インタビュー
「ファイナルファンタジーXV」ディレクター田畑端氏インタビュー
PCとスマホでもそれぞれの「FFXV」を。多様化した世界に「FF」として挑むということ
2017年8月25日 12:00
「ファイナルファンタジーXV(以下、『FFXV』)」の新たな展開が発表された。NVIDIAの技術協力を受け、より豊かで高精細なグラフィックスを実現した「WINDOWS EDITION」が2018年に、デフォルメされたキャラクターやグラフィックスながら本編と同じ物語がスマートフォンで楽しめる「ポケットエディション」が2017年秋に登場予定だ。
このほかにも、PlayStation VR向けのスピンオフコンテンツ「MONSTER OF THE DEEP:FINAL FANTASY XV」や、PS4/Xbox One「FFXV」においても「ASSASSIN'S CREED(アサシン クリード)」とのコラボイベントが行なわれるなど、多方面に展開が予定されている。
そこで、ディレクターである田畑端氏にインタビューを行なわせて頂いた。各展開の経緯や展望、そして「FFXV」というコンテンツの今後の展開、さらにその先についてもお聞きした。
なお、インタビュー中では、PS4/Xbox One「FFXV」をコンソール版、「WINDOWS EDITION」をPC版、iOS/Android/Win10「ポケットエディション」をスマートフォン版という呼び方で話している。
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常に続けてきた技術研究の粋を形にしたPC版、「FF」を知らない人にも届けたいスマートフォン版
――昨年のPS4/Xbox Oneの「FFXV」発売から約9カ月というところですが、まずは発売からこれまでを振り返っての印象や感想をお聞かせ頂けますか?
田畑氏:発売した頃を振り返っても、あの時期は忙しすぎて。あまり記憶が残ってないんですよね(苦笑)。
ただ、そのときにいろいろと決めた事がありました。発売したときのゲームの形というのは、我々が死にものぐるいで完成させて、当社の品質管理部とも徹底的にやり取りをして、できるベストの状態にして出したのですが、当然、発売後にはいろいろな意見が上がってきました。僕らとしてはベストを尽くした完成品を出しましたけど、その先にも“もっとやれること”をやっていきたいという気持ちはあって、それを実行に移したんです。
発売から1カ月というタイミングにゲームをクリアしている人は全体の約30%ぐらいでした。その頃は550万本ぐらい出荷されているあたりですね。そのクリアしている人の数字を見て、もっともっとゲームをプレイしてもらってクリアしてもらえるようにしよう、遊びこんで満足してもらえるようにしようと、徹底していくことを決めたんです。
そこで、ダウンロードコンテンツやアップデートの計画を見直しました。いわゆる“一般的なDLCをときどき出すだけ”というやり方ではなくて、購入してくれたユーザーさんと一緒にゲームを良くしていくという計画にして実行していきました。
最新のデータですと、購入者の約60%がゲームをクリアしています。数字的にも大きく変化しましたね。販売本数は650万本を突破しましたが、販売数が伸びているのと同時にゲームを好きになってくれている人も増えている。我々としてはローンチして終わりではなく、その後もずっとユーザーの皆さんとお付き合いさせてもらえて良かったなと思います。それが発売から今に至るまでの心境ですね。
――なるほど。発売の当時から田畑さんは「まだ終わっていない、これからです」というニュアンスのお話をされていたのを思い出します。今回のPC版やスマートフォン版も含めですが、まだまだ展開があり、やるべきことも頭にあったわけですね。
田畑氏:そうですね。今回プラットフォームを増やしているのは開発の初期の段階からあったものなのですが、それも頭にはありました。
コンソール(家庭用ゲーム機)で遊ぶ人がもちろんメインなわけですが、現在はスマートフォンでしかゲームをしない人も当然いるし、PCでのみゲームをする人も当然いますので、そういう人達にも「FFXV」を提供するというのは、最初の段階から決めていました。着手したタイミングはそれぞれまた違うんですけどね。
その一方で、大元であるコンソール版については、遊び続けてくれる人がいる限りいろいろと良くしていくということを同時に進めました。プラットフォーム展開は元々の計画にあったものなんですけど、それとは別に本編をさらに良くしていこうと決めたのは、発売直後ですね。
――今回発表しているプラットフォーム展開にはPC版とスマートフォン版があり、このどちらも元々の計画にあったものということですが、どれぐらいの時期から進めていたものなのでしょう?
