【第21幕】
Report / manga:ジョン・カミナリ
logo design:フランチェスコ・アッカッターティス

電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 この連載記事では、毎月1回、僕のゲーマーとしての物語、そしてゲーマーとしての哲学や信念を独特なスタイルで紹介していきたいと思う。日本のゲームに大きく影響を受けた僕のゲーマー人生を、イタリア人としての個性を生かして面白く語りたいと思う。あるときは、話題沸騰中のニュースについて掲載ギリギリのところまで正直な感想を書いたり、またあるときは、今でも心に大切にしまっている過去の作品を振り返ってみたいと思う。

 1番注目して欲しいのは、「イタヲタのレトロなゲームライフ」というコーナー。僕のオタクとしての青春を文章と漫画を交えて懐かしく振り返りたいと思う。連載の途中で新しいコーナーも生まれるのかもしれない。回を追う毎に中身が変わったり増えたりするのかもしれない。とにかく、サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:36歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
Facebook:http://www.facebook.com/johnkaminari
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること



【もくじ】
一刀両断~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~
傑作の如く~期待している新作TOP5~
過去の宝物~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~
イタヲタのレトロなゲームライフ~ハプニング満載のオタク人生~



■ 一刀両断 ~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~

話題のニュースや注目のテーマをピックアップして僕の率直なコメントを載せたいと思う。また、現在のゲームが抱えている問題を解決するアイデアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。ゲーマーの皆が納得できる未来の為に!

其ノ一:歓喜の声が絶えなかったSCEAカンファレンス

 インターネットで公開された動画のおかげで、今年もリアルタイムにE3のメインイベントを観ることができた。まずSCEAのカンファレンスで発表された新作タイトルの中で、僕が最も面白いと思ったタイトルについて感想を述べたいと思う。

 僕は、決して流行に流されるようなゲーマーではないが、観客の反応を無視することもできない。今年のイベントの中で、最も歓喜の声が聞こえたのは、紛れもなくSCEAのカンファレンスだった。1番輝いたのはNaughty Dog開発の「The Last of Us」だったと思う

 ファーストパーティーだからこそ、PS3というハードの全てを知り尽くしているNaughty Dog。「アンチャーテッド」シリーズのノウハウを生かし、グラフィックスの水準を最大限高めたのではないだろうか。背景の解像度や水面などのスペシャルエフェクトもそうだし、キャラクターのアニメーションパターンも生身の人間と見間違えるほど豊かになっている。演出も強化され、カメラが回転する時のブレのエフェクトが、周囲のグラフィックスに絶妙な統一感を与えており、ゲームの世界への臨場感や没入感がこれまでになかったレベルまで達していると思う。

 弊誌でも細かく分析されたように、敵のAIが大きな進歩を遂げている。敵は主人公の動きを分析し、プレーヤーの弾が切れたら接近を試みるし、逆に主人公が弾丸を装填した直後には、別の部屋へ逃げたり、障害物の後ろに隠れたりするのだ。

 さらにびっくりしたのは、主人公が敵に襲いかかる際の接近戦の演出。襲いかかっていく時の主人公の動きを、どこまで操作できるのかは確認できていないが、カメラの動きがダイナミックだったし、アクション映画のワンシーンをプレイしているかのような感覚を受けた。嬉しいことに、それはいわゆるQTEではなく、シームレスに展開しているようだ。


過去の記事で何度も言ったように、シームレスにアクションを展開させるのは開発者にとって最も難しい挑戦だが、「The Last of Us」はその目標を見事に達成していると思う

 そしてもう1つ、来場者の心を鷲掴みにしたのは、「Heavy Rain」の開発チーム、仏Quantic Dreamの最新作、「BEYOND TWO SOULS.」だった。David Cage氏の独特な“ゲーム哲学”が凝縮された新感覚アクションアドベンチャーゲーム。ゴーストに取りつかれた少女の8年間の物語と心の成長を体験できるという。死の後に何が待ち受けているのかという謎が解き明かされる。ハリウッド映画の監督かのようなオーラを放っていたDavid Cage氏が、そう自信満々に会場の観光客に語った。

 世界観やストーリーの設定もユニークで非常に面白いし、アカデミー賞を受賞したEllen Pageさんが主人公を演じているという特徴も見どころだ。公開された動画からすると、彼女の優れた演技が、ポリゴンのキャラクターに命を吹き込んでいる。これこそが、映画とテレビゲームの境界線を無くす体験になるのではないだろうか。


「Heavy Rain」のファンとしてこの新作に最も期待しているのは、前作よりインタラクト性をさらに上げることだ。プレーヤーのアクションの1つひとつが物語の流れを変え、毎回違う展開が楽しめるようになるといい。QTEシーンが本作でも豊富に採用される予定だが、通常操作のアクションパートの割合が増えることを願っている

 「God of War: Ascension」も含めると、SCEAカンファレンスの目玉タイトルは全て、欧米のチームによって開発されているという事実が目立つ。正直に言って、日本が開発した新作も見たかった。そして、「The Last Guardian(邦題:人喰いの大鷲トリコ)」に関しても、追加情報を公開して欲しかった。初公開された時からもう5年が経過しているし、本当に楽しみにしているユーザーが数多くいると思うので、できるだけ早く「The Last Guardian」の情報を明らかにして欲しい。東京ゲームショーは絶好のチャンスかもしれない。


「The Last of Us」
(C)2012 Sony Computer Entertainment America LLC
「BEYOND TWO SOULS.」
(C)QuanticDream. All rights reserved

