佐藤カフジのVR GAMING TODAY!
PS VRは格が違った! VRゲーマーとして思ったことまとめ
最高級のハードウェア、充実したソフトラインナップに圧倒さる
2016年10月15日 08:00
2016年10月13日は、ゲーム史に輝く重要な日として記憶に残ることになりそうだ。PlayStation VRの発売当日、量販店の前には人気ハードの発売では恒例となる開店待ちの行列ができ、筆者もその中に参加した。そう、過去3度の事前予約のいずれも逃してしまっていて、これが発売日に手に入れる最後のチャンスだったのだ。なんという競争率の高さか。
筆者が足を運んだのは秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアakiba。国内でもトップレベルの入荷数を誇ると言われる店舗だ。規模や立地の良さもあって行列に並ぶ人も多くなったと思うが、店側も慣れたもので大きな混乱はなかった。
店側の対応として、前日の夜間は「徹夜禁止」となっており警備員が徹夜組を警戒。店側の案内できちんと行列ができ始めたのは午前4時ごろ。始発電車が動き始める頃にはもう100人近い人が入り口前に行列を作り、当日販売予定数の200人に到達したのは開店3時間前の6時半ごろだ。それに合わせて整理券の配布も行なわれ、早くから並んでいた人は早々に入手を確定して安心感。それ以降に到着した出遅れ組は、「当日の販売分 予定数終了しました」との立て看板にブロックされて去っていく。
という感じでわりと静かに進んだ当日販売の模様だったが、秋葉原のヨドバシだけで当日200台が即完売したとなると、日本全国では数万台規模の販売になったのではないかと思う。これに加えて3回にわたる事前予約分を加えると、10万台を超える数がこの日ユーザーの手に渡ったのではないだろうか。
先行してきたOculus Riftは、いまおよそ15万台が出荷されたと言われる。ただし全世界でだ。PS4は全世界で4,000万台以上が普及しているが、国内はその1割弱とされる。この比率を素直に上記のPS VRの数字に適用してみると、PS VRは発売当日に世界で100万台以上を売り上げた可能性がある。
そんなことを考えつつ、無事に自分用のPS VR(カメラ同梱版)を手に入れることができた。PlayStation Moveとセットで6万円越え。一緒にPS4本体も買っていれば1発で10万円ほどが飛んでいったことになり、少々財布が寒くなる感じがしたが、その数時間後にはPlayStation Storeでさらに3万円分くらいのソフトを購入していた。さっそくPS VRの市場拡大に貢献したと考えておきたい。
超一流のハードウェア
セットアップはスムーズ。開封の儀については山村智美氏による記事「『PlayStation VR』ついに発売! 開封からセットアップ、そして使用感を試してみた」をご覧いただくとして、既に似た経験のあった筆者の場合はマニュアルすら見ることなく接続できた。HMD+プロセッサーユニット+各種ケーブルという構成は、HTC Viveによく似ていたからだ。
そこでまず感心したのは、HMDのハードウェアとしての作りの良さ。一般消費者向けの工業製品として、本当に丁寧に作り込まれている。構造上、前髪が押さえつけられるのが気になるのは仕方ないとして、前頭部からヒンジが伸びてそこにバイザー部分がぶら下がっているという構造のおかげで、重量感や圧迫感を感じることなく、高視野角のVR映像を楽しむことができる。メガネ併用でも全く問題のないゆとりがあり、ほどよい通気性も備えていて、装着時の快適度はRift/Viveを大きく上回ってダントツトップである。
また、PC系HMD2つと大きく異なる点となるのはレンズ部。Rift/Viveともに刻みの入ったフレネルレンズを採用している一方、PS VRは刻みがなくなめらかな通常のレンズを搭載している。フレネル溝のあるRift/Viveではレンズ内に映像の光が乱反射して暗いシーンで余計な光が浮き上がるような弱点があるのだが、PS VRではそれがなく、クッキリとした映像を捉えられるのだ。そして視野角はRift以上、Vive未満という感じだが、Viveとの差はごく小さく、同等と言えるレベルの視野がある。視野が広いとVR空間により入り込んだ感覚を得られる。
