インタビュー

Switch2「ダスクブラッド」宮崎英高氏インタビュー! フロム最新作は「直接殴り合う以外でも勝てるゲームにしたい」

製品版では10体後半のキャラクターが用意

【The Duskbloods(ダスクブラッド)】
ネットワークテスト実施期間:8月21日~8月24日
テスター募集期間:7月22日~7月28日

 いよいよ明日からネットワークテストが始まるNintendo Switch 2専用アクション「The Duskbloods(ダスクブラッド)」。フロム・ソフトウェアの新作というだけでなく、「DARK SOULS」シリーズや「Bloodborne」、「ELDEN RING」なども手掛けてきた同社代表取締役の宮崎英高氏がディレクターを務めることでも注目を集めている。

【The Duskbloods デビュートレーラー】

 加えて、同社としては初となるPvPvEを前提として取り入れたゲームシステムがどのようになるのか注目しているファンも多いだろう。本稿では、メディア試遊会にて実施された宮崎氏への合同インタビューをお届けする。

 試遊会については本稿と同時にレポートを掲載している。本稿ではゲームシステムについて触れる部分もあるため、詳細はレポートをご確認いただきたい。対人もありながら同社らしい達成感を味わえる本作の魅力を余すことなく紹介している。

 対人の苦手な筆者の感想としては対人要素もあるものの遊びやすく、負けたとしても達成感を味わえる魅力的なタイトルだった。何より縦横無尽に飛び回って戦えるアクションと勝利点になる「美徳」やロールプレイができる「烙印」が面白かった。対人戦を避けられないからと忌避せずに、まずはレポートをご確認いただきたい。

PvPもあればPvEもある。本作のゲームスタイルを選んだ理由

フロム・ソフトウェア代表取締役・宮崎英高氏。「ダスクブラッド」でもディレクターを務めている

――クリエイターインタビューでもお答えいただいている内容ですが、改めて、今回「PvPvE」というゲームスタイルを選んだ理由や狙いを教えてください。

宮崎氏:そうですね、まず第一に、本作の最初の情報発信として「PvPvE」というのは、あまり正確ではなかったかもしれません。

 私としては、PvPの要素もあれば、PvEの要素もある、ただそれだけの事実として使った言葉なのですが、現状「PvPvE」というと、もっと特定のフォーマット、例えば脱出シューターのようなゲームを想像してしまうのかなと。

 ネットワークテスト版を触って頂ければ、ご理解いただけると思いますが、本作はそれらとはまた違ったゲームですから。

 ともあれ、本作がオンラインゲームであることは間違いありません。

 何故それを作ったのか、という話であれば、我々の過去作と同様の答えになります。

 つまり「自分たちが面白そうだ、作りたいと思ったから作った」ですね。

――「ELDEN RING NIGHTREIGN(エルデンリング ナイトレイン)」と発表時期が重なったことで、フロム・ソフトウェアとしてオンラインゲームを重視する戦略があるのではないか、という見方もあります。

宮崎氏:タイミングが「ナイトレイン」と被っているので、そのことについて色々と聞かれることもあるのですが、両者のタイミングが被ったのは、ただの偶然です(笑)。

 我々の戦略が変化し、これからはオンラインゲームを中心に作っていく、といったことではありません。

 そもそもの話として、本作のはじまりは「ナイトレイン」よりも前ですしね。

 以前クリエイターズインタビューでお答えした通り、たまたま任天堂さんに本作の原案をお話しする機会があり、興味を持って頂いた、というのがはじまりなのですが、その時は、単に自分が面白そうだと思うことを喋っていただけで、会社としての戦略とか、そんなことはまったく考えていなかったと思います。

――過去のフロム・ソフトウェア作品で扱ってきたオンライン要素が、本作につながっている部分はありますか。

宮崎氏:私自身が「Demon's Souls(デモンズソウル)」や「DARK SOULS(ダークソウル)」を作る過程で、蓄積されたものはあった気がします。

 「ダークソウル」の誓約が分かりやすいですが、ああしたオンライン要素は私の好みでして、過去色々なアイデアを考えたのですが、シングルメインのゲームが前提だと採用しにくいものも多かったのです。

 そうしたアイデア、あるいは思考の蓄積を、どこかで活かしたかったのかなと。

PvPが苦手でも異なる勝ち筋を見つけられる! PvPの重要性は開発中に減らしていった

――本作では、儀式場以外でほかのプレイヤーを倒しても、必ずしも大きな利益にはならない設計になっています。このPvPの重要性は、どのように調整していったのでしょうか。

