Kinectによる自分の身体を使った操作で味わうホラーバイオレンスという、セガが放つ意欲作「RISE OF NIGHTMARES」。発売日には体験版をプレイしてのファーストインプレッションをお届けしたが、今回は製品版をじっくりプレイしてのレビューをお送りしよう。
狂気を感じさせるバイオレンスでグロテスクな世界と物語、エリアを自由に動ける魅力と隠されたアイテムを探す魅力、多彩な武器や動きのジェスチャーアクションなど、より詳しくゲーム内容やプレイ感についてまとめていこう。
― Story ― ソビエト時代の古びた列車が 運命の悲劇に巻き込まれていくとも知らずに…… | ||
■ “呪われた森”を進む列車から始まっていく物語
1人、先頭車両の方へ行ってしまう妻のケイト。おぞましい物語の始まりであり、2人の命運を分ける別れになってしまう |
本作の冒頭は、ある衝撃的な場面から始まっていく。チュートリアル的な場面でもあるのだが、そこではまずプレーヤーに「そんな……!」と思わせるような衝撃的な出来事が襲い来る。本作の“エグみ”を実感できるシーンであり、それを期待していた人の気持ちに挨拶をするような場面だ。
場面は変わり、いよいよ物語が始まっていく。舞台はルーマニアに向かう列車の中。主人公は妻ケイトと共に旅行に来たアメリカ人のジョッシュだ。せっかくの旅行だというのに酒浸りのジョッシュにケイトは怒り、1人先頭車両側へ去ってしまう。それをジョッシュが追いかけていくという場面だ。
列車の先頭車両側へと進んでいくのだがファーストインプレッションでも基本の操作をまとめように、本作の操作は全て自分の身体で行なう。前進と後退は片足を前や後ろに出し、視点操作は上半身をひねる。手をかざしてポインタ操作で気になるところを調べ、ドアは押したり横にスライドさせるような動きで開ける。
様々な動きをジェスチャーでするのが本作のポイント。この切符を見せる場面では、自分の手を前に差し出す。現実と同じでわかりやすい |
基本以外にユニークな操作もたくさんある。例えば、列車の乗務員とすれ違った時に切符を見せる時には、片手を前に(まさに手に持った物を渡すように)差し出す。洗面所で顔を洗う時は手を顔のあたりに近づける。このように本作にはいろんな操作が出てくるのだが、直感的に見たままの身振り手振りでできるのがポイントだ。
他の乗客と軽いコミュニケーションを交わしつつ列車内を進んでいく。堅物そうな老人、一人旅をしているらしき学生風の女性、通路で柔軟をしているバレリーナの姉妹の、足の下をくぐる(頭を下げる)なんていう場面まである。本作の世界観の特徴として、他の人物がルーマニア語で話していてジョッシュことプレーヤーには何を喋っているのか分からないという場面が出てくる。あえて翻訳されないのだ。現実にもあるようなシチュエーションだが、ルーマニア語でなにやら周りが笑っていたりと、嫌な疎外感や不安を与えている。
不思議な人物との出会いもある。現地の占い師だろうか。ミステリアスな雰囲気を持つ女性にはタロットカードでの占いをしてくれる。過去、現在、未来の暗示をカードから読み取るのだが……。占い師は未来のカードを恐れ、ルーマニア語で何かをつぶやく。「彼が迫っている。もうこれは手遅れかもしれない……」占い師はそう告げた。
列車内には様々な乗客が乗り合わせているが、彼らもまた凄惨な事件に巻き込まれていく。中にはルーマニア語で話す人もいて、アメリカ人のジョッシュには何を喋っているのかわからない |
次第に高まっていく嫌な予感に、車両を移る時のドアにすら“なにか開けた先に待っているかのよう”で恐ろしくなってくる。そして……凄惨な事件が起き、ジョッシュと何人かの乗客はからくも生き延び、脱出していく。
ここからが物語の本格的なスタートだ。天気は悪く常に雲に覆われて薄暗い。周囲には深く広大な森が広がるばかり。現地を知る乗客や乗務員によれば、この森は「呪われた森」と呼ばれているそうだ。ケイトを探し、そして生きて脱出するため、このおぞましい森を進んでいく。
遠くに見える古めかしい城、そして周囲にある遺跡の跡や地下室。森にはつり下げられた死体の数々。異常なシチュエーションの連続に追い詰められていく。
ケイトを追ううちに事件が起き、列車から脱出することに。暗い森にはヒルのいる河や(ヒルは自分の手を払う動きで取り除く)、死体が惨たらしく吊されていたり。呪われた森として現地の人に恐れられている場所だった |
■ 多彩な武器を駆使して押し寄せるクリーチャーと戦い、生き延びる!
