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【ガルパン×WoT連載】第11回:大洗は愛があふれる戦場だ!「第20回大洗あんこう祭」参戦レポート

「WoT」も「ガルパン」戦場だった

「WoT」で「ガルパン」にちなんだチーム戦を実施

 「WoT」を運営するウォーゲーミングジャパンも「ガルパンミニミニホビーショー」に参加している。と言っても関連グッズを販売しているわけではなく、PC版「WoT」を使った来場者参加の対戦イベントを実施。「ガルパン」の登場戦車を用いて7対7で戦うという特別ルールだ。

 組み合わせは時間によって3種類に変更された。最初は「サンダース大学付属高校」対「プラウダ高校」の組み合わせ。「M4シャーマン」対「T-34」といった感じで、合計Tier数も同じに合わせて公平な戦いにしている。しかし最終戦は「大学選抜チーム」対「高校選抜チーム」で、「センチュリオン」や「T95」といった高いTierの戦車達を相手にするため、「高校選抜チーム」に「マウス」を投入するという、通常は実現できない豪快なマッチングである。

 「大洗あんこう祭」という場所柄、「WoT」を初めて体験するという「ガルパン」ファンの来場も期待される会場なのだが、実際には明らかにやり込んでいる「WoT」プレーヤーが多数参戦。スタッフに操作説明を求めるようなシーンはほとんど見られず、全員まとまって慎重に進軍するあまり撃ち合いが始まらないという、真剣な戦いがたびたび展開された。

 13万人も来場すれば「WoT」プレーヤーがそれなりに居ても不思議ではないが、イベント終了時間に近づいても参加を待つ人の行列が途切れず、熱い戦いは暗くなるまで続いた。「WoT」プレーヤーかつ「ガルパン」ファンという人にとっては、ここでしか遊べない特殊なマッチングでもあるだけに、いい記念になったことだろう。筆者もぜひ参加したかったが、並んで待つ時間がなく戦わずして敗退。

 ちなみに同コーナーでは、PC向けのオンライン海戦アクション「World of Warships」の試遊台も用意された。こちらは「ガルパン」と全く関係ないわけだが、立ち寄ってプレイしていく方が多く、意外と賑わっていた。大洗が港町だから、というのもあるのだろうか?

「ガルパン」にちなみ、通常は実現できないマッチングで対戦
展示物もいろいろ。PCは特注の非売品で、中身は超ハイスペックな上、外装だけで約50万円かかっているとか
「World of Warships」も出展。なかなかの人気だったのは港町だから?

大洗の街中が本当の戦場だった

落ち着いた雰囲気の商店街が、この日ばかりは異様な人出に
横断幕まで掲げられている

 ステージがあるイベント会場と大洗駅の間くらいに位置する商店街も、「大洗あんこう祭」の会場の1つ。普段は落ち着いた雰囲気の商店街なのだろうが、この日は違う。道路は歩行者天国となり、路上には数十台の「ガルパン」痛車が並ぶ。そして言うまでもなく、ここも「ガルパン」の聖地である。歩行者天国になったエリアは人で埋め尽くされており、ここは原宿かというほどの賑わいだ。

 商店街では、各店が販売している「ガルパン」グッズの出店が出ているほか、有志の手による戦車等の車輌展示も行なわれた。またコスプレイヤーの数も多く、戦車と一緒に撮影する人もいれば、戦車付きのコスプレイヤーもいた。中にはコスプレイヤーとカメラマンがセットで動いて、あちこち撮影して回るという姿も。楽しみ方は様々である。

 商店街の店を見ていると、多くの店で「ガルパン」のキャラクターが描かれたポスターやポップが見える。少し色褪せたりしたものも多く、この日のために用意したという感じではない。しかもポップは主要キャラクターではなく、チョイ役的なキャラクターも多く、道行くファンから「これ誰だっけ?」という声が聞こえたほど。店のイメージに合わせたり、店主の趣味だったりするのだろう。

 また歩行者天国になっていない、つまりイベント会場と指定されていない範囲の店舗でも、同じようにガルパンのポスターやポップがあちこちで見られた。大洗町の商店はただ流行に乗ったわけではなく、きちんと「ガルパン」を理解して愛してくれているのを感じる。「ガルパン」ファンなら、ここにいるだけで幸せになれる。

 なお大洗の商店では、商品がなくなっても完売とは書かない。「撃破」と書くのである。これが戦場でなくて何だというのか。

町中の様々な商店で「ガルパン」が見える。歩いているだけで本当に飽きない
商店街でも物販がある。こちらは「ガルパン」痛網戸
大洗では商品完売を「撃破」と言う
商店街に戦車も並ぶ
イギリス軍車輌に搭載される湯沸かし装置「Boiling vessel」。本物らしい
落書きバス。翌日から大洗の町を走っているそうだ
商店街では痛車コンテストも実施。数十台の痛車が並べられた