□SCEAのホームページ
http://us.playstation.com/
□SCEAのE3特集ページ
http://us.playstation.com/e3-2012/
□関連情報
【2012年6月8日】SCEA、「BEYOND TWO SOUL.」と「The Last of Us」の限定プレゼンテーションを開催
大型タイトル2つの世界観、ゲームシステムなどを解説
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120608_538557.html
【2012年6月5日】SCEA、「PlayStation E3 2012 Press Conference」を開催
「The Last of Us」、「God of Wars」最新作などを初お披露目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120605_537892.html





其ノ二:サプライズの少なかった任天堂カンファレンス

 任天堂のカンファレンスは、SCEAやMicrosoftよりもすごい内容のカンファレンスになるだろうと、最もネットで囁かれていた。僕も指定の時刻に任天堂のE3専用ページに接続し、リアルタイムに見ることができた。コアゲーマーも納得できるラインナップが公開されるのではないかと、欧米人が大いに期待していた。しかし、流れ的にも内容的にも最もサプライズの少なかったカンファレンスになったと、任天堂のファンとして思った。

 宮本氏が、ピクミン達とインタラクトするイントロ動画の演出は面白かったが、まさにそれが目玉タイトルではないだろう、という疑問がすぐ浮かんだ。「ピクミン3」の開発が順調に進んでいるというのは以前から知られているし、それよりも全く新しい作品(誰もが驚くような新シリーズ)でカンファレンスを始めて欲しかった。

 「ピクミン3」の次に「Batman: Arkham City Armored Edition」の新要素の多いWii U版が、目玉タイトルとして紹介された。Wii U GamePadのユニークさを活用するゲームになっているが、過去のゲームであるイメージは払拭できなかった。


最初のゲームラインナップのタイトルの解像度が、1,080ではなく、720になるようだ。E3で見られた「ピクミン3」も例外ではないようだ本作が発売される頃には、「Batman」の新作がライバルゲーム機で発表、あるいは発売される可能性もある。果たして、コアゲーマーはどちらを選ぶのだろうか?

操作方法は新鮮だが、アイテムを見つける度にWii U GamePadの画面に移動させなければならないので、その過程が作業的になる恐れもあると思う

 さらに目玉タイトルとして、サバイバルアクションゲームにおいて新風を巻き起こすだろう、Ubisoftの「ZombiU」が初公開された。テレビ画面とWii U GamePadを交互に使いながらの体験になっており、DSの操作感覚をそのまま、家庭用ゲーム機に実用させた印象だ。

 少し失礼な発言かもしれないが、本作の欠点は選ばれた表題だと思う。レーシングゲームを「Race」と名付けるのと同じようなものなのか。ホラー系のゲームはもっと謎めいた表題のほうが、ユーザーの注目を惹きつけると思う。そして、グラフィックスは現在のスタンダードよりもやや地味に見えた。ターゲットがカジュアルユーザーならば、そのままでいいのだが、コアユーザーは演出重視のもっと派手な作品を求めているのではないかと思う。

 Wii U体は、ゲーム性の面でほぼ無限大の可能性を実現させるような素晴らしいハードになっていると思うが、今回のカンファレンスでは、ゲーム機のターゲットがはっきりしていないというのが主な感想だ。

 公開されたタイトルからターゲットはWiiと同じく、カジュアルゲーマーになると思う。そうでなかったら、何故RPGが1つも公開されなかったのだろう。コアゲーマーをもっと大切にしていきたいという思いを視聴者に伝える為にはやはり、強力な新作を発表するべきだったと思う。


個人的には、ジャンル的にもゲーム性的にも本作は「ピクミン」のロボットバージョンだと思う

 さらに不思議に思ったのは、プラチナゲームズが開発したWii U用の新作「Project P-100」だ。本作を試した欧米人の評価は高いようだが、ライバルマシンですごい大人のアクションゲームを手掛けてきたプラチナゲームズが、何故Wii Uではピクミン系のキュートなアクションゲームを作らなければならないのだろう。

 採用するならば、やっぱり「Bayonetta」や「Max Anarchy」に匹敵するような、大人のアクションゲームを作って欲しかった。コアなアクションゲームはプラチナゲームズの得意分野だし、既に世界中で定評があるので、そのようなゲームをWii Uでも、できれば発売日から提供して欲しかった。それこそが、任天堂カンファレンスで来場者を驚かせるような目玉タイトルと言えるのではないだろうか。最高のサプライズを期待していただけに、カンファレンスにそのようなゲームが欠席したのは正直残念だった。

 SCEAのカンファレンスが証明したように、ジャーナリスト達は驚きたがっている生き物なのだ。画面では、本当にすごいものを見たい。これまでになかったゲームを見たいのだ。任天堂のカンファレンスでも常識を覆すような発表を期待していたと思う。マリオやゼルダをやめるべきとは決して思わないが、伝統と共に、全く新しいキャラクターやゲームシリーズをどんどん作って欲しい。そのような未来が、岩田社長が会議室で見せた額縁の漢字、「独創」に適しているのではないだろうか。


「ピクミン3」
(C)2012 Nintendo. Pikmin and Wii U are trademarks of Nintendo.
「Batman: Arkham City Armored Edition」
BATMAN: ARKHAM CITY software (C)2012 Warner Bros. Entertainment Inc. Developed by Rocksteady Studios Ltd. All other trademarks and copyrights are the property of their respective owners. All rights reserved.
BATMAN and all characters, their distinctive likenesses, and related elements are trademarks of DC Comics (C)2010. All Rights Reserved.
WB GAMES LOGO, WB SHIELD: & (C)Warner Bros. Entertainment Inc.(s12)
Nintendo trademarks and copyrights are properties of Nintendo.
「ZombiU」
(C)2012 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. ZombiU Logo, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries. Nintendo trademarks and copyrights are properties of Nintendo.
「Project P-100」
(C)2012 Nintendo/Platinum Games Inc. Wii U is a trademark of Nintendo. (C)2012 Nintendo.

