【特集】
ゲーマーの味方! 「公衆無線LAN」でゲームを遊ぼう(後編)
Nintendo Switch片手に街の公衆無線LANで思いっきり遊んでみよう
2020年3月6日 00:00
「『公衆無線LAN』でゲームを遊ぼう(前編)」では公衆無線LANの基礎知識や、メリット、注意点などを紹介した。後編の今回は実践編として、実際に街に出て公衆無線LANに接続してゲームをプレイした感触をレポートしたい。
テストに使用したのは、任天堂の最新据え置き型ゲームコンソールNintendo Switch。ゲームファンならご存じの通り、Nintendo Switchは本体にモニターと内蔵バッテリーを備え、携帯ゲーム機としても利用することができる。日頃から持ち出して遊んでいるというゲームファンも少なくないと思われるが、そこで必要になるのがネットワークへの接続だ。
任天堂はもともと独自のアクセスポイント「ニンテンドーゾーン」を、セブン-イレブンやTSUTAYA、ニンテンドーeショップなどに設け、Nintendo Switchやニンテンドー3DS向けにオンラインサービスを提供していた。しかし残念ながら、2020年2月28日をもってこのサービスは終了。以降、任天堂が提供するアクセスポイントはポケモンセンターなど一部の施設内だけになっている。
このためゲームファンの中には、Nintendo Switchはもう外では使えないのではないかと思っている方がいるかもしれないが、そんなことはない。今回のメインテーマである公衆無線LANを賢く利用することで、外出先でもNintendo Switchの機能をフルに使ってゲームを楽しむことができるのだ。それではさっそくNintendo Switchを使った公衆無線LANの活用法をお伝えしていきたい。
まず始めに知っておきたい。ゲームのデータサイズと時間当たりの通信量
Switchユーザーの中には、「公衆無線LANなんて本当にいるの?」と思っている方もいるかもしれないが、外で遊ぶなら絶対に必要だ。
ダウンロード版ならゲームソフトをダウンロードしなければならないし、「私はパッケージ派!」というゲームファンでも、今のゲームはかなりの頻度でアップデートやダウンロードコンテンツによってゲーム内容がバージョンアップされる。さらにそもそも人気ゲームの多くは、オンラインプレイが当たり前になっている。
まずは足がかりに、ニンテンドーeショップで主要なゲームをダウンロードするために、どの程度のデータ量が必要かを軽く調べてみた。1GB以下なのは「Minecraft」だけで、残りのゲームはすべてギガバイトサイズ。1本落とすだけでも、テザリングの容量を使い切ってしまうボリュームだ。
タイトル | 必要容量 | |
---|---|---|
大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL | 15.7GB | |
フォートナイト | 8.6GB | |
ドラゴンクエスト X オンライン | 14.8GB | |
あつまれ どうぶつの森 | 6.2GB | |
ONE PIECE 海賊無双4 | 12.0GB | |
初音ミク Project DIVA MEGA39's | 14.3GB | |
ペルソナ5 スクランブル ザ ファントムストライカーズ | 10.0GB | |
Minecraft | 948MB |
続いてダウンロードコンテンツのサイズだ。こちらもゲームソフトほどではないとはいえ、ギガバイト単位のダウンロードが発生していることがわかると思う。
タイトル | DLCタイトル | 必要容量 |
---|---|---|
ドラゴンクエスト X オンライン | いばらの巫女と滅びの神 | 949MB |
スプラトゥーン2 | オクト・エキスパンション | 2.0GB |
ドラゴンボール ゼノバース2 for nintendo switch | レジェンドパトロールパック | 2.0GB |
次に、意外と知られていないのが、オンラインプレイ時のデータ使用量だ。これはゲームソフトのデータサイズや、アップデート/DLCのデータサイズと違って事前に明示されないため、知らずに遊んでいる方も多いだろう。
データ使用量は、当然プレイするゲームや、遊ぶ時間によっても大きく異なる。そこで実際にゲームプレイでどれぐらいの通信量なのか、iPhoneの通信量チェッカーアプリで軽く調べてみた。
まず、常時オンライン接続が必要なMMORPG「ドラゴンクエストX」(スクウェア・エニックス)は、意外と通信量が少なく1時間のプレイで7MB~11MB程度を消費していた。
