(2014/12/25 18:45)
年末の注目作がこの「シャドウ・オブ・モルドール」である。映画「ロード オブ ザ リング」や「ホビット」といった作品で描かれる、J・R・R・トールキンが作った世界「中つ国」を舞台とする作品だ。
本作はその世界観の魅力も大きいが、何よりも楽しいのは「強大な敵の軍勢を、たった1人で壊していく」という、これまでのゲームにはなかった「ネメシスシステム」だ。弱肉強食、いがみ合い、競い合う過酷なウルク(モルドールの言葉で、『身体の大きなオーク』を差す)の社会の習性を利用し、闇の軍勢に自分の力を浸透させていく。
このダークな駆け引きを生み出すシステムは斬新で、今後のゲームに大きな影響を与えていく、そんな予感を感じさせる作品だ。さらに、「バットマン アーカム」シリーズの影響を受けたエキサイティングなアクション性も注目だ。様々な要素が詰まった本作の魅力を語っていきたい。
死から見放された運命の男。闇の力で復讐を!
「シャドウ・オブ・モルドール」の主人公・タリオンは、“黒門”を見張るレンジャーだった。黒門(Black Gate)とは、冥王サウロンがかつて支配していた黒の国「モルドール」の入り口であり、レンジャーはサウロンの復活を防ぐために監視を続けていた。しかしタリオン達はモルドールのウルク達に襲撃を受け、“サウロンの黒の手”というサウロンの配下に目の前で妻と息子を殺され、さらに呪いをかけられてしまう。
目が覚めたタリオンは自分が死んでも蘇る身体になっていること、大昔に死んだと思われるエルフの死霊と結びつけられていることを知る。エルフの死霊は記憶を失っているが、自分とエルフが力を合わせることで、様々な闇の力を使える事がわかったタリオンは、この呪いから解放されるため、モルドールでウルクに戦いを挑み、“黒の手”を引きずり出し、倒すことを決意する。
「シャドウ・オブ・モルドール」は黒の国・モルドールを舞台としたオープンワールドアクションゲームである。プレーヤーはタリオンとなり広大な地域を駆け回り、ウルクに戦いを挑んでいく。ウルクは常に複数で行動しており、戦っていると仲間を呼ぶため、プレーヤーは常に多数の敵を相手にしなくてはならない。
本作の基本システムは「バットマン アーカム」シリーズをベースにしており、敵の攻撃にカウンターを合わせたり、うまく距離をとって戦うなど工夫し、「ヒットストリーク」を繋げることで様々な大技を繰り出していく。スキルツリーには様々な技が用意されており、ゲームが進むごとにさらに超人的な戦いを展開できるようになる。
それでも多数の敵を倒すのは難しい。さらにウルクの中には強力な小隊長がいて、彼らは通常のウルクとは桁違いの強さを持っているのだ。この小隊長は“階級”を形成しており、ピラミッドを形成している。“黒の手”に到達するには、このピラミッドの頂点にいる数人の軍団長を倒さなくてはならない。
小隊長達は弱点や特質を持っている。ウルクの中には“虫”と呼ばれる者がいて、こいつらを尋問すると小隊長達の弱点などを知ることができる。暗殺や、闇の力で射る弓「エルフショット」で狙撃したり、どう猛な野獣「カラゴル」をけしかけたりして敵を混乱させ、敵を倒していく。
タリオンは強力だが攻められると弱い部分もある。また、複数の小隊長が固まっている場合もあり、力押しでは勝てない状況も多い。時には戦いを放棄して逃げることも必要だ。しかし、ただ逃げるだけではない、オブジェクトを活用したり、隠れて距離をとるなど状況を立て直すこともできる。薬草を採取することで体力は全回復できるし、しつこく追ってくる小隊長が孤立してしまうということもある。暗殺に弱い小隊長は、忍び寄れれば一撃で倒すこともできる。本作はアクションゲーム、ステルスゲームとしてとてもエキサイティングだ。
本作は多彩な要素を持っているが、メインクエストやサブクエストをクリアすることで学んでいける。スキルを解放していくことで戦いの幅が広がり、やれることが増えていく。ゲームの中盤まではタリオンは何ができるか、そしてどんな強力な存在になっていくかを確かめていく段階となる。そして敵を自分の支配下に置くことができるようになったとき、本作最大の特徴である「ネメシスシステム」の本当の面白さが明らかになるのだ。