E3 2012 レポート

西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィックス講座・E3特別編その1

MTフレームワーク2.0採用の「バイオハザード6」は進化したキャラクター表現に注目!


6月5日〜7日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center


 今年のE3は、Microsoftからも、SCEからも次世代機のアナウンスはなかった。

 少なくともあと1年、場合によってはあと2年はXbox 360とプレイステーション 3の時代は続くことになりそうだ。

 ただ、3Dゲームファンは絶望することはない。

 “半”次世代機的な「Wii U」は今年出るし、なにしろ、ゲームというものはプラットフォーム末期にこそ秀作が多いのだから。

 今回からはしばらく、E3会期中に巡りあった秀作ゲームグラフィックスを筆者の取材した範囲でレポートすることにする。なお、E3は会期が3日間しかないため、全てを網羅できているわけではない。漏れたタイトルについては、本誌、他の記事を参照頂きたい。




■ 初のMTフレームワーク2.0採用「バイオハザード」シリーズが今回の「6」

 今回のE3では、「バイオハザード6」、「ロスト プラネット 3」、「DmC: Devil May Cry(デビルメイクライ)」といったビッグタイトルがプレイアブル展示されていたが、カプコンの3大人気作が目白押しながら、実は、カプコンが誇るMTフレームワーク(MTFW)ベースなのは「バイオハザード6」のみだったりする。


【DmC: Devil May Cry】
【ロスト プラネット 3】

 「ロスト プラネット 3」はアメリカのSpark Unlimitedが開発を担当しており、「DmC」はイギリスのNinja Theoryが開発を行っている。Ninja Theory社はPS3専用タイトル「Heavenly Sword」を開発したスタジオとして記憶に残っているファンもいるのではないだろうか。

 ちなみに、「ロスト プラネット 3」と「DmC」は、ともにUnreal Engine3ベースで開発されていることが明らかになっている。カプコンは国内のパートナーデベロッパにはMTFWを出しつつあるが、まだ海外スタジオにはその事例がない。

 さて、「バイオハザード6」は、MTFW2.0によって開発されており、MTFW1.4ベースだった「バイオハザード5」よりもテクノロジー的に世代が新しい分、グラフィックス的にはリッチなものになった。

 特に目につくのは、暗いシーンでも豊かなアンビエント感が感じられる、贅沢なライティング品質だ。


【バイオハザード6】
暗いシーンでも豊かな明暗が感じられる「バイオハザード6」のグラフィックス

 本連載の「MTFW2.0編」でも解説しているが、MTFW開発チームはNTFW2.0より、Deferred系レンダリング技術の1つ、Light Pre-Pass Renderingを実装しており、「バイオハザード6」では、これを積極活用しているというのだ。

 関係者によれば、完全なLight Pre-Pass Renderingにはなっておらず、Forward系レンダリング技術とのハイブリッドレンダリングエンジンになっているとのこと。それは、やはり半透明オブジェクトとの絡みからくるもので、不透明オブジェクトはLight Pre-Pass Renderingでレンダリングし、半透明オブジェクトはForward Rendering出レンダリングして両者を合成するというパイプラインになっている。

 なお、大局照明(GI:Global Illumination)要素は、「バイオハザード5」の時とほぼ同様の実装形式で、シーンの要所要所において事前計算した全方向の環境光分布を球面調和関数(SH:Spherical Harmonics)で表現した形で持たせる手法を採用している(俗に言うSHライティング)。




■ 進化したキャラクター表現

 初のMTFW2.0ベースの「バイオハザード」シリーズと言うことで、キャラクタ表現にも注目したいところだ。

 今回は、キャラクターの髪の毛の表現が進化しており、「SIGGRAPH2003」でStephen R. Marschner氏が発表した髪の毛の光散乱モデルをベースにした異方性反射モデルが採用されているという。

 今回、Sherry Birkinのような、メインに髪の毛が長めのキャラクターがおり、このキャラクタの髪の毛の表現にリアリティを持たせたかったことから、髪の毛は半透明要素と不透明要素に切り分けてレンダリングして合成されている。


【バイオハザード6】
人間ドラマと化してきた近年の「バイオハザード」シリーズにおいて、キャラクター表現は最も重きを置いている要素だ

 顔面表現は、プロジェクト・ディレクターが最もこだわりを見せた要素の1つで、基礎技術は「バイオハザード5」時点のものとほぼ同等ながら、表現要素をさらに増やしているとのこと。

 「バイオハザード5」では、顔面上の筋肉の動きに準じて摂動する表皮上の法線を再計算して、「一瞬の不細工顔」がサブリミナル的に挿入されることでリアルな感情表現を実現していたが「やや大げさすぎた」という反省があったようで、「バイオハザード6」ではよりきめ細やかな表情表現実現している。例えば、眼球や目周りの動きなどがそうで、ほぼ静止状態に近い顔でも、微妙な表情変化を見せることに成功している。

 拡散反射のライティング結果を画面座標系でブラーさせて再合成する疑似表面下散乱テクニックがにわかに台頭しつつあるが、MTFW2.0では、技術そのものは実装済みとなっているものの、「バイオハザード6」ではパフォーマンス的な見地から採用が見送られたという。

 最後に、「バイオハザード6」のE3特別版の予告映像を下記に示すが、本稿で述べたような髪の毛と表情表現に着目して見ると新しい発見があるはずだ。

【トレーラー】
進化した表情表現に注目

(2012年 6月 7日)

[Reported by トライゼット西川善司]