インタビュー

「Evolve」プロデューサーJon Bloch氏インタビュー

紆余曲折を経た新世代CO-OPアクションはどのようなゲームに仕上がったのか?

2月収録

 米THQが2012年に倒産後、その去就が注目されたタイトルのひとつがTurtle Rock Studiosの新IP「Evolve」である。Turtle Rock Studiosは、Valve Corporationのパートナー、後に子会社として、「Counter-Strike Condition Zero」や「Left 4 Dead」、「Left 4 Dead 2」などを手がけ、一躍その名を全世界に知らしめることになった。

 Valveから独立後、最初のタイトルとして企画され、2011年に発表された「Evolve」は、THQをパブリッシャーに2013年にリリースされる予定だったが、2012年にTHQが倒産したことで計画が頓挫してしまう。その後、競売により、Take-Two Interactive傘下の2K がライセンスを獲得し、無事2K Gamesによりリリースされる運びとなった。

 今回「Evolve」のジャパンツアーでインタビューに応じてくれたJon Bloch氏はTHQ出身で、「Evolve」のプロジェクトマネージャーを務めていた縁でTurtle Rock Studiosに移籍し、「Evolve」のプロデューサーを担当している。自身はクリエイター出身ではないためか、Turtle Rock Studiosのクリエイターたちに対する強いリスペクトを感じさせる語り口で「Evolve」の魅力を語ってくれた。

「Evolve」のゲームコンセプトについて

「Evolve」プロデューサーJon Bloch氏
4人で協力してゾンビたちの囲みを突破していくチームベースFPS「Left 4 Dead」。FPS界に新風を吹き込んだ歴史的なタイトルだ
モンスター「Goliath」と対峙するハンター
4対1のコンセプトは、「Left 4 Dead」の強敵Tank戦から来ているようだ
モンスターを撃退するためには4人の連係プレイが必要不可欠になる
炎のブレスをはく「Goliath」。モンスターは時間が経つにつれてスキルを覚え強力になっていく

――「Evolve」の正式発表からこれまでの手応えや感想について聞かせて下さい。

Bloch氏:信じられないぐらい良い。実際にプレイして頂いたメディアには凄く楽しかったと言って頂いている。ゲームをアナウンスしたタイミングで、ここまで遊べる状態になっているということはなかなかないと思うが、我々としてはせっかくの機会なので、世界中の方にプレイして貰えるようにメディアツアーを企画した。

――これまでの開発期間と、現在の完成度を教えて下さい。

Bloch氏:リードデザイナーはかなり前から構想を練っていて、「Counter-Strike」や「Left 4 Dead」を手がけた以前からあったので、かなり前のことになる。実際に開発に着手したのは2011年から。当時は完全な形で実現できるだけの技術がなかったため、着工までに時間を要してしまった。完成度については具体的な数値についてはわからないが、2014年秋に北米とヨーロッパで発売できるところまでこぎ着けた。日本語版については申し訳ないがまだ発売日を調整中だ。

――率直な疑問としてなぜ「Left 4 Dead 3」ではなく、「Evolve」を手がけることになったのですか?

Bloch氏:それは単純にビジネス的な決断。「Left 4 Dead」シリーズの開発を決断したのは、我々ではなくValveで、TurtleRockとしては独立して新規にIPを立ち上げる必要があった。

――実際にプレイしてみて、「Left 4 Dead」シリーズとはかなり違うゲームに仕上がっていて驚いたのですが、改めて「Evolve」のコンセプトを教えて下さい。

Bloch氏:アイデアそのものはかなり前からあったが、その間に「Counter-Strike」や「Left 4 Dead」の開発があったので、その影響は受けていると思う。「Left 4 Dead」はチームプレイが要素としてあったが、「Evolve」にもハンターとして取り入れてる。ただし、ハンターの4つのクラスは、それぞれ異なるロールを与えられていて、異なる武器、異なる能力で戦うことになる。「Left 4 Dead」では、4人とも同じスタイルで戦うことができたが、そこが大きな違いとなる。同時に、「Evolve」に対戦要素を取り入れたいと考えて導入したのがモンスターとなる。

――そのモンスターについてですが、いわゆるボスクラスの大型モンスターを操作して4人のハンターを倒すのはとても楽しいプレイですが、この着想はどこから得たものですか?

Bloch氏:ゲームプレイのコンセプトとしてもともとあったものだが、「Left 4 Dead」のサバイバー対タンクの戦いの影響ももちろんある。パワフルなボスクリーチャーを操作して戦えるというコンセプトについては、単に戦えるだけで無く、どちらも人間が操作することでパターン化されない、興味深い戦いが実現可能となった。

――モンスターでのプレイについて、ゲームを開始したらまずは森の動物を捕食して強化を図るというギミックは、「League of Legends」のようなストラテジーゲームを意識しているところもありますか?

Bloch氏:ウチのチームも様々なゲームからインスピレーションを受けていると思うし、「League of Legends」をプレイしているスタッフもいると思う。ただ、何か1つの特定のゲームということはないし、映画や音楽などゲーム外から影響を受けていることもある。

――メディックのAnti-Material Rifleでモンスターの装甲に穴を開け、他のハンターがそこを狙うことで大ダメージが狙えるという連携要素を体験できましたが、そのほかにどのような連携が取れますか?

Bloch氏:沢山ある。たとえば、ハンターのサポートは空爆(Orbital Barrange)が可能だが、モンスターはそれを避けようとする。そこで空爆を確実に決めるために、別のハンターのトラッパーがHarpoon Gunによってモンスターの動きを止めることができるので、2人が協力して大ダメージを与えるようなこともできるようになっている。

――今回は4人のハンターと、1人のモンスターの5人で遊ぶゲームになっていますが、5人マルチとしてはマップが非常に広い印象を受けました。この広さにした理由は?

