PCゲームレビュー「Civilization: Beyond Earth」

Civilization: Beyond Earth

新惑星への植民、文明の衝突
過酷すぎる未来の人類史を、優雅に遊ぶ!

ジャンル:
  • ストラテジーゲーム
発売元:
  • テイクツー・インタラクティブ・ジャパン
開発元:
  • 2K Games
プラットフォーム:
  • WIN
発売日:
2014年10月24日

長い旅路の末に、移民の一団は新惑星に到着する

 10月24日、 テイクツー・インタラクティブ・ジャパンより「Civilization: Beyond Earth(以下『Civ:BE』)」が発売される。本作は定番の文明シミュレーションゲーム「Sid Meier's Civilization」シリーズの最新作にして、地球を捨てた未来の人類を描く外惑星開拓史シミュレーションゲームだ。

 ときに時代は西暦2XXX年、世界的な環境の悪化、大規模な核戦争、その他もろもろの理由により地球人は危機に瀕していた。数千年の歴史を刻んだ母星をついに捨てる。そして宇宙船で運べるだけの人々……財産、スキル、人格、あるいは運によって選ばれた移民の一団は、おそらく数百年もかかる恒星間旅行の末、居住可能な新惑星へと到達したのだった。

 というプロットで始まる本作は、基本システムに前作「Civilization V」の骨格を据えつつ、SF要素の肉付けで新たな文明史を描く1本だ。宇宙版「Civ」というと1999年リリースの「Sid Meier's Alpha Centauri」を思い出すが、本作はそれとは似て非なるモノ。そのプレイフィールがどんなものか本稿でたっぷりご紹介しよう。

宇宙的要素を1から理解していく面倒と、じわり広がる面白さ

未知の惑星へ入植
エクスプローラーで探索中、エイリアンの群れに遭遇
ワーカーを使って地形を少しずつ改善していく
テクノロジーウェブ。まあ最初はオススメアイコンに従って進めるのが無難

 操作方法やインターフェイス、基本的なゲームプレイメカニクスは地球版「Civ5」のテイストを踏襲している本作だが、外惑星への植民という舞台を反映し、ほとんどの要素がSF的な要素に置き換えられている。ゲーム序盤の流れはハンズオンレポート(刻め、外惑星開拓史!「Civilization: Beyond Earth」ハンズオンレポート)にてご報告したので、本稿ではもう少し全体のフィーリングを中心に書いてみたい。

 まず、本作は各要素を把握するのが大変だ。地球時代に移民船を送り出したスポンサーの特徴を引きずる各文明の名称からして、“ARC”、“カヴィサン保護領”、“ポリストラリア”といった感じで、パッと見で何がなんだかわからないものが多い。地球版なら“バビロニア”、“ローマ”、“アメリカ”などなど、人類史を知っていればなんとなく文明の特徴や指導者の名前がイメージできたが、本作ではそれがないのだ。ゲーム要素全般を通して、本作独自の用語が散りばめられている。これが従来の地球版「Civ」と根本的に異なる部分である。

 このため、初回プレイで適当に文明等を選んで1ターン目、未知の惑星に放り出された際の不安感はかなり大きい。幸いにして、初期ユニットの「エクスプローラー」を使って周囲を探索してボーナスタイルを見つけたり、人口1の都市で護衛用に「兵士」を作るといった基礎の基礎は「Civ5」と同じだ。

 ユニットについては名前は違えど役割は「Civ5」と同じものも非常に多い。「エクスプローラー」は手斧を持ったスカウトと同じ役割だし、「兵士」は戦士と同じ役割だ。ご丁寧にユニットの移動力、戦闘力といったパラメーターも地球の原始時代の対応ユニットと同じである。