クリーチャーとの戦いには武器が欠かせない。画像のように金属パーツが組み込まれているクリーチャーもたくさんいるので、生身の部分を狙って腕を振るのがポイントだ |
武器はある程度使うと壊れてしまう。画像では武器が赤く光っていてもう壊れる寸前。でもまだクリーチャーが残っている。すぐに別の武器を見つけないと苦戦は必至だ |
クリーチャーとの戦闘は、自分の腕を構えファイティングポーズをして、殴る、蹴るといった動きで行なう。前進・後退で距離を測りつつの戦闘も可能だ。戦闘で非常に重要になるのが武器の存在で、武器なしではクリーチャー1体を倒すのにもだいぶ苦戦させられてしまうが、武器さえあれば複数を相手にしてもなんとかなる。それだけに、武器がない場面ではかなりあせらされる。
武器の種類も非常に多彩だ。鉄パイプなどの打撃系、ナタや斧のような切り裂く斬撃系、パンチのジェスチャーで扱うナックル系、メスや劇薬の入った試験管といった投げて使う投擲系などなど。より過激なものでは、チェーンソーや大バサミといった、クリーチャーを一撃で粉砕しバラバラにしてしまうようなものもある。
こうした武器は、使っていくうちに壊れてしまう。所持している武器アイコンが画面の左下に表示されるのだが、使っていくうちに赤く光り、最後には壊れてしまう。複数のクリーチャーを相手に必死に戦っている最中に壊れてしまった時の絶望感たるや、なかなかのものだ。周囲をよくみて補充できる武器を把握しておかないと、大変なピンチに陥ってしまう。
武器は冷静にプレイしていれば十分な量があるのだが、しっかり探索して見つけておかないと余裕がなくなってしまう。進むたびに新しい武器が登場して、そのアクションや使い勝手を楽しむという面もあり、このあたりの遊ばせ方はとてもうまくできている。
武器を常に所持していることが最も重要だが、武器を効果的に扱うのも重要だ。クリーチャーはなんらかの実験めいたものを施されていて、身体の至る所に金属のパーツが付いている。そこを攻撃しても攻撃の効果は弱い。手の振りを変え、生身の部分を攻撃するのがポイントだ。
また、腕が刃物のようなパーツになっているクリーチャーもいて、こちらがそこをナタのような斬撃武器で切断すれば、そのパーツを武器として拾えるようになる。クリーチャーの攻撃力が弱まり、こちらの武器も増えて一石二鳥だ。あまりにクリーチャーの数が多くて武器が足りなくなるような場面にも頼りになる。
クリーチャーの倒れ方というか死に方は、ドロドログチャグチャなバイオレンス。腕が切れる、首が飛ぶ、それでもまだ動いているなんていう連続だ。動きもくねくねしているかと思えばいきなり走り寄ってきたりと様々。後ろからいきなり掴みかかられてクリーチャーの顔がアップに、なんていう場面も山盛りで、グラフィックスのクオリティの高さも相まって、おぞましさや激しさはまさに、本作のレーティングが「Z」であることを改めて感じさせてくれる。
■ “探索”が重要であり大きな魅力。「テープ」と「タロットカード」を探す!
エリアの様々な場所に隠されている「探偵の調査記録が残ったテープ」。異常なこのシチュエーションの背景を知る重要な手がかりになる |
「あ、テープがあった!」と思いきや、左にあった箱が開いてクリーチャーが襲ってきた、という場面。こんな風にじっくり探索しているプレーヤーを驚かせる仕掛けもあって、探索することでより面白さを味わえる |
Kinect専用タイトルながら、自由に移動して探索ができるのが本作の大きな特徴だが、探索することで発見できるものもいろいろとある。
世界観を知る上でも重要なのが、「探偵の調査記録が残ったテープ」だ。そこかしこにそっと隠すように置かれているのだが、これを手に入れると、ある人物を調査してジョッシュたち同様におぞましいクリーチャーに襲われた探偵の声の記録が聴ける。
もうひとつ隠されているものが、「タロットカード」だ。こちらもそこかしこに1枚ずつ隠されている。物陰にそっと置かれていることもあれば、箱を壊すと中から出てきたりすることもある。だが、そうしてテープやタロットカードを探していると、箱の中からクリーチャーが飛び出してきたり、テープやカードを取ろうと近づくと別の方向からクリーチャーが襲ってきたりなんていうこともある。プレーヤーをおびき出す餌のようになっていることもあって気が抜けない。
こうした武器や要素は、自分で探索することで見つかるものが多い。本作ではオート移動(右手を挙げ続けている間、自動で進んでくれる)ができるのだが、オートで最短距離を進むのでは隠れた物を見つけられない。怪しいところを自分の意思で進むのがポイントだ。
一方で、場面によっては開けた場所になっていてどっちに進んだらいいか迷ってしまうところもあって(もちろん状況的にもマップなんてない)、そういうところではオート移動すれば次の場所へ向かってくれるのが便利。使い分けて快適にプレイできるように工夫されている。
木箱を壊したり、クローゼットや冷蔵庫の中を調べることもできる。そうした場所に、テープやタロットカードが隠されていることもある。だが、中にクリーチャーが隠れていたり、とんでもなくおぞましい物が出てきたりすることもあって気が抜けない |
