コーエーテクモの新ポータルサイト「my GAMECITY」

“ゲームSNS”という名称に込めた狙いと構想を聞く


3月14日 収録


 株式会社コーエーテクモゲームスは3月14日、同社のゲームポータルサイト「my GAMECITY」のリニューアルに関する発表会を行なった。
 
 リニューアルされた「my GAMECITY」は、これまでのコーエーテクモのゲームファンが集うSNSとしての機能に加えて、「my GAMECITY」それ自体も街作りのゲームとして楽しめるようになった。このリニューアルにより、「my GAMECITY」はポータルサイト、コミュニティサイト、ソーシャルゲームの機能を併せ持った「ゲームSNS」として生まれ変わった。この発表会については、こちらを参照にしていただきたい。
 
 今回はこの「my GAMECITY」のリニューアルについて、同社執行役員の藤田一巳氏と、「my GAMECITY」に実装されるソーシャルゲーム第1弾となる「100万人の三國志 Special」ディレクターの松本秀氏にお話を聞く機会を得た。本稿では、“ゲームSNS”「my GAMECITY」誕生の狙いや今後の構想などについて伺ったインタビューをお伝えする。



■ 「my GAMECITY」は、ゲームファンが集まって楽しい場所の提供がコンセプト


執行役員の藤田一巳氏

――発表会では、「ゲームSNS」というネーミングの打ち出しが印象的でした。今回行なったリニューアルの構想のきっかけを教えてください

藤田一巳氏: もともとソーシャルゲームについては、襟川陽一(コーエーテクモの代表取締役社長)が「これからはネットワーク事業にさらに力を入れていく」という方針を明確にしてから、「100万人の信長の野望」などをはじめとしたタイトルに力を入れてきました。

 今回のリニューアルにあたっては、他にもポータルサイトがあり、「my GAMECITY」の会員も200万人を突破している中で、どのように戦っていくかを考えました。ここで襟川と共有したのは、ファンイベントやゲームショウなどのように、ゲームファンが集まって楽しい場所をここで再現したいという構想です。

 そこで襟川が「ではポータルサイト自体をゲームにしよう」と提案し、シブサワ・コウ(襟川陽一氏のクリエイターネームで、本作のゼネラルプロデューサー)としてゲームの全体像を考えてくれました。

 特にイケるなと思ったのは、PCを前提としているところです。これによってゲームメーカーとして歯がゆかったグラフィックスや表現の面を打ち出して展開できますし、私たちのオンラインゲームは海外でも評価されているので、その強みを活かせます。

「街作り」をすることでユーザーごとの好きなタイトルを語れる場所を作ったという「my GAMECITY」

――プラットフォーム自体がゲーム……というと発想に飛躍があるようにも思いますが、コンセプトはスムーズに決まったのでしょうか?

藤田氏: 最初はなかなか上手くまとまりませんでした。ところが、これを「街作り」とすることで、すうっと憑き物が落ちたようになりました。街を作るようにすれば、都会のようにごちゃごちゃさせてもいいし、ポツンと一軒家を建てるようなスタイルにしてもいい。あるいは、今後追加されていくお気に入りのゲームの建物に特化した街にしてもいい。その街の作られ方が、プレーヤーのアイデンティティとなって表現できます。
 
 「my GAMECITY」は、街作りにIPを活用して導入することで、プレーヤーが好きなタイトルを好きなように語れる空間になりました。例えば、歴史アイドルの小日向えりさんが街を三国志のオブジェクトだらけにして、そこに三国志に興味のない人が訪れた時、街中を諸葛孔明が走り回っていたらインパクトがありますし、面白いと思います。これまでのポータルサイトは自分のやらないゲームはバナーでしか情報を得られませんでしたから、ゲームに対する興味というのも変わってくるはずです。他の街を訪れた時に、そういったインスピレーションが生まれることを期待しています。
 
 その導入として、「my GAMECITY」では街作りにコーエーテクモのIPを足して、両方の面で楽しめるところからスタートさせました。今後は、「my GAMECITY」でできることと、中に入っているソーシャルゲームでできることを上手く相互リンクできるようにしたいと考えています。

――ブラウザを主体としたソーシャルゲームは海外で主流ですが、海外のソーシャルゲームは意識されたのでしょうか?