「ガルパン」への愛と感謝の気持ちがあふれる大洗町

大洗町商工会ののぼり
作中で2度も破壊された店が「ガルパン」で最高の聖地となっている。冷静に考えたらすごいことだ

 取材の中で見かけて印象的だったのが、商店街のあちこちで見るのぼりだ。大洗町商工会が用意したもので、「ガルパン」のキャラクターに、メッセージが添えられている。そこには「大洗に笑顔がたくさん ありがとう ガルパン!」と書かれている。

 港町である大洗町は、2011年の東日本大震災で津波被害を受け、広範囲が浸水した。的確な避難指示により津波による死者を出さなかったことで話題にはなったが、物的には甚大な被害を受けた。さらに福島第一原発の事故が影響し、海水浴客が激減するなど観光に大きな影響が出た。2011年11月に何とか開催できた「大洗あんこう祭」も来場者数も減少し、前年の7割程度となる約3万人に留まった。

 しかし2012年からは「大洗あんこう祭」で「ガルパン」関連イベントが始まり、来場者は一気に倍増。過去最多となる約6万人が来場した。その後も来場者数は年々増え続け、2015年には約11万人が来場。そして今年は13万人が来場と、5年経ってもまだ来場者が増える勢いが止まらない。

 だから大洗町も「ありがとうガルパン」なのだろうか。おそらくそんな簡単な話ではない。「ガルパン」は大洗町を舞台にしているが、その内容は街中で戦車が戦うというもので、町のあちこちが破壊されるのである。震災で破壊された町の復興を目指している最中の2012年に、「大洗町で戦車が戦ってあちこち壊されるアニメ」があると聞かされた大洗町の人々は、素直に喜べただろうか。

 ところが、ふたを開けてみればアニメは大人気となり、「大洗あんこう祭」も過去最多の来場者数を記録。大洗町の方々も、これは何事だと驚いて「ガルパン」を見たのだろう。そして「ガルパン」の作品としての面白さと、大洗町をただの素材として見ていないという制作者からの愛を感じ取ったのだと思う。

 そして大事なことがもう1つ、「ガルパン」ファンの人のよさである。今回、13万人というあり得ないほどの人で埋め尽くされた大洗町だが、イベントにおいて大きな騒ぎや混乱が起きることはなかった。席のないステージ前広場は綺麗に人で埋まり、物販の行列はどこも整然と並ぶ。大洗町のイベント運営スタッフの手際も素晴らしかったが、それと同じくらいに理性的に楽しむファンも素晴らしかったと思う。

 特に驚いたのがイベント終了後の様子だ。何万人もの人が集まり、様々な食べ物の屋台が並んでいたはずの広場なのに、終わってすぐにほとんどゴミが落ちていなかった。イベントの規模から考えれば、いい意味で異常な光景と言っていい。

 イベント運営側の対応の良さは間違いなく、人口の8倍の来場者の中で素晴らしい仕事をされていた(筆者のような取材の対応も含めてだ)。それに加えて、来場者も無闇にゴミを捨てたりせず、マナーを守っていたのだろう。イベント終了後、自発的に掃除をした来場者までいたという。来場者数の伸びからして、来場者の大半は「ガルパン」ファンと思われるが、彼らのマナーの良さがあってこその結果であるのもまた確かなことだろう。

 大洗町の方々も、この何年かの「ガルパン」ファンとの付き合いの中で、人の良さをわかってくれたのかもしれない。そう思うと、のぼりに書かれた「大洗に笑顔がたくさん ありがとう ガルパン!」というメッセージの意味も、少し納得がいく。大洗町の方々も「ガルパン」という作品を愛して、「ガルパン」ファンに感謝してくれている。だからこそ「ガルパン」ファンも、アニメの聖地として以上に大洗を愛しているのだと思う。

 「ガルパン」ファンの中でも熱狂的な人は、大洗に旅することを「大洗に帰る」と言う。筆者も大洗に行って少しわかった。大洗は「ガルパン」ファンが旅する場所としてだけではなく、住んでもいいと思えるくらい「ガルパン」への愛があふれる素敵な町だ。だから、大洗は今も聖地なのだ。筆者もひとりの「ガルパン」ファンとして、大洗町への感謝を込めてこの記事をお届けしたい。

大洗町役場、かねふくめんたいパーク、大洗サンビーチ(この日は駐車場として活用)、等々、あちこちに「ガルパン」の聖地がある大洗町。今後もイベントの有無に関わらず、町への感謝を忘れずに楽しんでいただきたい

(石田賀津男)