インタビュー

「3D スーパーハングオン」特別インタビュー

「『3D スーパーハングオン』の1番のウリは、実は「3D」じゃない」

「『3D スーパーハングオン』の1番のウリは、実は「3D」じゃない」

奥成氏:「3D スーパーハングオン」は地味なタイトルかもしれませんが、「3D スペースハリアー」を遊んでいただいた方なら、必ず刺さるいろんな要素が入ったタイトルになっていると思います。「3D スペースハリアー」の「3D」の部分の楽しさと、ジャイロの楽しさですね。とにかく「ジャイロ」で遊んでもらいたくて、画面の1番目立つところにジャイロの変更項目を持ってきました。

――「ジャイロ推し」っていう(笑)。

奥成氏:「3D スーパーハングオン」のジャイロは一味違いますよと。「3D スペースハリアー」を遊んでくださったお客さんが、「今まで3DSは3Dで遊ぶメリットをあまり感じられなくて2Dで遊んでいたのが、『3D スペースハリアー』は3Dで遊んでいる」という声が多くて、それはすごく光栄で。「3D スーパーハングオン」では、今まであまり3DSをジャイロで遊んでこなかったお客さんが、ジャイロを使って遊んで楽しく遊んでいただければ。難易度はお客さん次第ではありますが、WiiのVCAでのヌンチャクプレイなども含めたあらゆる操作と比べても、断然ゲームが遊びやすくなっているんじゃないかなと。

――舵角を維持するというのは、ヌンチャクプレイの時に「やりやすい!」と感じたところなんですよ。アナログスティックでもある程度できますが、個人的にはテンションがかかっている分、ヌンチャクの方がやりやすかった印象です。コーナー入口でターボボタンを押してさらに加速する際に、ちょっと切り増したいとき、切り増してすぐに舵角を維持したい、というときに便利だったなと。

奥成氏:いわゆる傾き切っていないときの状態を維持するのは、ジャイロならやりやすいですね。

――「3D スペースハリアー」のときにも思いましたが、3D立体視での位置関係のわかりやすさも捨てがたいですよね。PS3/Xbox 360のSEGA AGES ONLINEで対応はしていますが、あちらでも3D立体視を体験できている人はそれほど多くないのかもしれない、と思っていて。3DSではハードに最初から組み込まれているから、本体を持っていれば誰でも楽しめますし。それに加えてジャイロもあるということで、また違った体験もできる。

堀井氏:そうなんですよね。何も追加しなくてもできる。

奥成氏:「3D スーパーハングオン」の1番のウリは、実は「3D」じゃないという(笑)。ジャイロなんで。「ジャイロ スーパーハングオン」なんですよね本当は。今回唯一残念なのは、ジャイロを使う時は3Dを切ってください、というところですね。そこはもう回避できない問題なので。

――裸眼立体視ゆえのつらいところですね。スイートスポットを外してしまいますものね。

奥成氏:そうですね。3Dで遊ぶ時はジャイロを切り、ワイド画面にして楽しんでいただければ。

――「3D スペースハリアー」のときにも立体視に関しては苦労されたと思うのですが、「3D スーパーハングオン」ではどうでしたか?

堀井氏:PS3とXbox 360で3D立体視化はしていたので、あとはこれが3DSで動くか、というところだけが問題で……(AC版の)「スーパーハングオン」のほうが「スペースハリアー」よりハードウェア的に重装備で(CPUのクロックが異なるなどの違いがある)、そこが気になりましたが、なんとか載せることができました。

奥成氏:同じスタッフで何度も移植し続けることができたからこそ、ここまで作りこむことができたのだと思います。初めての移植タイトルだった場合、これだけの期間でこれだけの要素を詰め込むことはできないんですよね。開発を繋げてプロジェクトを増やしていった結果、こういうことができるようになったということですね。「スーパーハングオン」で言えば、4機種目の移植をやったことで、いろいろモードもやっていることもこの期間でできたということですね。いきなり3DSで「スーパーハングオン」を再現するとなったら、ゲームを動かすところで精一杯、ということになっちゃうんですよね。

――「スペースハリアー」と「スーパーハングオン」、年代的にはそれほど変わっていないけれども、ハードウェアスペック的には上がっているものを移植しているわけで、処理速度的にもきつくなっているのに移植できているのは、作り続けてきたからこそなんですね。

奥成氏:最初「動かない」って言ってきたときは「何を寝言を言っているんだ」って思いましたけれどね。

堀井氏:今も「動きません。すいません」って言ってますけれどね。こっそり(笑)。

奥成氏:でも、大体しばらく経つと「動きました」って。やればできるんですよ(笑)。

――(笑)。

堀井氏:おかしいよね。このやり取りを何年も続けてるんだよね。

奥成氏:僕は体育会系ノリの根性論が嫌いなんですけれどね(笑)。

堀井氏:これからは本当に(処理速度やデータ削減を)雨露を溜めてやるようなことになると思うんですけれども。それでもまだちょっとずつは前進するんで。

――そういう作り方をしていくと、次に活かしやすい、ということもあるんですね。それと、複数の要素がうまく繋がることで、大きな効果が得られる時もあるということですね。