藤田氏: 特に意識したことはありません。ただ、ゲームメーカーとして感じているのは、ゲームの勃興期がそうなように、今後は質量共にしっかりとしたものが求められると思います。海外ソーシャルゲームのいいところは参考にして、一方で私たちの方向性を示しながら、よりしっかり遊んでもらえるようなゲームをゲームSNSで作っていきたいと思います。ゲームに長く携わってきたゲームメーカーのノウハウを活かしたいですね。



■ 「100万人の三國志 Special」をきっかけにしたゲーム内ゲームという2重構造

「100万人の三國志 Special」ディレクターの松本秀氏

――では、「my GAMECITY」のソーシャルゲーム第1弾となる「100万人の三國志 Special」についてお聞きします。このタイトルを選んだのはなぜでしょうか?

松本秀氏: 「100万人の三國志 Special」については、まだブラウザゲームにはなっていなかったので、これを新しく作り込んだ方がいいと判断しました。

――ブラウザゲームになって、オススメできる要素はありますか?

松本氏: ポイントは、1つにはソーシャルゲームならではのサクサク遊べる部分です。もう1つは、大きな画面でステータス情報のリストなどを1度に見ながら考えられるという戦略性です。レイアウトなども一新して、必要な情報に素早くアクセスできるよう変更しています。

ブラウザ版になってじっくり戦略が練られるようになった「100万人の三國志 Special」

――今後の展開など、構想していることはありますか?

松本氏: ソーシャルゲームは生き物のようなものだと考えているので、これから先は未知数です。「my GAMECITY」も新しい試みですし、今回の導入の反応を見た上で、イベントやアップデートなどを行なっていきたいと考えています。モバイル版とは違う、独自の進化を遂げて個性化を図っていきたいと思います。

 それと、もし今後「my GAMECITY」がポータブルデバイスにも進出した時、「100万人の三國志 Special」の同じデータを使って家と外では違う遊び方をさせたいなと思います。「大航海時代 Online」などではそういった取り組みもしており、「100万人の三國志 Special」でも同じようなことができればいいですね。

――今後は、「100万人の三國志 Special」と「my GAMECITY」の関わりがゲームとしてもプラットフォームとしても特徴的になると思います。ここではどういったことができるのでしょうか?

松本氏: 今までのゲームでは、ゲームの中のコミュニティが大事になっていましたが、「my GAMECITY」を利用することで、新たなコミュニティの作り方ができると思います。それはゲームの中で完結するコンテンツとそれらを超えて成立するコンテンツが2種類できあがるということです。

 例えば、自分の「my GAMECITY」の街に「100万人の三國志 Special」の建物を作っておいて、そこで友人が何かアクションをして「100万人の三國志 Special」のゲーム内にメリットがあるようにします。すると、その友人は実際にコンテンツをプレイしなくても、相互にプレイしているゲームへメリットを提供できます。そういった新しいコミュニティとコンテンツの関係が実現できます。

――各プレーヤーが、それぞれゲームとコミュニティを行き来して楽しむようなイメージですね。

藤田氏: オフラインのイベントでは、プレーヤーのみなさんが自然発生的にコミュニティを形成して楽しんでいる光景がよく見られます。「my GAMECITY」でも最終的には、プレーヤーの間でがどんどん新しい遊び方を作っていってくれるような場になったらいいなと思います。

「my GAMECITY」では、過去のソーシャルゲームでは解決できなかった問題をクリアできるような設計になっているという

――あまりに自由だと、色々と問題が出てくると思うのですが……。

 今話題になっているものにRMT問題がありますが、コンテンツを越えて貴重なアイテムを交換、売買したいという欲求は昔からあると思います。しかし、リアルの場では問題視されることも、ゲームとして落とし込むことで解決できることがあるはずです。シブサワ・コウは「ゲームだから、という世界をいかにして作ってあげるか」と言っていますが、それが本来的なプレーヤー間の行為の持って行きどころになるのではないかと思います。残念ながら、それが今はないのかなという状況です。我々としては、健全なゲームコミュニティを作ることも役割の1つだと考えています。

