ふんだんに用意されたイベントが生む楽しさ
- ジャンル:
- MMORPG
- 開発元:
- Lager Network Technologies
- 運営元:
- 崑崙日本
- 対応OS:
- Windows XP/Vista/7
- プレイ料金:
- 基本プレイ無料、アイテム課金
- 発売日:
- 2012年4月12日より正式サービス開始
崑崙日本が4月12日より正式サービスを行なっているMMORPG「魔導学院エスペランサ」は、“魔法”と“学園”をテーマにした作品である。プレーヤーは3つの学園から1つを選び、世界の掌握を企む邪悪な教団に立ち向かっていく。
MMORPGとして非常に間口の広い、オーソドックスな作品となっており、 プレーヤーは快適にレベルアップに励め、ふんだんに用意されたゲームイベントを楽しむことができる。“MMORPGの楽しさ”を再確認できる作品と言えるだろう。
本作は台湾Lager Network Technologiesが開発している。過去に「童話王国」を手掛けたメーカーで、本作には「童話王国」の開発で得た経験が活かされている事を強く感じる。レビューでは特にこの「遊びやすさ」にフォーカスを当ててゲームを紹介していきたい。
■ クリックするだけでゲームが進む、間口が広く、誰でも快適にレベルアップが可能
かわいらしいキャラクターに、オーソドックスなゲームシステム。「エスペランサ」は、“間口の広さ”を強く意識したゲームだと感じた |
魔女や魔王が登場するストーリーは、実際のゲームプレイとの関連が薄く、登場キャラクターも地味なためもう1つというところだ |
ゲームをスタートすると雄大な渓谷が見える。ここから基本操作を学びながら、学院まで進んでいくのだ |
「エスペランサ」の世界の“魔法”は、かつて世界を破滅させようとした“魔王”に対抗するために生み出されたという。「伝説の魔女イーリア」とその弟子達は、異世界に人々と共に逃れ、元の世界ごと魔王を封じ込める。魔王は封じられたものの、イーリアも消息不明になり、弟子達は異世界で3つの魔法学院を作ることとなった。
長い時がたち、人々は魔法の力で生活を営んでいった。そして堕落した人間が、この新たな世界を掌握するため、魔王を復活させようと活動を開始したのだ。プレーヤー達はこの危険を防ぐべく、魔導学院の新入生として、魔法の力を高めるべく、学院へと向かうのだ。
「エスペランサ」では、プレーヤーは、剣での戦いを得意とする「ソルジャー」、パーティの盾となる「ガード」、巨大なハンマーで“魔法攻撃”をする「バトラー」、魔術や妖術を使う「マジシャン」、回復魔法が得意の「ナチュール」、そしてライフルで敵を撃つ「ガンナー」の6種類の職業から1つを選び、キャラクターを育て上げていく。キャラクターは、現在のところ、1アカウントで1キャラクターのみ作成できる。
本作をプレイする人は誰しもはじめた瞬間、その“快適さ”に驚かされるだろう。ゲームは、右上に表示されるクエストトラッカーをクリックするだけで、進行していく。トラッカーに書いてある場所や、NPC、モンスターの場所へ、クリックするだけで運ばれ、そしてそこで会話や戦闘をこなすと、次の目的が提示される。それはもう「冒険」とか、「キャラクター操作」というよりも、列車に乗ってレールの上を進んでいるかのような感覚だ。
このプレイ感はある意味、現在のMMORPGの究極の姿かもしれないと感じた。プレーヤーはもうマップで迷わないし、クエストの文章を詳しく読む必要も無い。誰でも手軽に、快適にレベルアップできる。MMORPGユーザーが望み続けた“快適さ”がここにある。
そして当然、「ここまで自動化されてしまうと、ゲームとしてつまらなくなってしまうのではないか」という見方があるが、実際にプレイすると、そうではないことがわかる。次々と現われる風景、オーソドックスだからこそ理解しやすいゲームシステム、そして速いペースで上がっていくステータスと、「レベルアップ」そのものが楽しいのだ。
