インタビュー

【ディシディア デュエルム】FF歴代名曲×現代東京! これらのサウンドはどう作られたのかに迫る開発陣への120分特大インタビュー

完成された名曲をどう混ぜるか? PS時代以降の制作秘話

――「Cloud's Battle」についてお伺いします。「闘う者達」のダークな雰囲気と、「F.F.VIIメインテーマ」の中でも一番曲調が明るくなる部分を組み合わせたのは面白いなと思いました。「F.F.VIIメインテーマ」の中で、ここの部分をチョイスした理由はあるのでしょうか?

今村氏:チョイスしたのは、このメロディーこそがもうメインテーマでしかないという感じがあったからですね。これもTomoLowさんと共同でやらせてもらっているんですけど、作るときにWOLと同じ理論というか、やっぱり「F.F.VIIメインテーマ」のセクションに入ったらド頭にあのメロディーが来てほしいという感覚で、そこを持ってきました。

クラウド

――リノアは「Eyes On Me」のアレンジである「My Mind」とさらに「Eyes On Me」が使われていて、二曲とも「Eyes On Me」の流れを汲んでいますが、アレンジにあたって何を意識されたのでしょう。

廣瀬氏:これは「Eyes On Me」が使えるかどうかから始まりましたね。

水野氏:そもそも最初、自分には個人的な希望・野望があって、これまでの「ディシディア」作品でやれなかったバトルシチュエーション体験を届けたいという思いがありました。ジタンの「Melodies Of Life」もそうですが、主題歌をバックに戦うということはやはり様々なハードルがあって、これまでの「ディシディア」作品ではほぼやれていないはずなんです。

 そもそもゲーム性として、例えばPSPの時に1対1でずっと激しく斬り合っているのに、その背後に「Eyes On Me」はさすがに合わないというところがあって実現できていませんでした。

――確かにあくまでイベント曲を彩る曲で、バトル曲ではないですよね。

水野氏:でも「デュエルム」は常に攻撃し合うゲーム性ではなくて、移動したり、敵を倒したり、チャットしたりという要素が間に挟まるからこそ、ハイテンポのバトル以外の曲でも戦えるはずだと。だから「Eyes On Me」を流してリノアで戦うのは絶対やりたいと最初に思っていました。

 その上で、楽曲には当然権利があるので、そのままは使えないけど、アレンジモチーフとして使うことはできるのかなど、いろんな部署で確認を行なって、結構時間がかかりました。

今村氏:これ、そもそも最初は「My Mind」じゃなかったんですよ。数少ない没案ですね。最初、バラムガーデンの曲なら入れやすいと思って聞いたら「ダメ」って言われたんです。

 最初の発注では「My Mind」じゃなくて、魔女戦の「Premonition」を「Eyes On Me」と混ぜてほしいと言われて、曲を作ってみたら「これは無理だ」となって。バラムガーデの曲なら合いそうだなと思って1回作ったんでが、「ダメだ」となって。折衷案みたいなので「My Mind」だったら、という話で入れた感じです。

 曲全体としては「Eyes On Me」がメインになっていて、サビ前のところだけマッシュアップの曲を使っていますが、そこにもともとバラムガーデンのメロディーを最初は使っていたんです。ダメだったので「My Mind」に変えて、今の形に落ち着きました。

水野氏:楽曲としては素敵だったんですよ。ただ、「バラムガーデンを使うならもっとバラムにゆかりの深い出身キャラでやりたいから、もっとリノアに深い曲でいきましょうよ」と相談させてもらったんですよね。「バラムガーデンは、正確にはリノアはあまり関係ないしな」となって。

今村氏:「Premonition」は変拍子だから無理だと諦めたんですよね(笑)。

水野氏:その名残で、チャレンジモードの方に原曲の「Premonition」が一応入っています。

 初期10体のキャラクターのテーマは、最初に納品いただいてからもうかなりの時間が過ぎているので記憶が曖昧なんですけど、リノアは明確に衝撃を受けたのを覚えています。テーマを聞いた時に「うわ、これで戦えるのか。いいな。ありがとうございます」という感じでした。