□Nintendo of Americaのページ(英語)
http://www.nintendo.com/
□Nintendo of AmericaのE3特集ページ(英語)
http://e3.nintendo.com/
□関連情報
【2012年6月8日】Nintendo of Americaブースレポート その2
Wii Uの魅力を伝えるファーストパーティタイトルが勢ぞろい
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120608_538875.html
【2012年6月6日】「Nintendo All-Access Presentation @ E3 2012」レポート
「マリオ」や「Wii Fit」など任天堂自社タイトルの新作を次々と発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120606_538254.html
【2012年6月6日】「Nintendo All-Access Presentation @ E3 2012」レポート
サードパーティからは怒濤なタイトル発表ラッシュ
「Batman: Arkham City Armored Edition」や「Zombi U」を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120606_538138.html
【2012年6月6日】「Nintendo All-Access Presentation @ E3 2012」レポート
宮本茂氏が語るWii Uの“テレビからの自立”と「ピクミン3」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120606_538050.html





其ノ三:日本のメーカーから世界のメーカーへと転身したスクウェア・エニックス

 スクウェア・エニックスは、今年のE3の主人公の1人になったと思う。RPGというジャンルに専念するゲームメーカーというよりも、世界的に大ヒットするアクションゲームメーカーとして定着してきている。単刀直入に言うと、スクウェア・エニックスという存在がなかったら「TOMB RAIDER」シリーズが生まれ変わることはなかったと確信している。

 僕も今年の「TOMB RAIDER」を見て、早く遊びたいという気持ちになった。もちろん開発チーム、Crystal Dynamicsのおかげだし、開発を監修したスクウェア・エニックスのおかげでもある。

 今回のララは、これまでのララを無表情のマリオネットと思わせるほど、人間らしく、かつ、感情豊かになったし、グラフィックスや演出も「アンチャーテッド」シリーズを上回るほどすごいものになっていると思う。やはり、日本人と欧米人が協力すれば、どんなに衰えた主人公でも、スーパーヒーローに戻れると思う。

 最近は、日本のメーカーが海外のチームに日本のゲームシリーズの開発を委託するケースが増えてきているが、それよりも、アメリカで生まれたシリーズを日本のメーカーが監修すれば、結果が圧倒的に良くなると思う。「Deus Ex: Human Revolution」が証明したように、「TOMB RAIDER」も、欧米だけでなく、日本でも大活躍するタイトルになり得るのではないだろうか。

 さらに、今年のスクウェア・エニックスは技術的な分野でも欧米ジャーナリスト達を驚かせた。次世代ゲームエンジン「Luminous Studio」による技術デモ「AGNI'S PHILOSOPHY」が初公開されたのだ。その映像が、次世代機でどこまで実現できるのかという疑問は残っているが、それが100%に近い割合で実現することを願いたい。


「アンチャーテッド」っぽいという指摘もあったらしいが、元々「アンチャーテッド」が「Tomb Raider」からインスピレーションを受けたのではないだろうか。全ての源は「Indiana Jones」だが……キャラクターデザインが、特に老人の顔が洋ゲーっぽくなったと思う。感情表現も強烈で、西洋人をモデルにしたことを窺える。そのほうが、欧米人は親近感を覚えるだろう

 昨今の期待はずれ作品を忘れさせ、「ファイナルファンタジー」というブランドを元の価値に戻すには、長い時間が必要だということは確かだ。今から3年経っても構わない。大事なのは、今回見た映像と同等のクオリティを持つゲームになるよう研究を進めて欲しい。その間に、スクウェア・エニックスは、RPGよりも効率的ともいえる、「TOMB RAIDER」や「Hitman」などのフランチャイズのさらなる発展に集中するべきだと思う。


「TOMB RAIDER」
Tomb Raider(C)Square Enix Ltd. Square Enix and the Square Enix logo are registered trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd. Lara Croft, Tomb Raider, Crystal Dynamics, the Crystal Dynamics logo, Eidos, and the Eidos logo are trademarks of Square Enix Ltd. "Playstation" and the "PS" family logo are registered trademarks and "PS3" is a trademark of Sony Computer Entertainment Inc. The Playstation Network logo is a service mark of Sony Computer Entertainment Inc. Microsoft, Xbox, Xbox 360, Xbox LIVE, and the Xbox logos are trademarks of The Microsoft Group of companies and are used under license from Microsoft. The rating icon is a registered trademark of the Entertainment Software Association. All other trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.
※画面は開発中のものです
「AGNI'S PHILOSOPHY」
(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□関連情報
【2012年6月11日】「TOMB RAIDER」、プレビュー&インタビュー
島の隅々まで回れる探索や、成長要素が明らかに
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120611_539369.html
【2012年6月9日】西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィックス講座・E3特別編その5
もう「アンチャーテッド」には負けられない! リッチな破壊と厚みのあるビジュアルを獲得した新生「TOMB RAIDER」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/series/3dcg/20120609_539157.html
【2012年6月6日】スクエニ、次世代ゲームエンジン「Luminous Studio」によるデモを実施
ゲームの未来に明るい光をもたらす3分の映像「AGNI'S PHILOSOPHY」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120606_538209.html





