インタビュー

PS3/PS Vita「FINAL FANTASY X/X-2 HD Remaster」プレイ&インタビュー

PS2版当時の制作秘話も!

PS2版当時の制作秘話も! たくさんの新しいことにチャレンジしていた「FFX」

PS2版ではイベントディレクター、兼ディレクターとして、ほとんどのイベントシーンを作成していた鳥山氏。徹夜の連続もあったそうだ

――鳥山さんとしては、「FFX」、「FFX-2」の2作についてどのような思い入れがありますか?

鳥山氏:(ディレクターとして)メインで関わるようになった愛着の強い作品です。今の「FFXIII」にも繋がっている、「カメラの演出を豊富に使う」、「ボイスがある」、「モーションキャプチャーでカットシーンを作っている」という手法を、最初に使っているのが「FFX」なんです。映像に力を入れている「FF」シリーズとして「FFVII」、「FFX」、「FFXIII」とハイエンド化の節目というか、流れがあります。

――鳥山さんは「FFVII」の時はプランナーだったんですよね。

鳥山氏:そうです。あの頃はまだカメラを自由に動かすことはできなかったし、当然ボイスもないという頃で、そこから映像表現をもう1段階洗練させるために、「FFX」でそのどちらも取り入れたという経緯があります。

――先ほど、「FFX」のイベントシーンを連日徹夜で作ったというお話もありましたが、ちなみにどんなシーンだったのでしょう?

鳥山氏:担当パートがイベントシーンだったので、「FFX」も「FFX-2」もほとんどのイベントシーンを作っています。その時の苦労を思い出しますね(笑)。

 当時はストーリーを作る人がイベントシーンを作り、そのイベントに関わる場所(エリア)や間に入ってくる移動も含めて、今で言うレベルデザインですが、それらをイベント担当がやっていたんです。イベントがあり移動があって、移動中にはこういうモンスターが出てくるというのを考えて、モンスターはバトル担当にお願いするという流れですね。

――なるほどイベントを軸に構築されていたというわけですね。

北瀬氏:あるロケーションから、ストーリーのここからここまでのエリアまでというのが区切りで、その全般をディレクションしてもらうという流れになっていました。先ほどもありましたが、当時はスクリプトによる手作業で制御していましたから、作れるなら好きにやってもらっていいよというノリもありました。

鳥山氏:ブリッツボールのミニゲームをある日、突然、北瀬に作ってもらったりしました(笑)。

北瀬氏:あったあった(笑)。「FFXIII」など最近のゲームだと、何かをやろうとしたら、まず企画書を作って、それに関わるパートの人達の理解を得て、作業を分担するという流れになります。人と話ながら組み上げるという作業がどうしても必要になるんですけど、当時はスクリプトさえ使えれば、誰にも相談せずに作れていました。何も相談せずに自分1人で進められるので、好き勝手にやれたというのはありますね(笑)。

――その中でブリッツボールが突然できあがっていたりしたんですね(笑)。

北瀬氏:モデリングやモーションは、デザイナーにお願いしないといけないですけど、それ以外のシステムなどは、仕様書も何もなく自分で考えて作っていました。当時はいろいろなミニゲームが入っていましたが、それらは各担当者が自由に作っていたんですよ。

鳥山氏:ミニゲームを1人1個ぐらい作ろうかみたいな、そういうノリがありました。

――今ではそういう作り方はちょっと難しい?

鳥山氏:今はそうですね、ミニゲームひとつにしても1人で勝手にとはいかず、プログラマーやデザイナーなど多くのスタッフに発注するという流れがどうしても必要になります。見た目ひとつにしても今はごまかせないんです。それが「FFX」、「FFX-2」の頃はまだ、人を介して最終形を作っていくというのがもう少し緩い時代ではありました。

――開発チームの規模はどの程度だったのでしょう? 今では100人、200人、それこそ500人みたいなところまで巨大化していますが。

北瀬氏:人数的には当時も結構多かったですね。今のHD作品よりは多くありませんが、当時でもピーク時は200人ぐらいになっていました。PS2で初めての「FF」というのもあって、表現をグッと増したところもありましたから。

 「FFX」は、ボイスも初めて本格的に収録したタイトルでした。例えば「FFXIII」だと、ボイス収録の仕方もすごく洗練されていて、量が多くても短期間に効率よく作業を進められます。ですが、「FFX」の頃はそれこそボイスの収録だけで1年ぐらいかかっていました。

 今だと1人1人個別にボイス収録できますけど、当時はイベントシーンに登場するキャラの声優さんを一同に集めて、その場の掛け合いで収録したり、手探り状態でしたね。

鳥山氏:モーションキャプチャーもそうですね。イベントにモーションキャプチャーを使うようになったのが「FFX」からだったんですけど、やっぱりいろんな事が試行錯誤の連続でしたね。

――キャラクターの等身からしても「FFX」からはリアル等身ですし、いろんな事が初の試みだったのですね。「ファイナルファンタジーVIII」(以下「FFVIII」)もその傾向は出ていましたけども、よりリアル路線になったというか。

北瀬氏:「FFX」では、「FFVIII」よりも等身や、リアルスケールな世界にこだわりました。「FFIX」以前の作品では、例えばワールドマップというのは記号的なものでしたが、「FFX」からはそれを止めて、より映像表現のリアルさに合うようリアルスケールでやることになりました。

 その結果としてファミコン時代から続いていた記号的表現のワールドマップがなくなったんですけど、今の「LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII」(以下「LRFFXIII」)では逆に、ワールドマップ的なものをリアルスケールで作っていて……戻ってきているんです。リアルスケールでありながらワールドマップのある、オープンワールド的な方向に進化しています。

――HD作品の開発がこなれていって、ユーザーのみなさんにも求められるところがあり、また違う形で戻ってきたということですね。

「FFX/X-2 HDリマスター」の開発進行度は「FFX」が80%「FFX-2」が65%!
気になる発売時期は……?

