【特別企画】

ハクスラ界のダークホース「Last Epoch」のススメ

キャラ育成の自由度はまさに底なし沼! 中毒性抜群の1本

【Last Epoch】
正式リリース:2024年2月22日
早期アクセス:2019年4月30日

 何十時間、何百時間プレイして入手したレアアイテム。入手できた瞬間に脳全体から汁があふれ出るような快感があり、その快感のためにまたプレイしてしまう--そして始まる睡眠不足の日々。そんなアクションRPGの1ジャンルがある。

 敵をバッサバッサと切り倒すことから名が付いた「ハック&スラッシュ(ハクスラ)」と、少しでも強力なアイテムを入手するためひたすらアイテム探しをする「トレジャーハンティング(トレハン)」を両立させて愛され続けているジャンルだ。同じスタイルの別のゲームとして「Diablo」シリーズや、「Path of Exile」シリーズも挙げられる。

 7月に入り、PlayStation Plus(PS Plus)の加入者向けコンテンツ「フリープレイ」に「Diablo 4」が登場したこともあり、このジャンルに興味を持ったという方もいるのではないだろうか?「ハクスラ」、「トレハン」といえば金字塔とも称される「Diablo」シリーズがやはり代表格だが、最近界隈で人気が高まっているのが今回紹介する「Last Epoch」だ。

 「Last Epoch」は4月より新シーズンがスタートし、様々な要素が追加されたアップデートが行なわれている。このタイミングで一気に人気が加速し、Steamにおいては一時期「Diablo 4」、「Path of Exile 2」を上回る同時接続数を叩き出すなどの注目作になっていたほど。

 そこで、今回は初心者でもわかりやすく、ファンも楽しませる奥深さも兼ね備えている「Last Epoch」の魅力をお伝えしたい。本作の魅力を端的に表現すると、シンプルさと試行錯誤の楽しさを両立したところだ。

 その要素を具体的に取り上げながら、なぜ「Last Epoch」が魅力的なのか。順を追って紹介していく。

□Steam「Last Epoch」のページ

【Last Epoch Season 2 - Tombs of the Erased - April 17th | Official Trailer】

キャラクター成長の自由度と“ほどよい誘導性”

 「Last Epoch」は、インディゲーム開発スタジオのEleventh Hour Gamesが手がけるアクションRPG。2019年に早期アクセス版としてSteamで配信されており、2024年に正式版がリリースされた。正式版になってもアップデートは行なわれており、初期は日本語に対応していなかったものの、アップデートで対応し、遊びやすくなった。

 本作の楽しみの1つはキャラクターの成長だ。だが、その成長は一本道ではない。本作では「センチネル」、「ローグ」、「メイジ」、「プライマリスト」、「アコライト」という職業がある。それぞれにキャラクターの方向性を決める「マスタリー」が3種類ずつ用意されており、合計で15種類の方向性が用意されている。

 これらの職業にそれぞれパッシブスキルツリーが用意されており、各キャラクターに複数の成長ルートがある。また、アクティブスキルにもそれぞれを強化する要素があり、それらによりキャラクターの個性が出る。

 また、ゲーム内の通貨を支払うことでパッシブスキルツリーのリセットや、マスタリーの変更も可能だ。アクティブスキルの強化もやり直せるので、存分に試行錯誤もできるし、序盤はレベル上げ効率が良い構成で、後半は本当にやりたい構成に変更する、といったことも可能だ。

マスタリーごとにパッシブスキルのツリーが用意されている
アクティブスキルにもそれぞれを強化するツリーがある

 キャラクターの育成要素、スキルの強化などについては正直同ジャンル作品にもよくある要素だが、本作が遊びやすく仕上がっているのは、その育成のルートが「ほどよく自由度があり、ほどよくプレーヤーが判断しやすい」ことにある。

 自由度があるという点については、自由過ぎるがゆえに初心者が何をどうすればいいかわからなくなってしまいがちだが、特に序盤は「なんとなく強そう」というスキルを組み合わせていくだけでサクサクと進めていけるので、そういった手軽さはこの手のゲームの中でもトップクラスではないかと感じた。

 特に、キャラクター育成の選択肢の幅の広さと、あとから手軽にビルドを変更できる点については単純に失敗をやり直せるだけでなく、全く違ったスタイルを色々と試すことができるのが嬉しい。

