PS4ゲームレビュー「The Order: 1886」

The Order: 1886

美しく猥雑なロンドンで展開する“漢”のドラマ
重厚で渋い世界観とストーリーが魅力のTPS

ジャンル:
  • アドベンチャー
発売元:
  • ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア
開発元:
  • Ready at Dawn
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
5,900円
発売日:
2015年2月20日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:Z(18歳以上対象)

 ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアが、2月20日に発売したプレイステーション 4用アクションアドベンチャー「The Order: 1886」は、インパクトの強い世界観を持ち、ストーリー性を前面に押し出した作品だ。

 緻密に描き出された19世紀のロンドンの街を舞台に、稲妻や炎を発する超兵器や、人から怪物に姿を変える「半獣」が登場する独特の世界観は、プレーヤーをゲーム世界に一気に引き込む。本稿ではゲームの魅力を紹介し、感触を語っていきたい。

【The Order: 1886 日本プレミア版トレーラー】

数世紀にも及ぶ半獣との戦い。魅力的な“異世界”の物語

主人公ガラハッド。円卓の騎士の名を受け継ぎ、数世紀半獣と戦いを繰り広げている
美しいグラフィックス。その描き込みは驚かされる緻密さだ
獣に変わるライカン

 「The Order: 1886」の世界には「半獣」という怪物が存在する。ライカンと呼ばれる怪物は通常は人と同じ姿だが、変身することで2メートルを超える強大で毛むくじゃらな姿に変わり、人間を軽々と持ちあげ、数メートルも吹っ飛ばすような怪力、ナイフで何度刺されてもすぐに回復するような強力な回復能力といった力を駆使し、人間を捕食する。人類から分かれたと推測されるこの種族は、人類の天敵として恐れられてきた。

 彼ら半獣と戦ったというのが伝説の「アーサー王と円卓の騎士」だ。その伝説は19世紀まで続いている。主人公の名前はガラハッド、古くからの仲間はパーシバルと、円卓の騎士の名を受け継いでいる。彼らは“聖杯”から得られる神秘の液体「ブラックウォーター」を飲むことで、重傷も瞬時に回復し、常人を遥かに超える長寿命を得る。ガラハッドもパーシバルも数世紀を生き、人類のために騎士として半獣と戦ってきた。

 19世紀のロンドンには半獣に加え、階級差別に苦しむ市民が「反乱軍」を組織し、社会的脅威となってきた。反乱軍達はどこから得たのか最新の銃火器で武装し、イギリス帝国に反旗を翻している。騎士団や警察は強力な弾圧で反乱軍と戦い、イギリスの秩序は大きく乱れている。その中で主人公ガラハッドはある1つの真実を知り、苦悩しながら「騎士としての生き方」を問われることになる。

 数世紀を生きながら、天才科学者の作り出した超兵器を駆使する「騎士団」という存在がまずカッコイイ。そして猥雑なロンドン市街を描き出すグラフィックスにプレーヤーは一瞬で心奪われるだろう。そこから広がっていく世界観、変化していく世界の中、人類を守るために果敢に戦っていく騎士団と、恐ろしい半獣、そして謎めいた反乱軍……与えられる情報は断片的で謎が謎を呼ぶ展開はプレーヤーを世界観にどっぷりつからせる。その“ストーリー”こそが最大の魅力だ。

 プレーヤーを驚かさせるのはそのグラフィックスだ。ロンドンならではの雲の多い、陰鬱な空気感、装飾が多い豪華な調度品の多い建物の中、犯罪者が潜んでいるような危険な区画、現代科学の結晶のような飛行船の中……めまぐるしく変わるグラフィックスは、PS4のパワーを感じさせる。ふとしたときに立ち止まり思わずチェックしたくなってしまう。

 本作は吹き替えの日本語音声だが、吹き替えの声優達の熱演も良い。特に歴戦の騎士であるパーシバルの井上和彦さんが渋い。井上さんと言えば若いキャラクターのイメージだったが、今作では初老の騎士であり、落ち着いた声の中に熱意を感じさせる演技がとてもはまっている。

 主人公ガラハッドの森川智之さんも、強い意志の中に疲れと苦悩が感じさせる深みのある演技を見せてくれる。また、熱血なキャラクターを演じることが多い印象のある興津和幸さんが、軽薄な色男のラファイエットを演じていたり、落ち着いた声なのに時々とてもかわいらしい一面を見せるイグレイン役の佐古真弓さんなど、声の演技にも注目して欲しい。