この楽しさは、クエストシステムに加え、「戦闘のハードルの低さ」によって生まれている。「エスペランサ」では、近付くと攻撃してくる“アクティブモンスター”がほとんど存在しないのだ。このため、敵の群れのど真ん中でも狩りができる。また、適性レベルでは倒されるようなピンチにもならないゲームバランスになっており、プレーヤーは気軽に狩りに挑戦できるのだ。どんなプレーヤーでも、次々とクエストをこなし、レベルアップしていけるのである。
また、「エスペランサ」はかわいらしいキャラクターたちに大きな魅力がある。プレーヤーキャラクターは4~5頭身くらいのデフォルメされた体型なのだが、体と同じくらいの武器を振り回す姿はパワフルだ。対するモンスターは、どこか素朴さも感じさせるぬいぐるみのようなキャラクターが多く、短い手足を精一杯振り回しているのが楽しい。メカや、悪魔のようなキャラクター、動物型に直立した野菜などモチーフも多彩で、序盤はこれらのモンスターを見ているのも楽しい。
快適なゲームプレイが、のんびりした時間を生む。MMORPGの戦闘は、プレーヤーに緊張感を持った戦いを体験させるためにバランスを工夫するタイトルが多いのだが、本作はそのバランスを、思いっきり“手軽”な方向に舵を切っている。このバランスが、ゲーム中盤以降も続くのである。このハードルの低さは特筆しておきたい。
■ 自動戦闘システムはクエストをプレイしやすくするため。パーティープレイは必要最低限
カルマカードは通常技とは比べものにならない強力な攻撃ができる。星座が浮かぶのもカッコイイ |
サブクエストではフィールドボスと戦うことも |
最初のアドバンスマップ「劇場の舞台裏」。アクティブの敵が待ち受ける |
「エスペランサ」の特徴となるシステムは、「補習特訓システム」がある。このシステムはあらかじめセットしたスキルを使い、自動で戦闘を繰り返す自動戦闘システムだ。このシステム発動中は、ジャージ姿になるのが面白い。自動戦闘というと、同じ場所にキャラクターを放置して経験値を稼ぐイメージがあるが、本作の場合、経験値は主にクエストで入るため、例えば一晩放置、というようなことをしてもうまみは少なく、むしろ「活動ポイント」が減ってしまって、プレイが続けられなくなる。
それでは補習特訓システムの存在意義はどこにあるかというと、「何々を12匹倒せ」といったクエストをこなすのに有効なのだ。「エスペランサ」のクエストの多くは、対象となるモンスターを倒すか、モンスターが落とすアイテムを集めることで進行する。そこでこのシステムを活用し、目的の場所でしばらく狩りをして条件を満たし、次の場所へ行く、というのが有用な使い方だ。プレーヤーはクエストをクリアするのに、クエストトラッカーをクリックして移動し、狩場で他の人が少ない場所に移動して、補習特訓システムを作動させるだけで良いのだ。
こういったプレイが可能なのは、アクティブモンスターがほとんどおらず、戦闘のバランスもソロ向けだからだ。さらに補助魔法の唱えるタイミングを指定できたり、回復アイテムを「体力の何%以下で使用」といった指定までできるので、従来のゲームと比べて、ほとんど操作らしいものもぜずにレベルアップが可能なのだ。
しかし、確かにオートプレイが便利ではあるが、本作はそれだけではない。「エスペランサ」の“手動戦闘”には、独特の楽しさが用意されている。それが「カルマカード」システムだ。敵を攻撃すると上昇する「エレメンタルパワー」を使用し、12星座が描かれたカードを使用する。カードには攻撃から、属性効果、回復など様々なものがあり、画面に表示されている5枚の中から1つを選ぶ。使用すると、そのスロットに他のカードが差し込まれる仕組みだ。このカードは非常に強力で、使うことでレベルが上な敵や中ボスとも戦える。どのカードが補充されるかはランダムなので、ボスと戦うときはデッキに有効なカードを揃えておく、といった“準備”も楽しい。
