西川善司の3Dゲームファンのための「東京ゲームショウ 2012」グラフィックス講座
現世代機の成熟期の良質グラフィックスと、次世代機を睨んだ新世代ゲームエンジンの表現に注目


9月20日〜9月23日 開催(20日、21日はビジネスデー)

会場:幕張メッセ1〜8ホール

入場料:前売り1,000円、当日1,200円、小学生以下無料

 


 今年も、東京ゲームショウに出展された両作ゲームグラフィックスを筆者の独断と偏見でチョイスして紹介してみることにする。

【著者近影】
今年の東京ゲームショウは、初めてブースでのステージプレゼンテーションを行なった。AVerMediaというビデオキャプチャ製品メーカーのブースでセミナー形式で製品の説明を行なったのだが、見てくれた人はいただろうか。なので今年の東京ゲームショウは取材して自分出演時にはブースに戻るという大変な4日間となった。時々同ブースに設置されていた「ストリートファイターIV アーケードエディション Ver.2012」で対戦を楽しんだりして息抜きをしていたが、その時、見かけられていたらちょっと恥ずかしい……。ブログはこちら



■ 「DEAD OR ALIVE 5」/コーエーテクモゲームス

「DEAD OR ALIVE 5」体験コーナー

 コーエーテクモゲームスになる前の、テクモ時代から続く対戦格闘ゲーム「DEAD OR ALIVE」(DOA)シリーズが「5」として登場した。

 「4」までのテイストからは一転、一気にリアル志向のグラフィックスとなったことが「5」のグラフィックスの特徴だ。

 まず、目に付くのが肌の質感。素ポリゴンのようだった「4」とは異なり、各キャラクター達の皮膚の質感がリアルになっている。 スキン自体は疑似表面下散乱を適用してはおらず、リムライト、拡散反射、鏡面反射の組み合わせをチューニングしたアドホックなアプローチだが、テクスチャワークの妙で、肌の質感と透明感がうまく表現されている。

 開発チームによれば、ブラー系の疑似表面下散乱はエンジンの機能としては実装して実験したそうだが、格闘ゲームではプレイ中にキャラのアップがそう起こらないので費用対効果の見地から採用は見送られたとのこと。勝利ポーズの時にはカメラも寄れるので、この時だけはそのバージョンも見たかった気はする。

 肌に関してはもう1つ、リッチな「汗かき」システムが搭載されている。格闘が白熱するとじんわりと汗が滲み出てくるが、それとは別に肌を汗がしたたる表現が盛り込まれているのだ。「汗のしたたり」は事前に生成した「したたり法線アニメーション」を、各キャラクターモデルごとに設定された「したたり箇所」から実践しているとのこと。「DOA」シリーズと言えば、豊富な女性キャラが有名なわけだが、彼女達の胸の谷間にしたたる汗を楽しむ……というのも「DOA5」ならではの訴求ポイントになっているのだ。

 髪の毛もリアルタイムの異方性反射を適用したものになっており、「天使の輪」として髪に現われるスペキュラ部分については二重生成してそれらをずらして豊かに見せる工夫を盛り込んでいるという。髪は濡れると、「濡れ髪」として、その異方性反射の効果が際立つような制御も盛り込まれている。

 髪については局所物理シミュレーションが適用されており、髪は、首筋や肩にちゃんとコンタクトするように処理される。髪が体内にめり込むようなことはない。

 ライティングやシェーディングがリアルになった「DOA5」だが、もう1つ、「DOA4」までにはあり得なかった表現にダイナミックな「汚れ」と「濡れ」がある。

 「汚れ」は投げによって転倒させられた場合など、キャラクターの接地面に泥や砂、埃が付着する表現で、これは動的な投射テクスチャマッピングによって実現されている。凝っているのは、ステージの場所場所で異なる「汚れ」が設定されており、既にキャラクターに付着している汚れに重ね書きされるようになっている。なので茶色い泥汚れに黄色い砂汚れが付着することもあるのだ。

