インタビュー

日本は開発最優先! 「リネージュ2」20周年、NCSOFT開発者インタビュー

来日時の思い出、今後のアップデート方針なども聞いた

【リネージュ2】

2004年6月25日 サービス開始

 エヌシージャパンが国内サービスを提供中のMMORPG「リネージュ2」が、2024年6月25日にサービス開始から20周年を迎える。

 20年間サービスが続いているオンラインゲームというのは日本ではかなり珍しい存在だ。本作は、日本での運営はエヌシージャパンが行い、開発を韓国のNCSOFTが行っている。この2社が協力したことで、20年という長期運営が達成されたと言ってもいい。

 本稿では、そんなNCSOFTで「リネージュ2」の開発に携わっている、Lineage2 Camp Overseas Lead Managerのジンソンギュン氏、Lineage2 Camp Overseas Game Design Team Leaderのキムクンヨン氏にメールインタビューを実施した。開発者の視点から、20周年にあたっての思い出を振り返ったり、日本のユーザーへの思い、そしてアップデートの詳細などについて貴重な話を聞くことができた。ぜひ本作のファンはチェックして欲しい。

 また、関連記事では、運営をしているエヌシージャパンから、「リネージュ2」日本統括プロデューサーの新井友和氏にインタビューを行っているので、こちらもあわせて読んでいただけると、より一層楽しめるはずだ。

左から、NCSOFT Lineage2 Camp Overseas Game Design Team Leaderのキムクンヨン氏、NCSOFT Lineage2 Camp Overseas Lead Managerのジンソンギュン氏

「リネージュ2」の20年の歴史と開発者の思い出

――まずは自己紹介をお願い致します。

両氏:こんにちは! NCSOFT Lineage2 Camp Overseas Lead ManagerのジンソンギュンとNCSOFT Lineage2 Camp Overseas Game Design Team Leaderのキムクンヨンです。

 もっと早くご挨拶できていればと申し訳なく思うと共に、ユーザーの皆さんにこのように直接ご挨拶するのは初めてなので、感慨深いです。

――「リネージュ2」が20周年を迎えることの感想について教えてください。

両氏:20年という歳月は、オンラインゲームの歴史からすると、とても長い期間だと思います。長い間、他の力作のMMORPGと肩を並べてきたこと、そして今後もさらに成長していける環境があることに感謝し、また、とても光栄に思っています。

 そして、何よりこの環境を作ってくださった「リネージュ2」の日本のユーザーの皆様に心より感謝申し上げます

――これまでの「リネージュ2」のサービスで思い出のアップデートはありますか?

両氏:「クラシックサービス」、「アデンサービス」のリリース当時を思い出します。日本ユーザーの方々に、これまでとは違った「リネージュ2」をお見せしたいという期待を抱いて東京へ出張に向かい、「リネージュ2」日本統括プロデューサーの新井さんと共にゲームについて分析しました。ユーザーの皆様の好評や酷評に一喜一憂した、本当に意義深い時間でした。

 最近でいうと、「ライブサービス」でのコンテンツ「ベロアのラッキーチャレンジ」をリリースしたときです。「リネージュ2」らしいガチャシステムを作るため、演出・構想段階からUI開発までとても長い開発期間を経て、システムが完成しました。

「ベロアのラッキーチャレンジ」

――日本のユーザー、もしくは日本運営チームと関連するエピソードや出来事、思い出はありますか?

ジン氏:私は社会生活を始めてから今日まで、「リネージュ2」の開発者として働いてきたため、「リネージュ2」と共にたくさんの経験をしてきました。この質問を受けた瞬間、最初に思い出したのはエヌシージャパンへ出張にきた時のことです。

 当時は東京の恵比寿にオフィスがありました。緊張しつつもときめく気持ちで、日本の「リネージュ2」担当者とあいさつを交わしたことを思い出します。特に、日本の「リネージュ2」統括の新井さんと初めて向き合った時、彼が見せたその情熱に、日本ユーザーの皆様を重ねて、私が引き受けた仕事は本当に重大なプロジェクトだということを実感しましたね。

 こんな思い出で良いのか分かりませんが、1日中、次期アップデートについて会議をした後、オフィス近くの居酒屋に夕飯を食べに行きました。その居酒屋では、わら火で料理したマグロのたたきとお茶漬けを初めて食べたのですが、その味がいまだに忘れられません。

 日本支社のパートナーとかけがえのない時間を共有できたことは私にとって、とても素敵な思い出となりました。新井さんとは、今でも良い友人です!

――開発チームとして「リネージュ2」が20年続けられた理由はどこにあると思いますか?

両氏:ゲームの所々に見られる「思い出」は、長い間サービスを続けてこられたゲームだけの特権だと思います。我々の能力が優れているからというよりは、ユーザーの皆様がゲーム内で思い出を作っていってくださったおかげで、このように愛され続けるゲームに成長できたのだと思います。

 美しいグラフィック、優れたデザイン、面白いストーリーなど、開発者が創り出したものは、時間の流れによって変化してきました。はじめはどんなに輝いていた要素でも、いずれは色褪せていくものです。

 しかし、ユーザーの皆様がこのゲームをプレイし、作ってきたその思い出は、変わらず輝き続けていると思います。その思い出があるからこそ、「リネージュ2」が20年間も愛され続けているのだと思います。

日本は最優先で対応。開発担当者は最多在籍

――今回のアップデートの目玉コンテンツについて教えてください。「ライブサービス」のアップデートでは「オリンピアード」に関連するアップデートが行われるとのことですが、詳細について教えてください。

両氏:2017年に行われたオリンピアードのアップデート以降、大きな変化がなく維持されているシステムだったので、今の時代に合わせてシステムを改善しました。具体的には、基本的な競技時間と引き分けに関するルール、また、参加条件から英雄/伝説のエフェクトを改善し、報賞も併せて変更しました。

「オリンピアード」の報賞の伝説武器

――「クラシックサービス」では「アズタカンの寺院」が目玉でしょうか?