其ノ四:ほかのメーカーの目玉作品について一言

アクション・シューティング要素を濃くしたほうが、ゲームが世界的に売れる。カプコンは現在の流行に従っているだけだと思う

 最後に他のメーカーの目玉タイトルについて、一言ずつ感想を述べたいと思う。

 まず、カプコンの「Resident Evil 6」についてだ。残念ながら、初公開の時に抱いた印象は全く変わっていない。従来のサバイバルホラーのアイデンティティから大きく離れている新作だと思う。

 ゲームとしてのクオリティーはもちろん高いが、ジャンルがアクション・シューティングへと変わってきているのは、過去の作品のファンとして受け入れがたい事実だ。迫ってきているゾンビの群れを爆弾1つで処分するというシーンを見て、恐怖より、人間がゾンビに対して圧倒的に優位という安心感を持った。

 後ろの車が爆発に巻き込まれ、吹っ飛んでいく中で主人公がカメラに向かって逃げてくるシーンも、他のゲームで見たような気がして、新鮮さがあまり味わえなかった。ヘリコプターを操縦するシーンなどではQTEのような操作が入っていることも確認できた。演出重視の派手な体験になるだろうが、ゲームとしての「Resident Evil」よりも、ハリウッド映画の「Resident Evil」をゲームにした作品のように見えた。


全ての面において磨きがかかった「Halo 4」が、日本でも過去よりも多くのユーザーを獲得することに成功し、さらに普及すると予想している

 “Wii Uごっこ”のテーマはさておき、Microsoftは、新感覚の「Halo 4」で注目を浴びた。はっきり言って、僕は今まで「Halo」シリーズのファンではなかったが、この続編を見て、これまでの作品と違う何かが加わったように感じた。ストーリー要素が濃くなったようにも見えたし、オープンワールドでの探索や冒険という要素にもさらに力が入っているようだ

 キャラクターデザインも洗練されていると思った。日本人がキャラクターデザインを手掛けたのかと思わせるほど、キャラクターモデルはよくデザインされていると思う。モンスターデザインもこれまでの作品よりずっと綺麗になったのではないだろうか。さらに雰囲気的には、従来の「Halo」よりも、「Metroid Fusion」的なオーラが醸し出されているとも感じた。


欧米のサイトのコメントによると、「The Last of Us」と同等の人気を集めたのは「Watch Dogs」だった。「GTA」のオープンワールド系のアクションゲームを「Deus Ex」のような世界観と合体させたという印象だ

 「Assassin's Creed」や「Splinter Cell」などの有名なフランチャイズで世界のゲーム業界をリードしてきたUbisoftは、大ヒットする可能性の高い新作も初公開した。それは、「Watch Dogs」だ。例えると、「GTA」のゲーム性にSF要素を追加させた作品になっている。

 主人公は手元のスマートフォンであらゆる機械にハッキングでき、周囲の機械に様々な影響を与えることができる。ゲームコンセプトが新鮮であることはいうまでもないが、それよりもすごいと思ったのはグラフィックスのほうだ。こんなにリアルな街をロードなしで実現させるのには、優れた技術が必要になる。そして、こう願った。「龍が如く」シリーズの新作も、いつか、こういうリアルな街の中で展開させて欲しい。


メインシリーズのフィーリングを保ちながらプラチナゲームズならではの爽快感が加わった本作。もしかして、メインシリーズも凌駕するのでは?

 KONAMIも、ファンの期待を裏切らなかったと思う。前作が大ヒットした続編「Castlevania Lords of Shadow 2」も、高い技術で知られるプラチナゲームズ開発による「Metal Gear Rising: Revengeance」も、欧米人ジャーナリストの間で注目を集めた。特に後者が、画面内のほぼ全てを刀で破壊できるという自由度の高さや優れたゲーム性が好評を受けている。

 しかし、1つだけ素朴な疑問がある。過去に数々の絶品アクションゲームを作ってきたKONAMIが、何故、社内の開発チームを使用せず、他社に開発を任せるケースが増えてきているのだろう。大事なのはもちろん結果だが、将来的にはもっと自社開発による続編の制作を願っている。小島秀夫氏が以前から新しいゲームエンジンの開発に携わっているだろうし、なるべく早く、その成果を見てみたい。それは果たして、9月の東京ゲームショーで見られるのだろうか?


「Resident Evil 6」
(C) CAPCOM Co., Ltd. All rights reserved.
「Halo 4」
(C) 2012 Microsoft
「Metal Gear Rising: Revengeance」
(C)Konami Digital Entertainment 2012

□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□関連情報
【2012年6月10日】Microsoftブースレポート 次の10年に向けて助走を開始した「Halo 4」プレビュー
Cliff Bから「Gears of War Judgment」の魅力も聞いてきた!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120610_539211.html
【2012年6月10日】カプコン、「バイオハザード 6」カンファレンスレポート
物語、ゲームプレイまでもが交差する“クロスオーバー”システム
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120610_539156.html
【2012年6月09日】KONAMIブースレポート
「METAL GEAR RISING: REVENGEANCE」がプレイアブルで初公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120609_539146.html
【2012年6月5日】「Ubisoft E3 2012 Media Briefing」開催
Wii U専用ソフトや「Assassin's Creed 3」、完全新作「Watch Dogs」などを発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120605_537849.html





■ 傑作の如く ~期待している新作TOP5~

僕が期待している発売前後の新作TOP5。さまざまな情報をもとに、各ゲームのシステムやグラフィックスといった要素の中で僕が魅力的に感じたところを紹介していく。必ずしもメジャーなタイトルではなくて、逆に注目して欲しいマイナーな作品をピックアップすることもある。

(C)LEVEL-5 Inc.

