【第2幕】 Reported by:ジョン・カミナリ logo design / manga:フランチェスコ・アッカッターティス |
“電遊”。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。“道”。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。 |
この連載記事では、毎月1回、僕のゲーマーとしての物語、そしてゲーマーとしての哲学や信念を独特なスタイルで紹介していきたいと思う。日本のゲームに大きく影響を受けた僕のゲーマー人生を、イタリア人としての個性を生かして面白く語りたいと思う。あるときは、話題沸騰中のニュースについて掲載ギリギリのところまで正直な感想を書いたり、またあるときは、今でも心に大切にしまっている過去の作品を振り返ってみたいと思う。
1番注目して欲しいのは、「イタヲタのレトロなゲームライフ」というコーナー。僕のオタクとしての青春を文章と漫画を交えて懐かしく振り返りたいと思う。連載の途中で新しいコーナーも生まれるのかもしれない。回を追う毎に中身が変わったり増えたりするのかもしれない。とにかく、サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!
国籍:イタリア 年齢:33歳 職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家 趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ 主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中) ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記 | ||
イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること |
【もくじ】 |
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一刀両断~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~ 傑作の如く~期待している新作TOP5~ 過去の宝物~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~ イタヲタのレトロなゲームライフ~ハプニング満載のオタク人生~ |
■ 一刀両断 ~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~
話題のニュースや注目のテーマをピックアップして僕の率直なコメントを載せたいと思う。また、現在のゲームが抱えている問題を解決するアイデアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。ゲーマーの皆が納得できる未来の為に! |
・今回のテーマは……
今年のE3で感じた、ゲームの未来。
20XX年。ある少年がテレビの前でゲームのキャラクターを操っている。その手には何も握られていない。手を上げたり下げたりすることでゲームの主人公を操作しているのだ。あのハリウッドSF映画のように、ゲームの中のキャラクターがプレーヤーの動きをリアルに再現している。もう1つ、ゲームのキャラクターが画面から飛び出ている。ただ今、画面を出て部屋に侵入してきた!本棚からテーブルへと楽しくジャンプしている。なんということだ!
今語ったのはもちろん現実ではない。かの有名なSF映画に似たようなシチュエーションだ。「TRON」のような映画を見た当時は「まさか、これが現実になるわけがない」と笑っていたが、今は、あの夢のような技術が現実になりつつあることに対して驚いている。今年のE3では“SFが現実になる”。まさにその不思議な感覚に陥った。E3に行ったわけではない。普通にインターネットの動画や情報を分析しただけだ。それでも、新しく公開されたゲーム機や周辺機器を試した人のリアクションを見て、やはり驚かずにはいられなかった。
20XX年。大都会にオープンしたばかりのゲーム博物館に少年は家族と遊びに来ている。「ママ、見て!コントローラーがあるよ!なんて不思議!」。博物館には1980年から作られてきた、あらゆるゲーム機がズラリと並んでいる。コントローラーの形状はさまざまだが、その機能は共通している。ゲーム機本体に繋げて、ゲームのキャラクターを操作するのに使われる装置。未来に生まれたその少年の目には、それがおかしく映っている。今のゲームはコントローラーのような装置は必要としない。自分が画面に入ったかのように手を動かしながらバーチャルな世界に直感的に干渉するのだ。この領域まで未来のゲーム機が進化しているとは……。