――「FFX/X-2 HDリマスター」の現在の開発進行度はどれぐらいでしょうか?

北瀬氏:「FFX」が80%、「FFX-2」が65%ぐらいです。

――発売日はまだ2013年ということですが、11月21日発売の「LRFFXIII」を考えるとどのへんになると思ったらよいでしょうか?

北瀬氏:「LRFFXIII」とは作品の性格も違いますし、「LRFFXIII」は新しい作品にクリエイティビティを注ぎ込んでいくものですけど、「FFX/X-2 HDリマスター」は思い出補正も考えてのクオリティアップがまだ必要ですから。10年以上前の思い出の一品ですので、そのあたりを考えて丁寧にやっています。具体的な発売日に関しては、それをどこまでやるか次第です。

――先のデモプレイ中にも、「ここのユウナの表情はもうちょっと変えないと……」というような話も出ていました。今まさにこだわって調整している最中なのだなというのが伺えました。

鳥山氏:2作品ありますし、それぞれボリュームも多いですから。それをどこまで隅々までやれるのか……。今日改めて思ったんですが、いざ発売が近づいてくると自分でチェックしていないというのが嫌ですね(笑)。

一同:(笑)。

――鳥山さんは「FFX/X-2 HDリマスター」はほとんどご覧になっていないのですか?

鳥山氏:「LRFFXIII」に集中しているというのもありますけど、見ていないんですよ。見ない方がいいかなと思って、見るといろいろ口を出したくなりそうなので(笑)。

――なるほど。それによってまた発売日が変わっちゃいそうですもんね(笑)。ひとまず現状は、当時プレイした人の思い出に負けないぐらいに調整を重ねているので、もうしばらく続報をお待ち下さいというところでしょうか。

北瀬氏:はい、頑張っていますので、もうしばらくお待ちください。

――HDリマスターとして他のナンバリング作品を含め、何か「これもやれたらな」という展望のようなものはありますか?

北瀬氏:まったくノープランですけども、今回HDリマスターというのを初めて手がけてみて、新作とも違う、ベタな移植とも違う難しさというものに直面したので、そこで得たノウハウを何かほかのものにも活かせたらいいなと思います。

 今までは、「FFX」以降の「FF」作品を本格的にリマスターしたり、リメイクしたりするというのはハードルが高いという気持ちがどうしてもありました。ですが、「FFX/X-2 HDリマスター」をしっかり仕上げることでブレイクスルーさせたい(意識を変えたい)と思うようになりました。

――やるとすれば、例えばこれを……というのはありますか? もしくはリマスター素材を活かした「FFX-3」のような発展系に繋がったりとか(笑)。

北瀬氏:そこはファンの皆さんの求めているもの次第だと思います。そもそも当時、「FFX」に続いて「FFX-2」を作ったのも、ファンの方からいろいろな声を頂いたのがきっかけになりましたから。

鳥山氏:「FFX-2」の時ってナンバリング作品に対して続編を作るというのが初めてでしたし、結構独特な流れで生まれたゲームでした。

「FFX-2」のイメージCG。2002年秋の東京ゲームショウでは、「FFX-2」のタイトル発表前にこのCGのポスターが突然販売され騒然となった

――思い返すと「FFX-2」は、発表の仕方もセンセーショナルでしたよね。2002年の東京ゲームショウで、タイトルは未発表なのに「FFX-2」のユウナのポスターが物販ブースで売られていて。騒然となったのを思い出します

北瀬氏:あー、ありましたね。よく覚えてますね(笑)。

――自分もあのポスターを買いましたから(笑)。なんだこれは? 何のゲームだ? って思いました。会場のそこかしこでそのポスターを見ようっていう人だかりができていました。

鳥山氏:あの頃はまだまだ口コミがメインでしたよね。Twitterも当然まだ無い頃ですから。

北瀬氏:そう思うと、面白い事やってましたね(笑)。

――ネット自体はもう使っていた時代ですが、今みたいに誰でもモバイルみたいな時代ではなかったですから、会場だと口コミで騒がれてましたね。そうしたこともありましたが、「FFX-2」はユーザーさんの要望から生まれた独特なゲームだったということですね。

思い出に負けない、期待を裏切らないクオリティを目指して鋭意制作中!

――それでは最後に、ユーザーの皆さんへメッセージを頂ければと思います。

北瀬氏:今回もまだ2013年発売というところまでしかお伝えできないのですが、首を長くして待ってくれている人がたくさんいらっしゃると思います。オリジナル版をプレイしてくれた人の期待を裏切らないクオリティに達するまで発売するわけにはいかないので、じっくり丁寧に取り組んでいます。安心して発売までお待ち頂ければと思います。宜しくお願い致します。

――鳥山さんからも当時のディレクターとしてぜひお願い致します。

鳥山氏:「FFX/X-2」というと、ティーダとかユウナとか魅力的なキャラクターがたくさん登場しますし、名作と言ってもらえているタイトルです。まだ遊んだ事がないという人も、ぜひこの機会にプレイしてもらえたらと思います。僕も期待して待っています(笑)。

――ありがとうございました。楽しみにしております。

(山村智美)