今村氏:あまり戦闘感はないかもしれないですけど、リノアのキャラデザを見た時に2000年代の昔のアメリカンポップが浮かんできて、そんなイメージで作った感じです。

水野氏:社内からも、「デュエルム」はバトル曲ではない曲で戦ったりするんだね、みたいに驚きの声をもらったりするんですけど、僕は絶対の自信がありました。授けていただいた曲に自信があったので「絶対にこれは楽しい」と思いましたね。

 リリース後も、案の定BGMの評価がすごく高くて。ゲームの遊びながらの雰囲気にも合わせていただいているので、決して元がバトル曲じゃなくても、「デュエルム」のゲーム体験にはフィットしていると感じています。本当にありがたいなと思いますね。

――実際に毎日十数回バトルしている私も、今回の楽曲は聞き飽きなくてすごく好きな曲ばかりです。

松本氏:あらゆる曲がものすごい高評価で、微妙とか嫌だという感想を僕もまだ見たことがないです。最初のクローズドベータテストに際して、東京の背景にBGMだけ流れている謎のサイトが立ち上がったんですけど、その段階からもうBGMを聞いてめちゃくちゃテンションが上がっているユーザーさんで溢れかけていたんですよ。まずこのマッシュアップの案が良かったというところと、現代っぽいところを含めてマッチしてるなというところもあったんだと思います。

 リリースされて、バトルをしてその曲が流れても評価は変わっておらず、めちゃくちゃテンション上がるという声をすごく見たので、ありがたいところですね。

――バトル中に楽曲をランダム再生にする機能で、クライヴを使っていてリノアの曲が流れても、全く外れていないのがすごいなと思いました。どのキャラでどの曲でも、ミスマッチさを感じさせないのがすごいところだなと。これはやはり意識されているんでしょうか?

今村氏:いや、全く意識はしていないです。ただ、ゲーム性がみんな共通しているから、動きやテンポ感が合っているんじゃないですかね。だから統一感が出る。そもそもいろんなキャラが画面上に見えているゲームなので、そういった面での違和感の無さもあるのかもしれません。

リノア

――プレイステーション以降時代の楽曲は、すでに原曲の完成度がだいぶ高くなっていますが、これを二曲につなぎ合わせる上で苦労した思い出はありますか?

今村氏:つなぎ目を作れなかったのは、リュックですね。僕もリアルタイムに「FF10」を遊んでいたのもあって思い入れがありますが、「ノーマルバトル」って曲で見ると結構変拍子というか、そこを崩したらもうこの曲に聞こえないっていう感覚がすごい強かったです。

 最初「ノーマルバトル」で始まって、途中から「リュックのテーマ」に切り替えようとすると個人的にすごく違和感があり、作る時にめちゃくちゃ苦労しました。どうやって「リュックのテーマ」を入れようかみたいなところで自分なりに試行錯誤して、最終的にあまり入れないっていう結果になっちゃったんですけど、ちょっと揉めましたね(笑)。

水野氏:一曲あたりの比率が違うという話はしました。「もうちょっと入りますか」みたいな。でも僕自身も「ノーマルバトル」が単体で完成されているというのは説明いただければ確かにという感じだったので、現在の実装の形に最終的には落ち着いているという感じです。

今村氏:「リュックのテーマ」に気づくのも難しいぐらいのペースで入れているので、気づいたらすごいと思います。ワンフレーズ2回ぐらいしか入れてないんで。

廣瀬氏:あれは難しいな。

今村氏:「リュックのテーマ」にしちゃうと「ノーマルバトル」を入れられないみたいな難しさはありましたね。でも音的に苦労したというのはあまりないです。プレイステーションから多彩な楽器が聞こえるようになっていて、明確に「この曲はこういう感じにしたいんだろうな」という植松さん()の意図がより伝わるようになっているので、そこを活かしつつという感覚で作っている方が多いですね。

:植松伸夫氏。多数の「ファイナルファンタジー」シリーズの楽曲を手掛ける作曲家。

――逆に「ノーマルバトル」は、まだ温存することもできたのではないかと感じまして、いかがでしょう。

水野氏:実際起用のところで行くと、先に「リュックのテーマ」が決まりはしたんですよね。ただ、作中で耳にする頻度が多い曲ではなく、「FF10」という作品のファンの方が遊ぶ際にも、懐かしさや親しみやすさを持ってほしいというところで、おそらく一番聞いたであろう「ノーマルバトル」を組み合わせていただいたという経緯になっています。

