【第3幕】
Reported by:ジョン・カミナリ
logo design / manga:フランチェスコ・アッカッターティス

 電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 この連載記事では、毎月1回、僕のゲーマーとしての物語、そしてゲーマーとしての哲学や信念を独特なスタイルで紹介していきたいと思う。日本のゲームに大きく影響を受けた僕のゲーマー人生を、イタリア人としての個性を生かして面白く語りたいと思う。あるときは、話題沸騰中のニュースについて掲載ギリギリのところまで正直な感想を書いたり、またあるときは、今でも心に大切にしまっている過去の作品を振り返ってみたいと思う。

 1番注目して欲しいのは、「イタヲタのレトロなゲームライフ」というコーナー。僕のオタクとしての青春を文章と漫画を交えて懐かしく振り返りたいと思う。連載の途中で新しいコーナーも生まれるのかもしれない。回を追う毎に中身が変わったり増えたりするのかもしれない。とにかく、サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:35歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること



【もくじ】
一刀両断~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~
傑作の如く~期待している新作TOP5~
過去の宝物~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~
イタヲタのレトロなゲームライフ~ハプニング満載のオタク人生~


 

■ 一刀両断 ~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~

 話題のニュースや注目のテーマをピックアップして僕の率直なコメントを載せたいと思う。また、現在のゲームが抱えている問題を解決するアイデアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。ゲーマーの皆が納得できる未来の為に!

・今回のテーマは……
プレーヤー納得度99%のRPG「ゼノブレイド」

 モノリスソフトの新作RPG「ゼノブレイド」をほとんどクリアした。平均プレイは60時間。しかし、本作では平均プレイというパラメーターが、無意味だとも言える。なぜなら、ユーザーのプレイスタイルによってはその倍(以上)になることもあるからだ。

会話シーンでのキャラクターモデルの解像度が比較的低い。その分、ロードの短縮とグラフィックスのスムーズさが得られた。開発者たちはプレイの快適さを優先させた。これこそが正解だと思うユーザーが多いのではないだろうか

 発見が絶えない広大なフィールドと、膨大な数のクエスト、アイテムコレクションなどのやり込み要素の多さ。ファーストインプレッション記事でも伝えたように、「ゼノブレイド」はRPGというジャンルの“良いとこ取り”なのだ。近年発売された名作を入念に分析した結果、生まれた完璧なRPG。

 完璧。大げさに聞こえるかもしれないが、僕は本当にそう思っている。日本のサイトを調べてみると、僕だけの意見ではないということもわかった。僕がいつも参考にしているユーザーレビューによると、「ゼノブレイド」の評価は上々だ。

 「久しぶりの傑作」、「ずっと待っていたJRPG」、「遊ぶために早く家に帰りたくなるRPG」などなど。ユーザーからのコメントは、非常にポジティブであることがわかった。どんなにマーケットが決まったタイトルをプッシュしたいと言っても、やはり最終的な判断を下すのはユーザーではないだろうか。

 発売直前に多く見られたテレビCMは、今はほとんど流れていない。ユーザーがユーザーへと、ゲームの良さを伝えていく。僕も遊び尽くした結果、友達に「ゼノブレイド」を薦めずにはいられなかった。すごいゲームで遊ぶと、やはり皆に薦めたくなるのが自然だろう。そして、友達もプレイして納得したら、さらなる友達に紹介していく。このチェーンが続くと、ゲームは“カルト”になって発売後もずっと売れ続ける。

 口コミパワーは日本の国境も超えた。海外でも「ゼノブレイド」の評判は既に高い。インポート版をプレイしたフランス人やイタリア人によると、これもまた「『ゼノギアス』の時から待っていた傑作」という感想が主流だ。日本語が読めない人のコメントも含まれているが、ストーリーがわからなくても、本作の広大なフィールドと高い自由度に圧倒されたと言う。

 そして、音楽のほうも大好評を集めている。ワールドマップのBGMが特にすごいと。ワールド探索パートを盛り上げるような、素晴らしいテーマばかりだ。バトルテーマもカッコいいから、バトルを繰り返すのが楽しみだという意見もあった。同じ敵との戦闘が単調になることもあるので、素敵な曲があると、その問題も1発で解消だ!