田畑氏:“PC版に着手し始めた時期”というと表現が難しいのですが、そもそもグラフィックス周りの技術研究はずっとしていました。GPUメーカーであるNVIDIAとの連携は2015年には始まっていて、2016年にはコンソール版の開発にチームは専念していましたが、その間にエンジンチームは、開発エンジンを一世代進める共同開発をしていました。それで、コンソール版の開発が一旦完了した後に、それまでの技術開発結果を基にPC版開発チームを編成して、少しずつ移行していったという感じですね。
――開発のベースはPCですし、そこからどのプラットフォームにアウトプット(出力)するか、スペックに合わせてどう調節するかというお話でもあるように思うのですが、PC版のプロジェクトは最終的にはPC版という形で発売したいという目標が当初からあったのでしょうか? それとも技術研究を進める中からだんだんとその考えが出てきて、最終的に発売することになったというものなのでしょうか?
田畑氏:だんだんと……ではないですね。2016年中には“NVIDIA協力のもとPC版の「FFXV」を作る”というのが決まりました。
ユーザーさんに向けてというところでは、PCゲームを好む人に“PCでのみ「FFXV」を出していたらこういうものになる”というものを、ポケットエディションは“スマートフォンにのみ「FFXV」を出していたらこういうものになる”と言えるものをしっかりと作って提供したいという考えがあります。
一方で、PC版でお見せできる“技術的な意義”というのを、開発する僕らとしては大事にもしています。コンソール版というのは、技術的にはある上限でロックされていますから、より進んだ技術というのは入れたくても入れられなくなります。今、僕らが出せる最も最新の技術を作品に反映するというのは、作る側のテーマとしてすごく大事だと思います。
そうして作ったものをPCでゲームを遊ぶユーザーさんたちに遊んでもらえることで、“次世代のゲームグラフィックスはこうなる”という一端を示せる。そこに大きな意義がありますね。
――なるほど。それに対してスマートフォン版は逆ベクトルへと広げる展開になっていますね。
田畑氏:そうですね。真ん中にコンソール版があるとするなら、その上にはPC版があり、下にはポケットエディション版という広がりになっています。
――スマートフォン版の開発はいつ頃から進められていたのでしょう?
田畑氏:最初の体験版である「エピソードダスカ」を2015年に出していて、その頃に製品仕様がまとまっていくのですが、ポケットエディションの開発に着手したのもその頃からですね。
プランそのものはもっと初期の「FFXV」の開発がスタートした頃からあったんです。ただ、「エピソードダスカ」を配信するあたりまでは、ゲームの体験のなかでも中心になる「仲間と旅をしているという体験」が本当にちゃんと形にできるのかがまだわからず、課題だったんですよね。AIで動いているキャラクターから仲間と一緒にいるという感覚が得られるかどうか、です。
それが“いける”となったのが「エピソードダスカ」の頃。その感覚がちゃんと見えたので、それを今度はポケットエディションにも入れていきましょうと、着手していったというわけです。
――ポケットエディションは見た目こそデフォルメされていますが、本編をそのままに楽しめるものにしているというのが少し意外でした。見た目のコミカルさから、もっと外伝的なものやミニゲーム的な内容かと思いまして。内容を本編と同じにするというのは、最初から考えられていたのですか?
