PS Vita「ルミネス エレクトロニックシンフォニー」特別インタビュー
水口氏に聞く“最新のルミネス、音楽の未来、ゲームの可能性”

3月22日収録

 

 ユービーアイソフト株式会社が4月19日に発売を予定しているPlayStation Vita用音楽パズル「ルミネス エレクトロニックシンフォニー」。「ルミネス」は、エレクトロなビジュアルとサウンドがプレイとシンクロして、トランス状態に導いてくれる独特なプレイ感覚が特徴のシリーズタイトル。その最新作が日本でもいよいよ発売となる。

 その「ルミネス エレクトロニックシンフォニー」について、開発元であるキューエンタテインメント株式会社の代表取締役である水口哲也氏と、今作のディレクターを務めたデイン ドン氏への合同インタビューが行なわれた。その模様をお伝えしよう。



■ グローバルなチームで制作された“世界中の人にたのしんでもらえる新しい『ルミネス』”

キューエンタテインメント取締役の水口哲也氏。セガ時代には「スペースチャンネル5」や「Rez」を、キューエンタテイメントを設立後には「ルミネス」や「Child of Eden」を手がけ、音楽ユニット「元気ロケッツ」のプロデュースも行なっている
「ルミネス エレクトロニックシンフォニー」のメインビジュアル。これは初期「WipEout」のデザインアートに携わったイギリスのデザイナーが手がけているということだ

―― よろしくお願いいたします。まずは、水口さんとデインさんの経歴等を改めて教えてもらえますでしょうか?

水口 哲也氏: では、まずは私から。現在はキューエンタテインメントのco-baファウンダー(共同創設者)で取締役でもありますが、最初は1990年にセガに入社しました。「セガラリー」などアーケードタイトルを何本かプロデュースしたあと、「スペースチャンネル5」や「Rez」など音楽を重視したゲームのプロデュースを始めまして。その後、2003年に独立してキューエンタテイメントを設立して、「ルミネス」や「メテオス」、「Every Extend Extra」など、最近では「Child of Eden」を作りました。

 そして、今回の「ルミネス エレクトロニックシンフォニー」となるのですが。実は、僕は今作ではそれほど現場でゴリゴリと進めていたわけではないんです。このプロジェクトがスタートした頃は「Child of Eden」の開発が佳境だったこともあって、僕は今回の「ルミネス」を開発するメンバーを人選するところが大事な仕事になりました。

 「ルミネス」の開発チームはすごく国際色豊かなメンバーになっています。「ルミネス」は最初の作品がPSPで2004年に発売されてからいろんなプラットフォームでリリースされ、ダウンロード版も含めると世界で200万本ぐらい出ています。モバイル版も世界76カ国でプレイされているということで、グローバルに浸透してきたタイトルかと思います。

 そして今回は、PS Vitaという新しいハードで「世界に向けてもう1回新しい『ルミネス』を出したい」と思ったんです。そこで、今日は来ていないのですがアメリカ人のジェームス・ミルキィをプロデューサーに立てました。彼は元々アメリカでとあるゲームメディアの編集長をしていた人で、その後キューエンタテインメントに来て一緒に仕事をしてくれるようになりました。今作に収録されている34曲の曲選びなどは彼が結構やってくれましたね。

 そして、今日一緒にいる彼はデイン ドンといいます。僕らは「ディーディー」という愛称で呼んでいますが、彼は上海出身のゲームクリエイターで、UBIのパリで仕事をしていたんです。僕は「Child of Eden」で彼と一緒に仕事をしてその才能に惚れ込みまして。その後キューエンタテインメントで一緒にがんばってくれることになって、今作ではディレクターをしてもらいました。彼は非常に天才的なゲームデザインとレベルデザインをするんですよ。今作では彼の功績が凄く大きいと思いますね。