 もちろん「ゼノブレイド」がヨーロッパで注目されているのは、絶大な支持を集めている高橋哲哉氏の最新作だからだ。「ゼノギアス」の時から高橋氏は、屈指のRPGクリエーターとして“崇められている”。だからこそ、キャラクターやストーリーが違っても、「ゼノギアス」の雰囲気とフィロソフィーが凝縮された「ゼノブレイド」には脱帽せずにはいられなかった。

 本当に久しぶりの、あの独特な気持ちを再び味わえたと、海外のプレーヤーたちは絶賛している。ゲームの流れはMMORPGっぽくなったが、高橋哲哉氏のトレードマークのアダルトなストーリーは健在。会話シーンはコンパクトになったが、その分冒険のテンポがよくなったから、それも“良い進化”として捉えられた。

 ゲームがジ・エンドに近付き、最後に断言できることがある。もしWiiの次世代機で続編を作るとしたら、やはりグラフィックス面を強化して欲しい。特にキャラクターたちの粗いモデルが、入り組んだフィールドのグラフィックスに明らかに負けてしまう。深いことを言っているのに表情が殆んどワンパターンというのも、気になったところ。奥深い話だけに、お芝居も一流でないと説得力が失われてしまう。

 “ワープ機能”も広大なフィールドを移動するのに便利だと思ったが、やはり乗り物も追加して欲しかった。特に海での進行速度が遅い為、それを面倒くさいと感じたユーザーも少なくないだろう。海上を速く進むボートなどもあると良かったのかもしれない。

 陸上に関しても同じことが言える。ロボットなどの乗り物に搭乗したままの戦闘も、バトルパートにさらなる豊かさをもたらしていたと思う。その場合はもちろん、ロボットに個性を付ける為の装備&強化パートも必要だと思う。

 最後のお願いは、現行機での実現はまだ不可能かもしれない。ゲームの終盤では、巨神界の上空を飛ぶ飛行船のような乗り物に乗ってみたかった。飛行船から見えるのは、デフォルメされたワールドではなく探索パートと同じディテールでのリアルなワールド。そして、好きな場所に辿りついたら着陸してキャラクター探索パートに切り替わるシステムに進化させて欲しい。

 個人的には、「ゼノブレイド」はこのままでも完璧なRPGだが、やはり見た目を重視するユーザーも沢山いるので、グラフィックスも強化したほうが、より多くの人が喜ぶだろう。とにかく、今は海外への進出&発売を見守って、ミリオンヒットになることを祈りたいと思う。口コミの力も信じて……。

最初の街、コロニー9での水上移動は気にならないが、ゲームが進むにつれてフィールドの広大さが増す為、ボートのような乗り物が必要だと感じた「ゼノギアス」のように、ロボットに乗っての戦闘があっても面白かったのかもしれない飛行する乗り物でのフィールド探索が、さらに楽しかったのではないだろうか

(C) 2010 Nintendo / MONOLITHSOFT

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□「ゼノブレイド」のページ
http://www.nintendo.co.jp/wii/sx4j/
□関連情報
【2010年7月20日】Wiiゲームファーストインプレッション「ゼノブレイド」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/review/20100720_381880.html


■ 傑作の如く ~期待している新作TOP5~

 僕が期待している発売前後の新作TOP5。さまざまな情報をもとに、各ゲームのシステムやグラフィックスといった要素の中で僕が魅力的に感じたところを紹介していく。必ずしもメジャーなタイトルではなくて、逆に注目して欲しいマイナーな作品をピックアップすることもある。

(C)2010 Nintendo Codeveloped by TECMO / Team NINJA

1位:METROID Other M
   プラットフォーム:Wii
   ジャンル:アクション
   発売元:任天堂
   発売日:9月2日
   価格:6,800円
   CEROレーティング:B

 「最新技術を使ったファミコンゲーム」。「METROID」シリーズ最新作のキャッチコピーがすごい!リモコンを横に持って主人公を操作し、縦にして画面にポイントするとギミックを分析する為の主観視点に切り替わるという直感的さ。昔のファミコン的なコントローラーの使いやすさを提供しつつ、Team NINJAならではの豪華なグラフィックスで現代的な味も醸し出している。主人公のサムス・アランのアダルトなルックスにも注目。アーマーの中に隠れた女性英雄という一面がより深く表現されていると思う。