クエストドリブンのゲーム性、間口の広いバランス、強力なカルマカードがあり、本作はかなりソロ向けのゲームとなっている。実際、レベル20くらいまではパーティーを組む必要のあるクエストはほとんど無い。しかしレベル20前後から挑戦できる「アドバンスマップ」からは、パーティの必要性が出てくる。アドバンスマップはインスタンスダンジョンで、難易度を上げることで有効なアイテムが入手できるようになる。また、クエストをクリアするために、アドバンスマップに挑戦しなくてはならない。
最初のアドバンスマップは1~3までの難易度があり、2以上はパーティプレイが必須になる。アドバンスマップの敵はアクティブで数も多く、適性レベルではソロプレイは難しい。特に3の難易度ではフルメンバーである5人が必要で、募集は頻繁に行なわれている。本作のパーティはチャットウインドウからも勧誘が可能で、同じ学院の人達に聞こえる「学院チャット」で募集を行ない、応えた人を誘う。ゲームではかなり長い間学院周辺でクエストが進行し、プレーヤーがばらけないので、メンバーはすぐに集まることができる。
MMORPGにおいて、「パーティが集まらない」というのは、とてもストレスが溜まることだ。しかし、「エスペランサ」はパーティが必要なクエストを非常に少なくすることで、ソロ中心でゲームを進め、アクセントとしてパーティプレイを楽しませるバランスになっている。また、このクエストでは火力を集中するだけで何とかなってしまうため、職業による縛りもない。だからこそ募集に応える人も多く、盛んなパーティプレイが行なわれていた。
とはいえ、レベル40といった中~上級者(現在のレベルキャップはレベル60)くらいになると、敵は属性が重要になり、パーティでも盾役、回復役といった役割分担が求められそうである。そうなってくると、「エスペランサ」の印象が変わってくるかもしれない。そういった“本格的”な部分も楽しみだ。
補習特訓システムは設定しておくだけで、自動で戦闘ができる。回復アイテムの条件も設定できるので安心だ | ||
カルマカードは素早く戦闘を終わらせたり、強い敵と戦うときに使用する | ||
アドバンスマップを4人で攻略。火力に物を言わせて突き進む | ||
左はパーティの協力が必要な敵。中央はクエストで教えられる強化システム。右はレベル25で入手できる騎乗ペットだ |
■ 協力要素に、対人戦、多彩な「学院クエスト」。課金アイテムはアバターと便利アイテム
拠点防衛戦では最後に巨大ボスが登場する |
課金ショップは、便利アイテムとアバターが中心 |
学院イベントはかなりの頻度で行なわれている |
快適なレベルアップの先にあるのがふんだんに用意された「学院イベント」だ。「エスペランサ」には学院イベントが多数用意されており、インスタンスフィールド内で様々な戦いを体験することができる。今回は「トレジャーハント」、「シミュレーション」、「拠点防衛戦」の3つに参加してみた。
「トレジャーハント」はマップ内に現われる“宝箱”を集めていく。宝箱は次々と現われ、特に金の宝箱は出現ポイントが告知される。ここではPKが可能で、金の宝箱の争奪は激しくなる。倒されるとフィールド外に転送されるが、すぐ復帰が可能だ。ただ、このイベントの評価が、「何人倒したか」というものであるため、レベルの高い人達が出現ポイントに待ちかまえ、ひたすらPKするというかなり殺伐としたものになってしまっている一面もある。
「シミュレーション」は次々と現われるモンスターを倒していくイベント。敵は大量で、囲まれるとあっという間に倒されてしまう。レベル25から参加可能なのだが、適性レベルぎりぎりの場合は他の盾役のプレーヤーを援護する形になる。それでもカルマカードの効果が強く、そこそこ活躍できるのが楽しい。活躍に応じてポイントが得られる。
