「ディアブロ4」「PoE2」「Last Epoch」、夏にじっくり遊びたい3大ハクスラまとめ【夏休み特集】

　敵を倒し、アイテムを拾い、また敵を倒す――。

　この一見単純な繰り返しが、なぜこれほどまでに我々を虜にするのか。「ハック&スラッシュ（ハクスラ）」と呼ばれるこのジャンルは、1996年の初代「Diablo」誕生から約30年、進化と分岐を繰り返しながら、世界中のゲーマーを沼に引きずり込み続けている。

　トレジャーハンティング（トレハン）の興奮、キャラクターが強くなる実感、そして何より「神ドロップ」を引き当てた瞬間の脳汁ドバドバ体験。これらは他のジャンルでは決して味わえない、ハクスラだけが持つ麻薬的な魅力だ。

　今回は「ハクスラ戦国時代」を彩る3つのタイトル「Diablo IV」、「Path of Exile 2」、「Last Epoch」を紹介していく。それぞれの作品が持つ独自の魅力など探りながら、どういった人にどの作品がオススメかをお伝えできればと思う。

まさにハクスラの王道！ 丁寧なつくりと絶妙なバランスで初心者にも優しい底なし沼「Diablo IV」

「Diablo IV」

　「Diablo IV」最大の強みは、そのシンプルさにある。ハクスラ初心者が“複雑すぎて挫折”という悲劇を避けつつ、ベテランも満足できる絶妙なバランス設計だ。

　クラスは6種類（バーバリアン、ソーサラー、ネクロマンサー、ドルイド、ローグ、そして、拡張で追加されたスピリットボーン）。一見少なく感じるかもしれないが、各クラスに複数のビルドパターンが存在する。

　さらに、シーズンごとのバランス調整で「最強ビルド」が変化するため、飽きることがない。筆者もシーズンごとに異なるクラス異なるビルドでプレイしており、毎シーズンで新鮮さを楽しめている。

クラスは6種類。もちろん各クラスごとに成長パターンは異なる

　本作のスキルツリーは「一本道に見えて実は自由度が高い」という絶妙な設計。基本的には上から順番に解放していくが、特定の系統に特化させることも、バランス型に育てることも可能。各アクティブスキルには2種類の強化ルートがあり、その強化をするかどうかでスキルの特徴がガラリと変わることもある。

　ゲームシステム的にはレベル60でカンストするが、成長はまだ終わらない。「パラゴンボード」という第二の成長システムが待ち受けており、そこからさらにプレイヤーごとに全く異なる成長の道筋を辿ることになる。

比較的シンプルなスキルツリー。このわかりやすさが魅力だ

　さらに「ナイトメアダンジョン」、「ヘルタイド」、「ワールドボス」など、挑戦し甲斐のあるエンドコンテンツが山積み。「もう少しだけ強くなれば、あのコンテンツがクリアできるかも」という絶妙な難易度設定が、プレイヤーを無限ループへと誘うのだ。

目指すは全てを超越した「究極」の頂……！ 宇宙のように広がる自由が魅力の「Path of Exile 2」

「Path of Exile 2」

　前作「Path of Exile」は10年以上のサービスにより、良くも悪くも「複雑怪奇なシステムの迷宮」と化していた。「Path of Exile 2」は新作ということもあり、複雑さを整理しつつも、深みは失わない奇跡的なバランスを実現している。

　7つのクラス（レンジャー、ウォーリアー、ソーサラー、ウィッチ、マーセナリー、モンク、ハントレス）に加え、各クラスには「アセンダンシー」と呼ばれる要素が存在する。クラスとアセンダンシーの組み合わせの数だけでもバラエティが出るが、真の魅力はこの先にある。

ベースとなるクラスは現時点では7種類。ここから「アセンダンシー」という要素でバラエティが出てくる

　本作最大の特徴にして最大の魅力、それが星座のように複雑で巨大なパッシブスキルツリーだ。このスキルツリーに初見のプレイヤーは間違いなく圧倒されるだろう。筆者もその1人だった。しかし、この複雑さこそが無限の可能性を生み出すのだ。

　各クラスはツリーの異なる位置からスタートし、近接職は物理攻撃系のノードに、魔法職は属性ダメージ系のノードにアクセスしやすい。そのため、自分の職業にシナジーがあるようにパッシブスキルを獲得しやすくなっている。だが理論上は、戦士が魔法職用のノードを取ることもその逆も可能。この「何でもできる」感覚が、プレイヤーの創造意欲を刺激する。