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□関連情報
【2010年7月29日】任天堂、Wii「METROID Other M」
簡単操作で多彩なアクションが楽しめる
新たな「メトロイド」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100729_384179.html

(C)2010 Konami Digital Entertainment

2位:悪魔城ドラキュラ Harmony of Despair
   プラットフォーム:Xbox 360
   ジャンル:アクション
   発売元:KONAMI
   配信開始日:8月4日
   価格:1,200MSP(1,800円相当)
   CEROレーティング:B

 ずっと前からの夢が叶った!友達と遊べるマルチプレイの「悪魔城ドラキュラ」。今回は、協力することが強力なボスを倒すための秘訣だ。ステージのマップはシリーズ作品のものを再利用しているが、その解像度は格段に向上している。友達のキャラクターから離れている場合は、画面がズームアウトし隣の部屋の様子も見せてくれる。最終的には城全体のマップを一画面で確認できるのが、とても斬新なシステムになっていると思う。アルカードやシャノアといった歴代キャラクターに加え、新たなヒーローが用意されたのも朗報だ。

□KONAMIのホームページ
http://www.konami.jp/
□「悪魔城ドラキュラ」シリーズ総合サイト
http://www.konami.jp/gs/game/dracula/
□関連情報
【2010年7月29日】KONAMI、Xbox 360「悪魔城ドラキュラ Harmony of Despair」
2面や攻撃技「デュアルクラッシュ」などの情報を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100729_384109.html

(C)SEGA

3位:クロヒョウ 龍が如く新章
   プラットフォーム:PSP
   ジャンル:アクションアドベンチャー
   発売元:セガ
   発売日:9月22日
   価格:6,279円(UMD版)
       5,600円(DL版)
   CEROレーティング:D

 「龍が如く」がコンパクトになり、新たな主人公を迎えてPSPに初登場!舞台は、いつもの巨大歓楽街「神室町」。1番期待しているのは、ボクシングやプロレスなど複数のバトルスタイルを使える格闘パート。主人公の格闘スタイルを自由に組み立てていくのが本作の醍醐味なのではないだろうか。メインストーリーとは別に楽しめる100以上のサブストーリーにも注目している。グラフィックスデザインスタジオ「Spooky graphic」が監修している、ユニークなスタイルのイベントムービーもまた魅力の1つだ。

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□「龍が如く.com」のページ
http://ryu-ga-gotoku.com/
□関連情報
【2010年7月14日】セガ、PSP「クロヒョウ 龍が如く新章」
最新トレーラームービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100714_380662.html

(C)CAPCOM CO., LTD. 2010 ALL RIGHTS RESERVED.

4位:大神伝 ~小さき太陽~
   プラットフォーム:DS
   ジャンル:アクションアドベンチャー
   発売元:カプコン
   発売日:9月30日
   価格:5,040円
   CEROレーティング:A

 世界中のプレーヤーを魅了したアマテラスがチビになり前代未聞の冒険を続ける!前作からの大きな進化点は、さらに直感的になった操作だ。今回は、タッチペンで“筆しらべ”を発動し画面に線を描くことでギミックを壊したり、背景に変化をもたらしたりできる。3Dグラフィックスは、信じられないほど綺麗でスムーズだ。シナリオを手掛けたのは、「428 ~封鎖された渋谷で~」の小説版を手掛けた北島行徳氏。心が温まる物語に期待大!

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□関連情報
【2010年6月24日】カプコン、DS「大神伝 ~小さき太陽~」
発売日を9月30日に決定
イーカプコン限定版も同時発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100624_376419.html

(C)2010 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

5位:ロード オブ アルカナ
   プラットフォーム:PSP
   ジャンル:アクション
   発売元:スクウェア・エニックス
   発売日:10月14日
   価格:5,980円(UMD版)
       4,980円(DL版)
   CEROレーティング:B

 4人のプレーヤーで協力してモンスターとの戦いを楽しめる作品が、また1つ生まれた。キャラクターエディットが無限大の可能性を秘めているし、数千も用意された武器を装備させて自分だけのヒーローを作れるという点も見逃せない。個性的なモンスターたちのデザインは国内だけでなく、海外の有名なイラストレーターが手がけていることもすごいと思った。これで、海外での発売がさらに待ち遠しくなるはずだ。また、サブクエストなどのダウンロードコンテンツのお陰で、ソフトの寿命が延びることは間違いない。新たなブランドの誕生か?

