インタビュー
「FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏パッチ3.4インタビュー
2016年9月21日 12:00
水槽に入れられる魚は20種類弱。中にはヌシも!
――個人的にアクアが好きなので、水槽にはかなり期待しています。トレーラーには水槽が何種類か映ってましたが、入れることができるのは自分で釣った魚なのですか?
吉田氏: 基本的にはそうです。マーケットで買ってきてもいいですが。
――魚は何種類くらい入るのですか?
吉田氏: 今回は20種弱くらいです。少ないと言われると思うのですが、数が揃うのを待っていたら実装が遅くなってしまうので、今回はこの数で御容赦下さい。パッチ毎に頑張って10種類ずつくらいは追加していきますので、まずはその数の中からやりくりをしていただきたいと思います。
――水槽で飼える魚の中には、ヌシもいるんですか?
吉田氏: 入ってますよ。今後フィードバックで、このヌシを優先してくれ! などの声が大きければ、優先していきます。ただ、ヌシは変わったものが多いので、こんなの水槽に入れて大丈夫なのかという心配が(笑)。
――水槽はどんなシステムなのか教えてください。
吉田氏: 水槽には、容量という概念があります。一番小さなスモールサイズの魚は容量1で、一番大きなLLサイズの魚は容量7を消費すると決まっています。容量内であればどんな組み合わせでも入れられます。スモールサイズを3種類合計7匹入れてもいいですし、LLサイズを1匹だけでもいいですし、LとMを組み合わせてもいいです。専用のユーザーインターフェイスがあります。ただ、淡水魚と海水魚を混ぜることはできないので、水槽の中を淡水にするか海水にするかは、スイッチで選択になります。
――風景が変わるわけですね。
吉田氏: 中身の装飾をどんなふうにするかは、パターンは少ないですが複数用意してあります。これも順次追加していきます。
――エビとかクラゲも入れられるのですか?
吉田氏: 今回の中にはないですが、いずれ追加はしていきます。
――魚のグラフィックスが出てくると、釣りの方でも光の玉の代わりに魚のグラフィックスが付くのかなと期待してしまうのですが。
吉田氏: 無理です。ほんと勘弁してください(笑)。
――難しいんですか?
吉田氏: やれなくはないんです。でもそれをやると、絵に引っ張られて、釣れる魚の実装速度が落ちます。漁師の方が新しいヌシを早く入れて欲しいと思っても、ますます遅くなってしまいます。「FFXIV」のグラフィックスがリアルなので、魚がかかったときにきれいに水面に顔を出して欲しいとか、釣り上げた瞬間ビチビチ跳ねないといけないとか、手にぴったり吸い付かないといけないとか。それをやっていたら、1パッチ3匹とかしか追加できなくなってしまうのです。アニメーションさせるためには、魚のモデルに骨を入れて、丁寧にそれらを作り込む必要があり、さすがに無理なのです。
――今回入る魚の中で、吉田さんのお気に入りは?
吉田氏: 僕が飾るなら小さな水槽にして、Sサイズを1匹かな。家の中のコーディネートの1つとして、色の鮮やかな魚をたくさん入れてみたり、小さな部屋に小さな水槽を置いて、周りにライトを飾ったり……。あえてSサイズの狭い部屋にあの超巨大な水槽を置きつつ、それを中心にレイアウトしたりとか、そういうコーディネートの遊びなので、自由に遊んでいただけたら嬉しいです。それぞれ皆さんが理想としているハウジングの中で、魚の数はまだ少ないですが、バリエーションが出せる可能性はすごく感じていただけると思うので、いろいろ工夫してみてください。
――部屋に設置できる水槽の数に制限はありますか?