廣瀬氏:今村も最初「これは後のために取っておこうよ」と言っていたんです。水野さんに1回相談して、プッシュしてもらって今村を説得しました。

水野氏:その時も「基本的にこの先実装されるキャラも全部僕の中で想定があるので困らないはず」というのを先にお伝えをして、「だからノーマルバトルを使っても大丈夫ですよ」という会話をした記憶があります。

今村氏:アレンジ面ではもうリュックの雰囲気をとにかく音色で表すという感じで作った記憶がありますね。リュックが動いているところなどを見ながら作ったのですが、 個人的にはノリもちょっと軽い感じというか、元の曲よりも可愛い音色になっているんじゃないかなと思います。

リュック

ボーカル解禁の裏話も! 近代タイトルの楽曲構築

――PS2以降は音源がリッチになってからの楽曲を本作のフォーマットに落とし込むのにあたって苦労した点はありますか。

今村氏:イロハだけどうするか少し迷ったんですけど、逆に苦労した方が少ないかもしれません。音源がリッチになったおかげで、ライトニングの曲などは原曲で使っていたバイオリンをデータとして使わせてもらうことができました。廣瀬さんが探してきてくれたんですけど、それを使える形になったおかげで、自分的にも納得できるクオリティで、夢のようなアレンジができたのを覚えてます。曲の仕上がりとしても個人的に気に入っています。

 あと、ガイアの曲は祖堅さんと一緒にやった曲なので、思い入れが深い曲ですね。アレンジ元の原曲で使用されていた歌をわざわざ祖堅さんが引っ張ってきて入れてくれたんですけど、実はこれを作る前までは「歌を入れちゃダメ」という制約があったんです。それを祖堅さんがアレンジとして一番映える形を追求して入れてくれたことによって「歌はダメ」という制約が解除されました。“祖堅さんパワー”って言ってます(笑)。

水野氏:なんで歌がダメだったんでしたっけ。歌詞の作業や翻訳とかですかね。

松本氏:当初、バトル時のキャラクターたちの声の掛け合いでノイズになったらいけないかなという印象があったんです。でも祖堅さんから上がってきたのを聞いて「めちゃめちゃいいやんか」となりまして。バトルしながらでも別に歌がノイズになったりして支障はないと思った記憶はあるので、そこがきっかけですかね。

祖堅正慶氏

――祖堅さんパワーって、なんだかすごくわかりますね(笑)。では「FF13」について、ライトニングの場合「ライトニングのテーマ」という曲をあえて使わず「ブレイズエッジ」と「閃光」にした理由はあるのでしょうか?

水野氏:これちょっとエピソードがあって語っちゃうんですけど、「閃光」を選んだのは、多くのユーザーさんの記憶により残っている、作品を象徴するような曲をなるべく使うというところからです。「ライトニングのテーマ」もとても素敵ではありますが、対する「閃光」は「FF13」はやっていないけれど「閃光」は知っているという人もいるくらい有名な曲なので、バトル曲ということもあって選ばせていただきました。

――もう近代「FF」の代表曲みたいな曲ですよね。

水野氏:もう一個に関しては実はかなり悩みまして、最初はライトニングは結構初期に作り始めたキャラクターだったので、ゲームのルールとかもそこまで明確に決まっていない状況だったんです。

 それで「FF13-2」の「女神の騎士」とか「ライトニング リターンズ FF13」の「魂の解放者」とか、「FF13」シリーズのライトニング人生欲張りセットみたいなメドレーにしようと思って3曲ぐらい選んだんですけど、さすがにルール違反かなと。そもそも参戦しているのも「FF13」の初代からの参戦なので自分のファン心と開発としての自我で戦いまして、最終的にはちゃんと「FF13」の一作目から二曲を選ぶというところに戻ってきました。

