ただでさえ恐ろしいホラーゲームを、“自分の身体の動きでプレイ”したらどうなるだろうか?
株式会社セガから9月8日に発売された「RISE OF NIGHTMARES」は、Xbox 360の「Kinect」でプレイするホラーアドベンチャーだ。「Kinect」と言えば、自分の身体の動きで操作できるデバイスであり、本作は“踏み出して歩く・後退する”、“殴る・蹴る・武器を振る”、“敵に掴まれたら突き飛ばす”等々の各種アクションを、自分が動いて操作するゲームになっている。今回は体験版をプレイさせて頂いたので、身体を使った操作とその感触、狂気に満ちた「RISE OF NIGHTMARES」のプレイの様子を紹介していこう。
■ 狂気に満ちた世界……。自分の足で“進み”、上半身を傾けて“視点”を操作する
椅子に縛られたジョッシュと、マックスという男を、血まみれの手術着をつけた男が斧を片手にいたぶる。冒頭からショッキングな描写の連続だ |
今回プレイした範囲は、こちらの記事で紹介している第3章のシーン。意識を取り戻した主人公ジョッシュの身体は椅子に縛り付けられていて、動けない。薄暗く窓も無い異様な空間。日常の平穏とはかけ離れた場所。目の前には血だらけの手術着をつけた男が立っていた。
部屋には自分と同じように椅子に縛り付けられている男がいた。マックスという人物のようだ。だが、手術着をつけた男が斧を手に取り、彼をむごたらしく拷問し、そして残酷に命を奪った……。狂ってるとしか言い様がない。
男はどこかに行ってしまった。だが部屋にはまだ、どこか様子のおかしい女性が残っている。着ているものから察するに看護婦なのだろうか? 彼女が振り向くと、肌は血の気が失せて青白く、目や鼻や口など至るところから血を流した跡があった。かつて人間だったが今はもう違うものに変わり果てていたのだ。だが今も動いている。おぞましいそれは、斧を手に取りこちらに向かってくる。もう、終わりだろうか……。
どこかに行ってしまった男の代わりに、看護婦が自分を見張る。だが、女性はもう人とは言えない存在だった。長い舌をくねらせながら近づいてくる姿はもう、気持ち悪いやらおぞましいやらで、たまらない |
危機を何とか逃れたところからゲーム開始。手をかざして室内を調べていく。扉は前に立って腕で押し開けるようにすれば開ける |
移動操作には“自分の足”を使う。片足を前に出せば前進、後ろに出せば後退だ。検知は細かでレスポンスもよく、足幅で速度の調節もできる |
絶体絶命の危機をからくも逃れたところからゲームが始まっていく。ここからは自分の身体の動きでジョッシュを操作するのだ。画面はジョッシュの目線になる主観視点。主観視点とジェスチャー操作で、まさにジョッシュになりきってプレイするというわけだ。
手を前にかざすとターゲットポインタが画面に表示される。断末魔の表情のまま、もう動くことのないマックス。それをあまり見ないようにしつついろんなところをかざしていくと扉の存在に気づき、「!」マークのアイコンが表示された。扉の前に立ち、自分の手を前から横へ動かして扉を押し開ける。現実同様の動作だ。
ここからは自分で歩き探索して進んでいく。自由探索なのが本作の大きな特徴だ。歩く時は自分の片足を1歩前へ踏み出せば良い。その状態で前へ進み続けてくれる。逆に後ろに下がる時は、片足を後ろに下げればいい。足の幅で歩く速度の調節もできる。
部屋から出るとそこは通路になっていた。自分たちが閉じ込められていたのと同じような部屋や、鉄格子の牢屋のような場所が並んでいる。その様子を覗きながら進んでいく。
視点操作は自分の上半身をひねって行なう。左にひねれば視点も左へ、右にひねると右に視点が動く。首は画面に向けて正面のままなので、肩で視点を操作しているという感覚だろうか。足幅同様に、肩を大きく前に出せば視点は早く、少し出せばゆっくりと動く。
視点操作や前進・後退は同時に行なえる。片足を前に踏みつつ肩を動かせば、視点を動かしながら進める。いずれの操作も非常に感度がよく自然にできる。足を踏み出す幅や上半身のひねりも、とても細かく検知していて、おおげさにするまでもない。ほんの少し自然に動かすだけで、きっちり反映される。この操作感覚の良さには非常に驚かされて、思わず「おお、これはすごい!」と声に出たほどだ。ジェスチャー操作で行なうアクション操作は、それだけでも1度は体験してみてほしいレスポンスのよさだ。