吉田氏: 1部屋に1つです。半透明のシェーダーをMMORPGの空間の中に自由に移動可能な状態で置いておくというのが、かなり難しい仕様なのです。デバッグ中、水槽を置いて位置をずらすと、水だけずるずるっと分離したりとか、大変だったんです……。シェーダーを綺麗に描けば描くほど、見た目は良いのですが、それをリアルタイムに移動させるのが難しい。水の半透明処理は本当に難しく、コツコツ作業をしてきて、なんとか実装できるところまで来ました。先ほどお話しした、水槽を動かすと水だけ遅れて動くというバグですが、見た目は非常に綺麗だったので、「もうこれぐらいでいいんじゃないかな、水くらいズレるよ(笑)」って話をしたんですが、QAが「こんなのダメです!」と(笑)。だからまずは処理負荷の関係で水槽1つからスタートです。複数置ける余地はあるのですが、ちょっとまだ何が起こるかわからなくて怖いので。全家具との検証をこの短い期間でやりきるのは不可能でもあるため、セーフティな実装として1つになっています。まずは1つ実装してみて、皆さんからのバグ報告の中にそんなにクリティカルなものがなければ、もう2つくらい置けてもいいかなとは考えています。
――アクアリストとしては、部屋の中にずらりとタンクを置いた夢のタンク部屋を作りたいところですが。
吉田氏: やれたとしても2個か3個まででしょうね。
――今回、漁師に釣りの楽しみができるわけなんですけど、採集した植物を飾ったり、採掘した鉱物を飾ったりだとかという可能性はありますか?
吉田氏: 夢がありますね(笑)。やるとしたらやっぱり園芸は花瓶だったり、あっちにいくしかないかな……。鉱物って言っても、銀の塊飾ってもしょうがないと思うんですが、アダマン鉱を飾るのは、ネタとしてありな気がしますけど、あまり予定はしてないです。
「FFXIV」は意図的にキャラクターを成長させないデザイン
――今回ちょっと聞いてみたいことがあったのですが、「FFXIV」は時々ネットで「やることがない」と言われることがありますよね。その理由として「FFXIV」にはエンドコンテンツにキャラクターの成長要素がないからだと思うのです。それはおそらく、成長要素があると中で遊んでいる人は楽しくても、新規の人が追いつくのが大変になってしまう。そういう意味があるのかなと。
吉田氏: 「成長要素があると、中で遊んでいる人が楽しい」というのも実は語弊があると思います。今の「FFXIV」のように、割と早くレベルがカンストし、レベリングから解放されるからこそ楽しめている人にとっては、長時間続けなければならない成長要素が入ると、逆に短時間でコツコツ楽しめなくなってしまいます。「FFXIV」を遊んでいる方にも、色々な方がいて、好みが違うということです。誰しもが、非常に遠くに設定されたゴールに向かって、ひたすらキャラクターを成長をさせ続けることに、モチベーションを見出すとは限らないので。
――意図的に入れていないということですね。
吉田氏: 「FFXI」型の、それ自体がエンドコンテンツになっているような、とめどない成長要素が欲しいという方が、「やることがない」とか、「飽きた」とかおっしゃっているのかなと。お気持ちはよくわかるのですが、今の時代にグローバルで戦うMMORPGとしては、この路線は非常に選択しにくい状況です。
これは武器や防具に炎とか氷などの「属性」があまり意味を成さないデザインなのも同じ理由です。例えば、属性が大きく影響するデザインの場合には、強大なボスを倒す時に、ボスの弱点属性の武器や技を持っていない人は、その武器を取得することから始めたり、技を覚えなおすところから始めなければなりません。実はこれ、ハマると滅茶苦茶面白いです。強くなるために努力する実感も、強くなった実感も得やすいですし、達成感も大きい。しかし、一つのボスと戦うまでに、非常に沢山の時間を使います。しかも、次回パッチで別属性のボスが出たら、また準備からすべてやり直しになります。どこかで気を抜くと一気に脱落する。これは緊張感と恐怖と高揚があるデザインなので、とても中毒性が高い。プレーヤーの皆さんに、長時間のプレイを強いるから「やることがない」という状態に陥りにくいというメリットもあります。しかし……皆さんもうそんなに時間がない。このデザインだった場合、僕の忙しさだと、さすがに僕でもプレイが続かなくなっている気がします。時代遅れと言うつもりはありません、またこれらが好まれる時代が来たり、ビジネススキームを変えて、まだまだ可能性があるとも思っています。しかし、「FFXIV」の置かれている状況には、どうしても合わないのです。