――うわ、「FF13-2」と「ライトニング リターンズ FF13」の大ファンな私としてはそれも聞きたかったです(笑)。

水野氏:その上で「ブレイズエッジ」を選んだのは、これもやっぱりライトニングの象徴的な、裏テーマと言ったらあれですけど、非常にゆかりの深い曲でもありますし。やっぱりPS3にハードが移った中で「FF13」が始まったというタイミングで、最初のハングドエッジのムービーが終わって初バトルの流れなんですよね。その「FF」新時代の幕開けみたいな当時の記憶を呼び返して、「閃光」と「ブレイズエッジ」の二つを起用したという経緯になります。

ライトニング

――少し楽曲の話からずれますが、ライトニングやクライヴなど、割と明確に呼ばれている時間軸がわかっているキャラクターっているじゃないですか。やっぱり何か関係してるんですか?

水野氏:戦士たちの召喚時間軸は、基本的には全キャラもう原作終盤になっています。クライヴだけ、今その青年期の終盤という、「FF16」の全体から見るとミドルぐらいのところに置いてあるのは、まだ発売されて年数も浅いタイトルなので、そこまで全部スピンオフで明かしてはいけないという思いと、クライヴのすべてはやっぱり「FF16」を遊んで知ってほしいという思いがあったので、わざとそのあたりにとどめているというのはありますね。

【『ディシディア デュエルム ファイナルファンタジー』 キャラクター紹介PV│クライヴ・ロズフィールド】
「オペラオムニア」では記憶や時間軸がメインストーリーの中心にもなっていたが、キャラクターに応じた召喚時間軸が考えられている

――では次に、ガイアについてお伺いします。「Shadowbringers」と「忘却の彼方 ~希望の園エデン:共鳴編~」という男性と女性のボーカル入りの楽曲が採用されているかと思います。先ほど「祖堅さんのパワーで」というお話もありましたが、これは祖堅さんとどのように作業分担をしたり意見をぶつけ合って完成したのでしょうか?

今村氏:最初の曲の構成は僕が作って大体ここにこのテーマを入れて、こっちのテーマをここで使うみたいなのをバーっと作って、それを祖堅さんにお渡しして、そこから仕上げてもらう感じだったので、特に2人で相談するとかもほぼなくて(笑)。

 祖堅さんもお忙しいので、ここまで作っておかないと時間取れないだろうなという感覚があり、ある程度の状態まで作った上で「もう祖堅さん、あと好きにしてください」と渡した感じですね。そしたら意図せずボーカルが入っていたんです。で、祖堅さんが仕上げたやつを聴いて「あ、もう終わりですね」みたいな感じですんなり終わりました(笑)。

廣瀬氏:最初、メロディー部分は歌なしのピアノとかシンセとか使ってましたよね。

――本当にすごいですね、祖堅さんパワー(笑)。

水野氏:ただ曲選びそのものは、若干もたつきました。

今村氏:「忘却の彼方」は絶対入れようと思ったんですけど。

水野氏:今回のガイアのバトルコンセプトがそもそも「FF14の「希望の園エデン:共鳴編4層」で、ガイアがリーンを助けに来るところの再現をしようというところから始まりまして、それはもう確定で入れるというのは変わらなかったんですけど、ガイアに寄り添うという考えになりすぎていました。そのため、マッシュアップのしやすさを十分に想定できていなかったんです。最初は「希望の園エデン:再生編」というもう一つ先のエデンのコンテンツのガイアが絡むバトルから曲を使おうと提案はさせていただいてたんです。

今村氏:でも曲調的に合わなくて「マッシュアップするなら、もう漆黒を代表する曲である『Shadowbringers』を使えばいいんじゃないかな」と思いました。共鳴編4層の「忘却の彼方」はロックにしやすいと思っていたのと、「Shadowbringers」はそもそもロック調なので、これは混ぜやすいだろうなと思って選びました。

水野氏:その名残で「希望の園エデン:再生編」の「消せない約束」も、チャレンジモードに原曲が入っています。

 こんな風に、こちらが第一案として提示したものを「いや、こっちがいいよ」と返してくださることがありがたいですね。最終的にはお客様に良いものを届けることがベストなので、僕らが無理を通すよりもそこは忌憚なく言ってもらって「じゃあこっちに変えましょう」という相談ができる関係性を築けたのは、すごくよかったなと思います。