危険なトラップもたくさんある。画像は回転する巨大な刃を交わして進むという場面だ |
マップの仕掛けも豊富にあって、それに対応する動きをするというのも本作のポイント。急いで走る(その場で足踏み)、はしごを昇る・降りる(両手を上げて足場を交互に掴むような動き)、ドアを開けたら突然槍が飛び出た! という時にはしゃがむ(頭を下げる)やバックステップ(素早く後ろに下がる)。こんな感じで、本当に様々な動きをする。その豊富さと、説明なしに自然に操作できるところには感心させられるだろう。
もっと凝ったものもある。横たわるクリーチャーのお腹に手を突っ込んで何かを探したり、○○に手をつっこんだりと、思わず「うへー……」となってしまうような場面も。これが従来のパッド操作でやるのならそこまでのものでもないが、自分が腕を伸ばしてシンクロさせていると、なんだか嫌なゾワゾワくるものがあるのだ。
また、オルゴールのような装置をレバーを回して鳴らすという場面でも、空中で手を回す速さをしっかりと検知している。そうした細かいギミックもあった。Kinectのポテンシャルの高さと、それを上手く使っている本作のたまものだ。
地面から槍が突き出すところを慎重に進むなんていう場面もあるのだが、クリーチャーももちろんそうしたトラップでダメージを受ける。近づいてきていたクリーチャーがトラップでグサッといって倒れていく様は、なんかかわいそうというか、ユニークなところもある。クリーチャーの種類にもいろいろいてどれもおぞましいのだが、遊びこんでいくといくつかの種類になんだか愛着が沸いてくるのが不思議なところ。
地面から槍が飛び出すという危険な場面だが、こちらに迫ってきたクリーチャーが槍に貫かれてバラバラになってしまった。そんな光景になんだか愛着が湧いてくるような気もしなくもない | ||
物語が進むにつれてクリーチャーもより多彩に。画像中央と右のクリーチャーは耳をつんざくような声をあげてくる。それをこちらは耳を塞ぎながら近づくのだ。他のクリーチャーと一緒に出てくると非常に厄介な存在だ |
プレーヤーを随所で苦しめる「エルンスト」。襲われればひとたまりも無いのだが、こいつは音でしか周囲を探知できない。じっと離れたところでやりすごすのだ |
一方で、プレーヤーにとって脅威のアクセントになっていて、愛着どころではないのが、「エルンスト」という特殊なクリーチャーだ。このクリーチャーは倒すことはできず、いわゆるボス的な凶悪な存在。音で周囲を感知していて、彼が近づいているときには音を立てたり動いたりしてはいけない。じっとしていてもあまり近くにいてはダメだ。エルンストは随所に登場するのだが、狭い場所で遭遇したときには、急いで隠れ、やりすごすことになる。
このほかにも、ネタバレになるので詳しくは書かないが、ボスとの戦いで、普通のクリーチャーとの戦いとは異なるアクションを駆使したりなど、ゲーム的な部分もしっかりと作りこまれている。ジェスチャー操作のような新しい試みを取り入れたタイトルでは、遊びやすさを考慮しすぎるあまりに複雑なものを入れられなくなってしまったりする傾向があるが、本作はけっこう大胆に組み込んでいると感じた。ゲーム的な魅力がしっかり押さえられている。
一方で難点というか、さすがに連続してプレイしていると疲労を感じるところはある。ゲーム内容的にも緊張が連続して続く作りでもあるので、緊張状態でのKinect操作の連続とあいまって、普通よりも疲労を感じるところがある。これは遊び方と慣れの問題ではあるが、武器を振る動き1つでも、ある程度遊んでいると当然疲れてくる。休憩に適した緩和の場面がもう少し適度にあったら、物語の緩急もつき、プレイのしやすさ的にもありがたかったかもしれない。プレイの際には、じっくりゆっくりと取り組むのがオススメだ。
■ バイオレンスと狂気の世界をたっぷり味わえる本格タイトル!
ジェスチャー操作の新鮮さもさることながら、多彩な武器を駆使しての戦い方やエリアの探索など、ゲーム的な魅力をしっかり作り込んでいる |
Kinectによるジェスチャー操作の楽しさもさることながら、それを上手く、多彩に使っているのが本作の大きな魅力。仕掛けの操作もさることながら、中盤以降には戦闘にも特殊なジェスチャー操作が組み込まれている。こちらも武器が多彩になっていき、大量のクリーチャーを相手にどう立ち回るのか、ゲーム的な要素を十分に楽しめるようになっていく。
ホラー的要素としては、グロテスクさとバイオレンスを全面にしたところが強め。一方でエリアを探索すると、そこかしこにおぞましさや気持ち悪さを感じさせる“狂気”のテイストが攻めてくる。それでも、ジェスチャー操作の新鮮さや武器を使ったアクションと、身体を動かしているぶん、怖さは薄められているといえるだろう。嫌な予感にびくついたり、突然の出来事に驚かされるという傾向が強めだ。
プレイ環境としても、前後にはスペースを使うものの、横方向は使わないようになっていて、できるかぎり省スペースで遊べるよう配慮されているのが感じられる。本レビューでも触れてきたように、しっかりと遊びこめる1本なので、ホラーゲーム好き、アクションゲーム好き、Kinectで骨のあるゲームを遊びたいとお考えの方に、ぜひプレイしてもらいたい。
(2011年 9月 20日)