だからといって、何もしないわけではなくて、例えばゾディアックウェポンだったり、アニマウェポンだったりを入れたり、次のエクスパンションでも何か新しい、時間をかけてTime to Winになるような成長要素は入れたいと思っています。でも、それがゲームの柱になるようなものは、「FFXIV」では、やらないと思います。それこそ、10年後に、ほんとうに「FFXIV」が好きな人たちだけで運営していこう、みたいな形になったら、思い切ってそういうエクスパンションを出すのもありかもしれない、と思うことはありますが、今は無理ですね。
――現在遊んでいる人でも、誰もがキャラクターのより強い成長要素を欲しがっているわけではないということですね。
吉田氏: 仮に方針を大きく変えたとして、新規が入って来づらいというのは、もちろんそうですが、今いる多くの人たちからも、「そういうデザインじゃないから続けてこれたのに!」とおっしゃると思うのです。ただ、そういう人たちは、わざわざ声をあげない。普通にログインして遊んでいるか、飽きたらサラッとプレイを止めてしまう。僕たちは、そういう声のない人たちも見なければいけない。フィードバックとログデータやアカウント継続期間を付き合わせ、ニーズのバランスを取るのが僕の仕事でもあります、MMORPGは感覚論だけでは運用できないので、日々勉強ですし、日々悩みます。僕自身、色々なことにトライしてみたい気持ちはもちろんありますが、それだけではエゴになります。
新生の時はそれこそ「一発勝負」でしたので、僕が今の市場や状況を見て、「FFXIV」というものを再生させるための手段として現在のゲームデザインをしましたが、じゃあ今、吉田が作りたいものを100%好きなように、「FFXIV」という世界で作っていいかっていうと、それはもう完全にエゴの状態に突入するので、その辺りはうまくバランスをみています。
キャラクターの果てなき成長要素が足りないというのは、意図的にそうしているところがあって、その代わりアイテムレベルを成長させてくださいというデザインです。ただ、それは、経験値を稼いで手に入れるものではなくて、コンテンツをクリアしたり、週にコツコツやれることをやって、だんだん成長させていく。腕のいい人は難しいものにチャレンジして、どんどん先行して強化していってください。行きつくところまでいったら、とりあえず、そのパッチ内でやることはなくなるというのは、そうだと思います。別ジョブをやるのも良いでしょうし、ギャザラーやクラフターをやりたい人は、そこからゆっくりギャザクラをやってもいいし、もちろん他のゲームを遊びつつ、次のパッチを待ってもらうのも全然構わないです。そのスタンスは最初から崩していないし、「FFXIV」の根本にあるデザインなので、今はこれを変えるつもりはありません。もちろん、アイテムレベル更新の繰り返しに、絶対的な飽きがあるというのは理解しています。しかし、それはどのデザインを取ったとしても、いずれはやってくる飽きでもあります。この辺りは、個人的に何かの機会に講演してもいいかな、と思うくらい深いテーマだと思っていますので、今日はこれくらいにさせてください。
今は次の発展に向けて、まったく新しいアトラクションとして、広い範囲を使った探索とか、このエリアは、レベル60でガチ装備のやつらでも1匹ずつ殺さないと即死しますみたいなエリアを作っていくのはいいかなと思っています。ただ、これを根幹に持っていくことはまだないです、というのがまとめでしょうか。
――14時間放送の時にも、秘境みたいなところを作りたいって言われてましたよね。それがそういうものですか?
吉田氏: まだ構想中ですが、何かあってもいいよねという話はしています。「FFXIV」は1ジョブである程度なんでもできるデザインになっているので、8人パーティって、実はすごく強い。だから、8人揃ってもなかなか倒せないというモンスターを作るのは難しい。どうしてもギミックベースになってきます。強いモンスターとして、攻撃力が高くてHPが多いやつを、ただポンと置いておくことが面白いのかという疑問はあります。
今「雲海探索」を、じわじわやりながらプレーヤーの皆さんの動向を拝見して、果たしてそれが「FFXIV」のシステムで遊びになるのかというところを、1つずつ積み上げていってるので、いずれその集大成として、何かやりたいねという話はしています。
「PS4 Pro」の登場で、いずれは「FFXIV」もHDR対応に
――SIEさんから「プレイステーション 4 Pro」がついに正式発表されましたけれども、クリエイターとしての感想と、4K、HDRというメインフィーチャーがありますけれども、そこも含めて「FFXIV」の対応の可能性について教えてください。
吉田氏: もちろん「FF」シリーズですし、僕らは「FFXV」が出ても、そのあと僕らがパッチを入れたら、僕らの方が最新作って基本言い張るつもりでいるので(笑)。いずれもっと美しい画面で「FFXIV」をプレイしたいという声には、お応えしていくつもりではあります。
――「PS4 Pro」に対しての感想はいかがですか?