 「濡れ」は川や水たまりがあるシーンで、キャラクターが水に浸かってしまったときなどに起こる表現で、ジーンズなどは染みとなって黒ずむだけだが、生地の薄い服などの場合は濡れると肌や下着が透けて見えるようになるのだ。水に浸かったときばかりでなく、各種アクションを通して肌と同じように服も徐々に汗で濡れたような見た目に変化していく。濡れ具合に応じてダイナミックに服の透け具合が変わると言うから凄い。

 もし、「DOA5」をプレイする機会があれば、濡れて透けるブラジャーを楽しんだ後は、ぜひとも、技術的視点でこのTeam NINJAのフェチズムシェーダの実力を見てみて欲しい。


【スクリーンショット】

(C)コーエーテクモゲームス Team NINJA All rights reserved.
Akira, Sarah characters (C)SEGA.
Virtua Fighter is either a registered trademark or trademark of SEGA Corporation.




■ 「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」/バンダイナムコゲームス

「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」体験コーナー

 「ジョジョの奇妙な冒険」連載25周年記念作品として登場した対戦格闘ゲームがこの「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」になる。

 開発はコミック作品のゲーム化には一家言ある実力派スタジオ、株式会社サイバーコネクトツーが担当。「ジョジョの奇妙な冒険」の格闘ゲームとしては、2Dタイプのものがカプコンから出ている。今作は、直接的な関連性はないとのことだが、「リスペクトはしている」と開発スタッフは述べていた。

 今作の特徴はなんといっても独特な3Dグラフィックステイストだ。

 この劇画調シェーダーは「リアルタイムハッチング」と呼ばれる種類のもので、他社製品では「戦場のヴァルキュリア」(セガ、2008年)などが思い起こされる。

 今作の「ジョジョの奇妙な冒険」では、“陰”部分に劇画調の無数の“筋線”がダイナミックに描き込まれ、線密度の高い原作のペンタッチが再現されている。

 「このテイストはもしや?」と思い、関係者に取材してみたところ、予想通りで、隠れた名作として名高いサイバーコネクトツーのオリジナル作品「アスラズ ラース」で培ったグラフィックス技術が応用されているとのことだった。

 「アスラズ ラース」では、法線マッピングのよう微細凹凸状の“陰”を描き込んだ木彫りの彫刻刀のようなタッチだったが、今作の「ジョジョの奇妙な冒険」ではこれを劇画調に進化、調整させたものとなっている。

 「アスラズ ラース」ではEPIC GAMESのゲームエンジン「Unreal Engine 3」を採用していたが、「ジョジョの奇妙な冒険」では、バンダイナムコゲームスのNUライブラリ(NUエンジン)を採用しているとのこと。

 リアルタイムハッチングだけでなく、フェイシャルアニメーションもスムーズかつ激しい動きで、同作のアニメを超越したような表現になっており、見どころの多い作品だ。

 開発スタッフによれば「開発進捗度はまだそれほど進んだものではない」とのことだったが、この時点でこの完成度の高さ。期待大の作品だ。


【ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル】



【スクリーンショット】

(C)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
(C)2012 NBGI




■ 「METAL GEAR SOLID GROUND ZEROES」×「FOX ENGINE」/KONAMI

東京ゲームショウ 2012 KONAMIブースステージイベント「METAL GEAR 25th ANNIVERSARY STAGE at TGS 2012 小島プロダクションラインナップステージ」の様子

 KONAMIが鋭意開発中の新世代ゲームエンジン「FOX ENGINE」が、東京ゲームショウのステージイベント中にデモシーケンスの形でお披露目された。

 FOX ENGINE上で動く、「METAL GEAR SOLID」のデモンストレーションとして公開されたのが「METAL GEAR SOLID GROUND ZEROES」だ。

 FOX ENGINEは、次世代機までを想定した新世代ゲームエンジンだが、他社の新世代ゲームエンジンと違い、PS3、Xbox 360といった現行機までをターゲットに含めている。エンジンというよりは、ライブラリとして設計が進められており、ステージイベントでも、エンジン単体の商業展開の予定はないものの、KONAMIグループ内プロジェクトにおいては広く活用されるようなエンジンに育て上げていきたいと述べていた。