 他にもプロダクトマネージメントにはオーストラリア人がいたり、アートの人間だと「ルミネス」シリーズで育ってきた若いアーティストがいますが、彼らは「Child of Eden」で“シナスタジア(共感覚)”を体験できるような演出をできるようになった、才能が目覚めた若い人です。その他にも、プログラムは北海道のスタジオと共同でやっていたりと、本当に国際色が豊かなチームで。そういうチームの作品なので、世界中の人に楽しんでもらえる作品に仕上がっていると思います。

本作のディレクターを務めたデイン ドン氏。日本語は不慣れということだが、当日は日本語で本作の魅力を語ってくれた。水口氏はデイン氏のレベルデザインやプレイ感への配慮を高く評価している

ディレクター デイン ドン氏: デインと申します。日本語はまだ未熟なのですが、宜しくお願い致します。僕は13年前に上海のUBIスタジオに入りまして、コンセプションデザインやリードデザイナーを行なっていました。そこからUBIパリの本社に移って、コンテンツマネージャーをしました。

 その後、水口さんと「Child of Eden」という素晴らしいタイトルを一緒に作らせてもらいました。その時に、「水口さんと一緒に新しい作品を作りたい!」と思ってキューエンタテイメントに入りました。今回は、大切な「ルミネス」というタイトルの監督を信じて任せてくれて。本当に楽しくできました。

―― 先ほど水口さんの方から「『ルミネス』を新しく出したい」という言葉がありましたが、今作での新しいポイントというのはどんなところでしょう?

デイン氏: 新しいというよりも“今までできなかったことをできる限り全部やりたい”という気持ちがありました。キーワードがいくつかありますが、まず“ダイナミズム”が1番大きなキーワードでした。

 まず、従来の「ルミネス」は2Dグラフィックスでしたが、今回はPS Vitaの描画能力を使った3Dグラフィックスになっています。ブロックもポリゴンになって、それによってステージに“空間”を感じられるようになっています。

 また、スキンの変化もダイナミックです。ステージの中にはレスピレーション(呼吸)という仕組みがあって、プレイしてブロックを消していくと、背景と効果音とミュージックが同時に盛り上がっていきます。 

今作ではブロックなど全てのグラフィックスがポリゴンで処理され、3Dグラフィックスに。それによってよりダイナミックな動きや変化をみせている
ブロックを移動させたり落としたりした時に、画面全体が動くギミックが入っている。それにより、操作の手触りと画面との一体感がより高まっている
左下のアバターをタッチするとアビリティが発動。スペシャルブロックの効果も前作より増え、新しいギミックが加わった

水口氏: 「ルミネス」の1作目では変化がそんなに大きくはなかったんですよね。でも今回は本当に、どんどんどんどん変わっていきますので。ハラハラドキドキというか、「次はどんなのだろう?」という楽しみがあると思いますね。

デイン氏: あと、ちょっとしたギミックですが、プレーヤーの操作に合わせて常にカメラが動くという仕掛けも入っています。

水口氏: 「カメラが動く」というのは背景の見え方ですね。それが操作によって微妙に動くんです。ちょっとした事なんだけど、それがあると気持ちよさが全然変わってくるんですよね。デインはそういうところによく気がつくんですよ。

デイン氏: ゲーム性についても、従来の「ルミネス」よりもっと“立体的”なゲームにしたいと考えました。ゲームを楽しめる幅を広げたいということで、初心者からシリーズのファンまで、楽しめるようにしました。例えばこれまでの「ルミネス」はゲームオーバーになると最初からやり直しになっていましたが、今回はコンティニューすればステージを続けられます。ただし、点数は0になってしまいますが。

 あと、スペシャルブロックという要素も、より直感的な仕組みに変わっています。スペシャルブロックは出したい時にすぐ出せるようになりました。

水口氏: 左下にゲージがあって、それが貯まると好きなタイミングでスペシャルブロックを出せるようになったんですね。あとスペシャルブロックの種類も増えています。以前からあった「同じブロックを繋げる」というものの他に、それを落とすとブロックがフリックするというか、「繋がっているブロックが何に変わるかわからない」という効果のものがあります。

 これは「それって実はすごく理不尽なんじゃないの?」って僕は最初思ったんですが、実際に遊んでみると、それがすごく欲しい時と、来て欲しくない時があって。その感じがすごく面白くて。プレイにダイナミズムを与えたんですよね。