――私も「FF14」をずっと長い間やっているんですけども、「Gaia's Battle」が大好きでサントラでもずっとループしているぐらい大好きです。

今村氏:ありがとうございます。

水野氏:これも納品された時すごかったですね。

松本氏:100回ぐらいループで聴きました。

今村氏:これは本当、二曲をマッシュアップするという意味ではかなり完成度が高いと個人的に思ってます。混ぜ方というか、置き方も含めて。

ガイア

――では「FF16」の「Clive's Battle」について、クライヴの少年期にロザリア公国で流れる「A Rose Is a Rose」と、青年期のクライヴが己と向き合って自分を受け入れる象徴的な曲「Find the Flame」という二曲ですけども、この選曲はクライヴの生き様を描くというテーマに非常に適したチョイスですよね。

水野氏:これもいろいろありましたね。「Find the Flame」はもう一瞬で決まっていて、そもそもバトルコンセプトが「あの瞬間のクライヴを再現する」だったので、半顕現(はんけんげん)も入れてますしイフリートとフェニックスの技にまとめているのも、やっぱりあのバトルを「デュエルム」で取り入れるためです。なので「Find the Flame」は決まったんですけど、もう一曲は紆余曲折がありました。

 イフリート戦って、ジョシュアのことを乗り越えて前に進んで自分を受け入れてというところなんで、僕はジョシュアの思いを背負ってるという解釈で「Away」を入れていました。どちらも名曲だと思っていたんですけど、今村さんと相談していく中で「やっぱり、そこはちょっと違うんじゃないか」というご意見もいただいてという、流れでした。

――「Away」が違うと思った理由はなんですか?

今村氏:「FF16」を作っている当初から「Away」はジョシュアのテーマというのが共通認識であって、ジョシュアが出てくるカットシーンに「Away」のメロディーを入れたりしていたので、クライヴにそれを使うって言われると若干違和感があるというのが制作してた側の感覚としてありました。だったらもう幼少期というか、クライヴの故郷のメロディーを入れたらいいんじゃないかと思って、「A Rose Is a Rose」を提案させてもらったという形ですね。

 ただ、これも「Find the Flame」のイメージが強すぎて、そっちがメインになっちゃって、テイストだけ入れるみたいな感じになりました。

水野氏:完成版を聴いた時に、僕の中ですべて合点がいったというか、確かに「Find the Flame」はそもそもすごい豪華な食材みたいなところがあって「Away」もそうなんですよね。初期の提案って曲として違ったんだって納得しちゃいました。聴いた時のまとまり感もすごかったですし、やっぱり「Find the Flame」をメインとしたこの全体の感じがユーザーさんにもすごく今好評なので、やっぱりそこは逆提案をいただいたことがすごく良かったなと今になって思っています。

――今村さんは「FF16」のコンポーザーとしても参加されていましたよね。実際「FF16」の音楽を作っていた時と、この「ディシディア」の曲を作るにあたって期間がいくらか空いていたと思うんですけども、改めて向き合ってどんなことを感じられましたか?

今村氏:そうですね。祖堅さんが「Find the Flame」を作ってるのを真横で一緒に作業してわかっていたので、その曲の大きさみたいなのは多分他の人よりは認識している感覚があります。やっぱり「ディシディア」でこれをやるって言われた時は、祖堅さんの顔もあるので失敗できないなという感覚にはなっていました(笑)。

 ただ、この曲のアレンジの方向性であるロック系は「デュエルム」では今まで意外と作ってなかったというところもあったので、がっつりそっち方面に振っちゃおうと振り切ったのがいい結果になった気がしてます。

クライヴ

原作アクションの完全再現と、「ラスボス感を出さない」セフィロスのこだわり

――音楽の話と少しずれますが、「転生の炎」は「FF16」の転生の炎を実際に再現しているようなモーションになっていますが、「ライジングフレイム」は「ライジングフレイム」と「スカーレットサイクロン」を合わせたコンボを一つの技にしているじゃないですか。「FF16」のような明確なアクションRPGにおいて、どれを組み合わせて本作に落とし込むかというところで苦労した点はありますか?