宮崎氏:調整で重視したポイントは幾つかあるのですが、そのひとつは「PvPの比重」ですね。

 ここで言うPvPは、プレイヤーキャラクター同士の直接的な殴りあいを指すのですが、その勝利に対する重要度、あるいはプレイ時間に占める割合、といったものです。

 この点については、ネットワークテストでも引き続き重視しており、頂いたフィードバックを踏まえて、製品版に向けた調整を行なうつもりです。

――フロム・ソフトウェアのゲームは好きでも、対戦ゲームは苦手というプレイヤーも多いと思います。そうしたプレイヤーでも、本作を楽しめるのでしょうか。

宮崎氏:そうですね。純粋なアクションスキルによるPvP以外の幅もあり、また楽しみ方もある、といった設計になっています。

 私自身、純粋なアクションスキルは決して高くないプレイヤーなのですが、そんな私でも楽しめるようなゲームだと思います(笑)。

 ストーリー進行について言えば、いわゆるエンディングも複数用意しておりますので、そういった意味でシングルプレイ的な楽しみ方もできるのかなと。

――発売から時間が経ち、経験者だけが残った環境に初心者が入ると、楽しみにくくなる問題があります。その点については、どのように考えていますか。

宮崎氏:これには、2つの答えがあると思います。

 1つ目は、これまでお話ししてきたように、本作には様々な楽しみ方があること。そのため、初心者が楽しみながら、熟練者になっていくことが可能なこと。

 例えば、これも繰り返しになってしまうのですが、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れですね。

 2つ目は、これはアップデートでの話になりますが、熟練者が、むしろ初心者のメリットになるような要素を考えています。

 例えば、熟練者が特別な血盟相手になってくれたり、特別な強敵になってくれたり、あるいは、レアなイベントをもたらしてくれたり、といったような。熟練者が感謝され、尊敬されるようになれば、と思っています。

 ただ、これはまだ構想の段階です。現状は、まず製品版の完成に全力を注いでおり、アップデートの内容、タイミングなどは、まだ未定の部分も多くなっていますので。

――本作には、ランクマッチやシーズン制も用意されるのでしょうか。

宮崎氏:はい。運営方法など検討中ではありますが、ランクマッチやランキング、シーズン制などは用意します。

 戦いに勝利し、ランクを上げる。当然ですが、そうしたことも、本作の楽しみのひとつと考えています。

「ダスクブラッド」の舞台はさまざまな時代における「人類の黄昏」

――本作は近代的なゴシック調の世界観で、「Bloodborne(ブラッドボーン)」を思わせる部分もあります。なぜ、この世界観を選んだのでしょうか。

宮崎氏:今作のプレイヤーキャラクターである血族のモチーフは、いわゆる吸血鬼です。なので、吸血鬼もの、として最もストレートな世界観として、最初のマップとしては「ゴシック・ヴィクトリアン」を選択しています。

 ただ、今作の世界観はそれだけではありません。ネットワークテスト版では、マップはひとつだけですが、製品版では他にもマップが2つ用意され、それぞれ「ゴシック・ヴィクトリアン」とは、また違った世界観を持っています。

 本作では、血族たちは、色々な時代、場所の「黄昏」に呼ばれ、血授をめぐり戦います。

 戦いの舞台の共通点は、それが「黄昏」、つまり「人類の滅び、衰退、落日の時」であることです。

そういった意味で、結構広がりのある世界観かと思います。


――ロケットのような装備や、重機を思わせるものを使うキャラクターもいました。キャラクターや装備の時代設定には、どのくらいの幅があるのでしょうか。

宮崎氏:そうですね…。

 本作では、プレイヤーキャラクターを吸血鬼ではなく、敢えて血族と呼んでいます。

 それは、彼らが単なる怪物ではなく、知性と哲学、文化と歴史を持った種族である、といったイメージによるもので、その点は特徴と言えるかもしれません。

 また、これはある意味で私の癖なのですが、拡大解釈主義というか、「我々が血族であると言えば、それは血族なのだ」といった感じで、トラディショナルなイメージは大事にしつつ、キャラクターデザインの幅を広めに取っていることも挙げられると思います。