堀井氏:花開くときもあるんですよ。逆にもう、日の目を見ないゲームが一杯あるじゃないですか。「サンダーブレード」とか「サンダーブレード」とか……(笑)。

奥成氏:「スーパーハングオン」でも、ただジャイロに対応しただけだと「ふーん」で終わっちゃうことなのかもしれないんですよ。それが「スペースハリアー」のムービング筐体という要素であったりとか、いろいろ作り続けたことによって、ムービング筐体とジャイロの組み合わせでより一層の効果が出せたと。

堀井氏:そうなってくると、「アフターバーナー」や「ギャラクシーフォース」の筐体感、ってどうなるんですかね?

――それをどう再現するのか……一口に「体感筐体」といっても、そのやり方やプレイ感って全然違うものですから、それを再現するためには、こういった1つ1つの要素の積み重ねがすごく重要になりますね。

奥成氏:もし、移植するとしたら、まず実機が必要ですね。今回、シットダウンタイプもあらかじめ取材していたから写真も残っていた、みたいなことがあるので、今のうちに現存しているものは片っ端から取材しておかないと……。

――えらいことになりますね。(プレイしながら)ジャイロでプレイしていると、実際の筐体でプレイしていた時にあった、筐体を傾けたときの若干のプレイしにくさとか、切り返しの感覚だとか、そういったところがうまく再現されているな、と感じます。面倒くさくなると、両足をついて筐体を傾けるだけ、になっちゃってましたが(笑)。

奥成氏:「3D スペースハリアー」のときも、あの酔狂にどこまで付いて来ていただけるのかと思っていたんですけれども。

堀井氏:誰得だと思っていたんですけれども。

――あのムービング筐体モードと環境音が刺さったのは1,000人どころじゃなかったですね(笑)。

奥成氏:今回は組み合わせの勝利です。なので、「スーパーハングオン」は地味だからって言わずに、ぜひプレイしてみてください。

堀井氏:そろそろネタは切れるから、次からは皆さんから「じゃこういうのはどう?」っていう……。

――アイデア募集的な(笑)? このシリーズはいわゆる画面とゲーム本体の再現の部分の技術的難度の部分と、筐体を含めた再現の部分の両方がうまくはまらないとうまくいかないんですよね。

堀井氏:きっちり60fpsを再現したから、というだけではなくて、どうしたら当時の空気を思い出せるか、というあたりが……うっかりやった「スペハリ」がうまくいったせいで、みんなして大変ですよ(笑)。

――(笑)。「3D スペースハリアー」でハードルが上がっちゃったんですね。

堀井氏:「ユーザーの度肝を抜くために、日夜辛酸を舐めています」みたいな感じなんですよ(笑)。そんな人が「募集」とか言っちゃってるのはかなりヌルいんですが、よろしくお願いします(笑)。

――何かアイデアがある方は、M2さんの公式Twitterのほうに(笑)。

奥成氏:でも、お客さんが想像できる範囲のちょっとだけ先を行けているので。今のところ。そういう意味ではなんとかうまくいっているという感じですかね。「3D スーパーハングオン」で言えば、「立体視」や「ジャイロ」単体だけだったら、お客さんも想像できていると思うんですが、実際遊んだ人が「あ、こうなんだ!」っていうトキメキが感じられるものになっていると思うので。

――このシリーズは、いろんな技術がリンクして、無駄になっていないというところがいいな、と毎回思います。

奥成氏:実は無駄じゃなかったという。

堀井氏:塵も積もれば山となって、それがエベレストを越えれば価値はありますよ(笑)。

奥成氏:3DSはいいハードだなと思ってもらえるといいなと。

堀井氏:個人的にはかなりいいハードですよ。開発はしんどいけど(笑)。プレーヤーさんにとってすごくいいハードですね。

――前回に続いてまた聞いてしまいますが、気になる「3D 復刻プロジェクト」の今後はいかがでしょうか?

奥成氏:「3D スペースハリアー」がわりと好調で、「次やりたいね」というための道のりは少し縮まったかなという気がします。

堀井氏:ありがとうございます。

奥成氏:「3D スーパーハングオン」の後も、もう少し続きます。「スペースハリアー」は、研究を含め先行して開発していたところがあったんですが、「スーパーハングオン」以降は、もう少しペースアップをしていきたいと思っています。次も遊び心を込めたタイトルになっているので、お待ちください。

――次も気になりますね。ありがとうございました。

 まさに百聞は1プレイにしかず。3D立体視でプレイしてよし、ジャイロ操作+ムービング筐体モードでプレイしてよし。「3D スーパーハングオン」をぜひプレイしてみていただきたい。

(佐伯憲司)