※実際に試遊させて頂いたのだが、ブロックがランダムに変化するスペシャルブロックは、ランダムといってもブロックが2種類なこともあって、変化後に4個のブロックがまとまって大量に消えることもあり、チャンスに繋がることが多いという印象だ。ただ、あまり消えない時ももちろんある。

 

デイン氏: 今作ではPS Vitaのネットワーク機能を使って、フレンドのスコアを常に表示するようになっています。スコアの競争が楽しみやすくなりました。

 プレーヤーみんなで楽しむものでは、「ワールドブロック」という要素もあります。これはひとつの巨大なブロックを世界中のルミネスプレーヤーと協力して、毎日消していくというフィーチャーです。

水口氏: 僕はこれが結構好きなんですよ。少しずつみんなで消していこうっていうね。協力してやっていくっていのが、繋がっているという感じがあって。

―― この「ワールドブロック」はどれぐらいの量のブロックを消すものなんですか?

デイン氏: これは全体で200万ブロックが集まっています。毎日消していくスタイルで、消すとプレーヤーにはご褒美がありますよ。

※「ワールドブロック」の画像については、本稿の最後に掲載しているPVをご覧頂きたい

 

―― ダウンロードコンテンツで追加曲などを配信するような予定はあるのでしょうか?

水口氏: えー、検討中です(笑)。今のところはアナウンスできるものはないんですよね。

―― PS Vitaの「near」を使った要素もあるということですが、これはどんな使い方になっているのですか?

デイン氏: 「ルミネス」はどのモードを遊んでも経験値がもらえてレベルが上がるのですが、1レベルごとに何かしらのコンテンツが開放されるんですね。「near」ではその開放したコンテンツをギフトとして送ることができます。制限は特になくて、全てやりとりができるようになっています。

―― 今作はUBIから発売されるということですが、それはこれまでの関係性があったからということなのでしょうか?

水口氏: そういうことでもないです。実は「ルミネス」って1番売れているのがアメリカなんですよ。アメリカとヨーロッパの販売をしてくれたのがUBIで、すごく成功したという実績がありますね。あとは「Child of Eden」を経てUBIと僕たちの信頼関係が高かったというか。自然な流れで「一緒にまたやりましょうか」となったこともあるし。いろんなことが理由になっていますね。

―― 水口さんが「ルミネス」を新しくPS Vitaに出したいと考えたのは、やはりPS Vitaというハードが登場したからというのが大きいのですか?

水口氏: それはやっぱり大きいですよね。僕らはなんだかんだ言ってもハードの進化からくるインスピレーションっていうのが絶大なんです。「クリエイターとして腕を振るいたい」っていう気持ちがくすぐられるんですよね。ビデオゲームっていつでもテクノロジーと密接なわけで、新しいテクノロジーを提示された、それを使って何を作ろうかなって瞬時に考え始める人達なわけで。

 PS Vitaの話を最初に聞いた時に、PSPが出る時とはまたガラッと変わっていろんなものがアップデートされていたし、ソーシャル的な一面も可能になっていて。「じゃあそこに何ができるだろう?」っていうのを考えましたね。

「ルミネス」の基本ルールは今作でも同様で、ブロックを4個の塊にすると、左から右へと流れているタイムラインが通過した時に消えるという仕組み

―― そうして今作の新たな「ルミネス」が作られたんですね。では、新しい要素とは逆に“ルミネスとして変えてはいけない”というポイントはどんなところがありますか?