田畑氏:本編と内容を同じにするというのは最初から考えていましたね。ただし、デバイスとしての違いがもちろんありますので、「とにかくサクサク遊べる『FFXV』」という方向性です。全く同じ遊び方はできないですから、“もし、スマートフォンにしか「FFXV」を出さないのならどういうものにするのか”という考えに基づいての設計にしています。
――なるほど。今回、PC、コンソール、スマートフォンと3つのプラットフォームで「FFXV」が遊べるようになるわけですが、その3つのプラットフォームのユーザー層というのは掛け持ちな人も多いもののバラバラで、一口にゲームファンと言っても多様化していると思います。
「FFXV」の今回の展開はどれも数年前から進めていたということですが、田畑さんとしては「FFXV」という作品は、どのあたりのゲームファンに1番刺さりそうだと思われますか?……すみません、少し変な質問だとは思うのですが。
田畑氏:いえ、おっしゃっていることはすごくよくわかります。多様化の中でどこに向けているのか、向けるべきなのか、ですよね。それはやってみないとわからないところがあります。やってみないとわからないからやってみる……というわけではないんですけど、やらずにいるよりはやってみるという側面はちょっとあります。
「FFXV」を僕らがスタートした4年前の時点でそうした細分化や多様化は起きていたので、逆に言うと「FFXV」というものをコンソール版だけで完結させる理由も特にはなかったとも言えるんですよね。もちろん「FF」のファンはコンソール中心の方が多くいますので、そこでしっかりとメインとなるものを出しつつ、多様性にも向き合ってみる。そして、発売してお終いではなくて、ユーザーさんと点ではなく線の関係になれるよう継続して挑んでいく。それらが「FFXV」の「FF」としてのチャレンジであり、今の時代だからこそのチャレンジだと思います。
――多様化したユーザー層に対して、できる限りいろんなアプローチをしてみるという。
田畑氏:はい。1番簡単なのは、真ん中のコンソール版をスペックに合わせて単純移植していくということだとは思うんですけど、それだと今の細分化や多様化にチャレンジしたことにはならないと思うんです。今回のPC版とスマートフォン版はどちらも“そのプラットフォームしかこの世になかったとして、そこに向けて「FFXV」を作るとこうなる”というコンセプトで作っています。世の中にPCしかゲームプラットフォームがない……それならこういう「FFXV」になる。スマートフォンしかない……それならこういう「FFXV」になる。ちゃんとそれぞれの「FFXV」を用意していて、どれで遊んでもらっても大丈夫。それが多様化に向き合うということだと思ってやっています。
もちろん本当に「FFXV」を好きでいてくれるファンの方が、いろんなエディションを遊んでくれるということもあるでしょうし、そういう方をガッカリさせないような最善の努力もしています。いろんなエディションを遊んでもらったときにファンの人がどう感じるか、どれかひとつだけを遊んだときにはどう思うか。どの遊び方でも「FFXV」たり得るものにしています。
多様化に向き合うという意味では実は最初からそうだったように思いますよ。「FFXV」はそもそも世界に向けて作って世界に売るということをしましたし、それと同じ発想で違うプラットフォーム、違うセグメントに別れてしまっているユーザー層に向けても「FFXV」を提供していくというものになっています。
――なるほど。今、小学生未満ぐらいの子供は親のスマホやタブレットで動画を観るのが大好きとよく聞くのですが、そうした「FF」を知らないぐらいの子供にも「ポケットエディション」の表現はいいのかなとも思いますね。
田畑氏:それはすごくありがたいですね。あのデザインや表現はいくつかの選択肢から絞り込んで、今のものになったんですよ。実際にスマホでしかゲームを遊ばないという人に、それも日本だけでなくいくつかの地域でどういったものを遊びたいか、どういうものに魅力を感じるかをヒアリングして。「FF」という前提がない人にもテストしてもらっています。我々はスマホゲームにそれほどノウハウがありませんので、まず何を出せば遊んでもらえるか、その現実をちゃんと知ろうという意味で。
――逆に、「FF」のこれまでのファンの人はそうした様々な展開の中に違和感を感じるものもあるかもしれません。ただし、これまでのファンの人には違和感があっても、それがより多くの人にリーチできる展開になるかもしれないと思えた場合、それはやるべきだと思われますか?
