊びを入れていこうみたいな考え方って、当然PCスペックが高くないと実現できないわけです。もしそれが、爆発的にプレーヤーの支持を得て、多くの顧客がライバルに流れた場合、我々は手をこまねいてみているわけにはいきません。やはり、他のMMORPGと戦うためには、ある程度の武器は必要になります。

 たとえば、フライングマウントに乗って凄まじい高度から一気に低空へライディングしたり、そこに全長200mくらいのドラゴンがいて、その周りを自由にフライングさせる、そんな大規模F.A.T.E.があれば、見たらきっと感動できると思いますし、気持ちいいだろうなと。しかし、当然ながらハードスペックに対して、最低要求が上がってきます。

 常々お話ししてきたとおり、ハードによってプレイ体験の差を出さないように作っています。しかし、それに固執するあまり、革新性が出せなくなったら、それは「FF」ではなくなってしまう。だから、現時点で未来永劫ずっとPS3をサポートしますみたいなことは言わないつもりです。もちろん、あと1年で遊べなくなりますみたいな、短絡的なものの考え方をしているわけでもないのでそこは安心して下さい。

 だからこそ、その代わりにちゃんと無料でのアップグレードサポートだったり、他にもSCEさんと組んで何かやれることがあれば、もっと積極的に大きいものをさせていただくと思います。

――なるほど。以前、吉田さんは「新生FFXIV」は10年サービスしたいですと目標を語っていましたが、仮に10年間サービスが続いたとしても、PS3とそれを添い遂げるのは難しいかもしれない?

吉田氏:そうですね。やっぱり天秤だと思います。その時点でPS3版のプレーヤーがどのくらいいるか、そしてハードがどれくらい限界に来ているか。僕はおもしろさが勝てば、おそらくそちらを選択します。ただその代わり、ズバっと切り捨てるようなやり方ではなくて、手厚くサポートさせていただいた末に、です。ですので、そういう考え方がないとは言わないです。

――それは早くても数年後の話ですか?

吉田氏:そうですね。ただ、ご安心していただきたいのは、少なくとも、いま製作に入っている次回「3.0」と呼んでいるエクスパンションに関しては、ちゃんとPS3も設計に入っていますので。

――話は変わりますが、パッチ「2.2」でリヴァイアサンが実装されると発表されました。水の処理系って「新生FFXIV」の中でもかなり重い方で、シリウス大灯台のスタート地点あたりはかなり負荷が高いですよね。リヴァイアサンのステージは水だらけで、いかにも重い感じですが、PS3版でも大丈夫なのですか?

吉田氏:それはPC版ですよね? もしPC版の水のリフレクションを最大にしている場合、重いはずです。PS3はあそこまでのリフレクションはかけていないのです。外部オプションでリフレクションを切っているので、そこはPC版よりPS3の方が軽いと思いますよ。

――なるほど。敢えて伺いますが、PS4版より、PS3の方がいいよという要素はなにかありますか?

吉田氏:PS4と比べてですか? うーーん、待ってくださいね。

――たとえば、「FFXI」は、実はPS2のほうが良いという部分が結構ありますよね?

吉田氏:ああ、「FFXI」はそうですね。あれは、PS2のアンチエイリアスと半透明が、そもそもPS2の持っている機能で、あの美しさはハードの美しさです。あれを計算で出そうと思ったら非常に厳しい。確かにPS2の方が圧倒的に綺麗で軽いという話になったわけです。

――そう、とにかくPS2版「FFXI」は軽かった。だから、私はPC、Xbox 360、いろいろ遊びましたが、メインはずっとPS2でした。

吉田氏:「FFXI」はPS2に最適化して作った後、それをPCに移植しています。「FFXIV」はどのハードでも遊べるように、スイッチ式で作っています。ハードウェアの性能に合わせて、沢山スイッチをオンにすれば綺麗だけど重くなる。スイッチをオフにしていけば、低いスペックでも動くようになる。設計思想の違いなのです。そういう意味では、今回はスイッチをほとんどオンにしてPS4版を作成したので、スイッチをオンにできる数が少ないPS3のほうが良い部分は無いと思いますね。でもそれがハードの革新ということなのです。

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(中村聖司)