 先述したキャラクターの核とも言える固有要素「クラスマスタリー」の変更は4月から始まったシーズン2で追加されたシステムなのだが、これが本作における自由度をさらに加速。これまでは「クラスマスタリー」を変更したいと思った場合、新しいキャラクターを1から作成し直さなければならなかったのだが、このアプデのおかけで育ててきた愛着あるキャラクターをとことんカスタマイズできるようになったのだ。こういった思い切りの良い要素は同ジャンルの他タイトルではなかなかお目にかかれない、本作ならでは魅力の1つかと思う。

 そうやってゲームを進めていきながら自分好みのスタイルを模索していると、スキルや装備などの理解度がどんどん深まっていき、効率の良い組み合わせなどがわかるようになり、少しビルドを調整するだけで嘘みたいな火力が出たりする。この試行錯誤がたまらなく面白いのだ。

 もちろん、高難易度のコンテンツなどに挑む際にはそれなりの知識を活かしたビルドを組む必要があるし、各クラスでは攻略がしやすいビルドのTierなども存在するため、攻略サイトなどを参照して真似をしてみるというのもこのゲームジャンル1つの楽しみ方ではあるが、手に入れた新しい武器、苦労の末レベルアップして解放されていくなんだか凄そうなスキルに一喜一憂しながら、アレコレ試していただきたいゲームとなっている。

正直最初はよくわからないことだらけだと思うが、なんだかこのスキル強そう!というイメージだけで進めていくのでOK。難しく考えずまずはゲームをがむしゃらに進めてみよう

 と、偉そうに言ったが、筆者は初プレイの際、このゲームについて色々下調べをしていく時にみかけた"Tier1"の「トーメントウォーロック」という成長ルートを参照した。しかし、テンプレを真似するだけでそこそこ強いビルドは作れるのだが、獲得した装備などによってその強度、快適性は雲泥の差がつくため、真似して終わり、ではなく、むしろここからがスタートととも言える。

 場合によっては入手した装備に合わせてスキルを変更した方がより強くなる可能性もあったりするので、プレイ状況に合わせた試行錯誤は必要だし、そこが面白いところでもある。

 こういった体験は初プレイ時もそうだが、別キャラクターを育成したり、アップデートによるシーズンをスタートする際など、ゲームをプレイする度に楽しめるので、毎回初心に帰った気持ちでプレイできるというのも本作の魅力の1つと言えるだろう。

「トーメントウォーロック」は「地獄亀裂」というスキルをベースに戦う。このスキルを使うと地面に亀裂ができ、その亀裂から大量の「霊」と「カオスボルト」が出現する。これが画面を埋め尽くし、敵を殲滅していくのが最高に気持ち良いのだ

 結局今の自分に合った最適解を自分で見つけていくこととなるのだが、その道中で「あ、これ強そうだな」「こっちのルートもいいな」という試行錯誤をどっぷり楽しめた。

 試行錯誤の末、今ハマっているのが「シャーマン」を使って「棘のトーテム」というアクティブスキルをメインに使うビルドだ。このスキルの「林立の精神」という効果にポイントを振っており、1回の詠唱で複数個のトーテムが同時に配置されるようにスキルを成長させている。

「棘のトーテム」をメインに戦うのが筆者のお気に入りだ
序盤こそエフェクトが地味だったが、Lv50にもなると画面のエフェクトがかなり派手になった

 だが、これをそのまま万人へオススメできるかというとそうではなく、スキルツリーの成長ルート次第では全く異なる。例えば、筆者が解放した「林立の精神」というスキルはトーテムを1回の詠唱で同時に設置できる一方、最大設置トーテム数がマイナス1個されてしまう。最大火力を目指すなら、この効果を取らずに棘のトーテムから放たれた棘が敵を突き抜ける「スプリガンの怒り」の効果を解放した方が良いかもしれない。

 それぞれのマスタリーにもパッシブスキルのツリーがあるので、筆者のようにトーテムをメインに使って戦う場合はそのダメージが増加するスキルを取るのがよい。

 こうやって悩みながら自分で判断して自分でスキルを振っていく。そこで、試行錯誤をやりやすくなっているのが本作だ。具体的には極端なハズレになりにくくなっている。

 例えばスキルを成長させていく場合、強力なスキルはスキルツリーの端の方にある。そこに向かって順番にスキルを取っていけば大きくハズすことはない。それは選択の余地が少ないというわけではない、絶妙なバランスなのだ。

「林立の精神」は端の方にある強化なので、そこに至るまでに自然と同系統の強化が行なわれる

 もちろん、ゲーム内通貨を使うことでスキルの振り直しも可能なので、途中で詰まったらスキルを振り直せば良いし、攻略サイトを見て調整しても良い。だからこそ、試行錯誤を楽しめるというのも魅力的なポイントだ。