田畑氏:スマホアプリの「ファイナルファンタジーXV:新たなる王国」が端的な例だと思います。テレビCMやWeb広告がたくさん出ていますが、あれはコンソールの「FFXV」が大好きな人からすると歓迎できない人もいるのだと思います。良い意見ももらいますが、厳しい意見ももらっています。しかし一方で、コンソール版の展開では「FFXV」というものを知ってもらえなかった人たちにまで、知名度や認知度を拡大できているというのも、間違いなくあります。
「FF」というものが強いブランドであるためには、ある意味ディズニーのように誰でもが知っているものが理想だと思います。僕自身は熱心なディズニーファンではありませんが、でも、ディズニーの素晴らしさも価値も、そしていろんな展開を知っている。凄さも知っている。そういうものにちょっとでも近づいていきたいですよね。その意味で、ファンの人に満足してもらうのみならず、ファンではない人にも「FFXV」という存在を知ってもらうのがすごく大事だと思っています。
それはかなり難しいことです。ですが「FF」というIPの15番目を担っている身として、多様化している今のゲームの環境にちゃんと向き合えるか、ひとつの答えを出せるか、ということに取り組んでいるという感じです。
――多様化しているゲーム環境に複数の選択肢を提供してみる、というところですと、奇しくも「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」が浮かぶところがあります。あちらはPS4版と3DS版とで同内容ながら見せ方や表現を変えています。それが、今回の「FFXV」の展開にも近いものを感じるなと思いまして。
多様化したユーザーに応えるために様々な表現や提供方法が必要になるというのは、今のクリエイターさんが行き着くひとつの答えなのでしょうか。
田畑氏:なるほど、どうでしょうね……実はそこはあんまり考えていなかったというのが正直なところなんですけども(笑)。ただ、「ドラゴンクエストXI」は最初からPS4版と3DS版を発表しているのが凄いですよね。選択できる人にどっちで遊ぶのかを迷わせるところもまた楽しい。確かに、「ドラゴンクエスト」という作品の多様性であり、堀井さんという絶対的な存在がある「ドラクエ」だからこその、現代のユーザーさんの多様性に対する答えのひとつなのかもしれないです。ちなみに僕は両方買いました(笑)。
コンソールに合わせた技術ではなく、そのさらに先を見越しての開発体制を続けてきた「FFXV」
――PC版でのNVIDIAとの協力態勢についてですが、当初はやはり技術デモ的なものを作っていくやりとりから始まっているのでしょうか?
田畑氏:そうです、きっかけは技術デモからですね。2015年春のマイクロソフトの開発者向けイベントで、「DirectX 12」での技術デモ「WITCH CHAPTER 0 [cry]」を発表しています。そのコンテンツ部分をうちが開発し、NVIDIAが発売前の最新Geforceを提供し、DirectX 12に対応したドライバー等を書いていたんです。そのときの縁からですね。
※「WITCH CHAPTER 0 [cry]」について詳しくはこちら
エンジンの共同開発がどう始まったのかというお話ですと、技術協力して欲しいとお願いしたのは僕の方でした。うちの「Luminous Studio」というエンジンに、コンソールではなくハイエンド向けのグラフィックスライブラリーを組み込みたいという話をしたんですよね。
狙っていたのは「FFXV」をどうこうしたいというよりも、使う技術を次世代レベルにアップグレードしたいということ。今のコンソールの技術の世代に合わせるのではなく、その枠の外にある1番上の技術にアプローチしたかったんです。それはグラフィックスに限ったことではなくて、近い将来のゲームを遊ぶ環境、開発する環境、提供する環境も含めた、僕たちのチームのビジョンとしてNVIDIAに伝えて、そこに強く共感してもらえたことで、共同開発が実現しました。
そして、ただ技術を用意するだけでは意味がないので、その技術でゲームを作ると、プレーヤーにも優れたゲーム体験を還元できるということを、「FFXV」でまず形にしてみたものです。そういうところからもPC版の「FFXV」は、世代が1個進んだゲームに見えるかどうかというのをすごく意識しています。