 現在、公開されている映像としては以下のYouTubeのものだけだが、これは、実際にリアルタイム動作しているものになる。


【「METAL GEAR SOLID GROUND ZEROES」トレーラー】


 レンダラーはDeferredシェーディングというレンダリングメソッドを採用しているそうで、この手法ならではの、シーン内に動的光源を無制限における特長を活かしてリッチなライティング効果を実現しているのが、映像からも見て取れる。

 動的光源数が無制限になることと引き替えに、Deferredシェーディングの弱点として使用できるマテリアル数に制限が出てくることが指摘されているが、G-Bufferの1つにマテリアルIDをレンダリングし、別のテクスチャに出力しておいたマテリアル情報を参照するなどして、この制限を打破する工夫が実装されているらしい。グラフィックスエンジンの開発には本連載でも登場して頂いた高部邦夫氏(KONAMI 小島プロダクション プログラムユニットテクニカルディレクター)が携わっているだけに、その完成には大きな期待が寄せられる。

 なお、小島秀夫監督(KONAMI 執行役員EVP 小島プロダクション監督)がステージイベントで話していたことで印象的だったのは、「METAL GEAR SOLID GROUND ZEROES」では、FOX ENGINEの万能性を鍛え上げることも想定して完全オープンワールドのゲームとして実験していると言う点だ。

 動的な昼夜表現や広大なマップシステムを採用するなど、これまでの箱庭的なステージ構成だったメタルギアとは一線を画したゲームシステムになっているようだ。FOX ENGINEでは、まず、現行機想定で製作し、エンジンとしての経験と鍛錬を積んで次世代機へと繋げようとしているのかもしれない。

 映像の見どころはなんといっても、人間の顔面や肌の質感だ。透明感あるこの質感は表面下散乱技術を適用させたもののようだ。


【スクリーンショット】

(C)Konami Digital Entertainment




■ Metal Gear Rising Revengeance/KONAMI

是角有二(株式会社コナミデジタルエンタテインメント、小島プロダクション、クリエイティブプロデューサー)

 元々は「メタルギアソリッドライジング」として小島プロ内製で製作が進められていた同作だったが、最終的にプラチナゲームスに制作を委託する流れとなった、いわく付きの作品が、本作だ。若干の改題をうけて最終タイトルは「Metal Gear Rising Revengeance」となった。

 なお、どうして小島プロ内製で完成できなかったのか、気になる人は、脅威のぶっちゃけトークがKONAMI公式動画として公開されているので興味のある人はそちらをご覧頂きたい。小島監督らしい愛と笑い、そして潔さに満ちた告白動画になっている(笑)。

 さて、今回の東京ゲームショウでは、かなり完成度の高いプレイアブルデモが出展されていたが、正直、ここまでゲームが面白くなっているとは思わなかった。

 小島プロの是角氏のプロデュース、そしてプラチナゲームのはっちゃけ気味のアクション性の高いゲームデザインが見事に融合して「アクションゲームとして面白い」作品になっている。主人公・雷電の正座しながら火花を散らしつつ高速移動するスライドアクションには、プラチナゲームスの隠れた名作「ヴァンキッシュ」を彷彿とさせている。思わずテンションが上がってしまった筆者はプレイ中、変な笑みを浮かべてしまった。

 さて、凄いことに、このプロジェクト、半分完成していたのにも関わらず、ほぼフルスクラッチでプラチナゲームスが作り直しているのである。ゲームエンジンは、小島プロのものではなく、プラチナゲームス内製のものを採用している。そう、「ヴァンキッシュ」や「ベヨネッタ」に採用されていたものと同型のエンジンだ。

 今作の注目テーマは、なんといっても「ジオメトリの自由切断」になる。

 切断するたびに頂点数が動的に増加してしまうため、これをメモリリソースが厳しい家庭用機で実装するのは今世代機では難しいと言われていた。

 プラチナゲームスでは、これを卓越したメモリマネージメントとダイナミックなリソース管理で実現。ゲームプレイに違和感が出ない形にうまくまとめ上げている。

 実際には切断回数は有限回なのだが、最も過去に切られたオブジェクトをフェードアウト(破棄)させることで、プレイ感覚上、無限に切れているプレイ感を実現しているのだ。

 現在、この「いつ破棄するか」、「処理落ちしてもいいから、いつまでも残存させるか」というせめぎ合いで開発チームは最終調整を行なっているという。基本的に技術面においてもプラチナゲームスが独自に実装を行なった自由切断表現だが、小島プロからも、プロトタイプ版の制作で蓄積した技術ポイントはプラチナゲームスに提供を行なったとのことだった。

