インタビュー

「マビノギモバイル」開発者、DevCATキム・ドンゴン氏、イ・ジフン氏インタビュー

原作者が見つめる原点、PC版とは異なる「女神降臨」の展開に注目!?

【マビノギモバイル】
8月24日より事前登録開始

 8月24日より事前登録を開始した「マビノギモバイル」。本稿ではこの発表会のために来日した本作の開発スタジオDevCAT代表のキム・ドンゴン氏、開発ディレクターのイ・ジフン氏にインタビューを行い、「マビノギモバイル」への想いを聞いた。

 キム・ドンゴン氏は「マビノギ」のコンセプトを提示し、初期の物語を作った開発者である。そのキム氏が手掛ける「マビノギモバイル」。「マビノギ」ファンにはおなじみのキャラクターが登場し、スタートの地ティルコネイルは故郷のような場所で、まるで「マビノギ」のリニューアルのようだ。「マビノギモバイル」と「マビノギ」はどのような関係なのか?

 ゲームのコンセプトとともに、戦闘やコミュニケーションなど、体験会で生まれた疑問もぶけてみた。

「マビノギ」とは異なる吟遊詩人が語る物語が「マビノギモバイル」

――「マビノギモバイル」を体験して思ったのですが、PC版「マビノギ」との関係はどうなるのでしょうか? ゲームの導入、ティルコネイルと同じ世界のような印象を受けました。

キム氏:そう感じられたのでしたら、もう大成功です(笑)。まず「同じ世界だ」と感じていただいて、プレイすることで違いが見えてくるようにしています。

 「マビノギモバイル」は「マビノギ」とは全く違う作品ではありません。繋がっている。リメイクでもないし、全く別なゲームでもありません。

DevCAT代表のキム・ドンゴン氏

イ氏:「マビノギ」の原作者がキム・ドンゴンなんです。「マビノギモバイル」は「マビノギ」の良さを活かしつつ、当時キムが実現しようと思ってできなかった要素を盛り込んでいます。

 そしてモバイルに対応しているというのが大きな特徴になります。画面の比率がハードによって変わるのにきちんと対応している。色々なハードで「マビノギモバイル」の世界「エリン」に訪れることができます。

開発ディレクターのイ・ジフン氏

――「マビノギ」ではプレーヤーキャラクターは何度も転生を繰り返し、エリンを訪れます。「マビノギモバイル」の世界は“違うエリン”という解釈ですかね?

キム氏:「マビノギ」は吟遊詩人が歌い伝えていく物語です。そのため吟遊詩人によって物語の解釈が異なる。「マビノギモバイル」は「マビノギ」とは違う吟遊詩人が、元は同じだけど解釈の違う物語、理解していただければと思います。

イ氏:その流れですと、この「マビノギモバイル」の吟遊詩人は私、となります。新たに「マビノギ」を解釈する。しかし大きな柱は守っていきます。なにしろ「マビノギ」は20年前に作ったゲームです。今回も全く同じストーリーというわけにはいきません。ディレクターの私と基本のストーリーを作ったキムと共に話し合って進めました。「こういう展開はどうだろう?」と言ったアイディアもたくさん盛り込んでいます。

不思議な少女ナオ
スタート地点のティルコネイル。「マビノギモバイル」では「マビノギ」と同じ「エリン」が舞台となる

――今回「マビノギモバイル」をプレイして特に感心したのはカットシーンです。演出面が強化されていると感じました。

イ氏:私は「マビノギ」のカットシーンの演出を手掛けていました。その時、20年前カットシーンの演出を盛り込んだMMORPGは「マビノギ」が初めてなんじゃないかと思います。ただ初めてだけに今思うと失敗もあったし、やりたくても技術的にできないことがあった。そういう思いは「マビノギ」開発中ずっと胸に抱えていました。

 だからこそ「マビノギモバイル」では、当時思いついたけどできなかった演出や、今のシステムだからこそ実現できる演出をたっぷり盛り込んでいます。

キム氏:今回のカットシーンで工夫しているのが、1人称視点です。従来のカットシーンは3人称視点の外から見せるものが多かったのですが、今回は1人称視点を盛り込み、より臨場感のある演出を意識しています。自分が冒険をしているんだ、という気持ちを持ってもらいたいと思います。