■ 襲い来る異形の存在……。ファイティングポーズを“構え”、腕を振って“戦う”
本作には様々な武器が登場する。画像はホラーの定番武器(?)「鉄パイプ」を手に入れたところだ。武器によって振り方も変わってくる |
ファイティングポーズをとって戦闘状態に。自分の腕を振ってパンチしたり、武器をふるったりして戦う。見たままの直感的な操作だ |
操作を楽しみつつ、通路に並ぶ牢屋を覗きながら進むと「あぁ、見なければよかったなぁ……」と思うようなむごたらしい場面を見てしまった。怖い。でも先に進んでみたい。でも怖い。そんな風に心をびくつかせながら進むと、傍らに鉄パイプが落ちていた。武器だ。手をかざしてこれを手に入れた。
通路の角から人影が見えた。だが、人では無かった。先ほどの看護婦のように、おぞましい怪物になり果てた男だ。衣服はボロボロで、身体を縛っている拘束具のようなものが巻かれている。自分やジョッシュのように拷問されて死んだのだろうか? 男は体をくねらし揺らしながら、ひたひたと近づいてくる。逃げ道はなく、戦うしかない。
戦うときは、ファイティングポーズを取る。両手を胸の辺りに上げてファイティングポーズをすれば、画面にも両腕が出てきて、敵をロックオンしてくれる。両腕は自分の両手とシンクロしていて、左手でパンチすれば画面の左手もパンチするし、右手も同様。この時は右手に鉄パイプを持っていたので、腕を振れば鉄パイプを振っての攻撃だ。方向も自在で、上から振り下ろしたり、横になぎはらうこともできる。
こうした操作は意識しなくても自然にできてしまう。というのも、敵の出現に驚いて自分が身構えると、主人公も自然とファイティングポーズをしてくれる。そこから目の前を殴るようにすれば攻撃してくれる。迷う事のない直感的な操作だ。また、敵に驚いて片足が後ろにいってしまったのだが、主人公もそれにシンクロするようにゆっくりと後退していた。心理状態がそのままプレイにでるような、うまい作りだ。
また、足でのキックもできる。もちろん操作は自分の足で蹴るのだ。前に足を突き出せば前蹴りが出て、敵の体勢を崩せる。武器に比べればパンチやキックは攻撃力が低いということだが、パンチと武器でワンツーを決める感じにすれば武器の攻撃をしっかりと当てやすいし、キックは距離を取るのに扱いやすい。なによりも、実際に敵を相手にして片腕だけで戦うのはおかしい。手足全部を使って戦うほうが自然だし、面白さもある。
ファイティングポーズ中は自分に近い敵をロックオンする。距離を詰めて、腕を振って攻撃! 腕を振る方向によって攻撃の向きや角度も変わってくる | ||
腕を突き出してストレートのパンチをするのはもちろん、横に殴ればフックもできる。また、足を前に出せばキックして相手をひるませて距離を離すこともできる。キックは特に日常なかなかしない動きで、どこか爽快感があるというかストレス発散になるのが妙に魅力的だった |
不意を突いて襲ってくる場面も。間近に見る敵の姿は生々しくておぞましい。グラフィックスのクオリティも非常にいい味が出ている |
敵にしがみつかれた! アップになった敵の顔、今にも食いつこうとしている口。この時は両手を前に出して押して引きはがすのだが、言われなくても自然にそうしてしまうところがある |
鉄パイプで敵をなぎ倒し、そろりそろりと進んでいく。通路にいかにもな死体があった。「どうせ、これが起き上がってくるんでしょ? 」と思っていたのだが、横から別の敵が不意をついて襲ってきた。想像していなかった事態に驚いているところに、倒れている敵もやっぱり起き上がってきた。1度プレーヤーの予想を崩しておいて、さらにたたみかけてくる。驚かせる仕掛けもうまくできているのだ、これが。
不意に襲ってきた敵にしがみつかれてしまった! 画面いっぱいにおぞましい顔のアップになり、今にも噛みつこうとしている! 思わず「うああっ! 」と声が出る筆者。組み合って抵抗していて画面も激しく揺れているところに、「突き飛ばす」というアイコンが表示された。アイコンの通りに両手を前に突き出す! 「離せっ! 離せぇっ! 」と言わんばかりにバンバン両手で前を押す。すると、主人公も相手を突き飛ばして距離を取ってくれた。