【激しい戦いを繰り広げる】
女騎士イグレイン。厳しさの中に時折かわいらしさが見えるのがいい。右は軽薄な色男ラファイエット
渋いパーシバルと、天才発明家テスラ
ロンドン市内で脱走者を追う。脱走者の中に半獣が
反乱軍の拠点とされるホワイトチャペル地域へ

現実とは異なる進化を遂げた超兵器を使いこなせ

現代とは異なる進化を遂げた武器。19世紀のロンドンとこの武器のギャップが面白い
隠れて撃つというのが基本的なスタイル。敵が顔を出した瞬間を狙う
特殊能力ブラックサイト。ショットガン兵を倒すのに有効だ

 「The Order: 1886」は三人称視点で進むTPSだ。敵の攻撃は激しく、物陰から隠れて射撃してくるので、こちらも隠れて敵の身体が出た瞬間を撃ち抜くというのが基本的な戦い方になる。左手にライトを持ちながら暗い地下道を拳銃で戦う、といったシチュエーションもある。

 戦闘でアクセントとなるのが、「ショットガン兵」である。彼らはタフで、こちらの攻撃にひるまず前進してきて、近距離に効果抜群なショットガンを連射する。こちらはダメージを受けるとひるんでしまい攻撃ができなくなるので、連続して食らって倒されてしまうと言うことも少なくない。初見殺しの敵と言える。

 ショットガン兵は冷静に、的確に対処するのが一番だが、騎士ならではの“特殊能力”に頼ってしまうのもありだ。L1を押すことで発動できる「ブラックサイト」は、時間の動きを遅くし、その間拳銃で敵を一方的に攻撃できる。ショットガン兵が来たらこのスキルで倒してしまうのもいいだろう。

 一定量ダメージを受けるとガラハッドは地面に倒れる。そのときブラックウォーターを飲むことで再び立ち上がれる。倒れているときはわずかに移動できるので物陰に隠れておきたい。倒れているときにさらにダメージを受けてしまうと、チェックポイントからの再開になる。連続攻撃を受けると割とすぐに倒されてしまうし、武器の反動も大きめなので最初はバランスがきつく感じるかもしれないが、本作ならではのリズムになれることで、有効に戦えるようになるだろう。

 ニコラ・テスラが発明した様々な超兵器も魅力だ。「ファルシオン」は扱いやすいアサルトライフルだが、サブ攻撃で圧縮空気を発射し至近距離の敵をひるますことができる。物陰に潜んだ敵に近づくときや、体当たりをしてくるライカンに対してかなり有効だ。

 「アークガン」は稲妻を発射できる。テスラは実在した科学者で、蛍光灯やラジオ、交流電流を発明し空中放電を行なえる「テスラ・コイル」にその名を残している。「アークガン」は実にテスラらしい武器と言える。発射には溜め時間が必要なため使いにくい部分はあるが、その威力はすさまじい。使う機会はそれほど多くない上に弾数が少ない一方で、威力だけでなく当たり判定もかなり大きいため、うまく活用したい武器だ。

 「サーマイトライフル」は「The Order: 1886」ならではの武器。通常攻撃は飛び散るマグネシウムを撃ち出すため威力はないが、サブ武器の発火弾でマグネシウムを炎上させることで周囲を焼き尽くす。物陰に隠れた敵を火だるまにできる強力な武器であり、炎が燃えている所にさらにマグネシウムを撃ち込むことで燃焼範囲をさらに広くできるなど、使い方を覚えるとさらに楽しい武器になっている。

 他にもグレネードランチャーやスナイパーライフルも登場する。敵の武器は奪って使えるので、近距離に強いマシンガンやショットガン、狙撃に有効なライフルなどを状況に合わせて駆使するのも楽しい。一度クリアしても再挑戦すると自分の腕が上がっているのが実感できるし、アプローチを変えてみるのも楽しいだろう。どう戦っていくか、というところにもこだわれる作品だ。

【多彩な超兵器を使いこなせ!】
サーマイトライフルは、マグネシウムの粉末を飛び散らせ燃焼させる恐ろしい武器だ
ファルシオンは圧縮空気で吹き飛ばす
稲妻を撃ち出すアークガン
スナイパーライフルや、ショットガンなど様々な武器が登場する
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(勝田哲也)