水口氏: まずは基本的なルールですよね。ブロックの置き方次第で色んな四角形を作れて、それが音楽的にループしているタイムラインが通過すると消えていく、という。その基本を変えてしまったら「ルミネス」ではなくなってしまう。それを活かしつつ、そこに色んな変化球を入れて揺さぶって、楽しさの幅が広がっていくような事をしていこうよ、というのがベースですね。

 あと「ルミネス」は、僕らがずっと追い求めている「気持ちよさ」が大事。ただゲームを遊んで面白いだけではなくて「遊ぶと気持ちが良い」というのをすごく考えていて、それがシナスタジアという言葉に表われているのですが。音楽的に映像も動いて再生されていく。やればやるほど、上手ければ上手いほど、自分が紡いでいるような、演奏しているような感覚を得られる。そこは今回、今までのルミネスよりもさらにデインやスタッフが高めてくれたなあ、と思います。

 いろんなものを経験して通過していくと、どんどん進化していくじゃないですか。最初の「ルミネス」は8年前の作品になりますが、そこからの8年間で僕らが経験した……例えば「Child of Eden」での経験であったり。そういった成長した部分が充分に入ってきているなと思いますね。

タッチ操作だけでできる機能は、アビリティの発動とアバターのパワーを溜めるという使い方に留めたという。そこには多くの議論をかわしたということだ

―― PS Vitaということでスクリーンと背面タッチパッドへのタッチ操作が使えるわけですが、そのあたりはいかがだったでしょうか?

デイン氏: それは難しかったです。正直に言うと「ルミネス」というゲームは集中しないといけないゲームで、それを邪魔してしまうようなフィーチャーは入れてはいけないのです。その考えからタッチ操作ではアバターのアビリティを発動させるという操作と、アバターのパワーを溜めるという使い方にしました。

水口氏: タッチ要素をどう使うかは結構いろんな議論があって。「ルミネス」って最後はもう神の領域に自分が入りかけているんじゃないかって思えるような、速い処理をしていく快感というものがあります。その速い操作の中で「タッチ操作を使って得たい何かというのはなんだろう?」と考えた時に、チームが出した答えは、背面タッチパッドを擦るとアバターのパワーが貯まっていき、パワーが貯まるとスペシャルブロックを出せるという操作でした。

 操作のリスクとリターンの設計がちゃんとされていて、それもロジカルなものではなくて直感的にできるものになっています。そのへんが上手くデザインできているなと思えますね。最初は「どうかな」と思っていたんですけど、実際にプレイしてみたら理に適っていたので。デインはわかっているなあと思いましたね(笑)。

※試遊ではブロックの移動や回転をタッチ操作で行なう事も可能だったが、やはり「ルミネス」はキーやボタンのクリック感がリズムとマッチして気持ちよさを高めてくれるタイトル。その気持ちよさを重要視しているということだ。

 

今作のキーワードは「エレクトロニックシンフォニー」。電子音楽の歴史的に成功しているアーティストにスポットライトをあて、さらに言えばエレクトロという枠からも飛び出して、世界中の人が電子的な気持ちよさを楽しめることを追求したとのこと。水口氏はプロデューサーのジェームス氏による人選や、ディレクターのデイン氏による構成に厚い信頼を寄せている
34人のアーティストの曲が収録され、プレイによってアンロックされていく。エレクトロミュージックの歴史を飾るアーティストから、最新の前衛的なアーティストまで、豪華なラインナップだ

―― 開発はいつ頃から始まったのでしょうか? また、プロジェクトをスタートするにあたって最初にあったコンセプト等の話し合いにはどんなものがありましたか?

デイン氏: 開発は昨年の3月からで、約1年ですね。最初にあったのは、タイトルにある“エレクトロニックシンフォニー”というキーワードでした。

水口氏: “エレクトロニックシンフォニー”ってパッと聞くと英語だらけなので、日本人的には直感的じゃないかもしれないのですが、あえてカタカナ表記にするのみにして世界共通のタイトルにしています。

 今回は34人のアーティストの曲を世界中から集めたのですが、その時の基準がエレクトロミュージックの中でも、電子音楽の歴史的に成功しているアーティストにスポットライトをあてています。有名なあたりでは「ケミカルブラザーズ」や「アンダーワールド」、あと昔の1980年代、1990年代のポップミュージックを経験している人だと、「ハワード・ジョーンズ」が参加しているというのを聞くと「えー!?」ってなるかもしれない。でもその当時に凄く売れた曲ではなくて、「ハワード・ジョーンズ」が新しく作っている今の曲だったりして。実際にプレイで聴いてみるとすごく良い曲だったりとかね。

