インタビュー

米Kabam、日本ソーシャルゲーム開発者の欧米進出支援を発表

欧米市場のリーダーに聞く、日本に見出した世界進出へのチャンスとは

Kabam共同創立者でCEOのケビン・チョウ氏
4月8日 発表

Kabamロゴ

 米Kabamは、日本のゲーム開発者向けに5千万米ドルの基金「Kabam WWDevFund」の設立を4月8日に発表した。

 「Kabam WWDevFund」は、Kabam Western World Developers Fundの略称で、日本ゲーム開発者に向けて、北米およびヨーロッパ市場への事業展開を支援する目的で設立された基金。日本でFree to Play型のゲームを開発しており、さらに売上実績を残した開発者を募集している。

 Kabamは、日本ではあまり知られていないが、欧米では箱庭シミュレーション「Kingdom of Camelot」が大ヒットを記録して売上2億ドル規模のフランチャイズとなり、Free to Play方式のゲームを運営する企業としては他競合と8倍もの収益差があるという。

 今回は、Kabamの共同創立者でCEOのケビン・チョウ氏にお話を伺うことができた。欧米で成功を収めたKabamが、なぜ日本市場に目を付けたのか。Kabamの現状も含めながら、「Kabam WWDevFund」の狙いについて聞いていった。

日本のゲームは収益を2倍にできる。世界進出パートナーとしての自信

「Kingdom of Camelot」の成功によって急激に成長したKabam。他のタイトルもそれに追従しており、実績は確かなもの
「若い開発者向けのものではない」と明言。実績があり、収益を上げた「ベストなゲーム」を募集しているという。資金は9月頃までに使い切ってしまう予定だそう
チョウ氏から挙げられた日本から欧米諸国進出における障害

 Kabamは、2006年に創立されたFree to Play方式ゲームを主体としたゲーム開発企業で、上で紹介した「Kingdom of Camelot」以外にも、1カ月あたりの売り上げが100万ドルを超えるタイトルを7本抱えている。自ら「欧米諸国における業界リーダー」として明言するほどの成功を収めており、Kabamのタイトルは欧米諸国では13言語に翻訳され、100カ国以上で配信されている。

 またパートナーシップも強力で、投資家には映画産業のワーナー・ブラザースやMGMが名を連ねている。直近では「ホビット 思いがけない冒険」や「ゴッドファーザー」といったハリウッド映画をゲーム化することが最近の大きな動きとなっている。

 なお日本向けには映画「ワイルド・スピード」シリーズをゲーム化した有料のiOS/Android用レースゲームも5月に配信予定。Kabamでは、今後はよりジャンルを拡大し、世界を巻き込んだ市場の拡大を力強く推し進めたい考えがある。

 そのような中で、「Kabam WWDevFund」という施策が登場した。「Kabam WWDevFund」では、対象地域がまずは日本のみに限定されている。今後は徐々に拡大することも考えているというが、日本がそのスタートということで、Kabamに注目されている市場だということは間違いない。

 今回「Kabam WWDevFund」で資金提供先として想定されているのは、すでに日本市場で成功を収めているタイトルか、もしくは成功事例を持った開発者の新規ゲームタイトルとなる。また欧米への事業拡大への積極的な意思というのも条件になっているが、これらの条件をクリアしてKabamとパートナーになれば「収益は倍増する」ことを見込んでいるという。

 チョウ氏いわく、「日本のゲームは独特で、欧米で成功するチャンスが大きい」ものでありながら、現状では「欧米への市場参入が困難」となっている市場なのだという。その障害としては、「ディスカバリー」、「マネタイズ」、「最適なパートナー」の3つを挙げた。

 「ディスカバリー」は、世界にある70万もあるアプリの中に埋もれてしまい、そもそもユーザーに発見されにくいこと。「マネタイズ」は、文化に配慮したローカライゼーションのこと。

 そして「最適なパートナー」は、欧米の会社が長期の契約をなかなか結ぼうとしないことで、1つのタイトルにかけられる資金や期間が十分に足りていないこと、とした。

 しかしこれらの障害は、Kabamとパートナーを組むことで解決できるという。まず「ディスカバリー」は、月100万ドルのマーケディング費用をかけることで乗り越える。それだけの費用をかけても、800万ドル、1,000万ドルの収益があればいい、という論理だ。

 「マネタイズ」は、Kabamの持つ欧米諸国市場に対する方法論をフルに活かして、キャラクターやビジュアル、プレイ方法を協議して解決していく。またコミュニティ単位のユーザーサポート面でも、必要であればKabamが全面的にバックアップする。

 またパートナーシップとしては、知的財産権は開発者に保有してもらったまま、コンテンツのクオリティ維持に努めてほしい方針だという。その上で売上目標を共有し、開発者との協業でゲーム配信をマネージメントしていくという。パートナーとしての期間は、数年を想定している。

 Kabamではすでに何社か声をかけているというが、それでもまだまだ知らない企業が日本に眠っていると睨んで、積極的なパートナー探しを行なっている。基金として巨額な資金を用意し、開発や運営に大きくかつ長期的に関わっていきたいとアピールした。

 日本の開発者に向けてチョウ氏は、「日本の市場を見るのではなく、欧米を見てほしい」と話した。「それには強いパートナーシップが必要なんだということを強く言いたい。日本のゲームクオリティは世界一なので、加えて必要なのはサポート面になる。世界へ発信することで、ゲームファンや開発者自身により多く楽しんでもらえる機会を増やしていきたい」と語った。

(安田俊亮)