 また、キャラクターの外見、衣装などすべてがそのままカットシーンに活かされているところも楽しんでほしいです。自分と自分の分身であるキャラクターがしっかり物語に組み込まれ、プレーヤーキャラクターが物語を動かしている。というのを感じてほしいと思います。

 「マビノギモバイル」で一番大事にしているのが「特別な自分」です。プレーヤーキャラクターはエリンを訪れた特別な存在なのです。だからこそ自分のキャラクターが物語で重要な役割を果たす。エリンに大きな影響を与える人物だということを強く感じてほしいです。

カットシーンは豊富に挿入される。物語の主人公としてプレーヤーキャラクターが描かれる

間口の広さを強く意識した戦闘システム

――次は戦闘システムを聞きたいです。PC版と大きく違いシンプルで直感的に戦えると感じました。戦闘システムで注力したのはどういうことでしょうか?

イ氏:私たちが気をつけたのは「便利で使いやすいシステム」です。移動、戦闘、風景を眺める……。すべてを直感的にできるようにしました。

――PC版「マビノギ」はスキルショートカットが画面にたくさん表示したり、操作が複雑な面がありました。「マビノギモバイル」は武器を変えることで表示するスキルが限られたり、使いやすくわかりやすいシステムですね。

キム氏:PC版「マビノギ」は20年継ぎ足していったので複雑になってしまいました。「マビノギモバイル」は誰でも簡単に物語に触れて、冒険が楽しめるようにちょっと新しく、そして新しい人に楽しんでもらえるシステムを目指しています。

イ氏:「マビノギ」では戦闘スキルや生活スキルが全部画面内に表示されていました。ショートカットメニューも複雑で強いた。「マビノギモバイル」では武器を変えることで画面に表示されるスキルが切り替わります。そしてスキルの組み合わせが楽しめる設計になっています。使いやすさと奥深さのバランスを追求しています。

キム氏:「マビノギモバイル」でも多彩なスキルの取得が可能です。武器によってスキルが変わる。弓を持てば弓使い。剣を持てば戦士のスキルが使えます。装備を変えれば戦い方が変えられます。

武器を持つことで様々なクラスによるプレイスタイルが選べる

――武器を変えるとスキルが変わるとのことですが、戦闘中に武器を切り替えられますか?

キム氏:それはできません。それはあえてできないようにしています。戦闘中にプレイスタイルを変えるとプレイの難易度そのものが上がってしまう。「マビノギモバイル」で大事にしている間口の広さを確保したくて、わざと戦闘中の武器の交換はできないように設計しました。

 「マビノギモバイル」では理論的にはすべての武器のスキルをマスターした最強キャラクターも作れます。ただ、韓国のプレーヤーは職業に特化した思い入れが熱いですね。自分のクラスにプライドを持っています(笑)。

イ氏:韓国では「マビノギモバイル」ポップアップストアを出展したことがあるんですが、そこで一番売れたのが「クラスバッジ」なんです。各職業のシンボルを胸とかにつけられる。韓国では職業議論も盛んでオンラインでも交流して話を聞く機会など設けていますが、職業に対する要望は非常に大きい。クラスへの思い入れが強いですね。

「マビノギモバイル」のストーリーは現在の「マビノギ」とは大きく異なる展開に?

――「マビノギ」では当初予定していなかったシステムをどんどん足していく形でした。拡張を予想していなかった部分もあったと思います。「マビノギモバイル」は拡張を考えてシステムを設計なさっていますかね?

キム氏:私は「マビノギ」は途中から関わっていないので分からないですね(笑)。私はG1と呼ばれる「女神降臨」まで関わっていました。その後は違うスタッフが「マビノギ」を担当しています。

イ氏:だからこそキムが担当する「マビノギモバイル」は「女神降臨」から先の「マビノギ」でやりたかったことを実現したい。そういう想いで開発を進めています。このため、まず私たち開発スタッフはキムが最初に作った「マビノギ」の開発資料を共有し、キムが「マビノギ」でどんなストーリーを構想していたか、そこを理解することから始めたのです。

キム氏が「マビノギ」を手掛けたときに作った資料。「マビノギモバイル」ではこのコンセプトをもう一度皆と共有して開発が始まった

――ある意味「マビノギモバイル」は、「マビノギ」の再出発、といえるのでしょうか?