 あと、すごくオーガニックな曲やサンバ的な曲があったり。クラブ的な曲で言うと僕のゲームによく参加してもらっている「ケン イシイ」さんや「カスケード」っていうアメリカやヨーロッパですごく売れているDJもいますね。そういう人たちを軸にしようというのが最初にありました。もちろん、電子音楽が好きじゃないと楽しめないわけじゃなくて、遊んでみるとエモーショナルな曲がたくさんあります。そういうトーン付けを最初にすごく話しましたね。

―― それだけたくさんのアーティストの方に参加頂いて様々なテイストの曲が収録されたとなると、人選や構成の組み立てには相当苦労されたのではないでしょうか?

水口氏: そうですね。そこはプロデューサーのジェームスが1番力を入れたところだったと思います。

 僕らの中で「ルミネス」というのは世界基準のタイトルというのがあって、世界中の人が満足できるものにしたい。仮に、ゲームも知らないし参加アーティストも知らないという人でも、遊んでみたらすごく好きになってもらえてファンになってもらえるぐらいの。そういう要素がないとダメだよねって思っています。

 そういう意気込みとはまた別に、選曲するっていうのはすごく楽しいんですよね(笑)。ある意味では、映画のシナリオを考えていくのと同じなんです。プレイした人が、どういう気分で、どういう感情のカーブになっていくのか、それを作り出すというか。デインが力を入れたレベルデザインともすごく絡むところですね。

―― 曲のテンポとブロックが出てくるスピードであったり操作であったり、それらリズムがマッチしていないと気持ちよくなれないですよね

水口氏: そうそう。そこに「こういうときはアッパーな曲がいいよね」とか、「しっとりとした曲で1度落ち着かせて」とか構成を考えていくんです。ゲームってゲームデザイン、レベルデザインとそこに乗っているビジュアルやサウンドのアートによる“要素のかけ算”じゃないですか。アートやクリエイティブが遊んでいる人の感情を揺さぶってくれるんです。僕らはゲームを作っていて「ゲームは芸術の域に来たなあ」って思うんですよ。

これからがエレクトロミュージックの本当の始まりで、そこから生まれてくる新しい広がりに期待しているという水口氏。その中で水口氏は自身が音楽としてできること、ゲームとしてできることはまだまだたくさんあると語ってくれた

―― 水口さんが感じるエレクトロミュージックの魅力というのはどういうものでしょうか?

水口氏: 僕は自身でも「元気ロケッツ」というユニットをやっているんですけど、今やほとんどの音楽が電子化できるんですよね。電子化されると何ができるようになるかっていうと、音楽の中にMIDIの信号を仕込んだり、音の波形データを視覚化したりとか。僕らが思う“気持ちいい”を実現するのにいろんなものをシンクロできるようになったり。

 元気ロケッツでもよく音楽に合わせて映像をシンクロさせたような演出をやりますが、そういうことが“始まった”んだと思うんですよ。まだ始まったばかりで、多分もっともっとすごくなっていくんだと思うんです。交わり具合とか、クリエイティブなことがプロアマ問わず。

 例えば初音ミクで、自分が作った曲に別の誰かが映像を付けたりとか。そういうことがもっと加速するだろうし。僕はそういう世界がすごく楽しみなんです。あと、そのうちに「エレクトロミュージック」っていうのが死語になると思っているんです。音楽は全部電子的に1回置き換えられちゃうと思うので。生音で収録したりライブはまた別だけど、それすらもトラックをわけたりとか電子化のプロセスを経ているわけで。

 逆にそういうところから新しいクリエイティブのスタイルが生まれてくるだろうなっていうのが、期待したいところなんですよね。世界中で繋がれて、言葉を越えて。音自体を加工して楽しむようなものとかもあるかもしれない。ボーカロイドのようなものが世界中に広がっていくとしたら、新しいものが出てくると思いますね。

―― 人種や言語が違っていても電子音を楽しめるということについて、水口さんはどのように考えられていますか?