 ネットワークテスト版では、ゾークが分かりやすいと思いますが(笑)。

――本作では、月や血だけでなく、車輪のモチーフも印象的です。車輪は、血族の歴史や運命と結びついているのでしょうか。

宮崎氏:車輪は、黄昏の戦いにおける召喚が「時空を超えている」ことを表現するためのモチーフですね。

 先ほどもお話しした通り、本作の戦いの舞台は、色々な時代、場所の「黄昏」なので。

――全キャラクターに、近接武器と遠距離武器の両方が備わっているのが印象的でした。すべてのキャラクターが遠近両方に対応できるようにした理由を教えてください。

宮崎氏:基本的には、まずアクションの土台があり、それに合わせて武器種なども調整されています。

 本作では、プレイヤーキャラクターは血族であり、超人的な能力を持ち、かなり高くジャンプでき、空中を駆けるような動きも可能です。

 一言で言うと、今作のアクションはダイナミックなもので、そのベースで戦うためには、近接武器だけでなく、標準で遠距離武器も必要だろうと考えました。

――今回のマップは、ワープもあり、思っていたより移動しやすい印象でした。製品版のほかのマップも、同程度の大きさになるのでしょうか。

宮崎氏:基本的には同じですね。ゲームバランスを考えると、適切なマップの大きさというのは大体決まっており、どのマップもその範囲内に収まるように調整されています。

――本作のダイナミックなアクションに合わせて、フィールドはどのように設計したのでしょうか。

宮崎氏:本作のプレイヤーキャラクターは機動力が高く、特にジャンプや空中制御に優れていますので、それに合わせて、飛び回るのが楽しい立体マップを意識してデザインしています。

 元々、私自身縦に積むマップが好きなので、それは楽しい作業でした。

 また、本作のマップでは、過去作ほど強い導線を引いていません。これは、本作のゲーム性を、繰り返しプレイと自由な立ち回りを意識した結果ですね。

「美徳」は直接戦闘以外の勝ち方を作るシステム

――「美徳」を集める仕組みには、ボードゲーム的な印象を受けました。このシステムは、どのように生まれたのでしょうか。

宮崎氏:そうですね。美徳のシステムは、ボードゲームを参考にしている部分があると思います。

 本作には、美徳を得る手段の一つとして「称賛」という要素もあるのですが、開発中には「ロンゲスト・ロード」と呼ばれていましたからね(笑)。

 個人的には、この美徳のシステムが、ゲームの幅を大きく広げてくれたと思います。

 勝利を目指すための選択肢、立ち回りの幅という点でもそうですし、イベントや、血族の特殊能力を考えるという点でもそうだと思います。

――先ほど「上位に入れなくても楽しめる」と説明されていました。具体的には、どのような仕組みで実現しようとしているのでしょうか。

宮崎氏:そうですね。大きく3つの点があると思います。

 1つ目は「美徳」のシステムです。美徳とは、いわゆる勝利点なのですが、最終戦を除いて、戦いの勝敗はこれの多寡により決まります。PvPなりPvEなりは、この美徳を得るための一手段でしかありません。

 こうすることで、純粋なアクションスキルだけでなく、立ち回りや戦略で勝利を目指すことが可能になっています。美徳システムにより、純粋なアクションスキルの比重を下げているのです。

 2つ目は、ロールプレイ的な楽しみです。本作は、純粋に勝ちを目指すのも、勿論楽しいゲームだと思いますが、それとは別に、キャラクターを演じたり、戦いの最中に突発的に起こるドラマを楽しんだり、といった側面も重視しています。

 イベントや烙印、特に後者にその色が濃いでしょうか。期せずして割り当てられる「受動烙印」には、時にドラマがあるもの思いますし、たまたま、特定の組み合わせで烙印が成立した場合などに、専用のセリフが再生され、新しい物語の断片が手に入る、といった要素もあります。

 3つ目は、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、ストーリーの進行とキャラクタービルドです。本作の拠点である「夜の館」には2階があり、そこには何人かのNPCがいて、彼らと話すことでストーリーが進行します。

 また、オンラインプレイを通じてアイテムを入手し、それを使って血族キャラクターをカスタマイズできますし、アイテムテキストなどによる断片的なストーリーテリングも行なわれます。

 こうした要素は、必ずしもオンラインプレイにおける勝利を前提とするものではありませんので、まずは勝利に拘らず、ストーリー進行とキャラクタービルドを楽しむ、といったことが可能です。

最後に3人で戦うのは、勝利点だけでは締まらなかったから

――試合の最後には、3⼈による直接対決があります。勝利点を集めるゲームでありながら、最後をバトルロイヤルにした理由を教えてください。

A1=宮崎氏:はい。最終戦のないパターンも試したのですが、どうしても締りが悪く、現状の形に落ち着きました。

 ただ、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、最終戦がPvPではなく、ボス敵とのPvEになるパターンも用意しています。

 キャラクタービルドにより、そうした最終戦を希望する、ということもできるようにしています。

 また我々としては「最終戦を戦う最後の3人に残った」ということに、しっかりとした達成感を感じて欲しいです。

 率直に申し上げれば、そのために、演出面では、ネットワークテスト版にはまだ不足があると感じています。

シングルプレイはカスタマイズや模擬戦が中心

――本作には、シングルプレイ的なストーリーも用意されているのでしょうか。

宮崎氏:いえ、そうではありません。ストーリー進行は、あくまでもオンラインプレイを前提にしています。

 本作の断片的ストーリーテリングは、オンラインプレイ、特にそのドラマ性を意識して設計されており、それを楽しんで欲しいと考えています。

 勿論、ストーリー進行においては、オンラインプレイの勝利は必ずしも前提にされませんので、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れが理想ですね。