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□関連情報
【2010年7月12日】スクエニ、PSP「ロード オブ アルカナ」
簡単操作でド派手な攻防を楽しめるバトルシステムを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100712_379706.html


■ 過去の宝物 ~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~

 ゲームは技術的に進化する。グラフィックスが綺麗になる。ポリゴンの数が増える。ゲーム内の景色が実写と見間違えるほどリアルなものになってきている。しかし、時代が変わっても必ずしも進化しないものもある。それはゲームの面白さだ。昔のゲームはグラフィックスはシンプルだが、面白さでは今のゲームに負けていない。いや、それに勝る特別な何かを持っている作品もあると思う。秋葉原のゲームショップや家庭用ゲーム機のオンラインストアで安く購入できる過去の傑作は山ほどある。このコーナーでは、僕が愛した昔のゲームをピックアップしていきたいと思う。具体的なゲーム内容よりも、僕のその作品に対しての気持ちを伝えることができればと願っている。

ゼノギアス
プラットフォーム:PS
ジャンル:RPG
発売元:スクウェア・エニックス
発売日:1998年2月11日
価格:7,140円

最初のアニメ動画では、ある宇宙船が謎の存在に襲撃される過去の事実が語られる

 「FINAL FANTASY VII」でJRPGのすべてが堪能できたと思っていた。しかし、「ゼノギアス」の日本語版がイタリアに到来した時、僕の考えが変わった。JRPGのまた1つのフェースが見られた。当時は日本語をまだ勉強中だったので、残念ながらそのすべてを理解できなかったが、そのユニークな世界観や洋と和の哲学を織り交ぜた深いストーリーに衝撃を受けた。今でも「ゼノギアス」は、個人的に1位2位を争う日本発の最高傑作だと確信している。

 本作では、独自のルール&常識に従う架空の世界が存在する。辞書で調べても出てこない造語も頻繁に用いられる。最初は戸惑ったが、読んでいるうちにその独特な文法が自分の体に吸収されることに驚いた。また、台詞が難しいのに、何の矛盾も見せないその見事な一貫性に脱帽した。高橋哲哉氏という天才が存在することに気が付いた瞬間だった。

船長に残された選択は宇宙船の起爆装置を作動させることだったその前に船長は最愛の妻と娘の写真を見る。ボタンを押したら、もう2度会えないことになる……動画の見事な演出が、ユーザーの心に衝撃を与える。今でもその強さが凄まじいと思う

 物語は、「ラハン」というのどかな村で始まる。村人たちは、次の日に行なわれる結婚式の準備で大忙し。主人公のフェイも例外ではない。結婚式に必要な機材の運搬を頼まれる。山に住んでいる変わり者の先生の家に行ってくれと、嫁のアルルから頼まれる。

 無事にお遣いを済ませたフェイが村へ帰ろうとした瞬間に、空から正体不明のロボットが現われる。敵対国の襲撃か?急いで村に戻ると、ロボットたちはもう村に着いていた。民家が炎に覆われている。

 住民が危ないと判断したフェイは、住民を守る為に、降りてきた無人のロボットに搭乗することを決意する。そこでフェイは、自分の人生を変えるあるミスを犯してしまう。まるで誰かにマインドコントロールされているかのように暴走し、敵に反撃してしまう。その行為がもたらすものとは……?