水口氏: 多分、電子音を楽しめているというよりも、人間がやっている事って何万年も変わっていないと思うんですよね。音楽ってどこから生まれたかと言えば、きっと生活の中に自然とあったもので、例えばお祭りなら日本の阿波踊りとスペインの闘牛祭りみたいなものでも、根底にあるものは同じで、人が生きて繋がっていくために必要なものが音楽なんじゃないかなって思いますね。

 最初にリズムがあって、そこに歌を載せて何かメッセージを伝えようとした人がいて。それが口頭で伝承されて例えば民話になったりとかね。だから、元々はみんな一緒なんじゃないかなって思いますね。

 音楽っていろいろな機能があって、ストーリーも載せられるし、歌いたい音楽もあれば踊りたい音楽もある。僕はずっと音楽をテーマにゲームを作り続けていますけど、充分にそれをやるのに値するテーマなんですよね、音楽って。

―― 今回の「ルミネス」に込めたメッセージのようなものはありますか?

水口氏: そうですね……。「Child of Eden」もそうだし、最初の「ルミネス」も今回の「ルミネス」もそうなんだけど、結果的に大きなストーリーを作っているんですよね。そのストーリーがなんとなくメッセージになっているというような。

 「Child of Eden」ではストーリーを色濃くやっていて、エデンという未来のアーカイブがウィルスに冒されて、それを自分が浄化していく中で、昔から代々蓄積されてきた地球の記憶とか人間の記憶や営みというものが、効果音やエフェクトと共に再生されて音楽化していく。その延長線上にはルミという初めて地球の外で生まれた女の子が地球の記憶と共に封印されていて、記憶と一緒に出てくるというものになっていたんですけども。

 そういうストーリーと音楽の化学反応って、作っていて「新しい事してるな」っていう気持ちになれるんですよ。映画を見るのではなくて、ゲームを遊べるというだけじゃなくて、全部が融合している、誰もやっていない感じのところにいるような気がしていて。

 そこまで前面に押し出していない「ルミネス」でさえも、最後のエンディングまで遊んでくれた人の中には「泣きました!」って言ってくれる人もいて。その泣いたというのは、達成感で泣いたのか、最後にあったストーリー性でグッと来たのか……僕はそのミックスだと思っているんですけども。

 まだまだやれること、やりたいことはありますよね。ゲームってまだまだ可能性があると思いますね。



自身が関わった作品の中で「1番オススメ」と嬉しそうに語ってくれた水口氏。グローバルなチームで作り上げる作品に大きな手応えと期待を感じている様子が伺えた

―― 最後にゲームファンの方へ向けて、お2人からメッセージを頂けますでしょうか

デイン氏: 今回の「ルミネス」は初心者の方から楽しめる仕組みになっています。なので、これまで「ルミネス」を遊んでいないという方は、このPS Vitaの「ルミネス」からプレイしてもらうのがオススメです。

水口氏: 僕、正直なところを告白しますけど、今まで自分が関わってきたゲームの中で今回の「ルミネス」が遊んでいて1番楽しいんですよ。これは言うとちょっと誤解されるかもしれないけど、今回はデインやスタッフを信頼して任せて、すごく良いものができあがってきた。自分が考えて苦労して、隅々まで知っているものって、なんか楽しめなくって。作り終わった時にはもうヘトヘトなんですよハッキリ言って。その後にプレイをやり続けられないんですよね。でも今作は楽しくプレイできて。それだけよくできていると思いますね。

 デインも今言ったけど、どんな世代の人でも、どんな国の人でも、以前から「ルミネス」のファンだった人も、今作から遊んでもらう人も、みんな均等に楽しく遊べると思いますよ。すごくオススメします。僕が言うのも変だけど(笑)。僕が関わってきた作品の中で1番オススメしますよ。PS Vitaを持っていたらぜひ買ってもらいたいですね。損はさせませんので。

―― ありがとうございました。

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(2012年 3月 29日)

[Reported by 山村智美 ]