今の物語は、なんとなく現実味を持ち始めている。今年からはゲーム機はそのような進化を実際に遂げていくだろう。マイクロソフトの「KINECT」やSCEの「PlayStation Move」で、ゲームの操作方法は大きく変わる。十字キーやボタンで行なっていた攻撃は、腕や手の動きで直感的に行なえるようになる。テクノロジーはWiiに似ているが、その可能性は次のステップに進んだと感じられた。
もちろん、始まりはニンテンドーのWiiだった。ニンテンドーの「Wiiリモコン」が作られなかったら、今の展開はなかったのかもしれない。だから、これは確実に言える。ニンテンドーは、いつも、未来の標準になるような流行を作り出してきたのだ。そして、今年のE3で示された通り、これからも新たなテクノロジーの確立に大きく貢献するのだろう。
【カミナリ家のゲーム日和 未来編】 |
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僕は、3Dになったゲームを息子と一緒に楽しんでいる。その傍らでは、大切な食卓を占有されたモンスターたちに怒りを隠せない妻の姿も……。没頭し過ぎもよくないということだね! |
もう1つの未来は、ニンテンドー3DSと名付けられたニンテンドーの革新的な新携帯ゲーム機だ。DSの後継機だが、前世代機から大きな進化を遂げている。上画面の映像が3Dになっている。しかも、裸眼で見られるのだ。長時間遊ぶと目が疲れると指摘されているメガネが、一切必要ない新技術。E3のプレスイベントで試すことができたラッキーなジャーナリストたちの口から発せられた言葉は……。
「Pretty amazing」。
日本語で言うと「とても素晴らしい」。実は、3DSを試す前のプレス関係者は半信半疑だったらしい。大げさに決まっているだろうと。しかし、実際に手にしたところ、皆が“まさか!”という驚きの表情を見せたそうだ。
しかし、3Dが綺麗だからといって、それに甘えてはならないと思う。3Dは単なる映像美ではなくて、実際に遊びの可能性を拡大させるテクノロジーになって欲しい。ニンテンドーとサードパーティーは、きっと既に3Dゲームを面白くさせるアイディアを考えている。3Dならではの遊び。3Dじゃないと実現できない遊び。2つになったカメラとモーションセンサーも活用して、今まで存在しなかった新感覚のゲームを開発しているに違いない。
ゲームの常識や操作方法が進化するのは良いことだが、急な方向転換は望ましくないと思う。タッチスクリーンはこれからも活用されるだろうし、従来のコントローラーも活躍を続けるだろう。カギはバランスにあると思う。適度な共存・両立が、成功に繋がるだろう。伝統的な操作方法70%、新しい操作方法30%というのが、黄金比と言えるかもしれない。過去と未来のコラボレーションが、ゲームの遊びやすさに繋がると信じている。すべてを一気に手で操作するのではなくて、ユーザーの反応をみながら、少しずつその比率を未来のテクノロジーに傾けていくのが、得策だろう。
僕が期待している発売間近の新作TOP5。さまざまな情報をもとに、各ゲームのシステムやグラフィックスといった要素の中で僕が魅力的に感じたところを紹介していく。必ずしもメジャーなタイトルではなくて、逆に注目して欲しいマイナーな作品をピックアップすることもある。 |
(C)CAPCOM CO., LTD. 2010 ALL RIGHTS RESERVED. |
1位:ラストランカー
プラットフォーム:PSP
ジャンル:RPG
発売元:カプコン
発売日:7月15日
価格:5,990円
CEROレーティング:B
「ラストランカー」は、カプコンの新感覚RPG。攻撃や防御が直感的なボタン押しで行なわれる戦闘パートから、特に新鮮さを感じられた。遊びやすさ&深さを合わせ持った、万人に受け入れられる理想のシステムになっていると思う。さらに、敵から得たスキルチップを組み合わせることで自分のキャラクターを自由にカスタマイズできる。動画から判断すると、その可能性は本当に無限大! 電車での通勤中や仕事の休憩中にうってつけのRPGだと思う。
□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□関連情報
【2010年6月24日】カプコン、PSP「ラストランカー」
バトルでの勝敗の鍵を握る「スキル」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100624_376472.html
(C)2010 ENTERBRAIN, INC./CREA-TECH ※画面は開発中のものです。 |
2位:メタルマックス3
プラットフォーム:DS
ジャンル:RPG
発売元:角川ゲームス
発売日:7月29日
価格:6,090円
CEROレーティング:B
過去に注目を浴びた、有名なシリーズの3作目がいよいよ発売される。自由度の高い本作の世界では、任意にクエストを引き受けて自分だけの冒険が楽しめる。また戦闘パートでは、戦車やバイクに乗って戦うことが可能。良い意味で、昔のRPGを思わせるノスタルジックな2D形式バトルは素敵だと思う。レトロスタイルでありながら、モンスターのアニメーションが立派なのも見どころの1つ。乗り物をカスタマイズできるという特徴も注目して欲しい。