 なお、本作のマテリアル表現は、現世代機では標準的な手法である、拡散系と鏡面系の組み合わせによって実現している。これは、オブジェクトを切断してしまうと、テクスチャUVの再構築計算などが介入するため、シェーダや参照テクスチャにあまり欲張ることができなかったためのようだ。ただ、筆者がプレイした限りでは、ビジュアルは非常にリッチで、自由切断と映像表現の豊かさがうまくバランスできていると感じた。

 東京ゲームショウ出展バージョンの本作のレンダリングエンジンはForward系とDeferred系を組み合わせたハイブリッドタイプとのことだが、現在、この部分もパフォーマンスの様子を見て最終チューニングを予定しているとのことだった。ハイテク集団、プラチナゲームス開発チームの手腕に期待したい。

 それともう1つ。実は本作のオープニングを初めとしたカットシーンなどの映像はプリレンダーになっている。ただし、ゲームエンジンによるレンダリング結果をエンコードしてムービー化しているので、カットシーンからゲームへの移行に違和感はない。なぜこうしたシステムにしているかというと、動的なローディングシステムを採用しているためだそうだ。


【スクリーンショット】

(C)Konami Digital Entertainment




■ DmC Devil May Cry/カプコン

「DmC Devil May Cry」体験コーナー。今年もカプコンブースは各タイトルにおいてレグザを公認テレビとして指定していた

 若き日のダンテの活躍を描いた新デビルメイクライシリーズとして発表された「DmC Devil May Cry」(以下、DmC)。現在、この設定はうやむやとなったようだが、とにかく、「4」以来の新デビルメイクライシリーズと言うことで、大きい期待が寄せられている作品だ。

 この新しい「DmC」は、「カプコンの自社IP作品を海外スタジオで制作する」というカプコンの新戦略によって立ち上げられた開発プロジェクトの1つ。この「DmC」以外には、米Spark Unlimitedが開発中の「ロストプラネット3」がある。海外で特に人気の高い作品は、日本ユーザーと海外ユーザーの双方に受け入れられやすい作風に仕上げるために、あえて日本プロデュース、海外スタジオ開発とする……というのが、このプロジェクトの狙いのようだ。

 「DmC」の開発元は、英Ninja Theory。同社はPS3専用作品として海外では高い評価を受けた「Heavenly Sword」の開発元だ。

 カプコンと言えばMTフレームワークという優れたゲームエンジンを自社開発して使用していることが有名だが、「ロストプラネット3」、そして「DmC」ではEPIC GAMESの「Unreal Engine3」を採用している。

 ちなみに、既に、MTフレームワークの開発チームは、未発表の新世代ゲームエンジンの開発を進めており、東京ゲームショウ会場にいた竹内潤氏(カプコン執行役員CS開発副統括兼大阪制作部部長)によれば「来年以降、お話しできるかも(笑)」と述べていた。MTフレームワークの最新版は「バイオハザード6」にも採用されている「MTフレームワーク2.0」で、現在開発中のカプコンの新エンジンはフルスクラッチで開発が進められているため、エンジン名を「MTフレームワーク3.0」とするかも未定だという。

 スクウェア・エニックスのLuminous Studio、KONAMI小島プロのFOX ENGINEと、次世代機を見据えた新世代エンジンの発表が相次いでいる中で、虎視眈々と発表のタイミングを狙っているのかもしれない。

 だいぶ前置きが長くなったが、「DmC」のグラフィックスの話題を記しておこう。

 グラフィックスのテイストは、これまでのデビルメイクライシリーズとは、だいぶ異なるユニークなタッチが採用されている。旧来のファンはダンテのモデリングに関心が行きがちだが、今作「DmC」は、陰部分を急激に落とし込んだ特殊なシェーダーを使っているのが特徴だ。ライティング自体はごく普通の「リアル系」手法で行なわれているが、階調の落とし込みを指数関数的に行なう事で、非常に激しいコントラスト感を演出している。これは下に示した動画でも確認できるので注意深くご覧頂きたい。