1位:タイムトラベラーズ
   プラットフォーム:PSP/PS Vita/3DS
   ジャンル:タイムトラベルアドベンチャー
   発売元:レベルファイブ
   発売日:7月12日
   価格:5,980円(PSP/PS Vita/3DS パッケージ版)
      4,980円(PSP/PS Vita ダウンロード版)
   CEROレーティング:C

 サウンドノベルのスペシャリストともいうべきイシイジロウ氏の最新作が、いよいよ発売される。ゲームの舞台は2,000メートルの高さを誇る巨大エレベーターがそびえ立つ2031年の東京。「428」のように、複数の主人公(この場合5人)の物語をお互い干渉させながら進めていく。専門用語の解説が閲覧できるTIPSという便利な機能も付いている。豪華声優陣を使ったドラマも見どころだ。

□レベルファイブのホームページ
http://www.level5.co.jp/
□関連情報
【2012年5月8日】レベルファイブ、「タイムトラベラーズ」
発売日を7月12日に決定!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120508_531204.html





(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.

2位:スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園
   プラットフォーム:PSP
   ジャンル:ハイスピード推理アクション
   発売元:スパイク・チュンソフト
   発売日:7月26日
   価格:6,279円(UMD版)
      9,429円(限定版)
      5,200円(DL版)
   CEROレーティング:C
   プレイ人数:1人

 「逆転裁判」を連想させるゲーム性に、ホラーやアクション要素を加えたスパイクのあの話題作に念願の続編が発売! 今回、私立希望ヶ峰学園の一流生徒達が、孤島のリゾート地で殺し合いを強いられることに。不気味さを漂わせながらキュートさも併せ持つ敵役のモノクマが、本作のユニークさを際立たせる。さらに今回、パートナー役として、女性マスコットのモノミが初出演!

□スパイク・チュンソフトのホームページ
http://www.spike-chunsoft.co.jp/
□関連情報
【2012年6月12日】スパイク・チュンソフト、PSP「スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園」
登場する超高校級の生徒達を一気に紹介!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120612_539529.html





(C) SEGA

3位:MAX ANARCHY
   プラットフォーム:PS3/Xbox 360
   ジャンル:乱戦格闘アクション
   発売元:セガ
   発売日:7月5日
   価格:各7,980円
   CEROレーティング:D
   プレイ人数:1人(オンライン対戦時:2~16人)

 アクションゲームの歴史が塗り替えられようとしている。シングルプレイでもストーリーモードのおかげで十分に楽しめるが、オンライン上で最大16人のプレーヤーと繰り広げる乱戦が醍醐味なのだ。さらに、面白いと思うのは、戦場の状況がランダムに変わっていくという要素だ。巨大な掘削機が現われたり、広範囲な爆撃が起きるなどハプニングに冷静を保ちながらどう対応していくのかがカギとなる。

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□関連情報
【2012年5月31日】セガ、PS3/Xbox 360「MAX ANARCHY」
謎を秘めた逃亡犯「マックス」を紹介
ネットワーク対戦が可能な体験版情報も!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120531_536754.html





(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.

4位:重鉄騎
   プラットフォーム:Xbox 360
   ジャンル:ドラマティック戦場体験ソフト
   発売元:カプコン
   発売日:6月21日
   価格:7,990円(通常版)
      35,000円(LIMITED EDITION)
      8,990円(サントラセット)
   CEROレーティング:Z
   プレイ人数:1人(オンライン対戦時:1~4人)

 カルトゲームとして絶賛された「鉄騎」の続編が登場!今回、Xbox 360のKinect専用タイトルとして作られた。前作の大きなコントローラーを必要とせず、手の動きで画面に表示されたレバーやボタンとインタラクトする操作方法へと進歩した。どのタイトルよりも戦場にいる感覚を楽しめるし、機内にいる仲間とのドラマを共有できる点も大きな魅力だ。

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□関連情報
【2012年6月12日】カプコン、Xbox 360 Kinect「重鉄騎」をプレイできるチャンス
「Xbox 360 感謝祭 in AKIBA」に出展。押井守氏のステージも
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120612_539612.html





(C)2012 Nintendo / コーエーテクモゲームス

5位:零 ~眞紅の蝶~
   プラットフォーム:Wii
   ジャンル:和風ホラーアドベンチャー
   発売元:任天堂
   発売日:6月28日
   価格:6,800円
   CEROレーティング:C
   プレイ人数:1~2人

 和風ホラーアドベンチャーの金字塔が帰ってきた!今回、懐中電灯や射影機をWiiリモコンに見立てることによって、操作が快適になった。そして歩く時はカメラが肩越しの視点になり、臨場感や緊張感がさらにアップ!新たに追加された複数の結末や2人で挑戦できる「お化け屋敷」というプレーヤーの恐怖度が判定される新モードも付加価値だ。

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□関連情報
【2012年5月18日】任天堂、Wii「零 ~眞紅の蝶~」
「零 ~紅い蝶~」がWiiならではのアレンジで新生!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120518_533816.html