□角川ゲームスのホームページ
http://www.kadokawagames.co.jp/
□関連情報
【2010年4月13日】角川ゲームス、DS「メタルマックス3」
マルチパーティー制導入、6種類の職業を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100413_360837.html
(C)CAPCOM CO., LTD. 2010 ALL RIGHTS RESERVED. (C)CAPCOM (C)1976, 2010 SANRIO CO., LTD. (G) APPROVAL No.G5003041 |
3位:モンハン日記 ぽかぽかアイルー村
プラットフォーム:PSP
ジャンル:アイルーライフ
発売元:カプコン
発売日:8月26日
価格:3,990円
CEROレーティング:A
メインディッシュの「モンスターハンターポータブル 3rd」の理想的な“前菜”は、まさにこのゲームだ。「モンハン」シリーズのマスコットキャラ、アイルーとなって、村での生活や住人とのやり取りが楽しめるゲームとなっている。探検クエストの戦闘パートに興味が湧いた。アイルーたちに提案されたボタンを押すだけというシンプルさなので、ジャンルに慣れていないユーザーも問題なく本作を楽しめると思う。また、「MHP 3rd」との連動要素も気になるところ。発売後も、連動コンテンツを定期的に増やして欲しい。
□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□関連情報
【2010年6月23日】カプコン、PSP「モンハン日記 ぽかぽかアイルー村」
可愛らしいアイルーと一緒に村での生活を始めよう
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100623_376180.html
(C)2010 Nintendo/INTELLIGENT SYSTEMS |
4位:ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~
プラットフォーム:DS
ジャンル:ロールプレイングシミュレーション
発売元:任天堂
発売日:7月15日
価格:4,800円
CEROレーティング:A
スーパーファミコン版「ファイアーエムブレム 紋章の謎」の第2部のリメイク。仲間が死ぬと使えなくなる「クラシックモード」の他に、仲間を失わずに進める、新たな「カジュアルモード」が追加された。遊びやすくなったこの新モードのお陰で、新たなユーザーが「ファイアーエムブレム」シリーズに興味を持つのではないかと思う。また、Wi-Fiによる対戦やユニット交換が楽しめるオンラインモードにも期待大。
□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□関連情報
【2010年6月10日】任天堂、DS「ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~」
SFC版「ファイアーエムブレム 紋章の謎」第2部のリニューアルバージョン
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100610_373423.html
(C)藤島康介 (C)1994-2010 NBGI ※画面は開発中のものです。 |
5位:テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョンX
プラットフォーム:PSP
ジャンル:真実と向き合うRPG
発売元:バンダイナムコゲームス
発売日:8月5日
価格:5,480円
CEROレーティング:B
10年の沈黙を破り、完全リニューアルされた「テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョン」が帰ってきた。新規作成された、80以上のコスチュームを着ることで多種多様なジョブになりきることが可能だ。もっとも注目すべきは、2人のキャラクターの同時操作が可能になった戦闘システム「チェインパートナーシステム」。また、特定のモンスターをパーティーに招いて仲間として戦わせるという楽しみ方もある。最後に忘れていけないのは、本作には改良された「テイルズ オブ ファンタジア クロスエディション」も入っているということだ。
□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□関連情報
【2010年6月25日】バンダイナムコ、PSP「テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョンX(クロス)」