 また、開発元のNinja Theoryが得意とする物理シミュレーション、アニメーションにも見どころが多く、そこかしこに「Hevenly Sword」の遺伝子を感じる。同時多発的に起こる破壊、各キャラクターと、背景や他キャラクターとの衝突判定の正確さは、さすがNinja Theoryと言ったところ。一般的に手のようなものがものを掴んだりする表現や、大きなものと小さなものとの衝突、速度の速いもの同士の衝突は、現行世代のゲーム物理では粗くなりがちなのだが、そのあたりの破綻が「DmC」では非常に少ない。このあたりも動画で確認頂きたい。


【「DmC」TGSトレーラー】



(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
※ゲーム画面はすべて開発中のものです。




■ クライシス 3/EA

 テクノロジーリーダーのドイツのCRYTEKが誇るCRY ENGINE3。その採用作品「クライシス 2」が発売されたのは2011年春。早くも続編の「クライシス 3」が2013年春に発売される。

 「クライシス 3」では、CRY ENGINE3の新リビジョンを採用しており、エンジンには新機能や従来技術の進化版が搭載されている。下が、「クライシス 3」で採用された新技術を映像でまとめあげたものになる。まずはこちらをご覧頂きたい。

【「クライシス 3」トレーラー】


●Integrated Cloth & Vegetation Simulation

 これまで、Cloth(布)や植物のような物理シミュレーションを適用して動かすオブジェクトについては、描画コールが、そのオブジェクト単位で独立していた。このエンジン設計を見直し、同一3Dモデルに対して個別のシミュレーション結果を適用して動かしたとしても、ジオメトリインスタンシング描画ができるようになった。これにより大量の植物、布が登場するシーンでもパフォーマンスか下がらないというパフォーマンス改善の新フィーチャーになる。

 ジオメトリインスタンシング描画とはDirectX 9時代に追加された新機能で、同一3Dモデルを異なるパラメータで一気に複数描画する仕組みのこと。これはエンジン側の進化になるのでPS3、Xbox 360でも効果が得られる。

 

●Pixel Accurate Displacement Mapping(PADM)

 なにやら小難しい名前が付いているが、これはテッセレーションステージを使わないディスプレースメントマッピング機能になる。

 映像で出ているのは3,000ポリゴン程度の低ポリゴンの木の幹になるが、これに対して凹凸をマッピングするディスプレースメントマッピングを行なっている効果が映像でみられるはずだ。

 このPADMは、ジオメトリ量の変化はなくピクセルシェーダによるディスプレースメントマッピングだそうで、考え方はParallax Occlusion Mappingの進化系のようなものになるようだ。POMは石畳などの平面に対する凹凸付加に適したテクニックだったが、PADMは適用先3Dモデルの接平面につじつまの合う形で凹凸が付加される。

 映像を見てもらうとわかるが、ジオメトリ量増加はないと説明されているにもかかわらず、より精細なジオメトリレベルの凹凸があるように見える。ここがポイントだ。

●Real-Time Area Lights

 形状を持った光源表現によるライティングに対応する機能。Area Lightは、日本語では「面光源」と訳されることも多い。

 同様のテクニックとして連想されるのは「投射テクスチャマッピング」だが、この手法では、その照射先のライティング結果は、拡散反射しか実現されない。担当者によれば、「Real-Time Area Lights」機能は投射テクスチャマッピングではなく、ちゃんと、鏡面反射の効果が出る点が違う、と強調していた。

 具体的な技術開示は行なわれていないが、恐らく、前述した投射テキスチャマッピングに「ビルボードリフレクション」(Billboard Reflection)と呼ばれる手法を組み合わせたテクニックだと思われる。ビルボードリフレクションとは、鏡像をビルボードの形で生成しておき、これを環境マッピング的に照射先に適用させる手法になる。Unreal Engine 3の「SAMARITAN DEMO」におけるネオンサイン、やLuminous Studioの「AGNI'S PHILOSOPHY」における祭壇の蝋燭の映り込みはこのテクニックが採用されていることが明らかになっている。