嫁はアルルと言う。その弟のダンが、実はアルルの結婚相手としてフェイのほうが相応しいと思っている。それを知ったフェイはとても難しい気分だ。こういう人間関係も見事に表現されているアルルとフェイの間には特別な何かがある。しかし、人生がいつも教えてくれるように、諦めることが大切なときもある
シタンは、山頂に住む個性溢れる科学者だ。遺跡から発掘された機械をいじるのが大好き結婚式の前夜にラハン村が謎のギアに襲撃される。その理由とは?敵と戦う為に、フェイは無人のギアに乗ることを決意するが、その行為が悲劇を起こしてしまう……

 このゲームを愛した理由の1つ。“綺麗ごと”がほとんどない。残酷なシーンや衝撃的な場面が続く。そして、その残酷なイベントから生まれる気持ちが、プレーヤーをキャラクターたちに感情移入させる。悲劇があるからこそ、画面の向こうのキャラクターたちとプレーヤーとの間で強い絆が生まれる。

 ストーリーはもちろんのこと、戦闘システムも当時としては斬新な特徴を持っていた。例えば、キャラクターたちは、格闘ゲームのように小・中・強の攻撃を組み合わせることで強力な連繋技を編み出せた。ドットグラフィックスで表現されたキャラクターたちのアニメーションも見どころの1つだった。

キャラクターのレベルが一定の値まで上がると、自動的に新しい技が覚えられる新しい技を覚えると、画面の下に入力すべきコマンドが表示される。「武技雷迅」の場合、□ボタンの後に○ボタンだ例えば、エリィは武器による攻撃よりもエーテル(魔法)の使用に特化している

 さらに、バトルパートを盛り上げるのに大きく貢献したのが、ギアというロボットに乗って戦えたこと。当時、イタリアでも流行っていたロボットアニメ的な演出が使われていて、RPGファンだけでなく、アニメーションファンも魅了したタイトルだと言える。「エヴァンゲリオン」がアニメ界を震撼させたのと同じように、「ゼノギアス」はRPG界の常識を覆した斬新なゲームだったと思う。

巨大なボスとの戦闘では、ギアの使用が必要不可欠になるギアでの戦闘では、燃料を消費することで強力な必殺技を使うことができる

 ロボットと人間の戦い。技術と自然の共存と対立。人類の誕生の謎。宇宙からやってきた得体の知れない存在。格差などの社会問題。「ゼノギアス」では、RPGとしては珍しく深いテーマが扱われている。SF作品としても楽しめるし、単なるRPGとしても非常に完成の高いゲームだと思う。

 「ゼノギアス」をきっかけに「ゼノブレイド」で遊んでもいいし、その逆でもいい。「ゼノギアス」は、ゲームアーカイブスで配信中なので、興味を持った人はぜひプレイしてみて欲しい。どちらもRPGファンに欠かせないゲームだと確信している。

キャラクターグラフィックはドットによるものだったが、背景はポリゴンを使っていた。理想的な妥協だったと思う「ゼノブレイド」と同様に、フィールドやダンジョンが垂直に展開することもある。そこでジャンプといったアクションが重要な役割を持つ
ワールドマップも健在。ちなみにゲーム終盤では“あれ”が登場するから移動がさらに楽しくなる人類の誕生、宇宙からの脅威、人間が存在する意義など、SFと哲学を織り交ぜたストーリーには独特な魅力があるストーリーのクライマックスに挿入されるアニメ動画が、海外でも話題になった。暴力描写が頻繁に出てくるので、アダルトなゲーマー向けと言えるだろう


(C)1998 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□GA版「ゼノギアス」のページ
http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0082npjj00166_000000000000000001.html


■ イタヲタのレトロなゲームライフ ~ハプニング満載のオタク人生~

 このコーナーでは僕のゲーマーとしての人生を懐かしさたっぷりで語っていきたい。毎回、特定の時代をセレクトして、自分の記憶への冒険をしたいと思う。最終的には1つのストーリーになる。僕というオタクのストーリー。僕という和ゲー好きゲーマーのストーリー。文章だけでなく、クライマックスのシーンをもっとダイレクトに伝える為に漫画も使うことにした。ちなみに漫画は、今イタリアで注目の若手漫画家に描いてもらった。とにかく、日本ではありえないシチュエーションについてたっぷり語っていくので、本当に面白いコーナーになると思うぞ!

今回の時代設定:1989年
イベント:Sega Genesisが家にやってきた!(後編)
ハプニング:イタリアのテレビで○○が出ない!マンマ ミーア!!

