インタビュー

「プレイステーション 4 Pro」伊藤雅康SIE取締役副社長インタビュー

今後、SIEからリリースされるタイトルは、すべて4Kに対応する

9月8日 収録(現地時間)



【プレイステーション 4 Pro】

11月10日 発売予定

価格:44,980円(税別)

伊藤雅康SIE取締役副社長

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントは9月7日、ニューヨークのPlayStation Theaterで開催した「PlayStation Meeting 2016」において、プレイステーション 4のハイエンド機種「プレイステーション 4 Pro」と新型「プレイステーション 4」を発表した。PS4 Proは4K・HDR対応が大きな目玉となり、新型PS4はより薄く、軽量に進化している。また、価格もPS4 Proが44,980円(税別)、新型PS4が29,980円(税別)と高価格帯に推移せず、会場からも歓声が上がった。

 当記事では、SIEでハードウェアを取り仕切りEVP(ハードウェアエンジニアリング&オペレーション)を務める伊藤雅康取締役副社長にハードの構成などをはじめ多方面に渡りお話を伺った。

PS4 Proはより高度なゲーム体験を求める層のためのハード

HDRの美しさは、やはり直接体験しないことには伝わらないだろう

――今後、PS4 Proのみで発売されるタイトルというのは予定されているのでしょうか?

伊藤氏:現在、各ライセンシーさんには、ゲームタイトルはPS4とPS4 Proの両対応で制作してくださいとお願いしています。発表会でもアンドリュー・ハウスから“1つのコミュニティで完結させたい”とお話しさせていただいたかと思います。たとえば対戦ゲームで、1つのゲームでPS4 ProからもプレイできるしPS4からもプレイできるようにしたいと思っています。ですからライセンシーさんにも「PS4 Pro専用タイトルというのはやめてください」と今はお願いしています。ですから両方(PS4 ProとPS4両対応)で作っていただいています。

――ユーザーを(使用機種により)分断させないということですね。

伊藤氏:はい。

――PS4 Pro用タイトルの提供方法(リリース方法)はどのように考えていらっしゃいますか? ディスクで発売されるのか? そのとき、PS4タイトルとPS4 Proタイトルでは別パッケージになるのか? それともパッチにより提供されるのか?

伊藤氏:基本的には発売済みタイトルの4K・HDR化についてはパッチによる対応になります。新作につきましては1つのパッケージにすべて収録された商品となります。

――ディスクをハードに入れたら自動的に判断しプレイできると言うことですね。

伊藤氏:はい。

――従来タイトルの4K・HDR化に関してはパッチ対応ということですが、これは有料でしょうか? それとも無料で行われるのでしょうか?

伊藤氏:タイトルごとによって違いますね。それぞれのライセンシーさんの考え方によると思います。

――SIEさんとしてはいかがでしょうか?

伊藤氏:うちはすべて無料になります。

――今後、SIEからリリースされるタイトルというのは、すべてPS4 Proに対応すると考えてよろしいでしょうか?

伊藤氏:そうですね。我々ファーストパーティから出すタイトルは2017年から全ての1stタイトルが4kに対応します。

PS4 Proによって、PS VRもより高度なグラフィックスで楽しむことができる

――アンドリュー・ハウス氏のプレゼンテーションで「PlayStation VR」に関しても触れられていましたが、PS4 ProによってPS VRは具体的にどう変わるのでしょうか?

伊藤氏:正直、「VR体験」という点では変わらないです。ただ、画像はより繊細なグラフィックスを描けますので、その点ではベースモデルとPS4 Proでは違ってきますね。

――基本的には画質が上がるということでしょうか?

伊藤氏:そうですね。

――発表会後のハンズオンでは、「FARPOINT」をPS4 Proでプレイさせていただきました。以前プレイさせていただいたPS4の現行機種とは違い、グラフィックスがより繊細で、遠くにいる敵まで見ることができ、視認性が上がってより快適にプレイできる印象でした。

伊藤氏:そうですね。より快適にVRをプレイできると思います。

――PS4 Proのグラフィックスを拝見して4Kももちろん大きいのですが、HDRの効果が大きいと思います。やはり対応ディスプレイがそろうのが一番かと思いますが、そういった点ではソニーさんと連携して進めていくということでしょうか?

伊藤氏:ソニー本社とコラボして広げていき効果を出すといったことは話していませんが、他のディスプレイメーカーも含めて業界全体で4K・HDRの方向に進んでいるということで、コンテンツの制作側として盛り上がるよういち早く対応したという感じです。

――グラフィックスのHDR化というのは、ゲームメーカーの制作者側も待っていらっしゃったという印象でしょうか?

伊藤氏:そうですね。今回PS4 Proのコンセプトを各ライセンシーさんに説明に伺ったときに、制作者の皆さんは食い付いていらっしゃったんですね。クリエイターの方たちは表現方法が広がるとおっしゃられて、4K・HDR化は歓迎されました。

――今までのPS4オンリーのタイトルよりも、PS4 Proの4K・HDR効果を考慮に入れて作られたタイトルの方が、4K・HDR効果は高いのでしょうか?

伊藤氏:それはタイトルによっても違いますし、ライセンシーさんやデベロッパーさんの考え方によっても違うとは思いますが、最初からPS4 Proのことを考えながら作った方が、何かしら変わってくるかとは思います。ただ一概には言えないと思います。

PS4 Proのドライブが4K Blu-rayディスクに対応しないのはコストと市場性

PS4 Pro

――PS4 Proのドライブは4K Blu-rayディスクに対応していないと言うことですが、その理由についてお話を伺えますか?