――以前、別の人のあるインタビューで「PC向けに作ると楽しんでもらえる寿命が長い」というお話をされたことがあります。そのお話は、PC版であればコンソールゲーム機本体の寿命には囚われず、コンテンツもPCのスペック上昇に対応させやすいというものだったのですが、開発するときの技術の軸をコンソールの寿命と共に終わるもので考えるのか、PC含めスペック向上と共に伸びていける幅を見越して作るのかで、だいぶ変わりますよね。
「FFXV」もまたハイエンドな技術を元から組み込んでいて、将来的には8k出力にも対応していけるし、グラフィックスがそれに耐えうる。かなり長いスパンに対応できる設計をしているんだなと思えます。
田畑氏:寿命というのもそうですが、柔軟性があるということだとも思います。やれることの幅があるんですよね。技術のトライもしていけるし、かといって、全てのPCがハイスペックなわけではないので、僕らがトライした技術を楽しむ人がいる一方で、コンソール版ぐらいの動作で楽しむ人もいて、そのどちらも現実なのがPCプラットフォームの特徴ですよね。逆にコンソールの良さは、物凄く多くの人たちが、同じ仕様のゲームマシンを持っているところです。
――幅広く大きく作っているというニュアンスでもあるでしょうか。開発の軸をどこに取るかというお話で、リリース予定のコンソールに使える技術のみで作ればいいというスタンスか、その先まで見越してハードルの高い開発を行なうのか、ですよね。
田畑氏:うちは後者です。PS4、Xbox Oneに合わせた技術をセットして、それに完全最適化した作り方や組織にはしないという意識を持っていました。でないと今後のハイエンドゲーム開発についていけなくなると思ったからです。
――なるほど、それがどこまでを見通すものなのかというのが気になるのですが、例えば、仮に「プレイステーション 5」というよりスペックの高いコンソールゲーム機が登場するとして、そこにこのPC版のスペックで遊べる「FFXV」を発売するということも、いつかできるかもしれないですよね。
田畑氏:まぁ、そうですね。PS5のスペックとかは知らないですけども(笑)。ただ、今回のPC版は現存するグラフィックスボードの最も上位なものに合わせて作ってあります。
おかげで技術的にはもっと上があるのもちゃんと知る事ができました。今回は、PC版の「FFXV」を提供する上で今の最新GPUに合わせましたが、スペックが許すならどんなことが可能かも見えてきましたし、どうすれば開発できるかもわかってきました。
――できることにはまだまだ先があるし続いていくということですね。今日のお話ですと、「FFXV」は今回発表している展開がリリースされると、当初から構想されていたものに一区切りがつくのかなと思うのですが、その次にどんなことを考えておられるのかが気になるところです。
田畑氏:もちろん、僕らが次に挑戦したいことのためにも、現在のすべての取り組みが重要な意味を持っています。こうした経験が必要です。ただ、今こうした展開をできているのもコンソール版でたくさんの人に購入頂けたからです。ゲームに限らずどんなものでも、計画の途中で収益的な面で頓挫するというのはよくある話です。だからこそ余計に、ファンに支えてもらえて「FFXV」というものを育てることができているのだと強く感じます。これまでにコンソール版の「FFXV」を遊んでくれた人をとにかく大事にして、その人達と共に歩むことで、次に向けた準備もしっかりやっていけるだろうと考えています。
UBIと約2年前から進めてきた「アサシン クリード」とのコラボイベント「アサシンズ・フェスティバル」
――コンソール版の展開では、8月30日にエネミー図鑑とチャプターセレクト機能を加えるアップデートが入るほか、翌31日には「アサシン クリード」とのコラボイベントである「アサシンズ・フェスティバル」がゲーム内で開催されるということで、こちら見る限りかなり力の入ったものになっていますね。
田畑氏:ノクト達はいろんなものが好きですよね。釣りだったり写真だったり。ノクトはゲームも好きで、実際に現存するゲームも好きなんです。そういう趣味や嗜好が見えることで実際にいる人のような人格を持たせられればいいなと考えていたところがあります。そこでノクトは本物のゲームである「アサシン クリード」が好きという設定にしているんですよね。
ノクトが「アサシン クリード」を好きというのも単なる思いつきではなくて、色々と考えを重ねた結果です。もう2年以上前の話になるのですが、UBIに相談したんです。ノクトというキャラが「アサシン クリード」が好きだということ、そして「FFXV」の中で「アサシン クリード」というゲームを扱いたいことを話したところ、快く承諾頂けました。そこからお互いにコラボをやりましょうということにもなり、お互いに資料を提供して世界観を理解して。「アサシン クリード」側でも「FFXV」の要素を使ったコンテンツを用意してくれることになりました。
