2017年10月13日 18:30
ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(SIEJA)より、PlayStation VR専用リアルタイムストラテジー「V!勇者のくせになまいきだ R」が10月14日に発売された。PS VRならではな“実在感の感じられるミニチュアジオラマ”で楽しめる、新たな“勇なま”のレビューをお伝えしていこう。
立体ジオラマのような世界を魔界の色に染めていく!ゲーム性はシリーズ譲りだが、VRならではのリアルタイムストラテジーに進化した“勇なま”
「勇者のくせになまいきだ」と言えば、PSPでのシリーズ作品をはじめ好評を博した個性派タイトル。プレーヤーは魔王に召喚された“破壊神”となり、魔物を育ててダンジョンに入ってきた勇者たちを倒すという新感覚の作品。PS VR専用タイトルとして登場した今作は見た目こそまったく新しいものになったが、基本的なゲーム性や魅力はこれまでのシリーズを踏襲している。
プレーヤーは魔王に召喚された「破壊神」。魔王と魔王のムスメと共に目指すのは、ずばり世界征服。育てるのは魔物たち、立ちはだかるのは勇者たちだ。魔王やムスメとの会話をはじめゲーム中にはいろいろなパロディネタが散りばめられているところもシリーズ譲り。
シリーズ作ではダンジョンの中で魔物を育て、入ってくる勇者を待ち受けるスタイルだったが、今作は地上が舞台だ。RPGらしく特徴や気候の異なる大陸がいくつかあって、それぞれの大陸にあるステージをクリアして支配の手を広げていく。
本作最大の特徴は、ステージが机の上にある巨大な立体ジオラマのようになっていること。盤上に広がるミニチュア世界で、魔物たちが群がり、勇者たちはRPG的に村などで休憩したり仲間を増やしたりしつつ、こちらを目指してくる。ミニマムなRPGの世界が広がっていて、それをVRならではの立体感、実在感で楽しめるのが最大の魅力だ。
ステージの隅には魔王や破壊神たちがいる「はかいの塔」があって、プレーヤーは塔の近くから魔物を育成して魔界化した大地を広げていって、塔とは逆側の位置にある「お城」を目指していく。
お城からは塔にいる魔王を捕らえようと次々に「勇者たち」が旅立ってくるので、育成した魔物で勇者をうまく撃退しつつ、お城の制圧を目指していくというのが基本の流れだ。道中にある村などを制圧しつつ、ときに奪い返されつつ、魔物たちと勇者たちとの戦力の押し合い、パワーゲームを制していくリアルタイムストラテジーのゲームとなっている。
操作は純正コントローラーのDUALSHOCK 4を使用。コントローラーはPlayStationカメラでコントローラーの位置や向きが検出されるようになっており、ゲーム画面中にも破壊神コントローラーこと通称“神コン”の姿でコントローラー表示されるようになっている。
ステージ盤面をポインターで操作していくのだが、この神コンの向きや角度でポインターを自在に動かせるようになっている。ステージ盤面の奥側になる遠いところにもスピーディーにポインティングできるし非常に快適だ。目立たないところではあるが操作の基本となる部分だけにこのポインター操作はしっかりと調整されているのを感じる。
一方、少々気になったというか、もっと欲張りを言いたくなったのは視点の操作。ステージの盤面を回転させられるほか、視点の位置や高さを“切り替え式”で変更できるのだが、切り替え式ではなく自由に視点移動ができたら良かったなと感じる場面があった。切り替え式を採用しているのはおそらく酔い対策だと思うし、切り替え式でも問題なくプレイはできたのだが、ミニチュアな世界をいろんな角度でもっと自由に見たいという欲求から、フリーカメラも欲しくなったというところだ。
育成できる魔物はシリーズ作でもお馴染みのもの。スライム的な「コケ類」から、そのコケ類の魔物を食べて繁殖する「ムシ類」が、さらにそのムシ類を食べる「トカゲ類」がいる。
また、魔法系の魔物では「エレメント類」と、そのエレメントを食べる「リリス類」が登場。さらに、食物連鎖の頂点であり育成できれば非常に強力な戦力になる「ドラゴン類」がいる。