伊藤氏:はい、4K Blu-rayディスクには対応していません。欧米ではディスクメディアよりストリーミングの方が主流になってきています。今回も「NETFLIX」の4K対応の話などもしましたが、ストリーミングの方で4Kを優先してやるということにしました。それと、UHD Blu-ray(Ultra HD Blu-ray)対応にすると、やはりコストが高くなってしまいますので、市場の状況と天秤にかけて今回の対応に落ち着きました。

――高機能化するあまり、価格が高くなってしまっても購入していただけませんものね。

伊藤氏:そうですね。

――PS4 Proのスペックについてですが、メモリ容量が今回変更されていません。この理由はどうしてでしょうか?

伊藤氏:1番はPS4とPS4 Proでの互換性の問題なんですね。「PS4とPS4 Proで同じ体験ができる」ということが前提ですが、メモリ容量を上げてしまうと、映像表現だけでなくフレームレートを上げてみたりですとかデベロッパーの方にいろいろと使われてしまいますので、そうなると差ができて互換性がとれなくなってしまいますので、そこは同じにしました。

――なるほど、今回は互換性を優先したことが理由で同じメモリ容量になったということですね。

伊藤氏:1番は先ほどもお話ししました(ユーザーの皆さんに)“ワンコミュニティ”で遊んでほしいと言うことですから。

――PS4とPS4 Proにおいて互換性があり、従来タイトルも遊んでほしいと言うところからも、PS4 ProのHDDに1TBモデルを用意したと言うことですが、まだ少ないのではないでしょうか? 1TBを採用した理由は?

伊藤氏:これまでの(PS4の)現行モデルでは500GBのモデルが多いので、ハイエンド機種となるPS4 Proでは“倍”の1TBと考えさせていただきました。それよりも大きくと言うのはあまりコスト的な問題もあって考えてなかったですね。

――では、これまでのユーザーさんの動向としては1TBモデルより500GBモデルを選ばれるユーザーさんが多かったと言うことでしょうか?

伊藤氏:そうですね。そちらの方が比率的には多いと思います。

――PCとは違い家庭用ゲーム機と言うことでコストを気にされる方もいらっしゃるでしょうね。

伊藤氏:そうですね。

――PS4の大きな特徴の1つに、プレイ動画やスクリーンショットをSNSなどに広めることができる「SHARE機能」があります。PS4 ProではこのSHARE機能はどのような働きをするのでしょうか?

伊藤氏:HDRでSHAREというのはできません。1度SDRにダウングレードした形でSHAREされます。

――ではPS4 Proで最高画質でプレイしていてもこれまで通りの画質でSHAREされるんですね。

伊藤氏:そうですね。

「この秋、プレイステーションのファミリーを広げていきたいなと思います!」

PS4の新しいラインナップ、および周辺機器類

――PS4 Proではゲーマーのコア層にコミットしたいということで発売を決定されたということですが、ワールドワイドでPS4ユーザーのどれくらいのユーザーが、PS4 Proに移行すると思われていますか?

伊藤氏:それは正直わからないですね。あまりそういった数値目標は出していないですね。

――パッケージをPS4とPS4 Proで別々に販売されるのではないとすると、ライセンシーさんにとっては、別にユーザーの割合はどうでもいいんですよね。

伊藤氏:そうですね。

――SIEさんとしての希望としてはいかがですか?

伊藤氏:我々としては(PS4とPS4 Proの)どちらか一方が売れてほしいということではありませんね。今回の件は、ユーザー層を広げたいと思ってのことですので。もちろん、コアな方にはPS4 Proを購入いただいてといったことはあるのですが、ライトユーザーの方で「安いほうがイイよ!」というお客さんもいらっしゃると思いますので、そういった方には新型PS4をご提供して、安い価格でお求めいただければなぁと。それでユーザー層を広げていくのが一番だと思っています。

――今のPS4ユーザーの中のコア層だけでなく、まだ取り切れていないゲームのコア層もあるということですか?

伊藤氏:我々はそう思っているので、今回、新型という形でPS4 Proを出させていただきました。もちろん、これまで全くプレイステーションを購入されていない方でも「ハイエンド機がほしい」というお客さんもいらっしゃると思いますので、そういった方にはPS4 Proを購入いただければいいと思います。要は選択肢を広げたといったほうがいいかなと思います。

――では新型PS4とPS4 Proの発売に向けてのアピールをお願いします。

伊藤氏:今年は9月に新型PS4、10月にPS VR、11月にPS4 Proと3カ月連続で新商品を発売させていただきますし、今年年末にかけてビッグタイトルがたくさんリリースされますので、ここでプレイステーションのコミュニティをさらに広げていきたいなと思います。

 欧米だけでなく、特に日本もこれを機会に爆発的広がりを期待しております。

――現在日本では「スマートフォンがあればいいじゃない!」という人がすごく多くて、そもそもPS4のような家庭で没入感を楽しむゲームとスマートフォンのゲームは全く違うもので、同列で語るのがおかしいと思うのですが、一方でユーザーさんの中に「スマートフォン」で完結してしまう方も多いのも事実です。欧米ではそれぞれ楽しむ層が確立され、一定の市場が築かれていますが、そうではない日本市場のユーザーへの有効なアピール方法とはどのように考えておいででしょうか?

伊藤氏:それこそ、PS VRもそうですしPS4 Proもそうですが、今までと違った高性能な体験として目を向けていただくようにしたいですね。スマートフォンに行かれた方も、「ホームコンソールにもこれだけざまざまな楽しみ方があるんだよ」と訴求して、こちら側に戻ってきていただきたいですね。

 やはり体験していただかないとその良さが伝わらない。いかに体験会を増やしていけるか? というのがカギかなと思います。

――ありがとうございました。

【記事訂正】
(9月10日:14時)SIEのパッチ対応に関しまして記事掲載後に訂正依頼があり、対応いたしました。