――シングルプレイだけで遊べるモードもあるのでしょうか。

宮崎氏:シングルモードについては、あくまでもミニマムなものです。

 サーバーメンテナンスなどで、オンラインプレイができない状況でも、何もプレイできないということはないようにしておきたくて。

 具体的には、キャラカスタマイズや、中庭での練習、8人対戦の模擬戦などですね。

――製品版では、どのような育成・カスタマイズ要素が入るのでしょうか。

宮崎氏:血族キャラのカスタマイズ要素は用意します。

 キャラクターベースは、おそらく10体を大きく超える数を用意できると思います。各キャラクターで武器は固有ですが、血族技や、「権能」と呼ばれる特殊能力などをカスタマイズできます。

 また、仮面や入れ墨など、見た目に特徴をつけることも可能ですし、「烙印」と呼ばれるロール要素や、特定のイベントの発生確率を上げる、といったカスタマイズも可能です。

 本作のキャラクターカスタマイズは、能力や見た目だけでなく、そのキャラクターの運命、宿命といったものまで対象とするイメージなんです。

 そして、それらのカスタマイズ要素が、あるいはその収集が、断片的ストーリーテリングも担っている訳です。

発売直後はかなり細かくバランスを調整予定

――製品版発売後のバランス調整は、どのような頻度で行なう予定ですか。

宮崎氏:こまめにやっていくつもりです。

 調整であれ拡張であれ、余地の大きいゲームデザインかと思いますし、実際にどういう風にユーザーさんに遊んでもらえ、楽しんでもらえるのか、未知の部分も大きいので。

 そういう意味では、今回のネットワークテスト版の結果も重視しています。

 テストのフィードバックを受けて、できるだけ調整したいと考えています。

宮崎氏の癖。

――本作のキャラクターには、目元が見えない人物や、普通の人間とは分かりにくい外見の人物が多くいます。このデザインは、世界観によるものですか。それとも、宮崎氏自身の好みでしょうか。

宮崎氏:私自身の好みであることは否定しません(笑)。

 ただ本作は、我々としては比較的、顔が見えるキャラクターが多いと思いますし、キャラクターをデザインし、モデルを制作する過程で、キャラクターの背景や人格などを丁寧に表現しようとしています。

 過去作で言えば「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」とか「Deracine(デラシネ)」とかに近いでしょうか。

 なのですが、まあ隠したくはなってしまいます。おそらく、単に好きなんだと思います、隠されたものが(笑)。

 「エルデンリング」などでもそうだったのですが、顔データをしっかり作っているのにフルフェイスみたいな。

――宮崎氏は、目元を隠した女性や、凛とした少年キャラクターがお好きなのでしょうか。

宮崎氏:そうですね。お好きなんだと思います(笑)。ミステリアスな存在や、自分とは縁遠い、憧れるような存在が。

 でも、それが何故かは、あまり掘り下げないようにしています。あんまりよろしくないものが出てきたら、辛いですからね(笑)。

 まあ、これはもう受け容れるしかないのかなと。なので、本作でも仰るような少年は登場します。大変申し訳ございません。

――烙印「儚い恋」には、宮崎氏のロマン主義的な好みも反映されているのでしょうか。

宮崎氏:まあ、確かに好きな烙印ではありますし、同盟が最終戦直前までだったり、共闘がごく一時的なものだったりなど、関係性の儚さ、みたいなものは、本作の特徴なのかもしれません。

 でも、烙印システム自体は、作っていてとても楽しいですね。

 今は、このシステム自体が新しいこともあり、比較的シンプルなものに留めていますが、製品版では、もう少し複雑なものも用意しておりますし、後々、このシステムに慣れ、複雑なルールもある程度許容されるようになったら、更に色々と遊べそうに思います。結構拡張性のあるシステムなのかなと。

――最近よく遊んでいるオンラインゲームや、刺激を受けた作品はありますか。

宮崎氏:ゲームに関して言えば、仕事の一環として多くのタイトルをプレイしています。リサーチというか、トレンドを知るというか、そういった目的で。

 その中でも、趣味として遊んでいるのは、直近では「カルドセプト」ですかね。本当に直近ですが。

 あとは、ご質問の趣旨とはずれるかもしれませんが、最近では麻雀でしょうか。少し前に、久しぶりにリアルでやって負けて悔しかったので、鍛えなおしています(笑)。

――ありがとうございました。