――なるほど、それにしても「FFXV」は、こうした期間限定イベントやコラボレーションなど、スタンドアローンのRPGながらオンラインゲームのような展開をしていますよね。
田畑氏:そうですね、そこが今日の話に出ることの多い「遊び続けてくれる人と歩む」というところですね。ゲームのクリア率が30%から60%近くまで上がっていること、熱心なファンの人が増えてきて、支えてくれているというところがあって、こうした思い切った展開を実行しやすくなっているところもありますね。
実際のところ、今があまり良くない状況なら「ごめんなさい、コストが捻出できないので今回の開発は中止させてください」と計画の見直しが色々と入っていたっておかしくはないんですよね。いろいろ取り組めてることは、熱心に支えてくれているファンの皆様のおかげです。
PS VR「MONSTER OF THE DEEP:FINAL FANTASY XV」は、11月21日に発売予定
――続いてはPS VR用コンテンツについてですが、まず確認させて頂きますが、以前に出展されていたプロンプトが銃で撃つものに関しては、技術デモの一環だったということですよね。そして今進められているのは、釣りを楽しめる「MONSTER OF THE DEEP:FINAL FANTASY XV」ということで。
田畑氏:そうです。以前のプロンプトのものはあくまでデモです。「MONSTER OF THE DEEP」については、僕らが1番最初に作って出すのなら、それも長い開発期間を経てではなくPS VRというものに、まず1本出すのなら、こういうものがいいのではと決めていったものになります。「FFXV」の世界を味わえる、本編で楽しめたものをその世界に入って体験できる、キャラクターたちとも触れあえるものということで、「釣り」がモチーフになりましたね。
――釣りは「FFXV」の要素のなかでもコンプリートのハードルが高いというか、釣りという要素は多くのゲームでもエンドコンテンツになりやすいものですが、やはり「FFXV」でもかなり凝っていた要素ですよね。PS VR用コンテンツに釣りを持ってこられたのは最初は驚きましたが、竿を振ったりする動きや体験はVRに合うなと思います。
田畑氏:ありがとうございます。VRゲーム自体が僕らは初トライなので、できるかできないかよくわからないところをやるのではなく、「この体験はVRで面白いはず」っていう確信を持てる内容を重視しました。それでも色々と想定外の苦労があり、発売に関しては申し訳ありませんが、もう少しお時間を頂いて11月21日を予定しています。
――当初の予定よりも少し伸びたのでしょうか。
田畑氏:そうなんです、VRならではの部分は初体験なものが多くて苦戦しています。先行している事例が多くあって、例えばすでに酔い対策のガイドラインなどもありますので、そういった製品基準をクリアするために、もう少し時間が必要になりました。
――VRについて、苦戦しつつもひとつのコンテンツが形になってきているという状況ですが、どのような印象や感想をお持ちでしょうか?
田畑氏:VRは面白いと思いますよ。ゲームの世界に入る、自分が仮想体験できるというのは面白いです。ただ、イメージしていたようなものをそのまま実体験できるかというと、そこはまだ距離があります。スペックの面でもそうですし、今のサイズのヘッドセットをつけて長時間遊べるかという物理的なこと、仮想世界の中で自分がものに触れるためのデバイスなど、今後に期待する部分もたくさんありますね。
そういう意味では、昔の携帯電話がすごく大きかった頃のようなイメージです。インフラに近いものにまで浸透するだろうけど、今のこの形のままではないだろうなと思います。
実際、ヘッドセットが薄くて軽くて超小型になってワイヤレスになってくれたら、遊びやすさは格段に変わると思います。ということは今はまだ世代として第1世代。当然、第2世代、第3世代と進化しながら浸透していきますよね。
そして、これからのこと。“やっちゃいけないものなんてない”……“次の挑戦が欲しい。”
――今回はPC版、スマートフォン版というプラットフォーム展開になっていますが、さらに他の機種に「FFXV」を展開するというのはいかがでしょうか?