ファンタジアから3人の英雄が参戦! 新コスチューム、体験版などの新情報も一挙公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100625_376844.html
■ 過去の宝物 ~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~
ゲームは技術的に進化する。グラフィックスが綺麗になる。ポリゴンの数が増える。ゲーム内の景色が実写と見間違えるほどリアルなものになってきている。しかし、時代が変わっても必ずしも進化しないものもある。それはゲームの面白さだ。昔のゲームはグラフィックスはシンプルだが、面白さでは今のゲームに負けていない。いや、それに勝る特別な何かを持っている作品もあると思う。秋葉原のゲームショップや家庭用ゲーム機のオンラインストアで安く購入できる過去の傑作は山ほどある。このコーナーでは、僕が愛した昔のゲームをピックアップしていきたいと思う。具体的なゲーム内容よりも、僕のその作品に対しての気持ちを伝えることができればと願っている。 |
リモココロン
プラットフォーム:PS2
ジャンル:ちょっかい
発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)
発売日:2001年6月28日
価格:6,090円
斎藤家の食卓。夫婦、おじいちゃん、子供たち、そして腹ペコの猫が、テーブルを囲んでいる。その真ん中には美味しそうな鍋料理が置かれている。夕飯は自然に進んでいく。パパは鍋の湯気でメガネのレンズが曇ってきた。ホットカーペットが熱すぎて苦しいとも嘆いている。問題発生!この問題を解決できるのは皆の幸せを見守る為に指名されたプレーヤーだ。
神様的な役を演じることになったプレーヤー。テーブルの横に置かれたティッシュにズームして写真を撮って、そして、そのイメージをメガネが曇ったパパのマインドに送る。このアクションは“ちょっかい”と言う。そしてこのシンプルなアクションから生まれるユニークなゲームは、2001年にSCEが発売した「リモココロン」だ。
【ステージ1:斎藤家の食卓】 | |
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味が濃いかしらと不満そうな奥さん。テーブルの近くに問題解決に繋がるものがあるのか? | お湯の容器が発見!ズームインしてR1ボタンを押せば、写真ゲット! |
撮った写真をR1ボタンで奥さんに送ると、彼女はお湯を鍋に足し始める | これで味が美味しくなったみたい。1つの問題が無事解決された! |
タイトルは、リモコンとこころ(心)の融合で生まれた造語だと思われる。リモコンの機能を果たすPS2のコントローラーを使って、さまざまな悩みを持った架空の街の住人を助けることが目的の、いわゆる神様ゲームの代表作だった。2Dで表現された大きなステージをズームすることで、あらゆるポスター、看板、そして住人のバルーンに入ったセリフまで細かくチェックすることができる。限られた時間の中で次から次へと展開する問題を解決するのが、プレーヤーの目標だ。
お互い関係のない問題もあれば、解決した事件がさらなる事件を引き起こすケースもある。キャンプ場や動物園の中盤ステージでは、数十人のセリフを見比べながら、あっという間に減る時間ゲージを気にしつつ、人と人の関連性を瞬時に判断することが、特に重要になってくる。そして、自分の閃いたちょっかいで物事がうまくいったことに気が付く瞬間には、特別な達成感が味わえる。
【ステージ2:メラメラ商店街】 | |
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ステージ2の舞台は、数十人の人々が住む大きな商店街だ。まず右スティックの回転でズームインして、住人たちのセリフをチェックしよう! | どんな髪型にしようかなとお悩みの少年。ポスターのイメージを送るのが1つの方法かもしれない |
バーのテーブルに座った不良っぽい人がいる。写真を撮って、さっきの人に送ってみると…… | 彼もロックバンド系の強烈な髪型に。他に選択肢があったはずだが…… |
「リモココロン」は楽しい体験だけでなく、教育の面でも特別な価値を持ったゲームだと確信している。まさに、人間の心を鍛える為のジムだと思う。人間関係が難しくなってきている現代で、人を観察することの大切さを思い出させてくれる貴重なゲームなのだ。今時の言葉で言うと、“空気を読む”為のテクニックを、このゲームでは自然に身に付けられるのではないだろうか。
僕も、このゲームを知ってから、周囲の人々のことをさらに意識できるようになった。人を観察することによって人の求めていることを理解できるようになった。そして、それに合った適切な態度をとれるようになった。だから、実際にこのゲームから学んだことを実践すれば、世の中も、もっとうまくいくのではないだろうか。お互い助け合う世の中を、ゲームの中でも、ゲームの外でも作り上げようではないか!
