インタビュー

「パタポン」の“精神的な続編”「ラタタン」開発者インタビュー

“ワラワラ感”のあるキャラクターがウリ。4人でのマルチプレイも

【ラタタン(RATATAN)】

発売時期・価格:未定

 2007年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)より発売された「パタポン」。リズムに合わせながらコマンドを入力して、敵を倒していく“コマンド・カーニバルゲーム”で、その独特な世界観とリズミカルなバトルシステムでプレーヤーの心を魅了し、今なお多くのファンが存在するタイトルの1つだ。

 その「パタポン」の“精神的続編”となるのが、日本のクリエイター集団・TVTが開発している「ラタタン」だ。本作は「パタポン」のディレクターを務めた小谷浩之氏をはじめ、当時の製作スタッフが多く携わっており、7月15日に行なわれたイベント「BitSummit Let's Go!!」にて本作が発表されると、「パタポン」というワードがTwitterにトレンド入りするなど、多くの「パタポン」ファンを響めかせた。

 だが「ラタタン」は、タイトルと短いティザー映像が公開されただけで、まだその多くが謎に包まれている。そこで本稿では「ラタタン」のディレクターを務める小谷浩之氏、TVT代表取締役・保井俊之氏、TVT取締役・坂尻一人氏にインタビュー。「パタポン」とのつながりや発売時期・プラットフォームまで、「ラタタン」について判明した情報を紹介していく。

【インタビューに応じてくれたTVTの3名】
TVTのゲームデザイナーであり、「ラタタン」のディレクターを務める小谷浩之氏
TVT代表取締役・保井俊之氏
TVT取締役・坂尻一人氏
【【DAY2】BitSummit Lets's Go!!:TVT「ラタタン」ステージイベント】

「パタポン」の“精神的な続編”に。マルチプレイにも注目が集まる「ラタタン」

 まずは「ラタタン」を制作しているTVTについて、簡単にご紹介したい。TVTは2019年に設立された日本のクリエイター集団で、ドラマティック討伐アクション「ゴッドイーター」シリーズや「フリーダムウォーズ」などに携わった保井俊之氏が代表取締役を務めている。2022年より本格的に活動をスタートし、「Project JabberWocky」と「Project Shaz」という2つのタイトルを発表しているが、そのうちの「Project JabberWocky」が今回の「ラタタン」であることをインディーゲームの祭典「BitSummit Let's Go!!」にて明かした。

 「ラタタン」は、TVTに所属するゲームデザイナーの小谷浩之氏がディレクターを務めている。小谷氏は、もともとソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が主催していたゲームクリエイター発掘オーディション「ゲームやろうぜ!」のディレクターを務めており、その第1回オーディションで採用されたのが紛うことなき、TVT代表取締役の保井氏なのだ。また、TVT取締役の坂尻一人氏もSCEに在籍していた過去を持ち、今回インタビューに応じてくれた3名は、全員SCE出身という経歴をもつ。

 小谷氏は、自らを「ソニーの中でも一番ヘンテコなゲームを作っているディレクターだった」と言うが、そのSCE在籍時代に制作したゲームの1つがコマンド・カーニバルゲーム「パタポン」だ。「パタポン」はプレイステーション・ポータブルでリリースされ、〇□△×ボタンで「パタ・パタ・パタ・ポン」などの唄(コマンド)を奏でながら、敵を倒すシミュレーションゲーム。後にシリーズ化され「パタポン3」までリリースされたほか、「パタポン2」まではプレイステーション 4に移植されている。

【『パタポン』アナウンストレーラー(PS4版)】

 小谷氏がSCEで制作した「パタポン」と現在TVTで制作している「ラタタン」のつながりについて、小谷氏は「基本的にはキャラクターや世界観など、全く新しい作品」と話してくれた。だが、続けて「かつてパタポンを遊んでくれたプレーヤーの気持ちを繋いでくれる作品にもなっている」と答え、“精神的な続編”になっているとのことだ。

 また「パタポン」から「ラタタン」へと変化していく中で、双方で共通するものに“プレーヤーvs大群(ワラワラ)”を挙げ、進化したところとして“4人でのマルチプレイ”を挙げた。かつて「パタポン3」でもマルチプレイに対応していたが、小谷氏は「ソロプレイの延長のようなもので、限界があった」と振り返り、一方の「ラタタン」は“マルチプレイのために”ゲームをデザインしていると話してくれた。

 これはTVTが掲げるスローガン「みんなで、もっと、遊ぼう」に基づくもので、「ラタタン」では同社が開発するネットワークエンジン「Theory Engine」を採用しているとのこと。ゲームシステムについて詳細は明かされなかったが、開発の初期段階からマルチプレイを念頭に置いて、「ラタタン」を制作していると明かした。また、保井氏は「パタポンはパタポンで完成した体験だと思っていて。パタポンを現代的に作り直して、プレーヤーの皆さんに新たな体験を楽しんでもらいたい」と語ってくれた。

プレーヤーvsワラワラが魅力の「ラタタン」

 さらに「ラタタン」の見どころについて、小谷氏は“今の段階で明かせる情報は少ない”としつつ「ワラワラ感のあるキャラクターが一番のウリ」とコメントし、「単なる遊びではなく、ずっとそこに居たくなるような、ハッピーな世界観」も特徴の1つと明かしてくれた。

 インディーゲームの祭典「BitSummit Let's Go!!」では、タイトル情報の初公開にあわせ、クラウドファンディングサイト「KickStarter」での支援キャンペーンを発表。坂尻氏は、本キャンペーンについて「『パタポン』という“なくしてしまうには惜しいタイトル”を、もう一度『ラタタン』という新しい体験としてプレーヤーの方に触れてもらいたい」と話し、支援を通じて「ラタタン」をより良いタイトルにしていくとコメントした。さらにキャンペーン参加者には、小谷氏や保井氏、坂尻氏などが出演する動画も公開されるとのことだ。

イラストを含め、ゲーム画面からは“ハッピーな世界”であることが伝わってくる

 また発売時期が未定となっているが、これについて坂尻氏は「もう少し時間を頂きたい」とコメントしつつ、「2024年末から2025年初頭あたりを目指しています」と明かした。加えて、対応プラットフォームについては明確な答えが得られなかったものの、発売時期にあわせて「幅広いハードに対応したい」と答えてくれた。

 7月14日の「BitSummit Lets's Go!!」の会場内で30分という限られた時間だったが、小谷氏、保井氏、坂尻氏のそれぞれが「パタポン」、そして「ラタタン」に対する熱い思いを語ってくれた。TVT初の自社開発タイトルとして送り出す「ラタタン」。小谷氏によれば「今、色々なアイデアが投入されて、より面白いタイトルになっているところ」とのことで、今後の最新情報に注目していきたい。