田畑氏:と言いますと……Nintendo Switchですか? 前から言ってますが、僕もチームの皆もNintendo Switchはすごく好きですよ。元々進めていた展開が順次実現できてきましたので、その先は必然性次第だと思います。当たり前ですが、任天堂さんともNintendo Switchがどんなハードでどんなことができるのかというあたりも、オープンにお話してますし。
――必然性次第ということですね。今回の発表の先のこと、今後についても少し触れさせて頂きたいのですが、例えば映像作品の「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」を逆にゲーム化したりとか、アニメで展開したものを別の形でまとめたりなど、扱えそうな題材だけでもまだまだありますよね。
田畑氏:そうですね、やってきたものの全てに対して「次に繋げるとしたらこうだな」というのはありますね。なのでもし、そういう期待をしてもらえていて、実現させられる状況になるなら、取り組んでいきたいと思います。
「FFXV」でこれだけ色々やってますからね、もはや“やっちゃいけないものなんてない”って思っています。
それに、「仲間と旅をする」というシンプルなものを柱にしたことで、いろんな展開でも軸がブレずにやりやすいというのがありましたね。
――ダウンロードコンテンツの1人ひとりのエピソードなど見ると、いろいろな展開がしやすい世界観なんだなと思えます。
田畑氏:そうですね。ゲームとしてもっと改良の余地があるなどいろいろな意見は当然もらっていますが、何か大きな展開をするときに軸が作れないようなゲームではなく、いろいろ発展させられる作品になってくれたのが良かったなと思いますね。
――わかりました。逆に……いつかは来る“終わり”というものについてもお伺いします。状況が許される限りは、まだまだ「FFXV」の展開を続けていきたいというお気持ちでしょうか。
田畑氏:気持ちはそうです。ですが、会社の事業ですから、どこまでその状況が許されるかも考えています。
少なくともイグニスのエピソードダウンロードコンテンツまでは、約束した計画ですから必ずリリースします。年内はゲーム内容をアップデートするという約束も、確実にやり続けます。その先はもう少し状況を見てから決定することになると思いますが、支えてくれているファンの皆さんのことを考えて、ギリギリまで模索し続けるとは思います。
――わかりました。「FFXV」をここまでやってこられたわけですが、それを経たことで田畑さんの考えに「これが欲しい」というものは何か出てきましたか? 田畑さんはこれからに向けて何が欲しいでしょうか?
田畑氏:今はお話しづらいところがありますが、「FFXV」をやったからこその次の形、“次の挑戦はこれだ”という明確なものは、あります。そしてそれを実行するつもりでもいます。そう遠くないタイミングでスタートすることになると思います。
それは「FFXV」の経験があってのものです。「FFXV」で自分たちが切り開いた世界でもあり、「FFXV」によって僕が現実から1番学んだのは、その時の自分の実力でした。今回できなかったことは次の時にはできるようにしたい。
“何が欲しい?”と聞かれたら、そのための次の挑戦が欲しいです。
――貴重なお話をありがとうございます。それでは最後にゲームファンの皆様に向けて一言を頂けますでしょうか。
田畑氏:はい。今も遊んでくれている人達がいるおかげで、当初ここまでやりきりたいというものがこうして、形になっています。遊んでくれた皆様には、大きく成長させてもらえたことを、本当に心から感謝しています。今回新たに展開を発表させて頂いて、そこで新しく「FFXV」というものに触れてくれるユーザーさんとも、そうした関係になれたらいいなと思っています。今後も全力で取り組みますので、応援をよろしくお願いいたします。
――ありがとうございました。
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