■ 過去の宝物 ~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~

ゲームは技術的に進化する。グラフィックスが綺麗になる。ポリゴンの数が増える。ゲーム内の景色が実写と見間違えるほどリアルなものになってきている。しかし、時代が変わっても必ずしも進化しないものもある。それはゲームの面白さだ。昔のゲームはグラフィックスはシンプルだが、面白さでは今のゲームに負けていない。いや、それに勝る特別な何かを持っている作品もあると思う。秋葉原のゲームショップや家庭用ゲーム機のオンラインストアで安く購入できる過去の傑作は山ほどある。このコーナーでは、僕が愛した昔のゲームをピックアップしていきたいと思う。具体的なゲーム内容よりも、僕のその作品に対しての気持ちを伝えることができればと願っている。

【ゴースト トリック】

プラットフォーム:DS
ジャンル:ミステリー
発売元:カプコン
発売年:2010年
価格:5,040円
CEROレーティング:B
プレイ人数:1人


 2年ぶりに「ゴースト トリック」を本棚から取り出して遊んでみた。カードを差し込んだ瞬間、過去の大切な記憶が浮かび上がった。カプコンが、2005年にローマのコロッセオに面した会場でPS2用の「Shadow of Rome」の体験会を設けた時の話だ。

 僕は、イタリアのゲーム雑誌に所属する日本のゲームに特化したジャーナリストとして参加していた。僕はその頃、いつも持ち歩いていたGBAのスロットに「逆転裁判」のカートリッジを差し込んでいた。バスや電車などあらゆる場所で、当時まだそれほど有名ではなかった巧舟氏の傑作アドベンチャーゲームを遊んでいた。体験会の休憩時間にカプコンのスタッフに僕の好みについて話す機会にめぐまれた。

「大江戸戦士トノサマンは最高に面白い!」
「えっ? イタリア人にも、そういうの、ウケるんですか?」
「『逆転裁判』はどの国でも成功すると思いますよ」

 自慢話。僕はおそらく、初めての「逆転裁判」イタリア人プレーヤーだったのではないだろうか。日本のアドベンチャーゲームが大好きな僕は、「逆転裁判」の存在を日本のゲーム雑誌で知った時、早速ゲームショップに注文して購入した。あっという間に、そのユニークな世界観に没頭した。巧舟氏の考えるキャラクターやシチュエーションはどれだけ面白いのだろうと、強く感じた。

 ついに「逆転裁判」は欧米でも発売された。そして、スピンオフの制作が決定するほどの大ヒットシリーズへと成長した。巧舟氏の作品が、欧米ユーザーにも知られ、最高のアドベンチャーゲームとして認められた。

 しかし、シリーズが進むにつれ、当時の魅力、新鮮さ、驚きが少しずつ減っていったというのも確かだ。それは、同じ発想が繰り返されることによる必然的な衰えだと思う。その時、「逆転裁判」に匹敵するほど全く新しい作品に挑戦して欲しいと願った。すると、ゲームの神様に僕の祈りが届いたかのように、その願いは現実になった。巧舟氏が念願の完全新作、「ゴースト トリック」を公開したのだ。初めて見た時から、これは最高のアドベンチャーゲームになるだろうと直感した。

 まず発想が面白い。主人公のシセルは、1ミリも動かない死体だ。シセルは自分の死の謎を解く為に、そして死という運命に向かおうとしているリンネという女性を助ける為に、自分のゴーストとしての魂をあらゆるものに取りつかせ、操作することで、周囲の環境や人物に影響を与え、死の運命を阻止していく。死が訪れる4分前をいくらでもプレイできるようになっており、初めは何をすればいいか戸惑うかもしれないが、少しずつ正解がわかり、解決策をひらめく瞬間の喜びや達成感は格別だ。

最初のチャプターは、本作の独特なゲーム性と操作方法をプレーヤーに教える為のチュートリアル的な役割を担っている。最終的にはリンネの何回もの死を防がなければならない

 よく考えると、「ゴースト トリック」は正真正銘のアドベンチャーゲームだ。典型的なアドベンチャーと違うのは、インターフェイスだけだ。目に見える主人公を画面内で動かし、アイテムを調べたり、レバーを引いたりするのはスタンダードな構成だが、本作では、あらゆるギミックとインタラクトする為に、シセルのゴーストを物から物へと飛び移らせ、自転車、スイッチ、ノート、扉などのあらゆる物にとりつき、操ることができるようになっている。正解までの道のりを見つけることがどれだけ刺激的な過程なのか、毎回驚かされる。

主人公のシセルが使用できるコマンドはトリックとアヤツルの2つだ。トリックで物にとりつき、そしてアヤツルで何らかの動きを起こす為に操作するのだ上画面にはとりついた物の詳細が表示される。操れば、どんなアクションを起こすのかも書かれている。タイヤの場合は、もちろん、アクションは「転がる」だトリックボタンを押すと、時間が止まり、飛び移れるアイテムが水色で表示される。自転車を利用すれば、解決に大事な物に近づけるかもしれない

他のチャプターでは可愛らしいキャラクターが登場する。小犬・ミサイルの反応を何度見ても楽しい!
単なる画像ではキャラクター達のアニメーションの良さを伝えられないので、ぜひ本作を購入し自分の目で確かめて欲しい!