Bloch氏:ステージの種類については、サイズ、風景、ギミックなど様々なものを用意している。ひょっとしたら今回のマップは広かったかもしれないが、Turtle Rock Studiosではテストを日々繰り返しているので、マップも何度も調整を繰り返しながらデザインしていっている。

【ハンター】
「Evolve」にはアサルト、メディック、サポート、トラッパーという4種類のクラスが存在する。それぞれ与えられた役割が異なり、それぞれ固有のスキルを上手く使った連携が重要となる

AIディレクターなど、「Left 4 Dead」シリーズの強みを活かしたゲームデザイン

ステージやゲームモード、モンスター、ハンターの成長要素など「Evolve」にはまだ謎が多い。今後徐々に明らかになっていくようだ
「Left 4 Dead」のAIディレクターについては、GDCでも講演が行なわれ、高い注目を集めた。更なる緊張と興奮が演出されそうだ

――今回は「ハント」モードでプレイすることができましたが、このマップは、別のモードで遊ぶこともできますか?

Bloch氏:できる。ゲームモードについてはまだ話せないが、様々なマップ、様々なモードで遊べるようになっている。

――「Evolve」では、「Left 4 Dead」のように仲間の操作をAIに委ねて1人でプレイすることもできますか?

Bloch氏:もちろん。そこは「Left 4 Dead」と近い感覚でプレイできる。「Evolve」ならハンターでもいいし、モンスターでもいいし、どれかを自由に選んであとはAIに任せることもできる。

――「Left 4 Dead」シリーズで特に気に入っているのは、ゲームの進行度に応じて、つまりプレーヤーの力量に応じて、ゾンビの攻撃の激しさが変わるAIディレクターの存在です。これにより常に適度な緊張感でゲームが楽しめたわけですが、「Evolve」にも似たシステムはありますか?

Bloch氏:もちろんある。「Left 4 Dead」にもとても近いシステムが搭載されている。「Evolve」では「ズーキーパー」と呼んでいるが、たとえば、野生生物の数や場所をこのズーキーパーが定めている。ゲームが始まってからも、野生生物の行動は「ズーキーパー」が管理して、ゲームに適度な緊張感をもたらすようになっている。

――リプレイバリューについて質問です。「Evolve」には繰り返し遊びたくなるような成長要素やリワードなどは用意されていますか?

Bloch氏:そこについては様々な種類のハンターやモンスターがいることで、それらを変えることで違ったゲームプレイが楽しめるということに尽きると思っている。人と人が戦うため、毎回違った展開になる。もちろん、アカウントに紐付ける形でクラス毎の成長要素も用意しているので、特定のハンターやモンスターを繰り返し遊んで育てていくという遊び方も可能だ。野生生物の中には「エリート」と呼んでいる存在もいて、彼らを倒すことでボーナスが得られたりする。遊ぶ度に違った展開、内容が楽しめるというのがプレーヤーのモチベーションになると思っている。

――ゲームモードについてはまだ話せないということですが、「Left 4 Dead」のように4人でフィールドを進んでいくモードや、モンスターだけで遊べるモードなどもあるのですか?

Bloch氏:今はまだハントモード以外は話せないんだ(笑)。現時点で言えるのは、他のゲームモードにおいても「Evolve」のコアとなっている要素の4対1という構図は変わらないが、その一方で新たなルールやアイテムの導入によってゲームに大きな変化が生まれることもあるかもしれない。いずれにしても、プレーヤーにはバラエティに富んだゲームプレイをお届けすることを約束するよ。

――今回はゴライアスという怪獣タイプの大型モンスターが公開されましたが、そのほかにどのようなモンスターを予定していますか? 歩いたり走ったりするだけでなく、空を飛んだり、海中を泳いだりするようなモンスターも出てきますか?

Bloch氏:具体的なモンスターについてはまだ言及できないが、モンスター毎にまったく種類が異なる。見た目、機能、ゲームスタイル、まったく違うようになっている。それはハンターについても同じ事が言える。4種類のハンターがいるが、同じハンタークラスでも、武器やアイテム、アビリティなどによって戦い方が違ってくる。

――今回公開されたのはPC版ですが、PS4版、Xbox One版の開発状況はいかがですか? またこれらはすべて同時発売だと考えて良いですか?

Bloch氏:そのとおり。PS4、Xbox One、PCは同時発売の予定だ。ただ、コンソール版についてはプラットフォーマーの意向もあるので、我々だけで決められるわけではない。日本の場合は、Xbox Oneが発売されておらず、日本マイクロソフトに依存する部分ではある。

――日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

Bloch氏:バラエティに富んだユニークなゲームになっているのでぜひ1度プレイしていただきたい。シューティングが好き、チームプレイが好きという人もいるだろうし、モンスターになってチームをやっつけたいと思う人もいるだろう。「Evolve」はそうした様々なタイプのゲームファンの期待に応えるゲームになっているのでぜひ楽しみにして欲しい。

――ありがとうございました。

【モンスター】
圧倒的なパワーと耐久力を誇るモンスター。普通に歩くと足跡を残したり、地面の鳥が飛び立って場所を知らせてしまうため、基本はスニーク状態で移動しながら、動物を補食し、自身を強化していく。前半は成長期、後半は攻撃期と、2つのフェーズに分かれているところがおもしろい

(中村聖司)