水野氏:初期コンセプトが青年期のイフリート戦で、半顕現もやることが決まっていたため、召喚獣はあまり増やさないと決めていましたね。時系列的にはガルーダを使えますけど、フェニックスとイフリートで全部まとめました。

 あとはいわゆるソシャゲって、属性が火とかわかりやすいほうが原作を遊んでいない方に「これは火を使うキャラなんだ」と個性がわかりやすいので、そこは絞ったほうがよいだろうというのが最初にありました。なので、必然的にフェニックスとイフリートの原作のアビリティ・アクションから選ぶというのは結構早期に決まっていました。

――なるほど、ガルーダを入れなかった理由は属性をわかりやすくするためだったんですね。

水野氏:で、フェニックス側の究極技である「転生の炎」はやっぱり使いたいよね、というところですんなり決まった上で「ライジングフレイム」の枠は議論がありました。他のイフリートのアクションもありなんじゃないかという意見もあったんですけど、やっぱり初期のチュートリアルアビリティで、ユーザーの誰もが「FF16」を遊ぶ時に絶対使ってる技、“クライヴ入門セット”というか絶対通っている技なので、きっと印象が深いはずであるというところを皮切りに決まりました。

転生の炎

水野氏:ただ、「ライジングフレイム」のほうは「デュエルム」の中でのいわゆるUR技としては若干物足りなさが出てしまうので、そこはしっかり原作で皆さんもやったであろう「スカーレットサイクロン」とのコンボにして、しっかりUR技としての格も足しましょうと、そういう流れで決まりました。

 苦労話としては「じゃあ名前どうするんだ」という点は少し苦労しました。当初の「ライジングサイクロン」は、さすがに勝手にそんな技を「ディシディア」でつけちゃダメだよなという話もあって、そこは「FF16」チームとお話をして「こういうミックスした技にさせていただきたいんですけど」と、まずは性能の相談をした後に、名前をどうしましょうかと。「ライジングフレイムだけで大丈夫ですかね」というところを相談して決まっていったという感じです。

ライジングフレイム

松本氏:これ、SNS上で「FF16」のモーションと「ディシディア」のモーションを並べて比較する動画を作ってくれている方がいて、めちゃくちゃ原作再現力がすごいんで、本当に見てみてほしいですね。「FF16」で「ライジングフレイム」から「スカーレットサイクロン」を連続発動した絵と比較して、めちゃくちゃ似てるんですよ。

水野氏:あれは本当に原作チームの皆様の協力のおかげです。

松本氏:「転生の炎」とか「FF16」ではもうちょっと尺が長いんですが、それは「デュエルム」の尺に直しています。ただモーションはめちゃくちゃ再現力が高く、カメラワークもかなり寄せてます。本当これすごいので皆さんに見てほしいです。

水野氏:本当に原作チームの皆さんの協力と、それを実現してくださった開発会社であるNHN PlayArtのデザイナーさん、アクション班の方々という、チームの力でできています。

――ありがとうございます。ではいよいよ新規追加キャラクターであるセフィロスについて、「Sephiroth's Battle」では「J-E-N-O-V-A」と「片翼の天使」がチョイスされていますね。リバースセフィロス戦の「神の誕生」ではなく、あえて「J-E-N-O-V-A」をチョイスされた理由をお聞きしたいです。

水野氏:まず選定なんですが、まさにご推察の通りで「神の誕生」と「完全なるジェノヴァ」、それから普通の「J-E-N-O-V-A」、この三曲でずっと悩んでました。「片翼の天使」はさすがに外せないとして、もう一曲をどうしようとかなり悩んでいて。

 個人的な「FF」ファンの思いとして、「神の誕生」にしても「完全なるジェノヴァ」にしても、他作品で露出が少ない曲で、最初はもっと知ってほしいという気持ちがありました。ですが、最後はセフィロスというキャラクターの持つ人気、さらには、新しくゲームを始めるお客様に対して、「FF7」の思い出という広い視野で喜んでいただくために、作中幾度となく流れた「J-E-N-O-V-A」から「片翼の天使」につながった方がユーザーさんには喜んでいただけるのかなという最後の判断で、「J-E-N-O-V-A」に決定した形です。本当にギリギリまで悩んでました。

――では「Sephiroth's Battle」のアレンジのポイントを伺ってもよろしいですか?