 基本資源の名称も、例えば金銭=「エネルギー」、というふうに変わっているが、その生み出し方(河川タイルで+1)や、使い方(ユニットや建物の緊急生産、外交取引の種)も同じ。「ワーカー(労働者)」ユニットの地形改善も、序盤は灌漑したり鉱山を掘ったり、道路を1タイルずつ引いたりする感じとその効果は同じだ。だから最初の数ターンで、シリーズの経験者は安心する。なんだ、「このゲーム知ってるぞ」と。

 しかしマップの探索を続けるうちに、「浮遊石」だの「ゼノマス」だの「フィラクサイト」だのといった見慣れぬ戦略資源を見つけてやっぱり不安になり、巨大なウェブ構造を持つ「テクノロジーウェブ」をマジメに眺めて不安が焦燥に代わり、邪魔なエイリアンを狩って猛反撃を受けたあたりで、焦燥は一種の諦観に変わるのだ。「やっぱり、何をどうしたらいいか全然わからねー!」と。

 そう、ここは未知の惑星。未知の時代。初回プレイで意味のある方針を立ててプレイするのはほぼ不可能。「Civ5」では地球史を我が物顔で牛耳ってきたベテランプレーヤーも、この惑星では赤子のように無知無力な存在と化すのだ。

ターンが経過するごとに次々と新勢力が降り立ってくる
わからないことはシヴィロペディアで猛チェック

エイリアンも怒らせなければどうということはない
エキゾチックな戦略資源。黄色い草みたいなのが至高アフィニティーで重要となるフィラクサイトだ
海に出ようとして1発で海獣に破壊される図。エイリアンを殺しまくっているとこうなる

 と脅してみたものの、実のところ、そこら中を徘徊するエイリアンは手を出さない限り積極的には攻撃してこないし、前述の3種の戦略資源は文明成長の方向性を示す3つの「アフィニティー」にそれぞれ対応していて、その配置が文明のおおむねの方向性を決めてくれる。そうして目指す戦略がだいたいイメージできれば、複雑な「テクノロジーウェブ」も、あまり迷わずに乗りこなせる。

 そうなれば俄然、本作をきちんと攻略してやろうという意欲が出てくるし、本作にはきちんとその意欲に応えてくれる内政外交両面の戦略オプションが用意されている。だから、本作はだいたい全貌を把握する3~4プレイ目からが面白い。試したいことがいろいろ出てきて、ついつい“あと1ターンだけ”の繰り返しをやってしまう。おかげで筆者はすっかり寝不足だ。

 逆に言えば、本作が面白く感じられるようになるまでには準備が必要ということでもある。少なくとも1プレイ目は丁寧にプレイしたい。わからない用語にぶつかることが多いので、キーワード検索もできるゲーム内百科事典の「シヴィロペディア」を開いて、技術やユニット、様々なゲーム要素の作用を頭に入れていこう。いずれかの勝利条件まで通してプレイしたら、2プレイ目で少し方向性を変え、やはり丁寧にプレイして“知ってること”を増やす。

 「エイリアン保護区」。それは“文化+2の建築物で、必要テクノロジーは遺伝子学。中盤まで都市数少なめでいくなら最優先に建て、美徳のアンロックを早めたい”とまで自然にイメージできるようになればオーケーだ。「ジェミニ」以上でニューゲームして、しっかりと方針・戦略を立てて楽しくプレイしよう。

 ……というわけで、本作はきちんと楽しめるようになるまでがかなり面倒くさい。ちなみに上述の「ジェミニ」というのは難易度の名前で、やさしいものから順に「スプートニク」、「マーキュリー」、「ボストーク」、「ジェミニ」、「ソユース」、「アポロ」となっている。本作は万事がこの調子なので大変なのだ。

 本作は明らかに「Civ」シリーズをやりこんできたコアファンに対しての挑戦である。地球版のように、“Civ新作?とりあえず1番に内燃機関研究して、戦車出せば勝ちだろ”、などと言わせないことを徹底したゲームなのだ。未知の惑星に放り出されたのは架空の植民者たちではなく、プレーヤーだった。まずは覚悟されたし。

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(佐藤カフジ)