続いてこちらもオンライン専用タイトルとなるバトルロイヤルゲーム「フォートナイト」。この手のシューターは、位置データの正確さが求められるため、通信頻度がMMORPGよりも多くなる。「フォートナイト」は約10分間のプレイで「ドラクエX」と同等の7~10MBを消費、さらにSwitchを代表する格闘ゲームである「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」はわずか1試合で4~5MBほどのデータをやり取りしていた。
1回のプレイだと少なく感じるかもしれないが、例えば「フォートナイト」を2時間遊べば80MB~120MB程度を消費することになる。1試合が短い「スマブラ」ならなおさらだ。さらに起動時に本体のアップデートが入れば数MB。「スマブラ」のダウンロードコスチュームが1つ4MBと、ゲーム以外でもデータ通信が必要になる。
現在、Nintendo Switchを外で遊んでいる方は、スマートフォンのテザリングを使って接続しているという方が多いと思う。もちろん、テザリングで繋いでも問題ないのだが、テザリングは、使用しているスマートフォンのデータ容量を食ってしまうし、使用量は有限だ。使いすぎてしまうと、スマートフォンの利用に支障が出てしまう。
しかし、公衆無線LANなら、大容量のデータのやり取りが発生しても帯域制限におびえずに済む。だが、公衆無線LANは、本当にそんなに便利に使うことができるのだろうか。そこで、実際に街へ出て、様々なアクセスポイントに接続してみた。
Nintendo Switchのネットワークへの繋ぎ方
Nintendo Switchをネットに接続する方法はとても簡単。「設定」の「インターネット」>「インターネット設定」からアクセスポイントを選ぶだけだ。 セキュリティキーが設定されているアクセスポイントでは、入力画面から一度だけキー度入力しておけば、以降は自動的に接続されるようになる。
「インターネット接続」画面でアクセスポイントを選ぶと、そのアクセスポイントに接続が始まる。だが認証していないため、途中で「このネットワークを使うには、手続きが必要です。」というメッセージが表示される。「つぎへ」を選ぶと、ブラウザの認証画面へと遷移する。あとはそのページに書いてある方法に従って接続すれば完了だ。
Nintendo SwitchはIEEE 802.11a/b/g/n/acとBluetooth 4.1、NFCを使ったデータ通信に対応している。アクセスポイントの中には、同じような名前で途中が「A」と「G」になっているものがある。これは「A」が5GHz、「G」が2.4GHzを意味している。5GHzのほうが高速でより安定しているが、有効通信範囲が狭いという弱点がある。2.4GHzは5GHzより低速な代わりに有効通信範囲が広い。電波の強さを見ていずれかを選ぶといいだろう。
ちなみに公衆無線LANはアクセスポイントが1つしかないこともある。その場合は、どちらの帯域に繋がるかは、繋げてみなければ分からない。
公衆無線LANの場合は、ボタンを押して同意するだけでつながるもの、メールアドレスを送信することで使用できるもの、IDとパスワードを設定してログインするものなど様々な認証方法がある。この中で、同意をするだけ、パスワードを送るだけというものに関しては、Switchに表示される画面の指示に従うだけでいい。ただ、中には事前の登録が必要だったり、二要素認証が必要だったり、プリペイド利用のためにクレジットカードでの決済が必要だったりするようなアクセスポイントもあり、こちらはSwitchだけでは登録することができない。
例えばJR西日本が新幹線ホーム辺りで提供している「JR-WEST-Free Wi-Fi Service」は登録画面から送信したメールを受け取って、メール内にあるリンクを押して認証する必要がある。Switchではこの操作は不可能なので、別にメールを受け取れるスマホやPCが必要だ。
また「Wi2」のような有料サービスでは、クレジットカード決済をするためにSSLで守られたウェブページでの操作が必要になる。こちらもブラウザ機能がないSwitchでは行なうことができないため、ブラウザを使えるPCやスマホが必要だ。
ここでNATタイプについて説明しておきたい。NATとはNetwork Address Translationの略で、デバイスをネットワークに接続するための技術の1つだ。そのタイプはインターネット接続の安定度の指標として使われている。Switchでは以下のように規定されている。
NATタイプ | 解説 |
---|---|
AまたはB | 比較的インターネット経由での対戦・協力プレイが行いやすい環境 |
CまたはD | インターネット経由での対戦、協力プレイに最適な環境ではない |
F | インターネット経由での対戦、協力プレイができない環境 |
街の公衆無線LANに突撃。実際につないで試してみた