両氏:特殊時間制狩り場である「タンタル遺跡」が「アズタカンの寺院」にリニューアルされる予定です。狩り場難易度の向上に伴い、入場可能レベルはレベル76からレベル85に変更されますが、韓国とは異なる日本独自の設定も維持する予定です。

 この狩り場は、他サーバーのユーザーと出会える“ワールド狩り場”として位置づけられており、専用の報賞である「祭司長のスクロール」と「ベリル」は、モンスター/ボスドロップとミッションを通して獲得できる予定です。

――引き続き、「アデンサービス」のワールド狩場「古代の遺跡」について教えてください。ここは、レイドモンスターを倒すことを目標に狩りをするイメージでしょうか?

両氏:まずは利便性、そしてコンテンツの圧縮的活用とお考えいただければよいかと思います。

 それぞれ明確なコンセプトを有しているダンジョンですが、以前は入場日時が限定され、皆様の望む日時で入場するには難しい部分がありました。そこで、1週間のうち限られた時間の中で各自が望む狩り場を選択して入場できるようにしようと考えました。これまで、多くのダンジョンがこなさなければならない宿題のように感じられていたとすれば、その負担を減らしたいと思ったんです。

 また、レイドに対する独占を防止しようという狙いもあります。以前は、各ダンジョンにボスモンスターが存在しますが、このレイドが特定の血盟やユーザーに独占されてしまうということがありました。そのため、3つのダンジョンのレイド時間を統一し、今までレイドを進められなかった方にも機会を設けたいと考えました。

「アデンサービス」の古代の遺跡

――今後のアップデート予定の情報、もしくは構想段階で「こういうアップデートをしたい」、「こういう『リネージュ2』にしていきたい」というものがあれば教えてください。

両氏:現在の「リネージュ2」の開発の揺らがない方向性として、“ユーザーの満足度向上”が挙げられます。ゲームをプレイしたユーザーからのマイナスな意見を最大限なくし、「リネージュ2」というゲームをユーザーの生活の活力にしてもらいたいという思いです。そのため、ゲームをプレイするにあたって、不満点や消耗品の不足、装備ファーミング等の問題について、様々なコンテンツやイベントでサポートするために試行錯誤しております。

 また、長い間サービスを続けているオンラインゲーム特有の問題として、ユーザー間の格差による悪影響やユーザーの不満などについても、常日頃から解決の方法を摸索しております。先ほどのアップデートに関する内容は、開発者の好き勝手に進めることはせず、実際にプレイするユーザー目線で構成しました。

 すべてのユーザーに満足していただくのは難しいかもしれませんが、ユーザーの皆様の動向をキャッチし、実際のデータなどに基づいて、常に進化させていこうと思っています。

――先日の生放送の際、ユーザーからの質問を募集されていたと聞いています。ライブサービスのユーザーから「『リネージュ2』の世界観を感じることができるクエストを増やして欲しい」という要望がありましたが、今後、そういったクエストが増える予定はありますか?

両氏:狩り場の改善は順次検討をしており、今後のアップデートにおいて改善する予定です。

――クラシックサービスのユーザーからは、「クラシックサービスにも新種族、新クラスを入れてほしい!」という要望もありました。今後そういった予定はありますか?

両氏:こちらは「リネージュ2」のサービス全体として回答します。

 特に最近は毎年新しいクラスや種族を追加して、ユーザーの皆様に新しい楽しみをお届けできるよう努力しています。現在準備中の新規クラスおよび種族については開発初期段階ですので、まだ情報を共有するには難しい状況です。ただ、日本のライブサービスでは、来年上半期ぐらいにリリースできるのではないかなと思っています。

――アデンサービスのユーザーからは、「アデナの分配がスムーズにできる機能が欲しい」とありますが、こういったシステム面での改善などは予定されていますか?

両氏:今後のアップデートで導入予定です。

――最後に、「リネージュ2」をプレイしているユーザーへメッセージをお願いします。

両氏:日本は「リネージュ2」の提供国の中でも最優先順位にあり、日本担当の開発者が最も多いです。

 その理由は、韓国と同じくらい長い間、「リネージュ2」と共に歩み、楽しんでくださっているユーザーの皆様から、ご意見をいただいているためです。開発チームもその期待に応えられるよう、日々尽力しております。

 日本でサービス中である「リネージュ2」は、韓国バージョンをベースに様々な部分でシステム/レベル、デザイン等が新しく作られています。キャラクターのレベルアップ速度にともなう基本的な経験値テーブルに対する調整から、モンスターの難易度と財貨報賞、特殊報賞などを新しく構想し、追加特典の支給も行うなど、できるだけ日本のユーザーに寄り添うようにしております。

 特に今年は、日本のイベントや季節にともなう雰囲気を演出できるイベントやマップの開発なども計画しており、日本のユーザーのための専用コンテンツとコスチュームなどもたくさん準備しております。

 引き続き、ユーザーの皆様に楽しくプレイしていただけるよう日々精進してまいりますので、今後も「リネージュ2」の成長を見守っていただけますと幸いです。

――ありがとうございました。