またネイティブ120Hz出力に対応したOLEDパネルは開口率が極めて高く、Rift/Viveで指摘されるスクリーンドアエフェクト、いわゆる網目感がほとんどない。Rift/Vive(両眼2,160×1,200ドット)に比べて解像度が1段下がる(両眼1,920×1,080ドット)とは思えないほどのソリッドな映像だ。これは、PS VRのOLEDパネルがフルRGBのサブピクセルを持ち、実画素数でペンタイル配列のRift/Viveを上回る性能になっているためでもある。特にRift/Viveでは薄暗いシーンでサブピクセルの不足が感じられる事があるのだが、PS VRではどのシーンでも映像は極めてソリッドである。
ヘッドトラッキングの性能も、PS Cameraという既存品を用いているとは思えないほどの高精度だ。心配された微動やトラッキングロスもなく、極めてスムーズに追従してくれる。その範囲も、6畳間程度の狭い部屋なら全幅をカバーできるほどのエリアが確保されている。手で動かすPS Moveに関してはカメラの死角に入れるとロスしてしまうのは構造上いたしかたないとしても、現状考えうる限りベストな性能が確保されているのは間違いない。
まちがいなくこのハードウェアは超一流だ。トータルの完成度でRift/Viveを超える水準にある。特にエルゴノミクスデザインに関しては勝負にならないレベルだ。長時間つけていても疲れにくいというのは、VR機器でとても大切な点。そこに最高のデザインを持ってきたソニー・インタラクティブエンタテインメントはやっぱり超一流だ。
これだけの性能を実現したということで、唯一の難点はお値段のほうも少々高くなっているところ。HMDだけを使うにしてもPS Cameraは必須なので同梱版の価格を見ると税抜49,980円。モーションコントローラーを使いたいならこれにPS Move(3,790円) 2本を加えると57,560円で、税込みで6万円を越えてくる。ちなみに筆者が購入した店舗ではPS Moveが税込み5,370円と標準価格よりも割高になっていて、総額で66,000円ほどかかった。「またゲーム機にそんなお金使って!」と言われちゃいそうだ。
ソフトラインナップも素晴らしい:ただし価格は強気
他のVRプラットフォームと違って、PS VRはデイワンから一流メーカーの高品質なVRゲームが遊べるのが特に良いところだ。初日の時点で20本以上のPS VR専用タイトルと、10本近いPS VR対応タイトルが購入できる。SIEファーストパーティ、セガ、バンダイナムコエンターテインメントといった有名どころの手堅い製品が中心だ。(レースゲームファンとしては「DRIVECLUB VR」がローンチに間に合わず、およそ1カ月後の発売になっているのが残念!)
いずれにしてもRift/Viveでは目にすることのない一流メーカーが参画してくれているおかげで、ひとまず目につくコンテンツを片っ端から試してもほぼ間違いがないという品揃えがなされているのは、多くのユーザーにとって非常によいことだ。厳選されたラインナップのおかげで目当てのコンテンツを見つけやすいし、ジャンル的にも幅広く用意されていて、初日からいろんな角度でVRを楽しめる。これがHTC Vive(Steam)になると、玉石混合の大量のコンテンツがあり、ハズレも多く、何を遊ぶかを決めるためだけに情報集めから入ることになって大変である。手軽に良質なコンテンツに触れられるという点でもPS VRは良いものだ。
厳選されたコンテンツ、ただし値段は強気である。例えばバインダイナムコ「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」は、3曲のライブを観客席から応援できるというコンテンツで、2,480円である。プロデュース要素やアイドルとのコミュニケーション要素はない。3曲でおよそ15分の歌と踊りを眺めて終わりである。ソフト価格帯の安いPCVRプラットフォームなら無料配布されるレベルである。