パッシブスキルツリーの真ん中にアセンダンシーがあり、そこから星座のようにパッシブスキルツリーが広がっていく

　そして、「スキルジェム」と「サポートジェム」の組み合わせシステムは、本作のもう1つの顔だ。例えば「分裂弾」というクロスボウスキルに「連装」サポートジェムを組み合わせると、リロード速度と引き換えに連続射撃回数が増加する。さらに属性ダメージを増すサポートジェムなど、複数のサポートジェムを組み合わせることで、オリジナルのスキルとは全く別物に変貌するのだ。

　この組み合わせの自由度が面白い。YouTubeや攻略サイトではプレイヤーたちが発見した「ぶっ壊れビルド」が共有され、コミュニティ全体の試行錯誤が1つのコンテンツになっている。

スキルジェムにサポートジェムを組み合わせることでスキルが変化していく

ハクスラの良いところ取り+オリジナリティ溢れる、まさにちょうどいい塩梅の「Last Epoch」

「Last Epoch」

　「Diablo IV」と「Path of Exile 2」の間を絶妙に突いた作品、それが「Last Epoch」だ。「Diabloは簡単すぎる、でもPoEは複雑すぎる」というプレイヤーにとって、まさに“ちょうどいい塩梅”の存在だ。

　5つの基本クラス（センチネル、ローグ、メイジ、プライマリスト、アコライト）から、それぞれ3つのマスタリークラスへと分岐。この時点で15通りの大きな方向性が生まれる。この15種類というのが複雑になりすぎない絶妙なライン設定だ。

5つの基本スキルからそれぞれ3種類のマスタリークラスに分岐していく

　そして、本作独自の「スキル特化」システムは、シンプルながら奥深い。全スキルから5つを選んで特化させ、それぞれに用意された専用ツリーでカスタマイズしていく。

　例えば「ファイアボール」でも、単体高火力型、範囲攻撃型など、特化の方向性次第で全く異なる性能になる。最終的にどんな方向性にしたいかを決めておけば、特化の道中は大きく迷わず、一方で独自性を出せるツリーになっている。そのため、プレイヤーにわかりやすい育成方針を与えつつ、十分な自由度も確保しているのだ。

　また、他の2作品にない独自要素として、時間軸を行き来する「エポックシステム」がある。古代、帝国時代、終末後など、異なる時代を冒険することで、単なるハクスラを超えた物語性も楽しめる。この要素が、延々と同じことを繰り返すマンネリ感を打破しているのもポイントだ。

「スキル特化」システムでそれぞれのスキルに特徴が出る

ハクスラ黄金期を迎える今、プレイを迷っている方へ向けたオススメタイトルはこれだ！

　さて、このジャンルの代表的とも言える3つの作品を簡単に紹介してきたが、どんな人がどの作品に向いているかをわかりやすく説明すると、「Diablo IV」は初心者向け、「Path of Exile 2」は上級者向け、「Last Epoch」は初心者からある程度のハクスラ系ゲーム経験者まで、幅広い層向け、という分け方ができるかと思う。もちろん、これは筆者の個人的な感想も含まれているので必ずしも正解というわけではなく、例えば「友人がやっているから」、「好きなストリーマーがやっていたから」などを理由に始めてみるのも1つの手だ。あくまで参考程度にしていただければと思う。

　2025年の今、ハクスラは黄金期を迎えているように思う。7月に「Diablo IV」がプレイステーションの会員制サービス「PS Plus」にてフリープレイの対象となったことで、新規ユーザーが爆発的に増加。その様子はゲーム内でプレイヤー数が明らかに増えたことなどから肌で感じることができたし、4月のアップデートでかなり快適性が向上し、今後控えている新シーズンの期待も高い「Last Epoch」、ユーザーに寄り添い、かつコアなゲーム性を着実に伸ばしている「Path of Exile 2」の存在もやはり大きく、各タイトルが切磋琢磨することで、ジャンル全体のクオリティが底上げされているのではと考える。

　さらに、今回はしっかりと紹介できなかったが、実はダークホースとも言えるタイトル、「Titan Quest II」が8月2日からアーリーアクセスを開始しており、こちらもこの“ハクスラ戦国時代”に一石を投じる作品になるのでは、と感じている。「Titan Quest II」に関しては別稿でアーリーアクセス版をレポートしているので、ぜひそちらもチェックしていただければ幸いだ。

　どのタイトルにも共通するのはハクスラの終わりなき最強への探求という、根源的な魅力だ。一度この沼に足を踏み入れたら最後、あなたも虜になるだろう。これらのタイトルが時間泥棒となり睡眠時間が削られる可能性もある。だからこそ、比較的時間が取りやすい夏の時期に、この奥深い沼に飛び込んでみてほしい。そうすれば、沼の底に佇むレアドロップの女神があなたに微笑むことだろう。