●第3世代リアルタイム大局照明

 CRYTEKといえば、リアルタイム大局照明(Realtime Global Illumination)手法として「Light Propagation Volume」(LPV)を発明し、世界の開発コミュニティを驚かせたスタジオだ。LPVは「クライシス 2」に採用され、その効果の高さに世界の開発コミュニティは震撼したものだ。

 「クライシス 3」では、その大局照明(GI:Global Illumination)エンジンが新しくなり、「クライシス 2」時点のCRY ENGINEでは実現できなかったLPVにおける鏡面反射の効果が出せるようになった。

 こちらも詳細については明らかにされず。LPV手法のまま鏡面反射に対応させたのか、それとも、Unreal Engine 4が採用したことで話題になった「Sparse Voxel Octree」法のような新手法を採用したのかは不明。

 ただ、新GIシステムは、パーティクルに対してもGI効果が適用できると説明されている。

●Composite 3D Lens Flare

 映像フレーム中の高輝度部分から光が溢れ出るブルーム効果は、従来のCRY ENGINE3にも搭載されていたが、新版のCRY ENGINE3では、これをエディタでデザインできるようになった。レンズの絞り形状や、レンズ面の傷で回折する曇りのようなボケなどもデザインでき、されには複数のゴーストが出る効果もサポートされる。レンズフレアに関しては、シーンの深度情報を参照しての遮蔽に配慮した展開もサポートされる。


(c) 2012 Crytek GmbH. All rights reserved. Crysis, Crytek, and CryENGINE are trademarked of Crytek GmbH. EA and the EA logo are trademarked Electronic Arts Inc. All other Trademarks are propety of their respective owners.




■ マックス・ペイン3/ロックスター・ゲームス

「マックス・ペイン3」体験コーナー

 ゲーム世界の時間がゆっくりと動き、自分だけが通常行動を取れる「バレットタイム」エフェクト(英語的にはブレットタイムと発音するのが正しいようだが)をゲーム界に持ち込んだのは、この「マックス・ペイン」シリーズだった。「1」、「2」の制作はフィンランドのゲームスタジオREMEDY ENTERTAINMENMTだったが、今作「3」はRockstar Vancouverが制作を担当している。先頃、日本でも発売された「マックス・ペイン3」だが、本連載では1度も取り上げていなかったのと、今回カプコンブースに併設されていたブースで大々的にお披露目がなされていたので紹介しておこうと思う。

 「マックス・ペイン3」の見どころは、なんといっても、先進的なプロシージャルアニメーションになる。


【「マックス・ペイン3」:「デザイン&テクノロジー」シリーズ】


 これは、Naturalmotionの動的アニメーション生成ミドルウェア「Euphoria」によって実現されている。

 実際にプレイしてみると、まず感心するのが、様々な人体モーションが、背景オブジェクトと正確にインタラクションする点だ。銃撃を命中させて倒した敵は、今世代のゲームグラフィックスでは、力が抜けて倒れたり吹っ飛んだりするラグドール物理によって制御されるケースが主流だ。いうなれば、倒した敵は、即死したようなリアクションをするのだ。

 「マックス・ペイン3」の場合は、少し違っていて、倒れる敵は、最終的に死ぬとしても少しの間、人間として動こうとする意志を示すのだ。例えば階段で銃撃を喰らった敵は手すりに手を伸ばそうとしたりする。

 主人公MAXのアクションの多くもEuphoriaによって生成されている。自然すぎて凄さが伝わりにくいのは、敵に狙いを定めた状態でMAXを走らせた時だ。上半身のひねり具合と腕の伸ばし方を、敵との位置関係によって適宜変化させるのだ。「マックス・ペイン3」は今世代のゲームだが、そのプロシージャルアニメーションのクオリティには次世代的な知性を感じさせてくれる。

 なお、ミニ情報になるが、PC版の「マックス・ペイン3」は、DirectX 11完全対応で、DirectX 11の新シェーダであるテッセレーションステージに対応している。PCゲーミング環境があるならばPC版がお薦めである。


(C) 2012 Rockstar Games, Inc.

(2012年 10月 5日)

[Reported by トライゼット西川善司]