今村氏:アレンジはかなりしましたね。「J-E-N-O-V-A」って原曲のテンポがすごい速いんですよ。逆に「片翼の天使」は遅いです。普通他のゲームだったら曲の途中でテンポを変えたりとか全然できるんですけど、今回割とオーケストラメインの曲にさせてもらっていて。「デュエルム」の戦闘の中で壮大にテンポチェンジを行なうと尺が長くなり、戦闘感もちょっと薄れちゃう。なので、なるべく両方の間を取るテンポをまず探すところから始めています。今回「片翼の天使」のコーラスも、原曲の歌詞で再収録したデータを廣瀬さんがもらってきてくれて、それも曲に使えたので破綻しないぐらいに「片翼の天使」のテンポを上げるといったことができました。「J-E-N-O-V-A」の方も元のノリを損なわない、ちょうどいいBPMを1個ずつ探して作っていきました。これによりあまり違和感なく、いい感じにマッシュアップできてるんじゃないかなと、個人的には思ってます。

【『ディシディア デュエルム ファイナルファンタジー』 キャラクター紹介PV│セフィロス】

――松本さん、水野さんにお伺いしたいのですが、この「J-E-N-O-V-A」と「片翼の天使」が入り混じる圧倒的なBGMを背負ったこのセフィロスが現在の東京に君臨する際の絵作りとか、演出でのこだわりがあれば可能な範囲で教えていただきたいです。

松本氏:絵作りのところは、クリエイティブプロデューサーの野村さん()が基本的には主導となっていますので、私からのガツガツとした意見は控えて、完全に信頼してお任せしている形です。セフィロスが着ている現代衣装とか見た目の部分は、野村さんとうちのメインキャラデザイナーとの2人の連携で完成していますね。

:野村哲也氏。多数の「FF」作品に携わり、今作においてはクリエイティブプロデューサーを務める。

水野氏:これはセフィロスには限らないけれど、セフィロスでも気にしてますという観点でご説明するんですが、基本的にどのキャラを作る時も、そのキャラの過去に登場したすべての作品の人気のショットとか演出を組み合わせるということをかなり意識してます。

――なるほど。

水野氏:今回セフィロスのURアビリティに「八刀一閃」という彼の代名詞の技がありますが、モーションはアーケード版「ディシディア」をモチーフにして作っています。そして演出の最後のカットは「クライシス コア FF7」でザックスとセフィロスが斬り結んだ時の演出付きのカット――空中からセフィロスが剣を逆手に持ち替えて落ちてくる、落ちながら斬るというところを再現すべくカメラアングルを寄せたりしています。

 そしてもうひとつのUR「スーパーノヴァ」は、「ディシディア デュオデシム」と、元祖の「FF7インターナショナル」の演出をうまく組み合わせて、見たことがある方たちに「懐かしい」と思ってもらえるような内容を心がけて作りました。

 あとはSRのアビリティも、「デュオデシム」で使った技をそのまま再現したり、過去作リスペクトをかなり込めて再現するように作っているので、そこはもし気づいていただけたら嬉しいなと思いますね。

今村氏:セフィロスのBGMで気をつけた点として、セフィロスは今までの登場人物の中で初めてのヴィラン側なんですが、意図して「ラスボス感を出さない」という感じにしました。割と他のキャラと並べても遜色ない感じは、あえて意識して作りましたね。ラスボス側に寄っちゃうと、もしも今後ゲーム的にラスボスっぽいものが新たに出てきた時に差ができなくなっちゃうというのと、ランダムにBGMを流せる設定もあるので、そこであまり他のキャラクターと差をつけすぎるとゲーム感覚が変わってしまうなと思い、そこは気をつけました。

――確かに私もバトルBGMをランダムで流す派なので、セフィロスだけ浮いていると気になっちゃうかもですね。

初のヴィラン側の参戦となるセフィロス