(C) 2010 Sony Computer Entertainment Inc.
□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□「リモココロン」のページ
http://www.jp.playstation.com/software/title/scps11012.html
■ イタヲタのレトロなゲームライフ ~ハプニング満載のオタク人生~
このコーナーでは僕のゲーマーとしての人生を懐かしさたっぷりで語っていきたい。毎回、特定の時代をセレクトして、自分の記憶への冒険をしたいと思う。最終的には1つのストーリーになる。僕というオタクのストーリー。僕という和ゲー好きゲーマーのストーリー。文章だけでなく、クライマックスのシーンをもっとダイレクトに伝える為に漫画も使うことにした。ちなみに漫画は、今イタリアで注目の若手漫画家に描いてもらった。とにかく、日本ではありえないシチュエーションについてたっぷり語っていくので、本当に面白いコーナーになると思うぞ! |
今回の時代設定:1989年
イベント:Sega Genesisが家にやってきた!(前編)
ハプニング:イタリアのテレビで○○が出ない!マンマ ミーア!!
1989年。当時の僕はまだ日本のゲームの素晴らしさを知らなかった。任天堂とセガの8-Bit家庭用ゲーム機は発売されていたが、イタリアのプレーヤーたちの間ではそれほど浸透していなかった。ヨーロッパでの主人公は、アメリカのCommodoreのファミリーコンピューター「Amiga500」だった。僕もそのユーザーの1人だった。
当時のゲーセンで人気だったゲームはAmiga500用にほとんど移植されていたが、どれも納得の行く出来ではなかった。例えば、僕の大好きな「大魔界村」のAmiga500移植版はアーケード版の下手なモノマネに過ぎなかった。音楽も勝手に変えられていたし、グラフィックスもスムーズにスクロールしていなかった。だから、毎日家で遊べる(ほぼ)完璧な移植版をずっと夢見ていた。
当時、イタリアで出版されていたゲーム雑誌は日本の輸入ゲーム機を扱い始めていた。特に僕の目に止まったのが、セガの「メガドライブ」だった。ニュース記事を読んでみると、日本ではあの「大魔界村」の移植版が既に発売されていた。しかも、そのクオリティーは信じられないほど高いという評判だった。その日から、僕の夢に出ていた単語ナンバー1は「メガドライブ」になった。どうしても手に入れないと。しかし、日本語なんてわからないし、日本のゲームがイタリアで遊べるという知識自体がなかった。
愛読していた雑誌の次号を買ってみると、なんと!メガドライブがアメリカでも発売されたというニュースが掲載されていた。ハードやソフトはまったく同じだったが、ゲーム機の名称は著作権の関係で「Sega Genesis」に変わっていた。買うなら文字が読めるアメリカ版のほうがいいかもね、と思い始めていた。しかし、大問題発生!アメリカに行く予定がなかった。なにしろ未成年だったし、旅費に必要なお金も持っていなかった。どうしようと悩んでいたら、ゲームの神様から救いの手が差し伸べられた……。
その日の夕飯。パスタを口に入れようとした瞬間、母の口から信じられない言葉が発せられた。
「ところで知ってる?友達のマリナが来週アメリカに旅行するんだって。いいなー、私も行きたいわ!」。
「ちょ、ちょっと待って!」。
「あ、アメリカ?」。
これ、夢じゃないよね。目をこすってみる。ほっぺたをつねってみる。「痛っ!」