 そして、各マスタリーごとのパッシブスキルも複数用意されており、どれを取得するかでおおまかな方針が変わる。また、その道中には必須で解放しなければいけないスキルもあるので、どれだけ解放するか、どんな効果を優先するか。そこでプレーヤーごとに幅が出る。この絶妙なバランス感が「Last Epoch」の妙味だ。

トレードあり・なしを選べる独自の“派閥”システムで縛りプレイが昇華される

 本作独自の珍しいシステムも紹介したい。その1つが「トレードあり」と「トレードなし」のモードを選べる「派閥」という要素だ。

 他のゲームでは他のプレーヤーと武器やアイテムのトレードができるシステムがあるものがある。当然、トレードを使った方が目当ての装備を入手しやすいのだが、「トレジャーハンティングを満喫するために、自分で入手したアイテムしか使わない!」というスタイルの遊び方もある。

 だが、これまでのトレードなしのプレイは“縛りプレイ”とも言えるものだった。あくまで自己満足、そのスタイルでプレイしているという名誉や、自己満足のためだけに存在する遊び方だった。

 だが、本作では選択可能な“派閥”システムをゲーム内で選ぶことができ、それぞれにメリットが用意されている。

 トレードありのプレイスタイルは目当てのアイテムを入手しやすい。それが大きなメリットだ。一方のトレードなしのスタイルではドロップ率が上がったり、狙ったアイテム種の武器が入手しやすくなったりするシステムなどもある。

 自力でアイテムを入手する楽しみを、ただの縛りプレイで終わらせない。トレードの有無でどちらを選んでもメリットがあるのだ。

「幸運の環」がトレードなしの派閥、「商人組合」がトレードができる派閥だ
それぞれの派閥毎にメリットが用意されているため、トレードなしのプレイでも深く楽しめるのだ

クラフトはトレハン熱をさらに加速させる起爆剤。絶妙なゲームサイクルが沼への入口

 そして、本作のやり込みがいがある要素の1つがクラフトだ。もちろんレアなアイテムをドロップで入手するトレハンの楽しみはある。だが、ゲーム内アイテムを使ってクラフトでアイテムを入手する楽しみもあるのだ。

 例えば、装備に付与されている特殊効果を抜き出して別の装備につけたり、数値をランダムに変更したり、ノーマルなアイテムを特殊なアイテムにできるクラフトもある。

 このクラフトがとにかく奥が深い。ベースになる強力なアイテムを入手し、そのアイテムをクラフトすることで超級品に仕上げることができる“可能性”がある。もちろん失敗すると結果的にパラメータが下がったり、装備に不要な特殊効果がついてしまい、結果的にアイテムの価値が下がったり、弱くなってしまうこともあるのだ。

アイテムを破砕して素材を集めることもできる

 例えば、育成品などは作りやすい。自分のキャラのメインスキルを強化する効果を抽出し、ほかのアイテムに付与する。ほかにも、数値をランダムに振り直すリロールもわかりやすいところだ。だが、クラフトには素材を使い、レアな素材も存在するので、そういったものは無駄遣いできない。

 また、1つのアイテムにはクラフトで調整できる回数の上限が決まっているので、貴重なアイテムや強力なアイテムはクラフトしづらいのもバランスを取っている面白い要素だ。

 そのため、本作にはレアなアイテムをドロップで入手する楽しみと、クラフトで超強力なアイテムを入手できる可能性がある楽しみ。この2つにトレハン的なアイテムを探し続ける楽しみがあるのだ。

クラフト要素は奥が深い。クラフトをサポートするアイテムの組み合わせなどもあるので、知識がそのまま強さに直結する

 「Last Epoch」はシンプルでわかりやすい要素もあれば、プレーヤーが試行錯誤できる要素も多い。敵を倒してアイテムを探す楽しみもあれば、クラフトで超級品を狙う楽しみもある。このわかりやすさと奥深さを絶妙なバランスでミックスしているからこそ、「Last Epoch」ならではの体験に仕上がっているのだ。

 気がつけば、何度も繰り返し敵を倒してキャラクターを強化する。画面のエフェクトがどんどん派手になっていき、そのサイクルにハマりひたすら遊んでしまう、そんな悪魔的な魅力がある。

 この記事を読んだあなたにもぜひ、この抜け出しがたいサイクルに足を踏み入れてみてほしい。そこには唯一無二の快感と、あなたを寝不足にさせる日々が待っているだろう。

様々なロケーションを旅しながらストーリーが進んでいく。ストーリーもきっちり日本語化されているので楽しめるし、エンドコンテンツは無限とも言えるボリュームだ