視点的にアイドルの位置が遠いため、VRならではの感動は薄めで、どちらかというと自分の周囲でサイリウムを振り回す群衆の迫力のほうが圧倒的に凄い。「アイマス」ファンではない筆者としてはこの内容なら1,000円くらいでいいんじゃないかと思った次第だが、熱心なファンが買うものなのだろう。なお、各アイドルのデザインが施されたコンサートライト&リストバンドのDLC販売もされていて、1点550円である。全キャラセットで7,500円である。強気だ。
よりVR的な感動にアプローチしたという点ではセガゲームス「初音ミク VR フューチャーライブ」のほうが上手だ。電子の歌姫という存在を活かしたVRらしい演出が充実しているのが面白いし、ミクさんに肉薄した視点で見られるし、曲数も多く、ボーカロイドへの関心の有無に関わらず楽しめる。価格的にはワンステージ2,700円、12月までに配信予定の全3ステージセットで7,560円と、視聴するだけのコンテンツとしてはやはり強気の価格だ。
特筆すべきは「高さ調整」というロマンあふれる機能が搭載されていることだ。この機能なんと-100cmまで調整できて、小人視点でステージを鑑賞できる。アオリ視点が好きな殿方は、さすがセガさんわかってると喝采を送ってかまわない。なおSNS界隈で「プレイ範囲の外です」画像が話題になっているが、実際にはああいうことはないので一部の方は落ち着いていただきたい。
VRならではの感動という意味ではやはりバンダイナムコ「サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム(基本ゲームパック)」だろう。キャラクターコミュニケーションに特化したVRコンテンツとして、RiftにもViveにも存在しない、高レベルのコンテンツとなっている。内容的にはヒロインの「宮本ひかり」の家庭教師として7日分の指導内容を設定するという、ごく簡単な育成ゲーム様式で、プレイ時間も短い。2,980円という価格はやはり強気である。
だが、VRならではの接近感や、見つめられてドキッとする感覚を誰もが味わえるという点で、これはVR関心層じゃなくても触れるべきコンテンツだ。感動は深い。ただ、映像的に、質感を高めるために解像度が犠牲になっているのか、全体的にボヤけた感じがするのはちょっと残念である。PS4 Proではもっときれいになるのだろうか。
そしてコアゲーマー向けのゲームであるSIE「Rigs: Machine Combat League」である。誰もが考えるFPSのVR化というミッションをこれ以上考えられないほど高いレベルで実現し、見た目にもカッコイイ本作では、VR空間内で縦横無尽に動き回りつつバトルを繰り広げるという超人的な体験が楽しめる。価格は7,452円と、完全にフルプライスのゲームとなっている。ストーリー要素の薄い対戦専用(AI戦もあるが)ゲームとしてはやはり高価な感じはするが、アクションゲーマーは触っておくべきだ。
しかしVRでのFPSはやはり難しいらしい。本作ではこれまでに知られたノウハウを総動員していろいろなVR酔い対策がなされているのにも関わらず、VR酔いに強いと自負する筆者でも、チュートリアルから試合までぶっ続けでプレイしたら悪性のVR酔いによる頭痛に襲われてダウンした(ちょっとチュートリアルが長すぎる感がある)。しかしゲームの迫力や面白さは抜群だし、試合1つは短時間で終わるので、具合が良くなったらまたプレイしたい。
他にもいろいろなコンテンツを試したが、買って本気で後悔するようなコンテンツはまだない。充実の極みにあるノンVRタイトルに比べるとまだまだ層が薄い感じはあるものの、これだけ幅広く、粒よりなコンテンツをローンチに集めたSIEはやっぱり超一流のプラットフォーマーだ。そのあたり、OculusやHTCとの格の違いが感じられる。
先行するPC向けとは違った意味で、PS VRは「楽しいVRマシン」だ。臨むはさらなるタイトルの充実。今年末から来年にかけて予定されているコンテンツは50本を数えるが、まだまだ足りない。発売当日に完売となった普及スピードがこれを良い方向に力強く後押しするだろう。
デイワンの感想はこんなところ。引き続き、PS VRで遊びつつ気づいた点を本連載でレポートしていきたいと思う。