 すべてがうまくいくはずだった。しかし、僕は、ある“常識”を知らなかった。アメリカとイタリアのテレビのカラーシステムが違っていた。アメリカは、日本と同じようにNTSCで、フランスの場合はSECAM、そしてイタリアはPALというシステムを持っていた。簡単に説明すると、アメリカや日本のAV機器(ゲーム機やビデオデッキなど)をイタリアのテレビに繋げるとカラーが出ない。すべてが、“懐かしい”白黒で表示されていた。

 僕の期待していた「GHOULS’N GHOSTS」(大魔界村)も例外ではなかった。スイッチをオンにすると、テレビに映ったのはセガのグレー色のロゴだった。「あれ?ブルーじゃなかったっけ?」と、ゲーム友達のクリスティアーノに聞くと、確かにそうだね、という答えが返ってきた。これは一体、なに!?

 僕の頭の中はショックで真っ白だった。誰よりも早く夢のゲーム機で遊べるチャンスが一瞬にしてパーになった!もうずっと、Genesisのゲームを白黒で遊び続ける運命なのか?1年後も、友達が鮮やかなカラーで遊んでいるのに、僕だけはずっと昔の映画のような感じで遊ばなければならないのか?

 いや。必ず解決法は存在するに違いない!お父さんの知り合いの電気屋さんに聞いてみる。そうすると、興味深い回答を得られた。SCARTと呼ばれる特別なケーブルを使うと、日本やアメリカのゲーム機の画像が正常に映ると。綺麗なカラーで。

 ただし、問題が1つだけあった。メガドライブはイタリアでまだ正式に発売されていなかったので、専用のSCARTケーブルも当然まだ販売されていなかったということだ。つまり、自分で作らないかぎり、ブラック&ホワイトの世界から脱出できないわけだ。

 とりあえず、Genesisのソケットに合う一般的なSCARTケーブルを買ってみる。しかし、ケーブルの中のコードの組み合わせが全然合っていなかった。つまり、購入したままで繋げても、画面に正常なイメージが映らなかった。スイッチオンのままの作業が危ないと思ったので(家が爆発するかも?)、パワースイッチをオフにして、コードを適当に組み合わせてみた。緊張を露わにしたクリスティアーノは、そばで僕の作業を見守っていた……。

 1日の作業の成果はゼロだった。やっぱり、電気について何の知識もなかった僕には無理な課題だった。これは、スペシャリストに頼まないと。というわけで、翌日、Genesisを持って家の近くの電気屋さんを回ってみる。

 「こういうケーブルを作れますか?」と事情を説明するが、最初の2時間は店員の否定的な返事が続いた。最後の店が残っている。その中に天才の店員がいるように。事情を説明すると、「こういうのは携わったことがないけど、やってみますね」と、待ち望んでいた返事をゲット!「明後日、また来て下さい。良い報告が出来るように頑張りますね!」

 天使のような電気屋さんだった。もちろん、“修理代”は決して安くなかったが、僕はどんな金額を払っても「GHOULS’N GHOSTS」のカラーバージョンで遊びたかったので、何のためらいもなく財布から必要な金額を取り出した。

 その夜は、もちろん一切寝ることができなかった。目を開けても目を閉じても、天上に見えるのはアーサー(「大魔界村」の主人公)がカラーでジャンプしている場面だ。これが、明後日、現実になるかもしれないと思うと、興奮して睡眠が不可能になる。

 翌日の学校の授業中も頭は別のところに行っていた。メモ用紙には先生が説明している授業のこと、一切書かれていない。ページは、僕のヘタなアーサーの落書きでいっぱいだった……。

 約束の日が来た。一心同体のゲーム友達、クリスティアーノと共に例の電気屋さんに向かう。うまくいっていますようにと祈りながら、店のドアを開ける。店員さんは僕を見た瞬間、読めない表情で近付いてきた。難しい手術の結果を待っているような雰囲気だった。

「いろいろ試したけど……最後の組み合わせはばっちりだった!」。えっ?今のは現実!? 本当にそうなのか?
「つまり、カラーが出ているの?」と続きを促す。
「レッドからブルーまで、すべてのカラーが完璧に映っていますよ!」。

 素敵な報告に僕とクリスティアーノは喜びでジャンプしまくった。今日から、アーサーはカラーなんだ!と大はしゃぎだった。

 言うまでもなく、電気屋さんの言葉は嘘ではなかった。急いで家に帰ってゲットしたケーブルでGenesisをテレビに繋げてみると……映像はパーフェクトだった。ゲーセンに負けないぐらいの豪華なグラフィックスと綺麗な色。あの電気屋さんのお陰で、僕の“幸せな日本ゲーム機生活”が本格的にスタートした!