今回は、Nintendo Switchの接続テストで回線の状態をチェックしつつ、「フォートナイト」で実際のプレイではどうなのかを確認した。Nintendo Switch版フォートナイトはフレームレートが30fps固定で、今回テストしたどのアクセスポイントでも、ほぼ30fpsを維持したままプレイすることができた。
なお、これらの結果はあくまでも筆者の家近くにあるアクセスポイントでのテストであり、回線速度などは店舗によって差があることは書き添えておきたい。
テストは無料の公衆無線LANを提供しているカフェの客席でネットに接続し、Switchの接続テストで回線速度とNATタイプを確認した後、実際に「フォートナイト」をプレイしてフレームレートとプレイの感触を確認した。
比較対象として、筆者の家のブロードバンド回線にNintendo Switchを無線LANで接続した場合の数値を載せておきたい。回線はNifty光で1Gbpsの契約、5Ghz帯で接続している。我が家ではV6プラスというIPv6のサービスを利用しており、固定IPアドレスが取得できないためNATはBになっている。速度はダウンロードが60.0Mbps、アップロードが28.2Mbpsと家庭で使うには特別早くはないが、遅延でストレスを感じることはまったくないという必要十分な速度だ。
スターバックス
スターバックスの公衆無線LAN「at_STARBUCKS_Wi2」は、1回のログインで1時間まで無料で使用できる。NATタイプはA。通信速度はダウンロードが13.8Mbps、アップロードが8.6Mbps。接続、プレイともに快適に使用することができた。
タリーズ
タリーズの無料公衆無線LAN「tullys-Wi-Fi」は「同意する」ボタンに同意するだけで接続ができる簡単設定だ。NATタイプはA、通信速度はダウンロードが34.2Mbps、アップロードが14.6Mbpsと回線速度も申し分なく、多くの公衆無線LANにある制限時間もない。今回テストした中では、もっとも安定した快適な回線だった。
ドトール
ドトールの「DOUTOR_FREE_Wi-Fi」は、同意するだけでネットに接続できるお手軽な公衆無線LANだ。接続時間は1時間。NATタイプはA。接続したアクセスポイントは、ダウンロード4.1Mbps、アップロード1.1Mbpsと回線スピードは振るわないが、プレイ自体に影響はなかった。
マクドナルド
マクドナルドの「00_MCD_DREE_WIFI」はマクドナルドではメールアドレスで会員登録するか、フェイスブックかTwitterアカウントでログインする必要がある。メールアドレスでの会員登録は問題なくできたが、SNSでの認証では途中にエラーが出てしまった。
NATタイプはB。通信速度はダウンロードが19.9Mbps、アップロードが6.0Mbps。プレイに支障はなく、遊ぶことができた。
イオンモール
接続テストはイオンモール内にあるフードコートで行なった。1回の利用時間は1時間。NATタイプはC。回線速度は決して遅いわけではないが、フードコードは混み合っていたこともあり、回線は不安定でプレイの最中なんども位置ずれを起こしてしまい、プレイしづらかった。
その後、場所を移して今度はショップが並ぶ通路に置いてあるソファでテストしてみたところ、NATタイプはCのままだったが、先ほどよりは快適にプレイすることができた。敷地面積が大きいだけに、接続する場所によってかなり安定度に差があるようだった。イオンモールでは、館内マップにアクセスポイントの場所が明記されていたので、安定度を求めるならマップのマークに近い場所で接続すればよさそうだ。
セブン-イレブン
セブン-イレブンの「7SPOT」は会員登録が必要な無料公衆無線LAN。制限時間は1時間で、1日3回まで接続できる。登録にはメールアドレスが必要だ。
今回は店の外から繋いでのプレイだった。NATはB。通信速度はダウンロードが19.2Mbps、アップロードが13.2Mbpsとかなり高速な部類だった。
公衆無線LANで外でも充実ゲームライフ
ご覧の通り、街にある主要な公衆無線LANでは、ほとんどのアクセスポイントで快適にゲームをプレイすることができた。店内にはスマホでゲームをしている人が大勢して、ある店では、Nintendo Switch Liteで遊んでいる大学生くらいの女性2人連れも見かけた。カフェで珈琲片手に友達とチームを組んで、ネットの向こうにいる相手と対戦するのは、家で1人で遊ぶのとはまた違った楽しさがある。
公衆無線LANには、前編で紹介したようなリスクやデメリットもあるが、正しく使うことでもっと快適なゲームライフが送れるようになる。今回の特別企画を通じて、公衆無線LANに対する正しい知識を身に着けつつ、家の外でも楽しいゲームライフを送って欲しい。
制作協力 総務省サイバーセキュリティ統括官室