「拠点防衛戦」は、オープンβテストから追加されたコンテンツで、展開が非常に凝っているオススメのイベントだ。誰でも参加可能で、基本は敵の襲撃から砦を守るというものなのだが、敵が自爆型のロボットを率いてくるのを食い止めなくてはならない。もし自分が低レベルのキャラクターで、バトルでそれほど貢献できない場合は、爆弾解除や、倒れているNPCを救護センターに運ぶことで貢献ポイントが得られる。この貢献ポイントは学院ごとに集計され報酬が得られる仕組みだ。
この他、今回は体験できなかったが集団戦が楽しめるPvP要素の強いコンテンツが用意されている。これらはレベル30以上のため、もう少し集中的にプレイしなくては参加できない。「エスペランサ」におけるレベル30は、コアプレーヤーならば数日で、そこそこ熱心なプレーヤーならば1週間くらいで到達できるもので、今後はもっともっと盛んになるだろう。
本作の学院イベントは数が多く、刺激を求めるプレーヤーにはぴったりだ。また、上位の成績を残したプレーヤーには「ボーナスコイン(BC)」が与えられる。このポイントは課金通貨に近いアイテムが買える。彼らの求めるものは「活動ポイント」の補充である。「エスペランサ」はプレイし続けると、活動ポイントが減り、経験値が得られないなど、成長にブレーキがかかるシステムがあり、ずっとログインし、戦闘を続けているコアプレーヤーにとって、課金せずに活動ポイントを確保するために、イベントに積極的に参加する、という側面もあるようだ。
4月12日よりスタートした課金システムだが、課金ポイント「エスペランサコイン(EC)」で購入できるアイテムは、「装備強化」、「活動ポイント補充」、「アバター」、「ペット」となっている。面白いのは、アバターがレンタルに対し、ペットは買いきりで、ペットに様々な“飾り”をつけていく、という方向性だ。課金アイテムはこの他にも強力な回復や、死亡時の復活、倉庫拡張などがある。全体的に、課金アイテムは初心者が上級者に追い付くためというよりも、上級者がさらに集中してゲームを進めるために用意されていると感じた。
また、課金ポイントECの他、前述のBC、さらに課金ポイント購入時に得られるSPがあり、これらでも効果の近い便利アイテムが購入できる。一方で、ポイントが3つもあると多少煩雑になってしまい、アイテムの有用性が直感で分かりにくい部分があった。また、ECは、まず現金を、崑崙日本のコラムゲームポイントに変更してから、ゲーム内でも「補充」という手順をするため、最初はわかりにくかった。ポイントの使い方に関しては、ゲームに慣れてくれば見えてくると感じたが、購入に関してはもう少し分かりやすい案内が必要だ。
全体的に「エスペランサ」は、初心者がプレイしやすく、間口の広いゲームだと感じた。ゲームプレイは自動の要素が強く、レベルアップしやすい。その上で多彩なイベントが用意されており、プレイしやすく、魅力の分かりやすいゲームだと感じた。
一方でやはり足りないと感じるのは、“個性”だ。3つの学園は違いがなく、クエストは敵を倒すかアイテムを集める似たものばかりで、ストーリーが頭に入らない。プレイしやすさ、快適さに注力するあまり、コンテンツとしてのインパクトが足りないと感じた。世界観の個性と、魅力的なストーリーはやはり欲しい。こういった部分は、今後強化していって欲しい。
マップ内に現われる宝物を集めていくトレジャーハント。プレーヤー同士の戦いも熾烈だ | ||
たくさんの敵が現われるシミュレーション。敵に囲まれないように注意が必要だ | ||
展開が凝っている拠点防衛戦。レベルが低いプレーヤーも爆弾解除などで貢献できる | ||
課金アイテムのラインナップ。アバターはレンタルで、ペットはパーツをつけて飾り立てることができる |
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(2012年4月17日)