 全てのアイテムがストーリー進行に必要なわけではない。とはいえプレーヤーは、自然に画面内のあらゆるアイテムが引き起こす結果を見たくなると思う。あのスイッチを押すとどうなるのか?あのカーテンを下げると……? あらゆるものに興味が湧き、部屋中のアイテムが引き起こす動きで周囲のキャラクター達がどう反応するのを確認したくなる。人の反応を楽しむ。それも、本作の大きな魅力の1つだ。個人的には、その特徴は弊誌でも過去に掲載した思い出の作品、PS2用の「リモココロン」と共通していると思う。

 「ゴースト トリック」のすごさを伝える為に、アニメーションの話もしなければならない。キャラクター達は高性能なパソコンで作られ、そのアニメーションは見たことのないようなリアルさとなめらかさを誇っている。そのアニメーションは単なる“見た目要素”ではなく、ゲーム性に密接に結びついているというのが驚きだ。シセルの魂をコントロールするプレーヤーが画面内のキャラクター達の一瞬ごとの動きを観察して、適切なタイミングでとりついているものを操っていかなければならないので、キャラクターのアニメーションがなめらかでなかったら、この独特なゲーム性が実現できなかったということだ。

 さらに、豊かなアニメーションが、キャラクター達に個性を付けている。メインキャストだけでなく、サブキャラのアニメーションをパッと見るだけで、そのキャラクターの性格が理解できるのだ。「逆転裁判」シリーズで見られた巧舟氏ならではのコミカルなサブキャラが、本作でも多く登場しており、漫才にもよく似たやりとりを見るのが、なんて楽しいのだろう。

 他に面白いと思ったアイディアは、場所と場所を移動する方法だ。ゴーストのシセルが、別の場所へと移動する為に、電話線を利用しなければならないのだ。しかし、電話線が機能していない、あるいは、利用が限られている場面もあるので、移動するタイミングを見極めなければならない。いつも最高の緊張感を味わいながらアドベンチャーを進めていくことになる。

 些細な特徴かもしれないが、会話中の効果音が使われる演出や画面がフラッシュする演出も「逆転裁判」に似ており、全体的にゲームの構造が違っても、どこか「逆転裁判」的な雰囲気が漂っており、それがプレーヤーに気持ちいい安心感をもたらす。

 残念ながら、「ゴースト トリック」は「逆転裁判」のように世界的に定着しなかったようだ。ゲーム性が斬新“すぎた”せいかもしれない。しかし、本当の傑作は時間が経ってから、傑作として認められる。発売から約2年が経過した今、僕は確実にこう発言できる。「ゴースト トリック」は傑作だ。続編を作って欲しいぐらい傑作だ。


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□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「ゴースト トリック」のページ
http://www.capcom.co.jp/ghosttrick/





■ イタヲタのレトロなゲームライフ ~ハプニング満載のオタク人生~

僕のゲーマーとしての人生を懐かしさたっぷりで語っていきたい。毎回、特定の時代をセレクトして、自分の記憶への冒険をしたいと思う。最終的には1つのストーリーになる。僕というオタクのストーリー。僕という和ゲー好きゲーマーのストーリー。文章だけでなく、クライマックスのシーンをもっとダイレクトに伝える為に漫画も使うことにした。ちなみに漫画は、今イタリアで注目の若手漫画家に描いてもらった。とにかく、日本ではありえないシチュエーションについてたっぷり語っていくので、本当に面白いコーナーになると思うぞ!

今回の時代設定:1989年
イベント:念願の「北斗の拳」がメガドライブで発売!
ハプニング:主人公の名前も違うしカラーも全然違う!?

 高校時代。宿題のリストを記入する為のノートが、メガドライブのキャラクター達で埋め尽くされていた。誰よりも早く、メガドライブが僕の家に舞い降りたという情報が学校内に広まりつつあった。

 「僕にも見せてよ」という“依頼”が殺到。見たことのない隣のクラスの学生から声をかけられることもあった。知らないうちに、人気者になっていた。女性は相変わらず、見向きもしないままだったが……。

 親戚がアメリカで僕の為に買ってきたアメリカのメガドライブ「Genesis」。最初の頃は、カラーシステムの違いでカラーが出ず、白黒で我慢するはめになったが、幸いなことに家の近くの電気屋さんが手作りケーブルを用意してくれた。あれから、ゲームセンターのグラフィックスを再現する、奇跡の家庭用ゲーム機を見たいという依頼が多くなっていった。僕の秘密基地が、四六時中、満員電車状態になっていたと言っても過言ではない。

 エマちゃんとはまだ会っていなかった時代だった。幼馴染のクリスティアーノと一緒にメガドライブで遊んでいた。最愛の趣味はテレビゲームだったが、日本のアニメも大好きだった。特に、イタリアで絶大な人気を誇っていたアニメがあった。それは、言うまでもなく「北斗の拳」だった。

 1980年代の終わりにイタリアのテレビで初めて放送された時に、爆発的なヒットを記録した。頭が爆発するというバイオレンスシーンの多さに両親が怒り、テレビ局への訴えの電話が増える一方だった。

 しかし、ストーリーとキャラクターが魅力的で、バイオレンス要素が濃くても、正義感に溢れていた作品でもあった。あっという間に、「北斗の拳」が学校で話題になり、授業の合間にケンシロウのモノマネをする学生も多くなった。僕も、もちろんその1人だった。

 親戚にGenesisを買ってもらったのは、実はある“目標”があったからだ。「北斗の拳」が大好きな僕は、誰よりも早く、メガドライブ用に作られた「北斗の拳」のアクションゲームで遊びたかったのだ。