いや、これは夢じゃない。現実だ。幸せな現実&絶好のチャンス。「あの、ママ。1つ頼んでいいかな?」。欲しいゲーム機があるという話をしたら「いいよ、聞いてみるよ」と、母はあっさりOKしてくれた。「まだ期末試験の合格のご褒美はあげていないしね」。サンキュー、ママ!その夜は、初恋の時と同じように食欲が一気に低下して、パスタを半分しか食べられなかったことをよく覚えている。
2週間後。お願いを受け入れてくれたマリナおばさんがアメリカから帰って来る日だった。16時に家のインターホンが鳴るはずだった。待っている間に宿題をやりなさいと、母に言われていた。目の前に数学の教科書が開かれていたのに、頭の中はSega Genesisの文字で一杯だった。興奮のあまり、宿題は全然はかどらなかった。
ピンポーン♪
今、インターホンが鳴った!マリナおばさんに違いないと思って出てみると、ゲーム友達のクリスティアーノだった。もちろん、彼はすべてを知っていた。そして、一緒に“魔法の箱”を開ける約束を交わしていた。「まだだよ、あと30分したらまた来てみて!」と伝える。
それから20分が過ぎようとした頃、またピンポーンが聞こえてきた。
「誰ですか?」。
「お母さんの友達のマリナです」。
マリナ。MARINA。僕の期待していた6文字が耳に入ってきた。待ち望んでいた瞬間がとうとう来た。ドアを開けると、僕が会ったことのない、母の友達と思われる人物、マリナおばさんが立っていた。しかし、最初に僕の目の飛び込んできたものは、彼女の顔ではなくて、彼女が手に持っていた大きな袋だった。その中には夢のゲーム機が入っている。イタリアでは正式に発売されていない“アレ”が入っている。アニメの国で作られた夢のゲームマシン。
「入っていいかな?袋、結構重たいんだけど……」。
「あっ!ごめんね、入って入って!!」。
その生意気な返事できっと「なんて失礼な子なの?」と思われたに違いない(すみませんマリナおばさん、当時の僕はゲームのことしか考えていなかった!)。あれ?マリナおばさんの後ろに見覚えのあるシルエットが……クリスティアーノだった。ずっと、マンションの下で袋を持った女性が現われるのを待っていたらしい。そして、彼女を追跡して、僕の家のドアまで一緒に上ってきた。
マリナおばさんとママは、キッチンでアメリカの話をしている。「ニューヨーク、すごかったよ」とか、「やっぱり、高層ビルはインパクトあるね」とか。その話はもちろん、僕たちの耳には一切入ってこない。なぜなら、僕とクリスティアーノはもう別の世界に入っていたからだ。魔法の袋を受け取った僕たちは“オタクの秘密基地”に閉じこもった。袋から、順番に次のものが出てきた。
「SUPER SHINOBI」。ゲーセンの「SHINOBI」で、おばあちゃんから貰ったお小遣いを5分で使い切ったことを思い出した。
「GOLDEN AXE」。これもまた有名なアーケードの移植版。そして、次に出たのが僕にとっての目玉タイトル。
「GHOULS'N GHOSTS」。「大魔界村」のアメリカ版のタイトル。興奮で手が震える。夢が叶ったことがまだ信じられない。
最後に、ゲームの起動に欠かせないSega Genesisの大きな箱を取り出した。写真で見ていたよりもずっとカッコいい!横で涎を垂らしていたクリスティアーノに合図を送った。1分以内にテレビに繋げよう!コントローラーを本体に差す。OK。ACアダプターをコンセントに差し込む。おっと!その前に変圧器。アメリカの電圧とイタリアの電圧が違うから。もちろん、この日の為に購入しておいた。最後に本体をテレビに繋げる。これで準備万端。カートリッジをスロットに差し込み、そしてスイッチオン!
すべてがうまくいくはずだった。しかし、僕はある大きな勘違いをしていた……
後編に続く……
電遊道では、みなさんに取り上げてほしいネタなどを随時募集します。ドシドシと編集部までメールを送って下さい(編集部)
(2010年7月2日)