 ところが、一難去ってまた一難。諺が現実になることが、残念ながら非常に多いのだ。僕のGenesis生活は、最高のものだった。しかし、マリナがアメリカから買ってきたゲームをすべてクリアして、新しいゲームが欲しくなった。

 ちょうどその時期、ミラノのゲームショップではメガドライブの日本版が出回り始めていた(ローマは遅かった)。もちろん、日本版の新作ソフトも販売が始まっていた。さっそく店に電話して、新作の発売について聞いてみる。

「おススメの新作って、ありますか?」
「ええ。1番のおススメは『サンダーフォースIII』というシューティングゲームです」。

 丁度その1週間前、ゲーム雑誌ですごい点数を取っていたから、迷わず、こう答えた。

「じゃあ、それにします!家の住所はローマの○○です。着払いでお願いします」。

 3日後に“ミラノ発”の小包が届いた。中にはメガドライブ用の「サンダーフォースIII」が入っていた。しかし、ここでまた緊急事態発生!カートリッジを出してみる。アメリカのものとは形が微妙に違っていた。Genesis用のカートリッジは端が三角形のような形をしているが、日本のカートリッジは端が完璧なカーブであることに気が付く。これではGenesisのスロットには絶対に入らない。

 説明を求める為に例のミラノのゲームショップに早速電話。

「あの……『サンダーフォースIII』が届いたのですが、僕が持っているゲーム機はGenesisなので、形が違っていて入らないんですよ!」。
「そうですか。残念ですが、アダプターは今ないんですよ。1カ月ぐらいで手に入るとは思いますが……」。

 1カ月?それは無理!待つのはいやだ。今、すぐ遊びたい!他の方法はないのか?と思ったが、プライドもあって口には出さなかった。「わかりました。ちょっと考えてみます。情報、ありがとうございます」。

 もしかすると、危ないかもしれないが、“あれ”をすれば、遊べるのではないかと……。僕の頭の中には、あるアイデアが浮かび始めていた。

 その夜、夢を見た。夢というよりは、悪夢だった。僕の大切なGenesisに傷を付ける夢。乱暴な方法ではあるが、“手術”することで日本のカートリッジが差し込めるようになるのではないかと……。

 夢で見たのは、Genesisのスロットの端を完全なカーブになるように「はんだごて」で溶かすシーンだった。僕が外科医のような姿でGenesisに“メス”を入れようとしている瞬間。それを実際にやることを考えるだけで心が痛くなった。ゲーム機は機械だけど、僕にとっては生き物とまったく同じ価値を持っていた。

 だから、その一部を溶かすことが、罪を犯すのと同じだと思っていた。その行為で保障が切れることもよく知っていた。しかし、「サンダーフォースIII」ですぐ遊ぶ為にはほかの方法が存在しない。やるべきか?やめるべきか?ハムレット的な疑問に悩まされた。そして、運命の朝がやってきた。

 もう昼ごはんを食べ終えた。喉に何か詰まったような感覚だ。嬉しいような、悲しいような複雑な気持ちだった。もうすぐクリスティアーノが遊びに来る時間だ。

 インターホンが鳴る。「はいはい、今開けるから」。ドアの外で人が走って階段を上ってくる音が聞こえる。「早く、入って!遅いんだから!!」。オタクの秘密基地に(ほぼ)瞬間移動する。テレビの前に置いてあったのは、ちょっと“ブサイク”になったGenesisだった。

 手術は成功し、ソフトがぴったり入るようになった。その代わり、はんだごてでスロットの端を溶かしたせいで、ゲーム機の表面がすこし醜くなった。画面に映っているのは、間違いなく「サンダーフォースIII」のカッコいいロゴだった。ちなみにこのゲームは、僕を日本のシューティングゲームのトリコにさせた傑作だった。




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(2010年8月6日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]