片足を引いて後退し、距離を取りつつ2体を相手にしていく。ファイティングポーズはもう自然にしてしまう。敵が大振りに腕で殴りつけてくるのを、ガードする。ガードはファイティングポーズのままで入れば自動で行なってくれるので難しくはない。ただこちらの攻撃中はガードにならないので、攻撃するタイミングに気をつけるのがポイントだ。
戦っていると、こちらの攻撃が「カンッカンッ」と何かはじかれているような音がするのに気づいた。よく見ると敵の腕が金属になっているのだ。義手のようなものだろうか? これではそこを殴ってもダメージを与えられないだろう。そこで、横に鉄パイプを振るのをやめて、縦に振り下ろして頭を狙った。このように振り方で相手の部位を狙うという要素もあるのだ。
なんとか2体を倒して進むも、この後もショックな出来事の連続だった。実はこのシーンではジョッシュと一緒にグレゴリーという老人がいたのだが、彼があるものを発見してこちらを呼び止めてきた。何かこの状況が前に進むようなイベントがあるのだろうかと期待したのだが、その直後にとんでもないことが起きてしまう。突然のことに筆者は絶句してしまった。
あまりの出来事に固まっているところに、物陰に隠れていて見えなかった敵にしがみつかれたり、さらにたたみかけるように数体の敵が出てきたり……。悪夢のような時間を過ごすことになった。
敵の中には、身体の一部が金属になっているものがいて、そこを攻撃してもたいしたダメージを与えられない。腕の振りを変えて、生身の部分を攻撃しよう | |
唯一のまともな人間であり同行者だったグレゴリー。通路に何か怪しいものを見つけるのだが……。彼にはショッキングでバイオレンスな出来事が起きてしまう。これはぜひ製品でご覧頂きたい |
異常なシチュエーション、躊躇することなく惨殺する謎の男、嫌な動きをみせる敵など、全体のホラーテイストは“狂気”を感じさせるものがあった。操作は「Kinect」を使ったジェスチャーであり新鮮、それでいてしっかり遊びこめるコアなゲームになっている |
ひとまずゲーム内容についてはここまでにして、今回のプレイで得た本作の魅力をまとめよう。本作最大のポイントはやはりジェスチャー操作だ。レスポンスも細かさも非常に良い。
特に移動操作ができるのが非常に大きくて、「Kinect」専用タイトルで移動操作のある従来のものに近いゲームをプレイするにはどうしたらいいのかというところに、ひとつ答えを示した感がある。足踏みではなく踏み出していれば自動で進むという操作にしたのもシンプルかつ楽でいい。
こうした操作が、ホラーで驚いたり怖がったりしたリアクションにシンクロしてくるのも魅力で、敵を前にして後ずさりしたり、パニックになって効率的な操作ができなくなったりと、自分の状態がそのまま動きに反映されるところがある。これも「Kinect」ならではだろう。
一方で、「Kinect」操作の魅力だけではなくゲームとしてもしっかり作り込まれているのがポイント。ライトに楽しめるタイトルがほとんどの「Kinect」だが、本格的に遊びこめるコアな作品になっている。グラフィックスのクオリティの高さはもちろんとして、BGMもバイオリンの旋律を中心とした“精神にくる”ものになっている。それがもうたまらなくこちらを追い詰めてくる。
作品全体のホラーのテイストは“狂気”を感じさせるものがある。冒頭の血だらけの手術着をつけた男の拷問であったり敵のうねうねとしたシュールさも感じさせる動きだったりと、異常なシチュエーションの連続で、どこか常軌を逸したセンスに彩られている。そしてそこに、レーティングZのバイオレンスな描写が折り重なってくる。そのグロテスクさも相当なものだ。
しっかりと遊びこめる本気のバイオレンスホラーを「Kinect」を使った自分の身体でプレイするその体験は、今までのゲームとは異なるものだ。というよりも、ゲームとはちょっと異なるエンターテイメントなアトラクション感覚が操作にはあるだろうか。それでいて、ゲームらしく自分の行きたいところを歩き回り探索して遊びこむというところもあって、のめり込める没入感がしっかりとある。「Kinect」を使った新しい手触りと共にゲームらしさも兼ね備えていて、ホラーゲーム好きの人にはぜひ触ってみてもらいたいタイトルだ。
(2011年 9月 8日)