 日本版ゲームの最新作を扱っていたイタリアのゲーム雑誌でその存在を知り、どうしても遊びたくなった。実は、日本版のメガドライブを買って欲しかったが頼める人がいなかったので、アメリカへ行く予定だった親戚にお願いすることにした。ゲーム機の名称が違っていたのは許せなかったが……。

 そして、ずっと待ち望んでいた日が来た。アメリカ版の「北斗の拳」が家に届けられた。しかしゲームの箱には、僕が想像していたイメージとは全然違うイラストが使用されていた。ゲームのタイトルも「Last Battle」に変わっていた。

 僕の大好きなケンシロウが、アメリカンコミックスのキャラクターに豹変していた。なんて複雑な気持ちだろう。アニメシリーズを愛していた僕にはあまりにも受け入れがたい現実だった。何で僕の夢を壊すんだろうと思いつつ、箱を開けてカートリッジを取り出し、Genesisのスロットに差し込んだ。隣にいるクリスティアーノも何ともいえない違和感を感じているようだ。

 ゲームをスタートしてみると、ゲーム雑誌で見た画像と確かに同じ内容だったが、主人公の名前も変わっているし、カラーも微妙に違う。そして、アニメの特徴だった暴力表現、真っ赤な血が飛び散る描写はカットされていた。

 クリスティアーノも怒っているようだ。ゲームのルールや流れはそのままだが、雰囲気が微妙に違うのだ。このゲームは白黒で遊んだほうがいいのではないかと、思ったぐらいだった。よくわからない理由でアメリカ人が、オリジナル版のキャラクターの名前やカラーを変えていた。

「面白いけど、なんか『北斗の拳』じゃないような気もするけど……」

 クリスティアーノが、大きなため息を漏らした。納得できない証拠だろう。これで、クラスメイトには自慢できないだろう。できるだけ早く、あの雑誌で見た日本版が遊びたいと強く願ったのだった……。

 あれから2週間が経過した。「Last Battle」をほぼクリアしていた。しかし、クリスティアーノが、行方不明になっていた。毎日のように一緒に遊んでいたゲーム友達が、理由もわからずに消えていた。あいつ大丈夫なのかと、疑い始めた頃、家の電話が鳴りだした。

「もしもし?」
「僕だよ」
「僕って……もしかして、クリスティアーノ?」
「そうだよ」
「しばらく遊びに来ていなかったから、ちょっと心配していたけど、大丈夫?」
「めちゃくちゃ大丈夫だよ」
「えっ?何かいいことあったの?」

 その瞬間、受話器の向こうにテレビの音が大きくなっていくのを確認した。クリスティアーノが、ボリュームを上げているようだ。しかし、この音楽は、どこかで聞いたような気がする。ちょっと待って!「Last Battle」!?

「『Last Battle』を買ったの?」
「さあ……家に来てみたら?」

 謎めいたセリフを吐き出した後、クリスティアーノは電話をきった。

「何それ!? まさか……。」

 そのセリフを何度も頭の中で繰り返しつつ、僕はクリスティアーノの家に向かって走り出した。

 ピンポーン。ドアベルを鳴らす。しかし、よく見るとドアは既に開いていた。まさか泥棒が……!? クリスティアーノの家に入る。おそるおそる1歩ずつ進んでいく。奥にあるクリスティアーノの部屋に向かって。近づくにつれ、あの音楽の音量が大きくなっていく。そうだ。「Last Battle」だ。というと、クリスティアーノもGenesisを買ったのか?



「チャオ!」

 クリスティアーノが、テレビの前に座っている。その手にGenesisのコントローラーが握られていた。そして、テレビの画面にはアメリカの“偽ケンシロウ”が映っていた。いや、違う。これは……。本物のケンシロウではないか!まさか……!?

「そのまさかだよ。日本版のメガドライブの幸せな所有者になった」

 むかつく。

「ほら、これこそが、ケンシロウだろう」

 そう。画面に映っていたのは、本物のケンシロウだった。カラーはアニメシリーズと全く同じものだった。ゲーム機も、Genesisではなく日本版のメガドライブだった。

「ミラノのあのゲームショップに注文した。そして、今朝届いたばかりだ」

人生で初めて、羨ましいという気持ちを知った瞬間だった。

「セリフは日本語になっていて、意味がわからないんだけどね……」

 クリスティアーノのそばに座った。そして、時間が経過するのを忘れ一緒に遊びまくった。僕達の大好きな「北斗の拳」。世界の子供達を魅了させた「北斗の拳」。その子供達の両親を怒らせた「北斗の拳」。どんな主人公よりもカッコよく、魅力的なケンシロウ。

 明日、僕も、ミラノのあのゲームショップに日本版のゲームを注文しよう。そうすれば、クラスメイトに自慢できる。貯金箱を割る絶好のきっかけだった……。


【番外編】

 結局ずっとコンプレックスに思っていたGenesisを売って、そのお金で日本版のメガドライブを買った。今も、秘密基地のタンスの中に大切にしまっている。「Last Battle」も売り、日本版の「北斗の拳」を買った。今、遊んでみると、アクションがやや単調な普通のゲームだが、当時の僕達にとってはどんな宝物よりも貴重なものだった。アニメで見たキャラクターやシーン、をゲームで体験するというのは素晴らしいものだったのだ。現在も、「北斗の拳」をベースにした最高のアクションゲームが誕生するのを楽しみにしている。





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(2012年6月15日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]