そうした魔物達の食物連鎖を考えて、魔物の巣を作って魔物の数を増やしていくのが攻略のポイントだ。また、ステージクリアで手に入るポイントを使って巣から出現する魔物を上位のものにしていくもできる。
さらに、神コンに魔物を吸い込んで、魔物の強さを表す“軍パワー”の合計が一定値を超えた状態で神コンを上下に振ると、魔物が合成されて魔方陣が作られる。この魔方陣を設置すると、「デーもん」や「ゴーレム」などの特殊な能力を持った魔物を召喚できる。
登場する魔物は、3Dモデリングされて3D立体の世界で細かな動きを楽しめるようになっていることもあるためか、これまでのシリーズに比べると登場する種類はかなり絞られているのは少々残念だが、その見た目のコミカルさ、ミニチュアのフィギュアのような魔物たちが生きているかのように動く様子は、これまでのシリーズにはない、というよりも他のゲームにもあまり見られない、独特の楽しさを作り出している。
立体ジオラマのような世界の上で、ワラワラと魔物たちが繁殖していく様子、城から個性的かつ時にはいろんな作品からのパロディを思わせる名前をしていたりもする勇者たちが現われ、途中の村などに寄りつつ塔へと迫ってくる様子、そして魔物たちと勇者たちのぶつかりあい。それらはPS VRならではの立体感と実在感で見えているわけで、目の前で起きるそれらの細かな動きやディテールを覗き込んでいるだけでも、非常に楽しい。
ステージの盤面だけでなく、同じ部屋の中でサポートしてくれたり愉快なネタ会話を聞かせてくれる「魔王」と「魔王のムスメ」が、等身大で自分のすぐそばにいてくれるのもポイント。ステージ攻略中やステージ間を盛り上げてくれる。また、「魔王のムスメ」をじっと見つめると、ちょっとしたサービスも……?
“じっくり遊びこめるゲームの魅力”と“立体で見えるVRならではの魅力”が融合した、PS VRならではの1本
ゲーム全体のボリュームだが、一通りのプレイを終えるまでは筆者の場合だと約6時間ほどとなった。それ以降にも、より高い難易度でのステージ攻略ではさらにレベルの高い勇者が出現したり、全ての魔物を開放したり、ドラゴンオーブという収集アイテムの取りこぼしを集めたりなどのやり込み要素があるので、そちらも入れるとより長く楽しめる。ただやはり、もう少しステージ数なりプレイモードのバリエーションなりが欲しいという気持ちが出てくる。ただそれは本作が非常に楽しいからこそ出る欲求だ。
難易度については全体にはそれほど厳しめではないと思えるが、順調にステージクリアを重ねていても中盤の山場で苦労したり、制圧スピード勝負で行くか、じっくり育成から取り組んでいくか、どの魔物を重視するかなどでも変わってきたりと、戦略やプレイの幅をしっかりと楽しめるゲームになっている。
本作最大のポイントは“ゲームらしさ溢れる手触りの楽しさ”があるところ。体感系なコンテンツが多いVRにおいて、本作はむしろ自分は顔を見回す以外はあまり動かず、手元のコントローラーを使ってじっくり遊ぶスタイル。「勇者のくせになまいきだ」シリーズにあったゲームシステムとコミカルさとパロディネタで楽しませるようなところは本作でも健在で、その楽しさはVR系の楽しさというよりも、従来のゲームに近いものがある。
一方で、PS VRならではの“目の前に現実にはないものが存在するような見せ方”もしっかり楽しめるところはコンテンツとしてのバランスの良さを感じさせる。自分と魔王とムスメのいる部屋、そこにある立体ジオラマのような世界、その世界でワイワイ動く、ミニチュアな魔物や勇者たち。PS VRならではの等身大な感覚、従来のディスプレイではできない表現で、それらを楽しめる。動きの激しいゲームではないので、VR酔いしにくいし、じっくりと挑むプレイができる。
シミュレーションやリアルタイムストラテジーといったジャンルのゲームがVRと融合するとどんなゲームになるのか?「V!勇者のくせになまいきだR」はそれらの相性が良く、新感覚な面白さと見た目の楽しさを生むという、ゲームの1ジャンルが進化していく姿をみせてくれている。PS VRを手に入れたなら、ぜひプレイしてみてもらいたい1本だ。
©Sony Interactive Entertainment Inc.