キム氏:現在の「マビノギ」の延長が「マビノギモバイル」ではない、というところは強調したいです。ある意味「全く違う『マビノギ』」といえます。

イ氏:それと共に「マビノギモバイル」は間違いなく「マビノギ」であることをファンの皆様には強調したいです。「マビノギ」のオリジン、根本とは何かを考え、私たちは開発しました。「マビノギ」であることを大事にした作品なのです。

――了解しました。次はプレイ環境で質問します。「マビノギモバイル」は現代の快適に短い時間でプレイしたい、というユーザーに向けて設計しているのでしょうか? それともがっつり何時間も遊ぶ形を考えていますか?

イ氏:現代、最も使われているゲーム機器は「スマートフォン」です。だからまず「縦画面での快適なプレイ」というのは大事にしました。縦画面では短くサクッと遊べるようなそういうプレイを考えています。そして横画面にすれば視野が広くなりしっかり戦闘もできる。ボスのような大きなキャラクターも表示される。戦略性の高いがっつりプレイができる。縦と横でプレイスタイルを変えられるような設計にしています。

キム氏:PC版の場合、PCの電源を入れて、ゲームにログインして、といったゲームを始めるまでに時間がかかった。「マビノギモバイル」はすぐにプレイができます。そして友達トレイドに行ったりする場合は、PCで集中してしっかり遊ぶ。

イ氏:余談なんですが、IMAX、つまり映画館のスクリーンでも「マビノギモバイル」はプレイできますよ。大きなスクリーンで韓国でやりました(笑)。

――コンテンツのプレイ時間などはどうでしょう? 結構がっつりしたゲームの印象を受けました。

イ氏:短く楽しめることも意識しています。ストーリーボリュームは非常に大きいですし、がっつり遊べるコンテンツもありますが、短く遊べるコンテンツも多くしています。プレーヤーが強くなるために夢中でプレイしたいのか、自分のペースでゆっくりプレイしたいのか、それぞれに合わせたコンテンツを用意しているんです。

――次はコミュニケーション、ユーザーをつなぐ工夫を教えてください。

イ氏:「偶然の出会いシステム」が韓国ユーザーから好評でした。これはダンジョンに入ったプレーヤー同士がマッチングし、そのまま一緒にダンジョンを攻略できるんです。ダンジョンに入っているとマッチングして、パーティーを組みます。そうなるとダンジョンが少し強くなって報酬が上がる。

キム氏:私のように人付き合いが苦手なプレーヤーはとことんソロにこだわることもできます(笑)。NPCを仲間にしてのパーティープレイも可能になっています。

イ氏:日本でのサービスの場合はよりソロプレイを考えた調整も必要だと思っています。現地のチームの皆さんと一緒に、日本のプレーヤーに会った調整を行っていこうと思っています。

――最後にお聞きしたいのは、キム氏が担当することで、「女神降臨」以降のストーリーは現在の「マビノギ」とは違ったものになるのでしょうか?

キム氏:正直に言いますと、「マビノギ」では「女神降臨」のストーリーの終わり方をうまくできなかったんです。その後は私の手を離れてしまったので、私が「マビノギ」を通じて伝えたかったメッセージを伝えきれなかった、という想いはずっと持っています。だからこそこの「マビノギモバイル」できちんと私の思いを形にしたいのです。

 これらの冊子、先ほど話したチームが共有した資料には私が「マビノギ」で準備した物語が全部入っています。だからこそ「マビノギモバイル」は現在の「マビノギ」とは異なる展開となっていきます。

「マビノギモバイル」は「マビノギ」と異なる展開を見せるという

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

キム氏:皆さん、マビノギを長く愛してくださって本当にありがとうございます。「マビノギモバイル」でも皆さんが満足できるようなストーリーを提供できるように頑張りたいので、たくさんの応援、お願いいたします。

イ氏:皆さんが待っていてくださった分、最高の作品となれるように現地のチームとともに調整を進めておりますので、皆さんサービス開始まで楽しみにしていてください。

――ありがとうございました。

 「マビノギモバイル」は筆者にとってまるで「マビノギ」の世界に帰ってきたような気持ちにさせてくれた。インタビューでその想いこそキム氏の狙いであることを知ってうれしくなった。

 何より「別の吟遊詩人が語る『マビノギ』」という本作のコンセプトがドキドキさせる。「女神降臨」はどのような展開を見せるのか? プレイするのが楽しみだ。