――大事な所だと思います。リアルな場所をゲームとして提供することで、安全な場所にもなるということですね。

 ゲームの中にゲームがあるので、最初はわかりづらいかもしれませんが、「my GAMECITY」はリアルの世界で起こっていたことをゲームに持ってきたものです。過去のソーシャルゲームではクリアできなかった問題が、ゲームSNSの中で成立するという設計になっています。



■ 真っ先の命題は、「my GAMECITY」という世界の成立を目指すこと

――ビジネスモデルについてはいかがでしょうか?

藤田氏: ビジネスモデルは各コンテンツで個別のタイトルごとにお話するべきかもしれませんが、大きくは「GCコイン」をテーマにしています。「GCコイン」は「my GAMECITY」のプレーヤーにとって共通のポイントカードのようにしたいと思っています。新たな市場が創造できればいいですね。

――他のプラットフォームへの展開などは考えていますか?

藤田氏: そうなっていかないと、とは考えています。ただ我々ばかりが意気込んでも仕方がないので、これからの短期間の内にその魅力を伝えていかなければなりません。

――では、今後の「my GAMECITY」の構想についてお聞かせください。

藤田氏: 未知の部分を楽しんでいこうと思っています。全く新しい試みですから。よく連載ものの物語では、連載途中でプロットが変わっていく場合がありますが、フレームだけは変わらないようになっていたりします。「my GAMECITY」でも同じように、内容は変わるかもしれませんが、まずはワールドそのものを成立させることを目指します。そこを原理原則として、色々なIPで交流したり、プレーヤー同士の交流がIPにとってメリットがあるようなことを軸にしたいなと思います。当然、「my GAMECITY」でのイベントも行なっていきますよ。

「my GAMECITY」では、各タイトルの衣装をコスプレ感覚で楽しめるアバターアイテムが登場する

――プレーヤーにはどのように遊んでもらいたいですか?

藤田氏: まずは、ゲームの中にゲームがあるという2重構造を楽しんでほしいと思います。ここには「100万人」シリーズのソーシャルゲームを作ってきたチームが関わっていますので、「my GAMECITY」自体もしっかりと遊べるコンテンツになっています。その上で、中に投入するゲームはコーエーテクモゲームスのIPを活用したゲームを入れていくことを考えています。

 発表会でも宣伝や広告展開のことを聞かれましたが、今後の広告展開のことを考えても、まずはコンテンツが強くないといけません。そのためには、一定の実績のあるキラーコンテンツだったり、望まれているキラータイトルだったりを優先的に導入していきます。そうやって「GCコイン」やアバター、街作りなどができていって、タイトル同士の横の繋がりが見えてくるかなと思います。
 
――8月の段階では12月がリニューアルの目処だという話もありましたが、この時期になったのには理由があるのでしょうか?

藤田氏: 8月の段階ではもう少し早くリニューアルしたかったのですが、コンテンツが揃って次々とタイトルが出る状態にならないとプラットフォームとは言えないと感じていました。今は「100万人の三國志 Special」が提供できるようになりましたし、まだ具体的には言えませんが、夏までには2タイトルが出せるように用意できましたので、この時期になりました。この1~2カ月で新しい情報がどんどん出るので、注目していてください。

――それでは最後に、プレーヤーにメッセージをお願いします。

松本氏: 「100万人の三國志 Special」はスペシャル版ということで、新たな要素を追加しつつ、PCでもじっくり遊べるように作っています。コーエーテクモゲームスのファンなら必ず楽しめる内容になっているので、ぜひ遊んでください。

藤田氏: まずは触ってください。そこから始めましょう。

――どうもありがとうございました。


(c)コーエーテクモゲームス All rights reserved.

(2012年 3月 24日)

[Reported by 安田俊亮]