吉田氏: とても難しいご質問だと思います。
――というと、比較的ネガティブな感想ですか?
吉田氏: ネガティブというわけではないのですが……。今回に限ったわけではないですが、そろそろハード戦争は無くなって欲しいな、と一個人として思います。PROとは言っても“PS4世代”であり、“PS4ファミリー”のマシンです。この点はネットの反応ではまだ少し誤解が見られるようですが、僕としてはこれによって「PS4プレーヤー内でコミュニティの分断」が起こらないように気をつけたいと思っています。
――逆に今PS4で遊んでいる「FFXIV」ユーザーに対しては、PS4本体で十分遊べます。もちろん綺麗な画面がお好みなら、Pro対応もしていくのでどうぞ、ということですね。
吉田氏: もちろんです。現在PS4版の綺麗な環境で遊んでいて満足されているのであればそれで十分。その上で「ハードにもっと投資するから、その分だけ、より綺麗な環境で遊びたい!」という声には、ちゃんと応えていきたいと思っています。それと同時に、できる限り多くのプラットフォームで遊びたいという声にも応えていきたいと思っているので、それはもちろんそうするつもりではあります。
――わかりました。最後にパッチ3.4に対するファンへのコメントをお願いします。
吉田氏: パッチ3.4がいよいよ9月27日に公開です。またしっかり3.1で空いてしまった期間も、ちゃんと元のペースに戻しつつ、いつも以上にたくさんの方向性のあるコンテンツが入っていると思っています。どうしても偶数パッチだとレイドが入って、アイテムレベル更新という部分が大きくとらえられるので、あまりレイドに行かない人からすると、「うちらはあまりやることがないんだよね」と感じられるかもしれませんが、3.3でクラフターの先行装備を入れているので、みなさんもう準備万端だと思っています。作るものが山ほどあるパッチなので、ギャザラー、クラフターの皆さんはバトルコンテンツを放り出して、とにかくマーケットと睨めっこ、素材と睨めっこ、レシピと睨めっこだと思います。ギャザクラの皆様には、どこから作るか、何から集めるかが楽しみなパッチでもあると思います。新式には武器も入っています。武器は本当に強いので、レイドに行く人達の需要も大きいと思います。ぜひクラフター、ギャザラーの人は腕の見せどころです。
後は、アパルトメントが入ることで、ハウジングの個人需要についてはこれで100%満たせると思っています。1区画に1棟あって、90部屋ありますけれど、部屋数はいつでも増やせるようにしてあります。基本的には1棟500部屋以上になっても大丈夫にしてありますので、絶対に満たせると思っています。すでに家を持っている方でも買えるようになっているので、じゃんじゃん買ってハウジングをやっていただければと思います。チョコボ厩舎も1つ共有でおいてあるので、今まで家がなくてチョコボの色を変えられないとか、成長させられないということがあったと思いますが、これで皆さん届くようになると思います。
「女神ソフィア」は、いつもの極蛮神よりも少し簡単になっていると思います。レイドがあるからなのですが、ワイワイ楽しめる遊びになっていると思います。小隊コンテンツは今日時間がなくてあまりお話ができなかったですが、あれは基本ソロでひたすらこつこつやっていくタイプの遊びになっています。今回のアップデートで終わりではなくて、この先はまたNPCをダンジョンに連れて行ったりと、新しい発展性のソロコンテンツにしたいと思っています。シナリオだけではなく、またいろいろな新しい挑戦、レイドでは今回からりリキャストタイマーリセットが入ったり、オートアタックが360度可能になったりと、「FFXIV」のシステムを良い方向に壊すという挑戦もしているので、ぜひまた楽しんでいただければと思います。
――ありがとうございました!
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